ポケットモンスター 緋めし記憶と花色の夢路   作:kozmo78

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第11話 二人目の相棒

 

「ちょっ、ちょっと待って………!」

 

 

「ニャオー!」

「ホゲー!」

「クワクワ―!」

「リュ―!」

 

 

 

────大人になれた、って思うのは気が早すぎたみたいだ。

 

 意気揚々と行き先へと連れて向かおうとしたがそんな簡単にはいかなかった。ニャオハは花壇の裏の黄色い花が咲く所に、ホゲータは自分と同じ色の看板に、クワッスは右手に広がる海が見える柵の前に一目散に走っていった。

 …まぁこの3匹が遊ぼうとするのは分かるけどミニリュウも同じくらいはしゃいでいる……、確かに同じぐらいのレベルで2匹以上のポケモンとじゃれ合うのはほとんど無かったからかな。

 

 別に急いでいるわけではないから急かすのは変だけど、アカデミーに早く行きたい気持ちが少しでも次の目的地への足取りを進めようとする。

 

 

───だけどそれだけがこの道のりの目的ではないのをすぐに思い出す。

 

 

「そうだ!分かってはいるけど……誰かに決めるなんて………」

 

「?」

 

 

 少し落ち着いて私の元へ駆け寄ってきたミニリュウが何の事かとこちらを見つめている。

 ミニリュウもこれからの生活を楽しみにしていたのは当たり前に知っていたし、状況は知らなくとも新しい仲間が増えることを知ればより喜ぶことは一目瞭然だ。

 でも───相反する気持ちは変わらず心の中で渦巻いている。

 

 流石にここで答えを出さずに居続けるのは意味も無いし、ヒギリとの約束もある。本当は予定の変更を連絡したいところだけれど聞いている限り携帯を持っているとは言っていなかったから、申し訳ないけどこのまま行くしかないとも思う…………から、心の中で「ごめん」と呟く。

 

 

 先導しながらゆっくりでも道を進んでいると何人かの人とすれ違った。

 この町『コサジタウン』に越した時に挨拶を済ませているから初対面ではないが、この状況も相まって何となくぎこちなくなってしまう。

 

「あらメリアナちゃんじゃない!その制服っていう事は………今日から登校なのね!」

 

「あ、はい!…そうなんです。」

 

「それに後ろのポケモンたちは……もしかしてメリアナちゃんのポケモン?」

 

「いや、この子たちは──(何て言えばいいんだろう……)───大事な…最初の仲間になるかも?………な子たちです。」

 

「ああそういう事!じゃあ長話は駄目ね!学校とパートナー選び…頑張ってね~!」

 

「ありがとうございます………、じゃあみんなもうすぐだから、ついてきてね。」

 

「ニャッ!」「ホゲ!」「クワッス!」「リュ―!」

 

 

 離れていく背中から視線を前に移す。

 体感時間ではそんなことは無かったが、もう目の前には目的地の鉄製の扉が見えている。見たところ開いているから入っていいかもしれないけど………ほぼ知らない場所でもあるから気が引けるのは確かだ。

 

 いまだ答えを見出すことは出来ていないまま踏み入ると────私の気持ちなんてお構いなしに飛び出す子たちが居た。

 

 

「わっ!…さっきの家とは違うからはしゃぎ過ぎないでね!」

 

 

 元気の有り余るみんながそんな制止で止まることなんてなく、各々が行きたいところに走り出す。

 

 クワッスは左手に見える噴水に飛び込み、水色の鬣のようなトサカを水に濡らしている。

 初めて目にした時もそうだけど、自信に満ちた立ち振る舞いや決めポーズを魅せるようなしぐさが多くてとても可愛らしい。

 

 ニャオハは玄関の左手前に駆け出し、色とりどりの花が咲く花壇でのどかに座っている。

 今日見たどの場所でも草花が多い場所に行こうとするし、やっぱり緑に囲まれた所が好きみたいだ。今もあそこが落ち着くのか、あの元気が納まっている姿がその証拠だ。

 

 ホゲータは奥のリンゴの生る木で、落ちているリンゴを見つけてはしゃいでいる。

 よく見たらくしゃみ…?が出てしまって、放たれた“ひのこ”がそのリンゴを黒焦げにしてしまった。あの抜けた顔の感じでおっちょこちょいなトコロも可愛────あれちょっと待って大丈夫これ?

