雪精並びに冬将軍を討伐したカズマは、2~3日屋敷で寛いでいた。
と言うのも、『響鬼・紅』は体力を大幅に消耗する所謂『諸刃の剣』であることに加え、体力が少ない状態でギルドに報告へ向かい、また休む暇無くめぐみんの爆裂散歩に付き合ったため、屋敷に戻ったと同時に体力切れで倒れてしまったのだった。
めぐみんはカズマが倒れる前に降ろしてもらっていたため、カズマが倒れた直後にアスタたちに助けを求め、カズマはダクネスに自室まで運ばれたのだった。
カズマは体力を回復することに専念するようアスタたちに言われ、この日まで屋敷で休んでいたのだった。
そして体力も全回復し、クエストを受けようとギルドに訪れたのだが…。
「おい、もういっぺん言ってみろ」
「何度でも言ってやるよ、お前等"荷物持ち"なんてやってるんだってな?」
酔っぱらった冒険者に絡まれてしまった。
「アークウィザードにアークプリースト、クルセイダーに盗賊…。五人の内三人が上級職なのにそんな仕事しかできねぇのかよ」
「(コイツ…)」
アスタたちはまだ疲れているであろうカズマを気遣って負担にならないクエストを選ぼうとしてくれていたのだが、この冒険者はあろうことかカズマたちを馬鹿にしたのだった。
「カズマカズマ、そんな酔っぱらいの言うことなんか無視して行きましょう。"時間は有限"と言いますし」
「そうだよ!この人はカズマのことを妬んでいるだけだよ!」
めぐみんとクリスは怒りが沸騰しているカズマを宥めようとする。
「黙ってないで言い返してみろよ最弱職。ったく情けねぇなぁ、いい女を"三人"引き連れてハーレムとはな。強いヤツらにおんぶに抱っこで楽しみやがって、俺と変わってえぇぇっ!?」
「これ以上カズマを侮辱するなら、宣戦布告と見なしますよ?」
「それに、あからさまにあたしを省いたよね?あたしこう見えて女の子なんだけど?」
カズマより先に我慢の限界を迎えためぐみんとクリスは、冒険者の首に杖とダガーを突きつけた。
「わっ…、悪かったよ。俺も酔って悪ふざけが過ぎたよ」
冒険者は酔いが覚めたのか、それとも二人の気迫に圧されたのか、謝った。
「……ねえ、提案があるんだけど」
…
……
………
「まさか"パーティーメンバーの交代"を言うなんて」
そう、アスタが言った"提案"とは、『今日1日、お互いのパーティーメンバーを交代する』だった。そしてカズマといちゃもんを着けた冒険者がそれぞれのパーティーに1日だけだが加入したのだった。
「さっきは"ダスト"が迷惑を掛けて済まなかったな。知ってるとは思うが、一応自己紹介するぞ。俺は『クルセイダー』の"テイラー"、このパーティーではリーダーをしている。宜しくな」
「あたしは"リーン"、『ウィザード』よ。宜しく」
「『アーチャー』の"キース"だ」
テイラー、リーン、キースの三人はカズマに自己紹介をすると
「テイラーは知ってるけど、他の二人は初対面だな。俺はカズマ、『冒険者』でさっきのパーティーのリーダーをしている。宜しく」
カズマも自己紹介をするのだった。
「えっ、カズマがリーダーをしていたの!?ってかテイラーはなんでカズマのこと知ってたの?」
「以前"両手剣スキル"を教えてほしいと頼まれてな、それで知り合ったんだ」
そう、以前カズマに両手剣スキルを教えたのは他ならぬテイラーだった。
「その節は大変お世話になりました、おかげで有効活用させてもらってるよ。それと…キースだっけ?このクエスト終わったら何かスキルを教えてくれると有難いんだけど…」
「なら"狙撃スキル"はどうかな?このスキルがあれば弓矢が活かせるから」
「成る程…、そのスキルがあれば烈風を使う時に重宝しそうだな」
カズマはテイラーのパーティーで和気藹々と話しているのと同時刻、カズマのパーティーに1日だけ加入したダストは他のメンバーの荷物を背負って目的地まで移動していた。
…
……
………
