悪魔の子にもう1人だけ信頼できる男がいたらという話。

ぶっちゃけ夜に寝る前の妄想みたいなものです。

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最近ワンピースを全巻(104巻まで)読了しました。エニエスロビー編が好きで寝る前に妄想したことを勢いで文字に起こした作品です。設定に矛盾が生じている場所があれば報告してくれると助かります。




 

 

 

それは、ある雨の日のことだった。

 

今からもう10年ほど前のことになるだろうか。

自宅の食料が少なくなってきたからその補充のために買い物に行った日の帰り道に俺はその子と出会った。

 

「…ん?あれは…。」

 

沢山の食べ物が入った袋を片手に持った俺は傘をさしながらふと目を脇に向ける。その視線の先にあるのは2つの民家に挟まれた狭い路地。

そして雨雲によって太陽が遮られていることによってさらに普段より薄暗さを増しているその狭い道に、倒れている人影が見えた。

 

「女の子…?おい、大丈夫か!なにかあったのか?」

 

近づくとその人物の外見が露になってくる。黒い女物のシャツに簡素なズボン。そして長い黒髪を後ろ手に簡単に結んだ髪型。倒れている人物はどうみても10代後半の少女であった。

そして俺の呼びかけに対してピクリとも反応を示さない。どうやら気を失っているようだ。

 

「うわ、ヒドい熱だ…。そりゃこんな雨の中で寝てたら風邪ひいちまうよな。

…仕方ない。」

 

試しに額に手を当ててみると高い熱があることがわかった。そしてこのままここで倒れられていては低体温などで命の危機すらありえ、見殺しにするのは後味がとても悪いので俺は自宅に連れて帰って応急処置をすることにする。

 

「よっと。……随分軽いな、この子。ちゃんとご飯食べられてるのかな」

 

背負ったことにより体に負担を掛けてくる彼女の体重がいささか軽いように思え、家庭環境などに若干の不安を募らせつつも俺は自宅へと足早に戻って行った。

 

 

 

 

「……んぅ。……こ、こは?」

 

「お、目が覚めたか。ここは俺の家だよ。」

 

俺が病人飯を作り終えてキッチンから戻ってくると、丁度目を覚ましたらしい彼女がキョロキョロと辺りを見回していた。

 

「あんた向こうの路地でブッ倒れてたんだよ。それに熱もヒドかったからオブって来たんだ。余計なお世話だったか?」

 

未だ警戒するような目を向けながらもひとまず俺に害意がないことは伝わったようで、彼女の肩の力が抜けた。

 

「いいえ、ありがとうございます…。迷惑をかけてごめんなさい。すぐに出て行きます。」

 

「ちょ、ちょっと待て!あんたまだ熱凄いんだから安静にしとかなきゃダメだって!ほら、お粥作ってきたからこれ食べな。少なくとも熱下がるまではここに居ていいぞ。」

 

「…ありがとうございます……」

 

俺がお粥を渡すと、彼女が暗い顔をしながらモソモソと食べ始める。

 

「なあ、あんた名前はなんて言うんだ?見た感じ俺と歳近いと思うんだけど、2個下くらいか?」

 

無言で食事中の彼女を見つめるだけなのも憚られるので、軽い質問を投げかける。すると、曇りを見せていた彼女の表情にさらに影が落ちた。

 

「年齢は17です。名前は…その、言いたくありません。すみません。」

 

「年齢は言っても名前は言いたくないのか?普通逆だと思うんだが…。なんか訳でもあるのか?」

 

「…すみません。」

 

彼女は暗い顔でそう呟いた。なにやら訳ありな子らしい。まぁだからといって追い出したりするわけじゃないんだが。

 

「そっか、わかったもう聞かない。そんであんたの親御さんは何処に住んでるんだ?あんまり長い間留守にしても心配させちゃうと思うけど。」

 

露骨に話を逸らそうと別の話題を彼女に投げかけるが、どうやらこれも地雷だったらしい。

 

「家族は…いません。昔に皆死んじゃいました。少し前まではある船に置いてもらっていたんですが…そこも訳あって逃げ出してきました。」

 

「お、おう…そうなのか。その…悪かった。ズカズカと聞いちまって。」

 

「いえ…大丈夫です。」

 

暗い顔をますます俯かせ少女が言葉を溢す。

…そういえば、まだ半日とたっていないが出会ってからこの子の笑顔を一度も見ていないな。

 

