この素晴らしい世界に祝福の音色を   作:レイファルクス

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第14話

 

 

クリスにバッグのバージョンアップを施されたカズマは早速外へ…出ることは無く、めぐみんとクリスの二人と共に夢の中へと向かった…、その矢先。

 

 

『デストロイヤー警報!デストロイヤー警報!』

 

 

「な…っ、何だぁ!?」

 

 

街に響き渡る警報で引き戻された。

 

 

『機動要塞デストロイヤーがこの街へ接近中です!住人の方は避難、冒険者の皆様は装備を整えてギルドへ集合して下さい!』

 

 

「ギルドからのお呼びだし…か。しゃーない、行きますか!」

 

 

カズマとめぐみんとクリスは互いに頷き、着替えてギルドへと向かった。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「君は…!」

 

 

「お前は…、ミツルギ!」

 

 

カズマたちがギルドへ向かう途中、以前勝負した魔剣使いのミツルギキョウヤと彼の仲間のクレメアとフィオがカズマたちと並ぶように走っていた。

 

 

「君もギルドへ?」

 

 

「冒険者全員が呼び出されたんだ、行かなきゃならんだろ。それより、お前何でこの街に?」

 

 

「……僕は君に負けてから、自分を見つめ直すためにこの街でグラムを使わずに修行していたんだ。自分がどれだけグラムに頼っていたのか痛感したよ、同じような両手剣を使っても雲泥の差だったよ」

 

 

キョウヤは悔しそうに今まで何をやっていたのかを話した。

 

 

「それじゃ今は…」

 

 

「あっ、グラムはクレメアたちに預けていたけど、ここに来る前にグラムを返してもらったから、戦力としては期待してほしい」

 

 

「……なら期待するぜ?"魔剣の勇者"様?」

 

 

「……こっちこそ期待するよ、"仮面ライダー"」

 

 

カズマとキョウヤは互いに笑いながらギルドへ向かった。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「カズマ!こっちこっち!!」

 

 

ギルドに到着したカズマたちを見つけたアスタはカズマに向かって手を大きく振った。

 

 

「すまん、遅くなった!」

 

 

「別にいいわよ、私たちもついさっき着いたばかりだから。…ところで、何でこの人たちも一緒にいるわけ?」

 

 

アスタはジト目でキョウヤたちを見る。カズマはキョウヤから聞いたことを包み隠さず説明した。

 

 

「ふ~ん、まぁ別にいいんじゃ無い?今は猫の手を借りたい程だろうし」

 

 

「皆さん、お集まり頂き、ありがとうございます!只今より対機動要塞デストロイヤー討伐の緊急クエストを行います!このクエストにはレベルも職業も関係無く、全員参加でお願いします!」

 

 

そこにギルドの受付嬢であるルナが現れ、デストロイヤーの説明を始める。

 

 

「御存じかとは思いますが、今一度説明します。機動要塞デストロイヤーは元は対魔王軍用の兵器として魔導技術大国"ノイズ"で造られた超大型のゴーレムです」

 

 

「ノイズの巨額の国家予算を投じて造られたゴーレムは八本の巨大な脚を持つ蜘蛛のような形状をしており、古城ほどの巨大な体躯に外殻は魔法金属がふんだんに使われ、その巨体に見合わない速度で進撃し続けます」

 

 

「そのため、デストロイヤーの進撃を止めるのは難しく、進路上にあるものは大型のモンスターであろうと挽肉にされてしまいます。更に強力な魔力結界が張られているため、魔法攻撃もほとんど効果がありません」

 

 

「となると…、弓や投石などで攻撃するしかないのですが…、自律型の中型ゴーレムや小型バリスタも備えており、そちらも対処されてしまいます」

 

 

デストロイヤーの底知れぬ強さにカズマは固唾を飲んだ。

 

 

「ところで、ソレ造ったノイズって国はどうなったんだ?弱点くらい知ってんじゃ…」

 

 

「デストロイヤーの暴走で真っ先に滅ぼされました」

 

 

ダストの意見は簡単に論破された。

 

 

「あのさ、進路上に大きな落とし穴を掘るとか駄目なの?」

 

 

「やりましたけど、ジャンプして飛び越えてしまったとか」

 

 