「クエストのおさらいだが、今回のクエストは『ゴブリンの討伐』、配置は俺とカズマが前衛、キースとリーンは後方で支援を頼む。ゴブリンはこの道を少し下りた所にいるようだ」
「もしかしたら、道の脇に住めそうな洞窟があるのかもしれないな」
カズマとテイラーがクエストの内容や配置の確認をしていると
「っ!、向こうから何か来る」
カズマの敵感知スキルに反応があり、カズマはそれをテイラーたちに伝える。
「カズマ…、敵感知スキルを持っているのか?」
「ああ、他にも"潜伏スキル"に"バインド"と言った盗賊が使えるスキルを持ってる。反応は一つだからまずゴブリンじゃ無さそうだ、とりあえず潜伏スキルを使って茂みに隠れよう」
カズマは茂みに隠れてテイラーたちに触れた状態で潜伏スキルを発動させる。すると向こうから黒いサーベルタイガーのようなモンスターが現れた。そのモンスターは周囲の匂いを嗅ぎながらカズマたちが隠れている所を通り過ぎた。
「こここ…っ、怖かった~っ!」
「まさかこんな所で"初心者殺し"に出くわすとは…」
「アイツそんな物騒な名前なのかよ!?ってかアイツ何?」
カズマは"初心者殺し"に出くわしたことが無いので、テイラーたちに質問をする。
「カズマ、さっきのは"初心者殺し"って言って比較的弱いモンスターの周りをウロウロしては、モンスターを狩りに来た冒険者を狩る恐ろしいモンスターだ」
「ゴブリンが街の近くに住み着いた原因は、あの"初心者殺し"が追いやったんだろうな。戻って来る前にずらかろう」
カズマたちはそそくさとその場を離れるのだった。
…
……
………
カズマの敵感知スキルを宛にゴブリンがいる集落を発見する。が、その数は優に五十はいた。
「おいおい…、何だあの数…!」
「ゴブリンって普通十匹程度だろうに…!」
「どうする?このまま戻ってもあの"初心者殺し"に出くわすだろうし…」
テイラーたちがゴブリンの多さに驚いていると、その話し声が聞こえたのか、ゴブリンたちがテイラーたちに気づき、襲い掛かった。
「くそっ、気付かれた!キース、リーン!援護頼む!カズマ、行くぞ!」
テイラーは背負っていた両手剣を抜き、カズマはバッグから烈雷を取り出し、ゴブリンの迎撃に向かう。するとゴブリンの数匹がテイラーたちに矢を放った。
「甘い!」
だがカズマが矢面に立ち、烈雷をその場で風車のように振り回し、矢を悉く防いだ。
「サンキューカズマ!」
「後は任せてっ!"ウインドカーテン"!」
テイラーはカズマに礼を言い、迫り来る矢をリーンの魔法が吹き払った。
「流石は本職、やるねぇ。…でも、こういうことはできるかな?"クリエイト・ウォーター"!からの"フリーズ"!」
カズマは地面に水を撒き、更にその水を氷らせた。すると迫り来るゴブリンたちはその氷に足を取られてしまい、転んでしまった。
「よし!今の内に殲滅するぞ!」
カズマは片手に烈雷、もう片方の手に烈風を持ってゴブリンを倒していくのだった。
…
……
………
「今回のクエストはめちゃくちゃ楽だったな!」
「それもカズマの作戦のおかげだな!」
「まさか初級魔法があんな形で役に立つなんて思わなかったよ!」
テイラーたちは今回の戦闘のMVPであるカズマを褒め称えた。
「ははは…、っ!?前方から何か来る」
カズマはバッグから烈風を取り出し、警戒する。そして前方からゴブリンに出会う前に出くわした"初心者殺し"がその姿を見せた。
「来たぞっ!くそっ、街はもうすぐそこだってのに…!」
「……リーン、ちょっと俺のバッグ預かっといて」
カズマはリーンにバッグを預け、初心者殺しの前に立った。
「"クリエイト・アース"からの"ウインドブレス"!」
カズマは片手に乗った砂を初心者殺しに向かって風の魔法で飛ばした。飛ばした砂は狙ったように初心者殺しの目に入り、視力を一時的ではあるが奪うことに成功した。
「今の内に、『音撃道・管』!」