「……なぁ、あんた。行くあてがないならここに住まないか?」

 

「……え?」

 

全く不思議な話だが、その言葉はスルリと俺の口から出てきた。一度も喉に突っかかるとこなく、なめらかに。そして俺は一切の澱みなく真剣な眼差しで彼女を見つめた。

 

「俺も幼い頃に病気で両親亡くしててさ。1人の辛さはよくわかる。だからさ、こうして出会ったのも何かの縁ってことで仲良くしていかないか?」

 

当時、何故この提案をしたのかは今でもよく覚えていない。しかしそのことについて後悔もしていない。

 

…とある心残りは存在してるがな。

 

「…あんたが何か訳ありなのは想像が付いてる。だが、何があってもあんたに変なことをする気なんてない。それに嫌だと思ったらいつでも無断で出て行ってくれていい。…どうだ?」

 

1年半という短い期間であったが、この少女の存在は当時の俺の中でとても大きな存在だった。それ故に今もふと彼女のことを思い返してしまう。

 

「……ニコ・ロビン」

 

「え?」

 

「ニコ・ロビン…私の名前です。今日から少しの間お世話になります。なんでもするのでよろしくお願いします、お兄さん。」

 

これが俺と少女ーーーニコ・ロビンの出会いだった。

 

 

 

 

彼と出会ったのは全くの偶然だった。

 

当時、私は身を置いていた海賊船の船長に私の莫大な懸賞金が知られてしまい海軍に引き渡されそうになった。

どうにか命からがら逃げ出した私だったが、雨に体を冷やされて体力を失い路地で意識を失ってしまったらしい。

 

そして次に目を覚ますと知らない天井が目に入り、彼がお盆に料理を乗せて入ってきた

 

優しい瞳で私の安否を確認してきた彼だったが、その時はどうにも警戒を抜くことができなかった。

サウロに見送られながらオハラを出て以来、人を信用したことがない私には平凡そうな彼も私に害をなす敵だと思えてしまったからだ。

 

“もし彼が私の名前を聞いて懸賞金のことを思い出し、海軍へと突き出されるかもしれない。“

 

彼に名前を聞かれた時、不意にそんな考えをしてしまい名前を答えることさえできなかった。

 

ーーーしかし、そんな怪しい存在である私を彼は追い出すどころか手厚く看病してくれた。

そして更には宿を提供してくれるという提案さえしてきた。

 

勿論、初めは警戒した。そう都合よく事が運ぶはずなんてない。現実の辛さは私もよく知っているからだ。

 

『…あんたが何か訳ありなのは想像が付いてる。だが、何があってもあんたに変なことをする気なんてない。それに嫌だと思ったらいつでも無断で出て行ってくれていい。…どうだ?』

 

だが、彼の言葉は何処か安心できるものだった。真剣な瞳で私を見つめ、その眼差しに嘘の雰囲気は欠片も存在していないように私には思えた。

 

それに、原因は違えど彼も幼い頃に両親を亡くしているらしい。そんな彼には私は、親近感を抱いてしまった。

 

ーーーだから、提案に乗ることにした。

完全に信用した訳ではない。しかし行く宛が無いのもまた事実だし、また歴史の本文(ポーネグリフ)を探す目処が立つまでの間だ。だからせいぜい利用してやろう、と。

 

それに好きなタイミングで出て行って良いと言っているし、言われなくても危険を感じたら出て行くつもりだ。今までもそうして来たのだから。

この様子なら、名前くらいは教えても平気だろう。

 

『ニコ・ロビン…私の名前です。今日から少しの間お世話になります。なんでもするのでよろしくお願いします、お兄さん。』

 

これが私、ニコ・ロビンとーーー()()()()()の出会いだった。

 

 

 

……

 

………

 

 

それからは、いろいろな事があった。

 

お兄ちゃんと同居を初めてしばらくの間はやはり警戒心が抜けなかった。今までの経験が経験だ。仕方がなかった。

 

話しかけられてもぶっきらぼうに、目を逸らしながら答える無愛想な私だったが、それでもお兄ちゃんはめげすに私に声をかけ続けてくれた。

 

『ロビン!見てくれよエレファント本マグロ買って来たぞ!これ美味いんだよ一緒に食べようぜ!』

 

『なぁロビン。今度一緒に釣りでも行かないか?…え、外には出たくない?んーならしょうがないか。家でなんかして遊ぶか。』

 