リーンの意見も論破された。冒険者たちはあーでもないこーでもないと話している中、カズマは考えに耽っていた。

 

 

「……アスタ、クリス。二人の"女神の力"で結界を破壊することは出来るか?」

 

 

「頼ってくれるのは嬉しいけど、あたしは無理。職業の性なのか、そう言った魔法が使えないんだよね」

 

 

「…私は出来るかどうか、やってみないと分からない」

 

 

カズマはアスタとクリスに質問をすると、クリスは『出来ない』と、アスタは『分からない』と答えた。

 

 

「破れるんですか!?あのデストロイヤーの結界を!」

 

 

カズマたちの話を聞いていたのか、ルナがアスタに詰め寄った。

 

 

「やってみないことには分からないって言っただけよ。それに、もし結界が破れても、生半可な魔法攻撃は意味を成さないでしょうね。…一人を除いて」

 

 

「確かに。生半可な魔法攻撃は効かないとなると、頼れるのは相当な火力を持つ魔法…。めぐみん」

 

 

アスタとカズマはめぐみんを同時に見る。

 

 

「カズマが私を頼ってくれるのは嬉しい限りですが、申し訳ないです。私でも一撃で仕留めることは…」

 

 

めぐみんは落ち込みながら答えた。すると

 

 

「すいません!遅くなりましたっっ!ウィズ魔法具店の店主ですっ、一応冒険者の資格を持っているのでお手伝いを…」

 

 

ウィズが遅れてギルドに到着した。

 

 

「ウィズさん!丁度良かった!聞きたいことがあるんです、爆裂魔法は使えますか?」

 

 

「えっ?爆裂魔法ですか?使えますけど…?」

 

 

「そうですか…、使え…何ですって?」

 

 

カズマはウィズに爆裂魔法を使えるか質問し、ウィズは『使える』と答えた。カズマは使えないと思っていたのか、落胆しかけたが、ウィズの答えを聞いてもう一度質問をした。

 

 

「爆裂魔法ですよね?使えますよ」

 

 

「……嵌まった、勝利のピースが!!」

 

 

カズマは思わずウィズの手を握った。

 

 

「ウィズさん!あなたの力を貸して下さい!」

 

 

「えっ…?えぇっ!?」

 

 

ウィズは突然のことに何がなんだかさっぱりだった。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「いいかお前ら、これから作戦を伝える」

 

 

両頬に紅葉を作ったカズマは街の正門前に移動し、冒険者たちの前で作戦を伝える。

 

 

「まずアスタがデストロイヤーの結界を破壊、クリスはそのサポートを。めぐみんとウィズさんはデストロイヤーの左右に展開して両脚を破壊してくれ、恐らくデストロイヤーは両脚を破壊されたら地滑りして止まるはずだ」

 

 

「止まったらアーチャーはロープを着けた矢を撃ってくれ。そのロープを登って他の冒険者たちはゴーレムゆ倒しながら内部の占拠を頼む。質問がある者は手を上げてくれ」

 

 

カズマは冒険者たちの顔を見渡す。

 

 

「……カズマ、頬は大丈夫か?」

 

 

するとダクネスが手を上げ、自分の頬を指差しながら質問する。

 

 

「作戦以外の質問は控えてくれ。……他はいないようだな、それじゃ皆、配置に着いてくれ!」

 

 

カズマの号令で冒険者たちは持ち場に向かった。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「来たぞーっ!デストロイヤーが来たぞーっ!」

 

 

冒険者全員が配置に着いた十数分後、千里眼スキルを持つ見張り員がデストロイヤーの接近を知らせた。

 

 

「了解した!アスタ、頼むぞ!この作戦の鍵はお前にかかっているんだからな!?」

 

 

「ちょっと!変にプレッシャーかけないでよね!?」

 

 

アスタはアクアの姿となり、集中する。

 

 

「……いくわよ!『セイクリッド・スペルブレイク』!!」

 

 

アクアの魔法がデストロイヤーに炸裂する…が、結界は破壊できなかった。

 

 

「まだよ!ここで終われない!この街には…、助けなきゃいけない人たちがいるのよ!!」

 

 

アクアは更に力を込める。すると結界に罅が入り、それが大きくなると、結界が破壊された。

 

 

「お姉ちゃん!?」

 

