がっこうぐらし! 実績「二度と目覚める事のない悪夢」獲得RTA   作:ランディー55

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これから

 世界がこうなってから、“普通の人”は美紀以外いなかった。

 …その美紀も…私を庇って………

 

 …だから、嬉しかった。

 ここに、この世界にいるのが私だけじゃないって事が分かって。

 凄く……嬉しいんだ……

 

「――もしかして……ここ…誰かいる…!?」

 

 私は走った。

 校庭に“かれら”がいるが関係ない。

 早く……そこにいる誰かに会いたい。

 “かれら”じゃない、誰かに。

 

「ここに……この学校に…誰かいる…!」

 

 私立巡ヶ丘学院高校。私の母校だ。

 全体的にボロボロになり、板を打ち付けられ今となっては変わり果てた姿となっている。

 ここも他と同じように誰かがいた痕跡だけで、すでに何もないもぬけの殻かと最初は思った。

 しかし……学校を様子を見て確信した。ここには誰かいる、と。

 

「階段が机で……」

 

 一階にはこれでもかと板が打ち付けられている。

 バリケードを作って“かれら”の侵入を防いでいたんだろう。

 

 二階に人影が見えるが、あれは“かれら”だろう。

 気にする事は何一つない。いつもの事だ。

 

 三階は――照明が部屋を照らしており、換気扇が回っている部屋がある。

 

「他…他には……」

 

 これを見た瞬間、体が勝手に動いた。

 誰がいるかも分からないのに。

 何をされるかも分からないのに。

 頭では理解している。

 しかしもう嫌だ。

 もう孤独(ひとり)にはなりたくない。

 

「エレベーター…こんな所に…」

 

 私は限界だった。

 そこにいるのは私を喰らおうとする“かれら”だけ。

 CDプレイヤーも壊れて使えない。

 

 人は思った以上に孤独に弱い。

 さながら二度と目覚める事のない悪夢を見ているようだ。

 

 そんな中、一人で町をさ迷うのは私の精神を限界まで削るには十分だった。

 …いや、自覚がないだけでもうすでに限界以上に削れているのかもしれない。

 

「三階……三階に…!」

 

 独り言も増えた。

 しかし独り言では孤独の寂しさを誤魔化す事は不可能だ。

 

「ハァ…ハァ…ハァ……」

 

 心臓が高鳴る。緊張する。

 エレベーターの動きがやけに遅く感じた。

 

「………着いた…」

 

 よく聞くピンポンと言う音と共にエレベーターの扉が開く。

 先の空間の廊下は凄く綺麗だ。

 

 深呼吸。

 震える足を動かしてエレベーターから降りる。

 

「だっ誰か……誰か…いませんか……」

 

 廊下を歩きながら震える声で呼び掛けてみるが、返事はない。

 各教室には何もない、恐らくバリケードの為に使える物は全て使ったのだろう。

 そのまま廊下を歩き、位置的にはあの換気扇が回っている部屋であろう扉の前まで来た。

 廊下はナニカが暴れた様に傷だらけで、部屋のプレートには上から「学園生活部」と書かれているボロボロになった紙が張られている。

 

「……すっ……すみません……」

 

 扉を叩く。

 

『――はい?』

 

 返事があった。女の人の声だ。

 

「あの…その……わっ私! ここの学校の生徒で…!

 ここに…もしかしたら誰かいるかもしれないって…!」

 

『ひっ人!?』

 

 扉が勢いよく開いた。

 中から出て来たのはピンク色の髪をした紫色のワンピースを着た人だった。

 

「その制服この学校の!? あ、怪我とかしてない!?」

 

「だ…大丈夫…………です………」

 

 瞬間、足の力が抜けて倒れかけた。優しそうな人だし、安心からだろうか。

 寸前で体を支えられたから倒れる事はなかったが目の前の人にはすごく心配された。

 大事な所なのに何をやってるんだか………

 

 そのまま体を支えられて部屋の中に入り、椅子に座った。

 目の前の人はコーヒーを入れてくれるらしい。

 手伝おうかと思ったが、「疲れてるだろうし休んでていい」と言われた。

 少しすると目の前の人は湯気が立つコップを二つ机の上に置き、椅子に座った。

 

「自己紹介…まだだったわね。

 私は佐倉慈、この学校の教師です。

 貴女は?」

 

「圭…祠堂圭って言います…」

 

「圭さんね、よろしく。

 ――久しぶりね…誰かと喋るのは。圭さんもそうでしょ?」

 

「は…はい…」

 

「ふふ…気持ちは分かるけど、そんなに緊張しなくていいのよ?

