ポケットモンスター 緋めし記憶と花色の夢路 作:kozmo78
あの日から5年が経った。
私の人生を振り返ってみると、サザナミタウンでの出会いによって人生が大きく変わったのは明確だ。
まず、私の家族に新しい一員が加わった。元々ポケモンに触れあうことがあまりなかった私にとってそれからの毎日が新鮮なモノであり、お母さん達からもポケモンと過ごすことの責任を教わった。
最初の頃は仲は良かったもののミニリュウの腕白さに振り回されることが多かったが、今ではお互いに気を使えるような関係性を作ることが出来た………腕白なのは変わらないけれど。
そしてもう一つ………
『あーっとぉ!?ここでブーバーンが倒れたぁ!よって勝者は~……チャンピオン、シロナだぁ!!』
『今回で6連続防衛成功っ!彼女を倒せるチャレンジャーは出てくるのだろうかぁ!?』
「やっぱり……凄いな………」
歓声に沸いているテレビの中を見つめながら、小さく呟いた。
あの日助けてくれたお姉さんは、シンオウ地方でトップに君臨する最強のトレーナーだった。
本人の口からそのことを聞いた時は何となくでしか聞いたことが無く、お母さん達が妙にかしこまって話している姿を見て頭に?が浮かぶぐらいだった。しかし旅行を終えてまるで運命かのようにタイミング良く中継されていた彼女のチャンピオン防衛線を観て………私は衝撃を受けた。
そこまでポケモンバトルを見たことのなかった私でも彼女の凄さが分かった。
圧倒的……相手の指示するポケモンたちの見せる"すべて”をまるで手に取るかのように把握し完膚なきまでに倒してみせた………それもバトルをしつつ観客たちに魅せるための指示を行うほどに余裕を見せながら。
……だけど、その放送で伝わってきたのはそれだけじゃない。
「(今回はロズレイドだけで……やっぱり勝負の華やかさが違う………それに相性の悪い相手には花びらを使った技で攪乱するなんて………)」
あの試合は、私のポケモンバトルへの熱情に火を点けた。
特にこれといった夢や目標が無かったあの頃の私にとって、人生で初めてと言えるぐらいに興味を持つモノであった。お母さん達に頼んでシロナさんについて教えてもらうと、初めて会った時の少し前にシンオウ地方のチャンピオンに若くして就任したこと、チャンピオンになって以降負けなしであったこと、考古学者もやっていることなどを知った。幼い私は詳しくは理解できなかったが、彼女の強さと………ポケモンバトルの面白さは分かった。
それからというものシロナさんのテレビ放送があればミニリュウと一緒に欠かさず見るようになり、お父さん達のポケモンを積極的に見せてもらおうとした。数えきれないくらい彼女の試合を観たけれど、エキシビションマッチ以外での負けた試合は一回だけだった………その一回も衝撃的だったけど。
しかしそれだけではなく、通うようになったトレーナースクールで逸る思いを抑えられずミニリュウとバトルに挑もうとした………………んだけど、
「…ミニリュウも戦ってみたいよね………」
「リュ~……」
背中をなでながら少し元気の無さそうなミニリュウを目を落とした。
トレーナースクールで初めて気づいたが、ミニリュウが相手のポケモン……その時はヨーテリーだったかな、その子と向き合った瞬間に全く動けなくなった。まるで何かに怯えているかのように指示を受けても体を震わせて、そのままポケモンバトルを中断する結果となってしまった。
小さい時にトドゼルガに襲われた経験がトラウマになってしまいバトルする側に立つと思った通りに動けなくなる……………とポケモンセンターで診せた時に言われた。
気持ちは痛いほど分かってしまう。私だっていざ対面に居るポケモンを見据えた時、"あの”時のビジョンが重なったような気がした。それに無理強いするのもミニリュウに辛い思いをさせるだけなのは目に見えて分かる。