 

「ハァ…、ハァ…、ハァ…。大丈夫、魔力を少し使い過ぎただけ…。クリス、悪いけど肩貸して?」

 

 

アクアはクリスに速度強化の支援魔法を掛け、クリスの肩に捕まりながらデストロイヤーから離れた。

 

 

「アクアとクリスは無事に離れたか…。めぐみん、ウィズさん!」

 

 

「任せて下さい!」

 

 

「は…っ、はい!」

 

 

カズマはアクアとクリスがデストロイヤーから離れたのを確認すると、めぐみんとウィズに合図を送った。

 

 

「「『エクスプロージョン』!!」」

 

 

めぐみんが右脚を、ウィズが左脚を爆裂魔法で破壊すると、支えを失ったデストロイヤーは地面を抉りながら滑り、街の正門十数メートル前で止まった。

 

 

「止まったぞ!アーチャー部隊前へ!」

 

 

カズマの号令でキース含むアーチャーがフック付きのロープを繋いだ矢を放ち、そのロープを使い、冒険者たちが続々とデストロイヤーに乗り込んだ。

 

 

「俺も行く!ダクネス、めぐみんの側にいてくれ!」

 

 

カズマはめぐみんをダクネスに預け、ロープを掴み、デストロイヤーを登る。そのカズマに続くようにアクアとクリス、ウィズが登っていた。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

カズマたちがデストロイヤーを登り切ると、既に冒険者たちがゴーレムと戦闘を開始していた。

 

 

「囲め囲めーっ!」

 

 

「足を狙えーっ!」

 

 

「天誅!天誅!天誅!」

 

 

カズマたちは冒険者たちの戦闘場面に唖然としていると

 

 

「っ!?カズマ君、危ない!ゴーレムがそっちに行った!」

 

 

キョウヤの声が届いたのか、カズマたちは目の前のゴーレムに気づいた。

 

 

「クリス、預かっといてくれ!『音撃道・管』!」

 

 

《管・カ・カーン!》

 

 

カズマはバッグから烈風を取り出し、バッグをクリスに預ける。そして音角を鳴らし、響鬼に変身した。

 

 

「相手はゴーレム…、機械系だ。部品の一つでも奪っちまえば、動かなくなるだろ!『窃盗』!!」

 

 

「カズマ待って!ゴーレムに『窃盗』は…」

 

 

アクアが止める暇無く、カズマは『窃盗』でゴーレムのパーツを奪い取ろうと試みる。すると『窃盗』が成功したのか、カズマの手にゴーレムの頭部があった。

 

 

カズマは素早く頭部を投げ棄てると、動かなくなったゴーレムを蹴った。

 

 

「よくそんな重い物持てたね…」

 

 

「コツとタイミングがあれば、持たずに奪い取ることが出来る。それに、鍛えてますから。シュッ」

 

 

カズマの側にキョウヤが近づきながらカズマの手際に感心していると、カズマは敬礼のような仕草をした。

 

 

「"大将"、扉が開いたぞっ!」

 

 

「よしっ、総員突撃!それと俺を"大将"って呼んだ奴後で覚えてろよ!?」

 

 

カズマは自分を大将と呼んだ奴を恨みながら内部への突入指示を出し、自身も内部へと入った。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「デストロイヤーの内部って結構広いんだな…。でも、相当な年月使われていない感じがする…」

 

 

カズマはデストロイヤーの内部を見ながら奥へと進む。

 

 

「いたぞ!」

 

 

すると、部屋の一角に動力炉のような機械の前に誰かが座っていた。

 

 

「すまない、少し話を…ってこれは!?」

 

 

キョウヤが話をしようと近づくと、座っていた誰かの正体が判明した。座っていたのは骸骨だった。

 

 

「……既に未練の欠片も無く成仏しているわね」

 

 

アクアが骸骨を調べると、既に成仏していることが判明した。

 

 

「"未練が無い"?どう見ても一人寂しく死んでいった感じだが…」

 

 

「そう言われても…あら?これは…、手記…かしら?」

 

 

アクアは骸骨の近くに日記帳があることに気づき、読み始めた。

 

 