 コーヒーでも飲んで落ち着いて? これ凄く美味しいのよ」

 

 カップを手に取り口につけ、コーヒーを一気に口の中に流しこんだ。

 

「――っ!?」

 

 あまりの苦さにむせ返った。

 これが大人の味…?

 

 佐倉先生はクスクスと笑っている。

 

「ごめんなさい、砂糖とミルクを忘れてたわ」

 

 先生はキッチンに隣接している棚からスティックシュガーが入った瓶と小さいミルクが入った箱を取り出した。

 砂糖とミルクを一つずつ取り、コーヒーに入れる。

 

 そしてコーヒーを飲みながら、私は話した。

 今までの事、モールでの事、美紀の事。

 

 佐倉先生も今までの事を話してくれた。

 色々あって今は一人だけになってしまったそうだ。

 今は先生のお兄さんが残していった物で細々とたまたまこの学校に迷い混んで来た犬、太郎丸と暮らしているそう。

 

「……先生は……先生はこれからどうするんですか…?」

 

「これから?」

 

「はい。話を聞いた感じ、お兄さんは行方不明なんですよね?」

 

「……ええ、必死に説得したんですけど……出ていって…そのまま……」

 

「私と一緒に探しに行きませんか?

 ここは確かに水が使えるのがメリットですけど、他の物資の蓄えはもう少ないんです。

 何かあったらまたここに戻ればいいんですし、探しに行きましょうよ」

 

「…………確かに…そうね……

 でも……怖くないの?」

 

「怖い?」

 

「外には“かれら”もいるのに……」

 

「…確かに怖いです。

 でも動かないと何も始まりません。

 どれだけ嫌でも、どれだけ面倒くさくても。

 やらないと出したい結果は絶対出ないんです、まずは行動ですよ!

 

 それに私、じっとしているのは性に合わないんです」

 

「…………分かったわ。

 持っていける物も対してないし、準備をしたら車を出して行きましょうか。

 あれも……まだ動いてくれるはずだし、思い付く所に行ってみましょうか」

 

 たまたま思い付いた事だったが、トントン拍子に進んでいった。

 まあ何でもいい、独りで生きるよりは遥かにいい。

 それに理由も説明せずに出ていったらしい先生のお兄さんも凄く気になる。

 

 後は……

 

「……………あの…」

 

「はい?」

 

「今さら……なんですけど……」

 

「はい」

 

「シャワーとかって浴びれますか…?

 後代わりの服とかも…」

 

「使えるけど……それが?」

 

「浴びて来て…………いいですか?」

 

「いいけど…どうしたの?」

 

「今気付いたんですけど…私、思い返したらまともにお風呂入ってないんですよ……

 その…生理中もハンカチを適当に川で洗った物を使ってて……

 当然……おりものも………」

 

「あっ……………思う存分、浴びて来て下さい…」

 

「…自分で言うのも何ですけど、川の水直接飲んだりしてたのによく今まで病気にもならずに生きてこれたなって…」

 

「…………やっぱりここで暮らさない?」

 

「今さらですか!?」

 

「……半分ぐらいは冗談よ」

 

「もう半分は本気何ですか!?」

 

 そんなこんな、色々あったが私がシャワーを浴びた後に話は纏まり、明日の早朝に出発する事になった。

 その間に先生は使える物を纏めて、私は地下にあるというシェルターの探索をする事になった。

 シェルターと言うぐらいだ、もしかしたら何かあるかもしれない。

 どうも床が水漏れか何かで浸水していて、わざわざ入る理由もなかった為放置状態だったらしい。

 

 長靴を履いてシェルターを捜索する。

 幸い照明は機能しているので、手にはバール一本。

 何かあったら上に上がって入れ物でも持ってくればいいだけだ。

 