《管・カ・カーン!》
カズマは音角に音声入力をし、響鬼へと変身する。
「"オーク"…?」
「…に、してはやけに細くないか?」
テイラーたちはカズマが変身した響鬼に驚いていた。
「喰らえ!」
カズマは烈風のピストンバルブを操作し、空気弾を"初心者殺し"に向かって撃ち出す。すると吸い込まれるように全弾命中した。
「アイツ…、"狙撃スキル"を持っているのか?」
「いや、話を聞いていた限りでは"狙撃スキル"は持っていなかったはずだ」
キースとテイラーが話している中、カズマは再度ピストンバルブを操作し、今度は鬼石を三連射した。
鬼石を九発撃ち込んだ後、カズマは鳴風を烈風の銃口に装着させ、烈風に元々装着されているマウスピースを取り付け、烈風を音撃モードに変形させた。
「『音撃射・疾風一閃』!」
カズマは烈風を吹き鳴らすと、"初心者殺し"に埋め込まれた鬼石が共鳴し、"初心者殺し"は苦しそうに呻き出した。
そしてカズマが烈風を鳴らし終わると同時に"初心者殺し"は爆散するのだった。
…
……
………
「……ぷっ、あはははっ!何だよありゃ、何やったんだよ!」
「うひゃひゃ、腹いてぇ!」
「生きてるよっ!"初心者殺し"に出会ってあたし達生きてるよ!」
カズマが"初心者殺し"を討伐した後、テイラーたちは急に笑いだした。
「ねえカズマって凄く強いんじゃ無い?ちょっと冒険者カード見せてよ」
リーンの催促にカズマはリーンから受け取ったバッグからカードを取り出し、リーンに渡した。
「……あれ?知力は普通…って何これ!?体力や幸運が超高い!」
「それにここ見ろ!討伐欄に"ベルディア"や"冬将軍"ってあるぞ!」
リーンとキースはカズマのカードを見て驚愕した。
「"ベルディア"って確か魔王軍幹部のデュラハンで、"冬将軍"は雪精の親玉だったよな!?そりゃ強いわけだ。なあカズマ、もし良かったら俺たちをお前のパーティーに加えさせてもらえないか?」
テイラーはリーンとキースの話を聞いて、カズマにパーティーメンバーに入れさせてもらえないか聞いた。
「それに関しては仲間と相談しないとな。俺一人の独断で決めて、連携が取れないんじゃ意味無いし」
「だな。んじゃとっとと街に戻ろうぜ」
カズマたちは街に向かうため、足を進めるのだった。
…
……
………
「えぐっ…、ぐすっ…。ガズマあああ…」
「アスタ!?お前何で泣いてんだよ!?」
カズマたちがギルドに到着すると、意識を失ったダクネスをおんぶしたアスタがカズマに寄って来た。
「あっ!おい、聞いてくれよ!!」
するとめぐみんをおんぶしたダストがアスタの横に並んだ。
「この子がいきなり震えたと思ったら何も無い所で爆裂魔法をぶっぱなして、その轟音を聞いた"初心者殺し"が現れたと思ったらクルセイダーの姉ちゃんは嬉々として突っ込んで一撃でやられて気絶して、盗賊の嬢ちゃんが"バインド"を使って時間稼ぎをしてくれて命からがら逃げて、もう散々だったよ!」
「あぁ~、めぐみんの禁断症状が裏手に出たんだな。ダスト、めぐみんを預かるよ」
カズマはダストからめぐみんを受け取り、めぐみんの頭を自分の胸に押し当てた。
「ところで、テイラーが俺たちのパーティーに加入したいと言ってきたんだが、どうする?」
「私はカズマの意見に異論はありません」
「あたしもかな?後衛が増えるけど、ダクネスやあたしが守ればいいだけだし」
カズマはテイラーたちをパーティーに加えるかどうか質問をすると、めぐみんとクリスはカズマの意見に賛成することを伝えた。
「私もいいわよ」
「そんじゃ、賛成多数と言うことで、テイラー、リーン、キース。これからもよろしくな」
こうして晴れてテイラーたちはカズマのパーティーに加入するのだった。
「ちょっ、俺は!?」
『あっ…』
ダストが空気になっていたことを思い出したカズマたちは、ダストも含めてパーティー加入を祝福するのだった。