「えーと…、『○月×日、国のお偉いさんが無茶言い出した。こんな予算で機動兵器を作れという。無茶だ、抗議しても聞く耳持たれず、泣いて謝ったり、拝み倒してみたがやはりダメだった。バカになったフリをしてパンツ一枚で走り回ってみたが、女研究者に早くそれも脱げよと言われた。この国はもうダメかもしれない』」

 

 

冒険者たちは骸骨を見た。

 

 

「『○月×日、設計図の期限が今日までだ。どうしよう、まだ白紙ですとか今更言えない。だってヤケクソになって報酬の前金全部飲んじゃったもん。白紙の設計図を前に悩んでいると、突然紙の上に俺の嫌いなクモが出た。悲鳴を上げながら手近にあった物で叩き潰した、…用紙の上に。このご時世、こんな上質な紙は大変高価なのに、弁償しろとか言われても金が無い。知るか、もうこのまま出しちまえ』」

 

 

「『○月×日、あの設計図が予想外に好評だ。それクモ叩いた汁ですけどそんな物よく触れますね、なんて絶対言えない。ていうかどんどん計画が進んでる、どうしよう、俺がやった事ってクモを一匹退治しただけ。でもこんな俺が所長ですひゃっほう!』」

 

 

骸骨に向けられている冒険者たちの視線が段々鋭くなっていった。

 

 

「『○月×日、俺何もしてないのにどんどん勝手に出来ていく。これ俺いらなかったじゃん、何なの?もういいや、勝手にしてくれ。なんか動力源をどうこう言われたけど知るか。だったら永遠に燃え続ける伝説の超レア鉱石"コロナタイト"でも持って来いと言ってやった』」

 

 

「『○月×日、本当に持って来ちゃったどうしよう。マジでどうしよう、持ってこれる訳無いと思って適当に言ったのに…。これで動かなかったら俺死刑じゃないの?動いてくださいお願いします!』」

 

 

「『○月×日、明日が機動実験とか言われたが、正直俺何もしてねぇ。やったのはクモ叩いただけ。この椅子にふんぞり返って居られるのも今日までと思うと腹が立ってきたもういい飲もう!今日は誰も残っていないし気兼ねなく最後の晩餐だ!』」

 

 

「『○月×日、目が覚めたら酷い揺れだった。何だろうこれ二日酔いかな?いや、そもそも昨日の記憶が無い。あるのは動力源のある中枢部分に行って、コロナタイトに向かって説教したところまでしか覚えていない。いや待てよ、その後お前に根性焼きしてやるとか言ってコロナタイトに煙草の火を…』」

 

 

冒険者たちの視線が怖いのか、日記を読んでいるアクアが震え出した。

 

 

「『○月×日、現状を把握、そして終わった。現在只今暴走中。どうしよう、これ間違いなく俺がやったと思われてる。今更泣いて謝ったって許してもらえないだろうな。やだな…機動兵器から引きずりだされて死刑だろうか、クソッタレめ!』」

 

 

「『○月×日、やべえ、こんな国滅んじゃえばいいのにとか思ってたら滅んだ。国滅んじゃったよ!国民とかお偉いさんとか人はみんな逃げたみたいだけど、でも俺国滅ぼしちゃった!ヤバイ何かスカっとした!満足だ俺。決めた、もうこの機動兵器から降りずにここで余生を暮らすとしよう。だって降りられないしな、止められないしな。これ作ったやつ絶対バカだろ。おっとこれを作った責任者、俺でした!』…お、終わり」

 

 

『なめんな!!』

 

 

アクアが日記を読み終えると、カズマとキョウヤ、クリスとウィズ以外の冒険者たちが怒りを爆発させた。

 

 

「ひーん!私が悪いみないに言わないでよ~っ!私はただこの手記を一言一句違わず読んだだけなのに~っ!カズマ、わたしわるくないよね?」

 

 

「ああ、アクアは悪くないぞ。悪いのはその骸骨とコイツを造った国だからな」

 

 

「かじゅま~っ!」

 

 

アクアはカズマに泣きながら抱きつき、カズマはそんなアクアを慰めるように頭を優しく撫でた。

 

 

「ぶ~っ」

 

 

「あはは…、クリス、今だけはアスタにカズマを貸してあげようよ」

 

 