 しかし……この学校にこんな場所があったなんて………

 先生に見せてもらったあのマニュアルもそうだが、全部想定されていた………

 ……まあでも、今となっては国が機能しているのかも怪しい。

 もうあの日から半年は確実に過ぎてるのに、未だにこの町には“かれら”が跋扈しているのだから。

 もしかしたらこの国その物が世界から隔離されているのか……それとも国何て組織はもうこの世に存在しないのか。

 

「元凶のランダルコーポレーションもあるか怪しいもんね……」

 

 ランダルコーポレーション。

 世界各国に支社があるグローバルな製薬大企業で、求人広告では平等に幅広い層の人間を社員として受け入れており非常に評価は高い。

 たまに噂話でとんでもないブラック企業だと囁かれていたが………

 現状を見るに、限り無くそれは証明されたのではないだろうか。

 

 まあ分からないなら確かめればいい、困る人間もいないだろうし。

 どの道明日にはここを出る。

 車を使うし行動範囲も広い。

 この町にあるランダル社にも行けるんだ、誰か生きてるなら話を聞けばいい。

 

「…………ん?」

 

 足を止めだ。

 ここだけ扉が閉じている。

 他は開いていたのに…

 

「うわっ………」

 

 思わず声が出る。

 中に入った瞬間顔をしかめた。

 だが頭がぐちゃぐちゃの人の死体何て見れば誰でもそうなるだろう。

 換気扇が回っているおかげか、臭いはあまりしないが………うん………

 

 しかし何でこんな所で死んでいるのか。

 状態的に、誰かに殺された…?

 でも普通じゃこの死に方はあり得ない、何か爆発が起きたような……

 しかもまだこれ…新しい……

 

「…………これは…?」

 

 部屋にあった机の引き出しを開くと一枚の紙が入っていた。

 書かれている文字に目を通す。

 


 

 必要な事だけ手短に書く。

 

 俺の名前は鳳条典雅(ほうじょうてんが)

 そこで転がってる死体だ。

 念のため触らない方がいいだろうと警告しておく。

 

 この地下シェルターにはもう何もない。

 物資目当てなら他を当たってくれ。

 一応銃が残っているが全て弾切れだ。

 まあ、鈍器にはなるのでまだ使えない事はないが。

 

 地下には“かれら”になるのを()()()()薬が置いてあった。

 あくまでも遅らせる物だからか、これを書いてる時点でもだいぶ体がおかしくなってる。

 先生を巻き込む訳にもいかないんで、俺は最後に残ってた一つの手榴弾を喉元に使って死んだ。

 外に出る気力ももうないからここで死ぬ。

 

 このぐらいでいいか。

 

 後詳しい理由は説明出来ないが、これを読んでいる人がいたらどうかこれと俺は佐倉先生には見せずに伝えもしないでないで欲しい。

 出来れば俺の後処理をしてくれると助かる。

 

 もっとも、これを読んでいる人間がいるかどうか分からないが………

 

 あ、そこのシャベルは使えるようなら使ってくれて結構だ。

 何故か分からないが無駄に思えるぐらい頑丈なんだ、それ。

 


 

「鳳条…典雅…?」

 

 聞いた事がある。

 何でもかなりの美人だとか噂されていたし、クラスの女子が話しかけているのを見た事がある。

 しかし典雅の名を持つ美人だと持て囃された人間の最期がこれ…か。

 

「………これ、もらいます」

 

 シャベルを手に取る。

 傷ついてる訳でもない、まだ全然使えそうだ。

 

 遺言通り、()()()もしてあげたいが……私一人では無理そうだ。

 佐倉先生に手伝ってもらえば可能かもしれないが……言うなと書いてあるし、ここはこのまま放置がベストか。

 

「それは………」

 

 エレベーターで上階まで上がり先生に戦果報告。

 といってもこのシャベルしかないが。

 しかし先生はこれに思い当たる節があるそうで、何でもお兄さんが使っていた物何だとか。

 先生のお兄さんが置いていき、そのままだった物を鳳条さんが使ってていたのだろうか?