だけど………一度火が点いたモノは簡単に収まり訳もなく今もこうやってこの習慣は続いているし、ミニリュウだって普段は元気一杯で過ごしている。それにテレビを見つめるあの瞳はバトルを嫌ってるようなものではなく、むしろあれは憧れの眼差しであった。
結局のところ解決法を思いつくこともなく、時間が解決することを願ってミニリュウとそれまでの日々へと戻っていった。
夢と目標は見つかったけれど、毎日が不完全燃焼のまま日常を過ごしていた。
「突然すまんメリアナ!転勤することになったんだ!」
「………え?」
「お父さん、パルデア地方のポケモンリーグで働くことになったの………だからお引っ越ししないといけないの。」
夜ご飯を食べる前にしてはあまりにも急すぎる告白だった。突然のことで簡単には呑み込めなかったけど、パルデア地方にはお父さんの出身なのは知っているし何度も行ったことがあるから未知の領域って訳ではなかった。
「そうなんだ…………うん…分かった。」
「…ホントにゴメンな、急になって…………でも悪いことばっかりじゃないぞ!おじいちゃんにも会いやすくなるし、それに“アップルアカデミー”っていうのがあるんだ!」
「“アップルアカデミー”?」
「そうなの!トレーナースクール以上にポケモンに力を入れた学校でね、年齢関係なく入学できるところなの!」
「俺も通っててな、あそこでより深くポケモンについて学べたからこそ今の職業にも就けた………良い学校なんだ!」
「へぇー……そこで学べばシロナさんみたいになれるのかな……」
引っ越しと聞いて少し憂鬱な気持ちになったけどそれ以上に面白そうなことを知った。
“アップルアカデミー”………………か。まだ夢への第一歩も踏み出せていない私にとっては願ってもない場所なのかもしれない。
「良かった良かった、もし嫌だって言われたらどうしようかと……………って言うかまずご飯だな!」
「そうよ、冷めないうちに食べましょう!」
「うん………いただきます!」
夜ご飯を忘れていたのを思い出し、話を一旦切り上げて箸を手に取った。
それでも食事中もなんだかんだ話は始まって、新しい家のことや引っ越しの準備について話題は止まらなかったけど………膨らむ期待からか食べているご飯がいつもより美味しく感じた気がした。
~ ~ ~ ~ ~
「もしもし………そっちに引っ越すことになって………うん……………え………どういうこと………マジで…………」
「あれ、お父さんは?」
「おじいちゃんへの電話よ、たまに帰ったりしてたけど仕事を始めてからはずっとこっちに住んでたからおじいちゃんも喜ぶと思う………ってね。」
「そっか」
皿洗いを手伝っている内に居なくなったお父さんについてを尋ねるとその理由が分かった。
おじいちゃんはとても優しくて、家を訪れた時はいつも朝一で獲ってきた魚を使った料理を目いっぱい振舞ってくれたり隠れてお小遣いをくれたりしてくれた。その優しさは私が見ていない所でお母さんに「甘やかしすぎです」とちょっと怒られてたぐらいだ。
そんなことを考えていたらベランダからお父さんが戻ってきた………けどなんか様子がおかしい。
「………二人とも、聞いてくれ。」
「どうしたの?………もしかしてお義父さんの身に何かあったの?」
「いや悪い知らせじゃあないんだ……………
………なんか、新しい家族ができてたらしい。」
「「え」」
………正直さっきの話よりも驚いたかもしれない。
【人物紹介】
名前:
メリアナ
年齢:
13歳(入学時)
容姿:
青紫色で右目側に流したボブカットで、年齢にしては大人びた顔立ちをしている。
【挿絵表示】
性格:
シロナに憧れて冷静で魅力的な女性を染みついているが、ポケモンとポケモンバトルのことになったら熱くなったり怖いモノを見たら涙目になったりと所々に幼さを持ち合わせている。
今も少しだけ攻撃的・野性的な相手に怯えてしまうトラウマを抱えている。
好きなもの:
甘い食べ物(特にチョコレート)
ファッション
嫌いなモノ:
怖いモノ全般(ホラーや急に驚かされるようなモノ)
ゲジゲジ系の虫