二人の様子を見ていたクリスは頬を膨らませブー垂れており、クリスの側にいたリーンはクリスを宥めていた。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「さて…、骸骨の後ろにあるこの球体が手記に記載されていたコロナタイトな訳だが…、こいつを取り出せば暴走は止まる…はずだよな?」

 

 

「だと思うけど…、『窃盗』はやめといた方が良いわよ?手記にも書いてあったけど、"永遠に燃え続ける"ってあったから」

 

 

「それに関しては大丈夫だと思うが…、っ!ミツルギ、ちょっと…」

 

 

カズマは何か秘策を思い付いたのか、キョウヤを呼ぶと、耳打ちをした。

 

 

「……グラムを使えば出来ると思うけど…、よくそんなこと思い付くね」

 

 

「褒めても何も出ないぞ?悪いが早速やってくれ」

 

 

キョウヤは頷いた後、グラムを抜き、天井を丸く切り抜いた。

 

 

「これで準備は整った。ハアアァァァ…!」

 

 

カズマは『響鬼・紅』になると

 

 

「『窃盗』!…からの、どっっっせいっ!!」

 

 

コロナタイトを『窃盗』で動力炉から引き抜くと、開けた天井に向けて思い切り投げた。そして自身も天井から外へ出て、『狙撃』で鬼石をコロナタイトに撃ち込み、烈風を音撃モードに変形させた。

 

 

「『音撃射・疾風怒涛(しっぷうどとう)』!」

 

 

カズマはコロナタイトに向けて音撃を放つ。するとコロナタイトは遥か上空で爆発した。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「ただいま」

 

 

「カズマっ!!」

 

 

カズマたちが地上に降り立つと、めぐみんがふらふらしながらカズマに抱きついた。

 

 

「カズマ、良く無事に戻ってこれたな」

 

 

「まあ中であったことは追々話すから、今は生き延びたことを喜ぼうぜ!」

 

 

カズマは顔だけ変身を解いて街へ帰ろうとした所で

 

 

「ねぇ、何かヤバくない?」

 

 

クリスがデストロイヤーを指差しながら呟いた。カズマたちはデストロイヤーへ視線を向けると、デストロイヤーに罅は入り始めていた。

 

 

「まさか…、内部に溜まっていた熱が漏れ出そうとしているんじゃ…!このままじゃ亀裂から大爆発を起こしますよ!」

 

 

ウィズの予測を聞いたクリスたちは慌て出した。

 

 

「(どうする!?あれだけの質量を持つ物を跡形も無く消すには爆裂魔法しかない!でも、めぐみんはもう既に爆裂魔法を使用していて魔力が無い!ウィズさんなら『ドレインタッチ』で魔力を吸収すれば爆裂魔法を撃てるかもしれないが、それをやればウィズさんがリッチーであることがバレてしまう!どうすれば…)」

 

 

カズマは思考を巡らせると、ある結論に辿り着いた。

 

 

「クリス、お前魔法やスキルを一度も使ってはいなかったよな?!」

 

 

「えっ?う…うん、そうだけど?」

 

 

カズマの質問にクリスはたじたじになりながらも答えた。

 

 

「ならいける!クリス、めぐみん!今からお前たちの"胸を触る"から我慢してくれよ!」

 

 

「我慢って何ですかカズマ!?それに胸を触るって触るだけですか!?愛する男からの要望であれば触るだけじゃなくて揉んでも何も文句は言いませんよ!」

 

 

「そうだよ!それにそういうことをしたいなら今じゃなくて今晩とか…」

 

 

「何とち狂ったこと言ってんだお前ら!?そうじゃ無くて『ドレインタッチ』で俺をバイパス代わりにして、めぐみんにクリスの魔力を送るんだよ!!」

 

 

カズマの説明にめぐみんとクリスはやや残念そうな表情をした。

 

 

「何だそういうことですか…、がっかりです」

 

 

「あたしも…」

 

 

「お前らこういう非常時に発情するのはやめろください」

 

 

カズマは周りからの痛い視線に冷や汗が止まらなかった。

 

 

「とにかく、『ドレインタッチ』は皮膚が薄い部分で心臓に近い所からドレインするのが効率が良いって、この前ウィズさんから教わったからやるぞ!」

 

 

カズマはクリスとめぐみんの心臓に近い胸に手を当て、ドレインタッチを使う。

 