それは今まで人々を裏切り、また裏切られ続けて来た私にはとても心地の良いもので、彼の言葉は私の凍てついた心を徐々に溶かしていった。

 

『ほぇー、凄いなロビン。お前の知識、特に歴史に関しては俺の知人の誰よりも上なんじゃないか?遺骨から海賊船を割り出す方法なんて目から鱗だわ。』

 

『手がいっぱい生えて来た!?なんだこれめっちゃ便利そうだな!あっおい、くすぐんなって!あははは!』

 

『…なぁ、ロビン。お前がどんな環境で育って、今までどんな経験をして来たのかは知らないが、俺とお前はもう家族だ。少なくとも俺はそう思ってる。お前はもう…1人ぼっちじゃない。』

 

素性を隠しながらの生活ではあったが彼との生活はとても温かく、気づけば私は彼に心を開いていた。お兄さんという呼び方はお兄ちゃんとよりフランクに、家の中での言葉の数も少しずつ増えていき一年が経った頃には家は笑顔で溢れていた。

 

それはとても得難い、大切な家族との時間だった。クローバー博士やお母さん、サウロ達と過ごした時と同じようなかけがえの無い時間。

 

 

ーーーだから、あんな別れ方をしたくはなかった。

 

 

 

 

ロビンと出会ってから一年半が経過した。

両親を早くに亡くした俺は一人暮らしだったため、平日は仕事をしている。

ロビンは外に出ることを極端に嫌うので普段は留守番を頼み、夕食を作ってもらうのが彼女を迎え入れてからのルーティンとなっていた。

 

「……なんだ?」

 

いつも通りに仕事へ行き夕方に帰宅した俺だが、なにやら自宅が唯ならぬ様子となっていたために足を止めた。

 

ーーードアが、破壊されている。

 

豪華とまではいかないが、それなりの装飾をしてあった自宅のドアが見るも無惨な姿となって破壊されていた。

 

強盗でも入ったのだろうか。そんなことを考えながら忍足で窓付近へと近づく。

すると、中から家具を蹴散らす大きな音と複数の男による怒鳴り声が聞こえて来た。

 

「おい!本当にここなんだろうな!お前があいつを見た家ってのは!誰もいねぇじゃねえか!」

 

「は、はい!間違い無いっす船長!確かにここでやつを見やした!」

 

船長、という単語が聞こえた。人の家を荒らす船長と呼ばれる人物ーーー。そこまで考えて俺は一つの可能性に辿り着く。

 

(こいつら…まさか海賊か?)

 

こいつらが海賊だとしたら俺の家を荒らしている行為はおかしいことでは無い。彼らはそうやって人を蹂躙して生計を立てている人種だからだ。

 

しかし、彼らの会話の中に不可解な部分があった。

ーーー誰かを探している?

 

「ちぃっ!てことはもう逃げた後ってことか…。恐らくお前の顔を見て勘づいたんだろうな。」

 

「す、すいやせん。まぁあっしはあいつが船にいた時にそれなりに話していたんで…」

 

俺が身を潜めながら聞き耳を立てていると、次の瞬間船長と呼ばれる男が怒号と共に信じられない言葉を発した。

 

「いいか!この島から逃げ出したにしてもまだ近くには居るはずだ!絶対に探し出してとっ捕まえろ!なんせ7900万の首だ!あの『悪魔の子』ーーーニコ・ロビンはぶっ殺してでも俺の元に連れて来い!」

 

男の言葉に、俺は頭を強く殴りつけられたような衝撃を感じた。

 

(こいつらの目的はロビン…!?そういえば、出会った日に船から逃げて来たって言ってたな…!それに、悪魔の子って一体…)

 

後に分かったことだが、俺の家族であるロビンは『悪魔の子』と呼ばれる大物賞金首であった。懸賞金がかけられるまでの詳しい経緯は調べられなかったが、なんと8歳の時には既に札付きとなっていたようである。

 

(そうだ、ロビンは…!?あいつ今何処にいるんだ!探しにいかないと……!)