 

 時間も過ぎ気付けばもう夜。

 先生にすすめられて先に寝る事となった私は、寝袋の中一人で考える。

 

 遺言通り、鳳条さんの事は一切伝えなかったが…本当にこれでいいのだろうか?

 だが先生のトラウマ等を思い出させない為に意図的にやっているのかもしれないし……

 ……状況を見て言うかどうか判断するしかない…か………

 

 いつの間にか寝ていたようで、目を覚ませば朝。

 時計を見ればもうすぐ出発する時間だ。

 準備は前日に済ませたので後は出るだけだ。

 

 この時間は“かれら”が少ない。

 用意した物を二人がかりで先生の車に詰め込む。

 太郎丸もちゃんと乗せて出発した。

 

 車の中、他愛もない話で盛り上がる。

 人と話す事何て、互いに久しぶりだから。

 

 次第に話題は佐倉先生のお兄さんに変わって行った。

 

「先生のお兄さんって、どう言う人何ですか?」

 

「あの人は特徴的な名前と見た目だからすぐに分かると思うわ」

 

「特徴的?」

 

「ええ。女の子みたいな顔をしてるけど、ちゃんと体は男の人の物なの。声も低い。

 でも綺麗な黒髪のストレートロングで背も高くて……」

 

「へー」

 

「でも今兄さんは名字が“鳳条”に変わってるのよね…」

 

「……鳳条?」

 

「具体的な理由は話してくれなかったけど、名字を変えてるの。

 だから今は“鳳条典雅”、その名前で生きてるのよね」

 

「……………」

 

「どうかした?」

 

「い…いえ…、何でも」

 

 ……………ただの偶然…だよね?

 ……いや何を、そもそも歳がおかしい。偶然以外の何物でもないか。

 同じ名前の人間何て、この世にごまんといる。

 

 一瞬過った不安を捨て去り、思考を入れ換える。

 

「………そういえば何だけど、私は何処に向かえばいいのかしら?」

 

「え? 先生が決めてるんじゃないんですか?」

 

「……………」

 

「……………」

 

「………ランダル社…行きましょうか」

 

「……そうですね…」

 

 どうしてこう…私は肝心な所が抜けているのか。

 

 自分に情けなさを感じている私を横目に、車はランダル社に向かってつき進む。

 

「………しかし本当、先生のお兄さんは何処にいるんでしょうねー…」

 

「案外、灯台下暗しだったりだったりするのかもしれないわね…

 探し物って、自分に近すぎて見えなかったりするから……」

 

「……そう…ですね……」

 

 灯台下暗し…か。

 

 ……まさか…ね

 

 

 

 

 

 

 

 

 END

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 以下は別に読まなくてもいい後書きです。

 

 まず、このssを読んで下さり有り難うございました。

 完全に見切り発車でしたが、何とかエタらずに完結まで持って行けました。

 投稿期間ははうんち!(せいかいのおと)の一言で、ストーリーもガバガバどころかスカスカでしたね……

 

 ストーリーですが、これ実は元々全員生存の予定だったんです。

 

 典雅君がおかしい~(ry

 ↓

 実は女性恐怖症で原因は~(ry

 ↓

 ショッピングモールで典雅君の妹と出会って~理由を聞いて~(ry

 ↓

 トラウマ克服で~なんやかんやで皆とも仲良く~(ry

 

 で、する予定だったんですが……

 

執筆中のワシ「ファ!? 外出られへんやんけ!? (過去の自分)どうしてくれんのこれ?」

 

 と自分で作った設定に見事にハマって、もう面倒だし全員殺して原作とは逆の展開でいいや……となり、結果がこれです。

 後々に向こうから学校に来ればいいのでは?(名推理)と思い付いたんですが、時既にお寿司(激ウマギャグ)と………

 

 そして折角だしラスボスを入れようとして、りーさんが選ばれました。

 理由は忘れました(鳥頭)

 

 最終決戦に体育館を選んだ理由ですが、数ある作品なのに何故か体育館君の出番が一切ない…なくない?(反語)って事で適当に選びました。

 

 出来れば全員生存RTAもやりたいんですが……予定は未定です、はい。

 もしかしたら設定を練り直して書く……かもしれないので、その時はよろしくお願いいたします。

 

 では

 

 

 

 

 

 

 

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