 校長にはここに来ることを伝えてるけど面識が薄い相手の家でのアレはもしかして私の責任?だとしたらどうすればどうやって説明すれば────なんてことを考えていたらホゲータの横に一人の女の子が横に立って、あの子を撫でた。…イレギュラーな出来事ばかりで周りを見ていなかったから気付くのに遅れてしまった。

 

 

「君がこの子たちのトレーナー?…あ!もしかして向かいの家のメリアナちゃん!……だっけ?」

 

「初めまして…最近越してきたメリアナです、今日からアカデミーに転入することになりました。…………あの、すみませんそのリンゴ…」

 

「いや気にしないでいいよ!ねぇホゲータ?」「ホゲッ!」

 

 

 初対面だったが許してもらえて良かった。

 引っ越し挨拶の時には会えなかったということとその服装から、アカデミーの生徒なのは分かる。雰囲気や身長から私よりも年上で、おそらくヒギリと同じくらいにも見える。

 ミニリュウの方はと言うと思ったよりはしゃがずに私のすぐ横に寄り添ってくれてる。多分だけど私が不安そうにしているのを察してくれたのかもしれない。

 

 

「って言うかそのミニリュウって色違い?!凄いね!」

 

「りゅー!」「あ、そうなんです………あのお名前は?」

 

「そうだった!私はネモ!普段は学校の寮に居るけどご近所同士仲良くしよっ!」

 

「よろしくお願いします!……────(ネモ……?)」

 

 

 そのポニーテールの彼女、ネモさんは快く挨拶してくれた。

 でも…初めての対面の筈なのにどこかで憶え……多分この名前に聞き覚えがある気がする。確か最近誰かと話していて─────

 

 

「あの、ヒギリって知ってます?赤い髪の男の子で………」

 

「ヒギリ?知ってるし、バトルもしたことがあるよ!ヒギリ、バトルするの初めてって言ってたのにすごい上手かったんだ!」

 

「ってことは……やっぱりあの話の人だ!生徒会長でチャンピオンランクの!」

 

「詳しいね私の事!?…でも知ってるってことはヒギリと仲いいんだ!」

 

 

 流石に初対面の相手が詳しいことに驚いたけど、すぐにヒギリから知り得たのだと察してくれた。まぁ仲が良いというより家族に近い……のかな?正直知り合って結構経ったけど、まだほんの少し距離感を計りかねている自覚はある。

 でもそんなことを考えている内に、奥の大きな扉が開く音がした。

 

 

「おや、随分お早い到着ですね。見たところ……まだポケモンを選んでいないようですね。」

 

「すみません……、みんな魅力的で決めきれなくて………」

 

「急がなくても大丈夫ですよ!大事な選択ですからね。」

 

「おぉ~すごい大事な所じゃん!この中の誰かがメリアナちゃんのパルデア最初のポケモンになるってことだね!」

 

「そうですよ。……では皆さん!こちらに集まってください!」

 

 

 校長先生が周りを見渡して号令をかけると、3匹が素直に集まってくれた。

 ホゲータはさっき焦がしたリンゴを大事そうに持ってきたけど、齧った途端にビックリしたのかすぐに手を放してしまった。

 その姿を見た2人が笑みを零している……もちろん私も同じだった。

 

 

「もし決まったらバトルしようね!私バトル大好きなんだ!ミニリュウとも戦ってみたいし!」

 

「………うん、そうですね!でもまず誰かに決めないと……うーん………」

 

「やっぱ迷うよね~、私も凄い迷ったよ!でもその時は変に考えたりしないで直感とかに頼ってみるのもいいと思うよ!私もそうだったし!」

 

「へぇー………ちょっと考えてみます。」

 

 

 そう言って少し自分だけの思考に耽る。

 

 実際自分にとってのこだわりは無いから、カッコいい可愛いとかタイプとか強さとかなんかで選ぶ気なんて毛頭ない。

 それに自分はミニリュウを相棒に持つトレーナー……と周りから見えるかもしれないけど、一度もバトルしたことが無いただシロナさんに憧れている一般的なトレーナーだ。一緒に夢を追いかけてくれるような子と生活できれば最高だ。