 

苛つきからか未だに俺の家の中で暴れ散らかしている海賊を尻目に、俺はロビンを探すために街中へと走って行った。昨日までは一緒に住んでいたのだ、そう遠くまで行けるとは思わない。

 

しかし日が傾き、空を茜色が覆い尽くしてもーーーそして太陽が完全にその身を隠し、その代わりとして月が顔を見せてもロビンは見つからなかった。

翌日、そのまた翌日と俺は辛抱強く至る所を探して回ったがロビンの姿はない。いつしか彼女を探していた海賊達もこの街を去ったようで、あれ以来俺の家には彼らが来ることはなかった。

 

ロビンは、この日を境に姿を消した。

 

 

 

 

「…おい、どうした?」

 

ボーッとした頭で考え事をしていたらふと、目の前から声をかけられた。

ハッとしながら前方に焦点を合わせると友人の首を傾げた姿が目に入る。

 

…そうだ、昨日からこいつの家に来てるんだったな。

 

「あぁ、すまんすまん。…ちょっと昔のことを思い出しててな。」

 

「ははっなんだそれ、随分と急だな。わざわざこの()()()()まで来て考えるのがそれかよ。」

 

そう、俺は昨日からエニエスロビーという島にある友人の家に邪魔している。

 

ここエニエスロビーは裁判所が設置されている『司法の島』と呼ばれる場所であり、政府直轄の島である。

本来であれば俺のような民間人は原則立入ることができないのだが、役人であるこいつの紹介で特別に入る事が許されたのだ。

 

「昔のことって以前にお前が言ってた妹のことか?10年くらい前にいなくなっちゃったんだっけか」

 

「あぁ、今頃何処で何してるのかね…。難しいだろうけどできればもう一回会いたいもんだ。」

 

ロビンがいなくなって以来、俺はふとあいつのことを思い出す時がある。もう10年近く顔を見てはいないが、賞金首だろうとなんだろうと俺は未だにあいつを家族だと思っている。

 

あの日、おそらくロビンは商船か何かに紛れ込んで島を離れたのだろう。あいつは賢い、それくらいなら難なくやってのけるはずだ。

 

しかし、嫌になったら出て行っていいとは行ったもののあんな形で別れることになるとは思いもしなかった。当時は妹を守れなかった兄としての不甲斐なさで心が埋め尽くされたもんだ。

 

「生きているんだったらそのうち会えるさ。全ての島は海で繋がってるんだからな。…案外、今日会えたりしてな!ははは!」

 

「はは、そうだといいんだけどな。」

 

俺を元気づけようとしたのか、肩をバシバシ叩きながら友人が笑いかけてくる。こいつのこういう明るいところは助かる部分が多い。

 

「…よし!せっかくエニエスロビーに来たんだから景気付けにちょっと出歩いてみるわ!周り見てくるくらいなら大丈夫だよな?」

 

「ははは、昨日は一日中家で酒飲んでたからな。行って来いよ。変なことしなけりゃ海兵に捕まったりもしないから安心しな。んじゃ、俺はお前が言ってる間仕事でもしてるかな。なんかあったら連絡くれよ〜。」

 

そう言って手をヒラヒラと振る友人の姿を見ながら俺は外へ出た。

 

 

 

……

 

………

 

 

「うへぇ〜流石司法の島、デカい建物だらけだな。」

 

エニエスロビー観光という普通では体験できないことをしている俺は少しテンションが上がりつつ周りを見て回っていた。

 

海底監獄インペルダウン、海軍本部と並ぶ三大機関とも評されているこの島ではあるが、常駐する海兵や役人の居住区も存在しており、普段の島内にはある程度の活気がある。

 

しかし、この日は何かが違った。

 

(…なんかやけに向こうの方が騒がしいな。確か…司法の塔だったか?なんか事件でもあったのかな。)

 

そう、何故かやけに海兵がバタバタしているのだ。そして彼らは向こうに見える一際大きな建物、司法の塔と呼ばれる場所に向かって行っている。

 

(まぁ、俺には関係ないことだな。邪魔しても悪いし早めに戻ろーーーーは?)

 

民間人である俺が介入したところで邪魔な野次馬になってしまうだけである、そう考えた俺は踵を返して友人の家に戻ろうとした。

 

だが、振り返った先には到底信じられない光景が広がっていた。

 

 

列車がこちらにつっこんできている

 

 

「んがががが!!ほらお前達邪魔すんじゃらいよ、轢かれたいのかい!!」

 

「うぉぉおっっ!?」

 

中からそんな声が聞こえた気がするが俺の頭には何かを考えている余裕なんてない。全力で列車の進路から逸れようと身を横に飛ばす。

そしてギリギリで避けたと思ったら後部の柵に足が引っかかりそのまま柵にしがみつく体勢となってしまった。

 