 

「おぉっ!来てます、来てます!クリスの魔力が流れてます!…んっ、あ…っ、そこ…っ。いい、いいです…。もっと…、もっと…!」

 

 

めぐみんの悶える声にカズマは思わず赤面する。

 

 

「……お待たせしましたっ!私の過去最大の爆裂魔法!行きますっ!『エクスプロージョン』!!」

 

 

めぐみんが放った爆裂魔法は、今にも爆発しそうなデストロイヤーに直撃し、跡形も無く消し飛んだ。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

『カンパ~イッ!!』

 

 

デストロイヤーの脅威が去った後、冒険者たちはギルドで勝利の宴をしていた。

 

 

「いや~っ、どうにかなって良かった良かった!」

 

 

着替え終わったカズマはジュースが入ったジョッキを片手に寛いでいた。

 

 

「こんな所にいたのか」

 

 

「ミツルギか…、クエストお疲れ様」

 

 

そこにジョッキを持ったキョウヤが現れ、カズマはキョウヤを労いながら自分のジョッキをキョウヤのジョッキに軽くぶつけた。

 

 

「君こそお疲れ様だよ。カズマ君の指揮があったからこそ、デストロイヤーを破壊できたものだから」

 

 

「それでいつの間にか俺が"大将"なんて呼ばれるからこっ恥ずかしかったんだぜ?しかもそれで俺を弄る奴らもいるもんだから、そいつらにディスクアニマルの"洗礼"を与えてやったがな」

 

 

「……君ほど敵に回すと恐ろしい人はいないだろうね」

 

 

キョウヤは苦笑いしながらジョッキを傾ける。

 

 

「…それで、何しにここに?まさかお前まで俺をイビるつもりか?」

 

 

「そんなことはしないさ、…実は君に相談したいことがあってね」

 

 

カズマはジョッキをテーブルに置いて話を聞く姿勢を取った。

 

 

「僕のパーティーは知っての通り、前衛職しかいなくて、ウィザードとかの後衛職がいないんだ。それでギルドでメンバーを募集しても来るのは女性ばかりで、フィオとクレメアが威嚇してしまう状態なんだ」

 

 

「二人は僕にとって初めての仲間なんだが、もう少し協調性を持って欲しいと思うんだ。そこで、もしカズマ君さえ良かったらなんだが…」

 

 

「話は分かった。つまり、"俺のパーティーに入りたい"ってことだろ?」

 

 

カズマの質問にキョウヤは頷いた。

 

 

「うーん…、今の俺のパーティーメンバーはまずアークウィザードのめぐみん、盗賊のクリス、アークプリーストのアスタにクルセイダーのダクネス、ダクネスと同じクルセイダーのテイラー、アーチャーのキース、ウィザードのリーン、戦士のダスト…。前衛が三人で、後衛が四人、で中堅が俺を含めて二人…」

 

 

「結構な人数だね…」

 

 

「んっ…まあな。……よし、ミツルギ。パーティー加入だが、是非ともお願いしたい」

 

 

カズマはキョウヤたちのパーティー加入を承諾した。

 

 

「自分で頼んでおいて何だけど、良いのかい?」

 

 

「ああ、ミツルギたちを加えれば、前衛が五人になるし、俺やクリスとかが遊撃として動きやすくなるからな」

 

 

「そっか。なら、宜しくお願いするよ"リーダー"」

 

 

キョウヤはカズマに向けて手を差し出す。カズマはキョウヤの手をがっかり掴み、固い握手をした。

 

 

その後、キョウヤはフィオとクレメアにカズマのパーティーに加入したことを伝え、三人は改めてカズマにパーティー加入をお願いし、カズマは同意し、パーティーメンバー全員にキョウヤたちが新たにパーティーへ加入したことを伝えた。

 

 

めぐみんたちはキョウヤたち三人を迎え入れ、総勢十二人となったカズマパーティーは新たなメンバー加入を祝う祝杯を上げたのだった。

 

 

 




『音撃射・疾風怒涛』


響鬼・紅が使用する音撃の一種。音撃モードにした烈風から強烈な音撃を放つ。


射程が無いに等しいので、鬼石を埋め込んだ"もの"の場所に放てば確実に音撃が襲う。
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