 

 ………とは言ってもそんな相性のいいポケモンを見極める技量は無い。

 だったらネモさんが言う通り直感に頼ってみる方が答えを出せそうだけど────

 

 

 

 

 ───……あ、悪くない…考え……かも。じゃあグダグダ考えずに……………自分の直感を信じてみよう。

 

 

「決まった、と言う顔ですね。────では、あなたがパートナーにしたいポケモンは決まりましたか?」

 

「はい!私は………」

 

 

 指名する前にその子の前に立つ。自分の人生でこれほど悩んだことが無いと思えるほどに悩みに悩んだ結果──────

 

 

「はにゃ!」

「くさタイプのニャオハ!生い茂る植物の力でどんな水でも吸い取るよ!」

「くさタイプのニャオハさんでよろしいでしょうか?」

 

「はい!…ニャオハ、私と一緒に来てくれる?」

 

「はにゃお!」

 

 

 ニャオハの方に手を差し伸べると、勢いよく腕を伝って私の肩まで登ってきた。

 腕に乗せたこの軽くて重い実感と私の前髪で遊ぶこの可愛いしぐさが………新しいパートナーの仲間入りを証明してくれた。

 

 

「ニャオハさんもメリアナさんを気に入ったみたいですね。パルデア初めてのポケモン、大切に育ててください。」

 

「分かりました!じゃあよろしくね、ニャオハ!「にゃお!」そして……ミニリュウもね!「りゅっ!」………よろしくね、二人とも。」

 

 

 快く私の翳したモンスターボールに戻ってくれた二人のボールの撫でてみる。

 これから始まる新生活に私自身の高揚感も高まって来たし、二人のやる気も溢れんばかりという感じがひしひしと伝わってきた。

 

 

「メリアナちゃん……ニャオハを選ぶなんてさ……

 

 すっごく似合ってる!バランスもいいもんね!…なんでニャオハを選んだの?直感とか?」

 

「私の名前、“メリアナ”はお母さんたちが花の名前から付けてくれた名前なんです。今日ここに来るまででニャオハが花がとても好きみたいなのが分かったので、そこから選びました。」

 

「いいじゃん!私の名前も同じだし、お揃い…?だね!」

 

 

 確かに名前を聞いた時に私もネモフィラをイメージしていたがその考えは合ってたようだ。

 私自身おかあさんほど詳しいって訳ではないけど、ガーデニングとかで花と関わってきた生活でもあるようにも考えたからニャオハにシンパシーを感じたのかもしれない。

 

 

「クラベル先生!私も1匹選んでいいですか?」

 

「おや?ネモさんは入学時にポケモンを……もらっていませんでしたか。」

 

「はい!あの時は育てたいポケモンが別にいたので!今はメリアナちゃんと新しい子を迎えたいです!」

 

「なんと素敵な心がけですね。是非メリアナさんと同じスタートラインから始めてみてください。」

 

「やった!メリアナちゃんがニャオハなら……私はこの子で!よろしくクワッス!」

「プルップス!」

 

 

 ネモさんは私と同じようにクワッスを指名して、また新たなパートナーが生まれた。

 

 それにネモさんがチャンピオンランクになった経緯の一端を話してたのも驚いたけど………それ以上にさっき初めて会ったばかりのここまで仲良くしようとしてくれたことがとても嬉しかった。

 ネット上でしか知らないとはいえ、チャンピオンランクと言うものがどれだけ凄いかはもちろん知っていた。そんな人がこんなフレンドリーで優しいなんてホントに尊敬───────

 

 

「さてと!ポケモンも決まったことだし早速勝負しなくっちゃ!下のビーチで待ってるから準備できたらすぐ来てね!」

 

「え、ちょっ、待っ………」

 

 

「ネモさんはポケモン勝負が大好きすぎますね……」

 

 

 …尊敬の眼を向けた相手はバトルの約束を言い残してすぐに走って行ってしまった。

 

 ……何となくだけどこんなこと他の誰かでも似たようなことがあった…気がする。

 

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