「あっ!ちょっ、足引っかかった!待って止まって!これ何処向かってんの!?運転手さん止めてぇ!!」

 

「んががが!!そりゃ無理な相談らよ!事態は一刻を争うからね!この列車は一方通行さ!!こうなったらあんたも向こうまで着いて来な!!」

 

やはり中から声がする。聞いた感じ、運転しているのは女性だろうか?だが、そんなことはどうでもいい。

 

「嘘だろぉぉぉおおお!?!?ちょっ、前前!橋降りきってないって!落ちるってぇぇぇええ!!」

 

列車はさらに加速していき、大きな橋を使って大ジャンプをぶちかましたところで俺は外に出たことを激しく後悔した。

 

 

 

 

ゴウ…!と何かが燃える音が広がる。

 

本来であれば絶対安全と言っても過言ではないこの司法の島にて、信じ難い光景が起こっている。

 

『ENIES LOBBY』と大きく書かれた建物の頂上にはある旗が立っている。5つの円が4本の線で結ばれた柄を中心に持つその旗はまさしく『世界の象徴』。そのマークは四つの海と偉大なる航路にある170国以上の加盟国の結束を示すものである。

 

その正義の象徴である旗が、真ん中に大きな穴を開けて激しく燃えていた。

 

それが意味するものはすなわち、世界への宣戦布告。現実的に考えればそれを行なった彼ら、麦わらの一味に勝ち目などはない。

だからこそスパンダムは叫んだ。

 

「正気か貴様らァ!!!全世界を敵に回して生きていられると思うなよォ!!!!」

 

しかし仲間を何よりも大切にする彼ーーーモンキー・D・ルフィにとって、そんなことは些事でしかない。

 

「望むところだァーっ!!!!」

 

故に、彼は本人へと問いかける

 

「ロビン!!!まだお前の口から聞いてねェ!!」

 

口を大きく広げ、ありったけの声を張り上げながらルフィは叫んだ。

 

 

「"生きたい"と言えェ!!!!」

 

 

対岸の建物の屋上でそう叫ぶルフィを見るニコ・ロビンの心は限界に近かった。

今までルフィ達を守るために必死に彼らを遠ざけて来た。しかしそれによって溜まった感情のダムはついに決壊を迎えようとしている。

 

(生きる……!?)

 

声が、聞こえてくる。

 

『お前はこの世に生きてちゃいけねぇんだロビン!!!』

 

(望んではいけないことだと思ってた…)

 

ポロポロと両方の瞳から涙がこぼれ落ちる。その長年に渡り積もった雫は一度流れ始めたら止めることができない。

 

『貴様の存在そのものが…!!大罪なんだ!!!ロビン!!!』

 

()()()、誰もそれを許してくれなかった…)

 

思い出すのは負の記憶。人から蔑まれ、追われ続けた人生の軌跡。

 

しかし麦わらの一味という希望を目の前にした彼女の頭には、ある巨人族、長い鼻を持った一味の仲間、そして1()()()()()姿()が映し出された。

 

『海は広いんだで!いつか必ずお前を守ってくれる仲間が現れる!!!』

 

(サウロ……!)

 

『ルフィを…信じろ!!』

 

(長鼻くん……!)

 

そして

 

『お前はもう…1人ぼっちじゃない』

 

(お兄ちゃん……!!)

 

数こそ少なくはあるが、ロビンにも大切な人は確かに存在する。

 

(もし本当に少しだけ、望みを言っていいのなら…)

 

(私はーーー)

 

だからこそ彼女はこう叫ぶのだ。

 

 

「生ぎたい!!!!」

 

 

「私も一緒に海へ連れてって!!!」

 

それを聞いたルフィは満足げに口角を上げる。そして横に並び立つゾロ達も気合を引き締め直した。

 

「うおーーーん!!おめェら好きだー!チキショ〜〜〜!!!!」

 

「跳ね橋が降りるぞ!!」

 

「あいつらうまくいったみてェだな」

 

「ム…武者震いが…」

 

「早く下ろせ」

 

「悪そうな顔…!!」

 

フランキーの子分たちが跳ね橋を下ろすことに成功し、ルフィ達の攻撃の準備が整う。

それに伴い麦わらの一味からの闘気が増し、彼らに反応したロブルッチもニヤリと笑う。

 

条件は整ったとばかりにルフィは手をボキボキと鳴らしながら叫んだ。

 

 

「行くぞ!!!」

 

 

 

 




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