新たに『ソードマスター』のミツルギキョウヤと『戦士』のクレメアと『盗賊』のフィオの三人を加えたカズマ一行は、ギルドを抜け、カズマ一行が拠点にしている屋敷でキョウヤたちのパーティー加入を祝うパーティーを開始した。
カズマはめぐみんとクリスを連れてキッチンへ移動し、バッグから食材を取り出すと、料理を始めた。
「おまた~」
「これまたすごい量ね、運ぶの手伝うわ」
アスタの姿になっていたアクアはカズマたちを手伝うため、立ち上がった。
「お姉ちゃんは座ってて。今日のMVPの一人なんだから」
しかしクリスがやんわりと断ったのだった。
「MVPって…、私そんな大した活躍してな「してるよ」…カズマ 」
「アスタはデストロイヤーの結界を破壊したんだぞ?だからデストロイヤーを止めることが出来たし、粉砕することも出来たんだ。誇って良いぞ」
「そうですよ」
カズマに続いてキョウヤもアスタを褒めるのだった。
「…ありがとう」
アスタもクリスの意図を汲んでか、素直に椅子に座った。そして料理がテーブルに所狭しと並び、全員に飲み物が行き渡った。
「みんな、今日はお疲れ様!みんなの活躍のおかげで、デストロイヤーの脅威から街を守ることが出来た。そして、ミツルギたち三人が新たにパーティーに加入した。この2つの出来事に感謝して、乾杯しよう!」
カズマはグラスを持って立ち上がると、全員がグラスを持って立ち上がった。
「それでは、デストロイヤー完全破壊とミツルギたちのパーティー加入を祝して、乾杯!」
『カンパ~イ!!』
カズマの音頭で全員が飲み物を飲み干し、料理に手を着けた。
「このお肉…、まるで宝石みたいにキラキラしてる…」
「それな『
「このポップコーン大きい!」
「それは『
「このポテト美味しい!」
「『フライドポテトの泉』から汲んだフライドポテトだな、塩気が効いてて美味しいんだ」
アスタたちはテーブルに並んだ料理を次々に平らげていくと
「それじゃそろそろデザートと行きますか」
カズマはめぐみんとクリスを連れてキッチンへ向かい、皿に乗ったゼリーを運んで来た。
「デザートの『虹の実』ゼリーだ」
アスタたちはゼリーを一口食べる。
「んんっ、味が変わった!しかも四回も!」
「喉を通る時にも更に三回味が変わった…、美味しい」
虹の実ゼリーは好評だったようで、瞬く間にゼリーは完食された。
「カズマ君、僕たちのためにこんな料理を出してくれて、ありがとう。とても美味しかったよ」
「満足してくれて何よりだ、作った甲斐があるってもんだ」
カズマとキョウヤは互いに笑いあった。
…
……
………
それから翌日、朝食を終えたメンバーは未だにその場を動かずにいた。
「それでは、今日の予定を発表する。…と言っても、昨日の緊急クエストで皆疲れているだろうから、今日は自由に過ごしてくれ。鍛練するもよし、買い物するもよし」
全員が動かなかった理由は、カズマからの連絡事項を聞くためだった。
カズマは昨日の緊急クエストで全員に疲れが残っていることを危惧し、1日休みを設けたのだった。
「それじゃ僕たちは宿に行って部屋を引き払ったり、荷物を纏めないといけないから」
キョウヤとフィオとクレメアは宿に残していた荷物を持ってくるために、一度宿へと向かうことをカズマに伝えた。
「了解、ついでにお金を渡しておくから、日用品を買って来てもいいぞ。特に女性は色々必要だろうからな」
カズマは自分の財布から30万エリスをキョウヤたちに渡し、キョウヤたちは屋敷を出た。
…
……
………
キョウヤたちの引っ越しが済んだ数日後、フィオとクレメアの二人はメンバーの女性陣と仲良くなり、今日は女性陣だけで買い物に行くと言う中睦まじい行動をしていたため、カズマとキョウヤは二人が馴染んだことに胸を撫で下ろしていると
「すまない!此方にサトウカズマと言う冒険者はいるか!?」
屋敷の外から声が上がった。
「えっと…、サトウカズマは俺ですが…?」
カズマは庭から姿を現すと、甲冑を身に纏った兵士を連れた女性がいた。実はこの時カズマはキョウヤと一緒に墓を掃除していたのだ。
「貴様がサトウカズマか、貴様には国家転覆罪の容疑が掛けられている!自分と共に来てもらおうか!」
「…はい?国家転覆罪って何ですか?それと…あなたは一体どちら様で…?」
「カズマ君、彼女は"王国検察官"のセナさんで、"国家転覆罪"と言うのは、国家を揺るがす事件などを起こした人が問われる罪なんだ」
キョウヤはカズマに目の前の女性が誰で、罪状が何なのかを説明した。
「……つまり、俺はテロリストとして疑われているってこと?」
「若しくは魔王軍の手の者ではないかと疑われているのだ。とにかく、自分と一緒に来てもらおうか」
「……分かった、とりあえず着いて行くよ。キョウヤ、悪いが皆が戻って来た時の説明を頼む」
カズマはキョウヤに頼み事をし、兵士たちと共に警察署へ向かった。
…
……
………
「さあ、入れ。ここが貴様の裁判が行われるまでの部屋だ」
警察署に到着した途端、カズマは地下牢へ入れられた。
「詳しい話は明日聞く、それまでゆっくり過ごすがいい」
セナは兵士たちと共に牢屋から離れた。
「……やれやれ、とんでもないことになったな」
カズマは壁に寄りかかりながら愚痴を溢した。
…
……
………
「おい、サトウカズマはいるか!?」
カズマが閉じ込められてから数時間後、突如セナがカズマがいる牢屋へやって来た。
「はいはい、サトウカズマは逃げも隠れもせず、ここにいますよ。ところで、どうしてそんなに慌てているんですか?」
「どうしたもこうしたもあるか!貴様の仲間と名乗る者たちが署の前に集まっているのだ!自分たちが何を言っても『カズマを返せ』の一点張りで、中には魔法を撃とうとしている奴もいるのだ!貴様の仲間なら、何とかしたらどうだ!?」
「んな事言われても、俺がその場に行かなきゃどうしようも無いんじゃありませんか?」
カズマは理不尽なことを言われ、正論で返す。
「ぐっ…、仕方ない。今だけ釈放する、くれぐれも妙な真似はしないことだな」
セナは牢屋を開け、カズマを出すと、そのままカズマを連れて署の前まで移動した。
…
……
………
「カズマを返せ!」
『カズマを返せ!』
「だから何度も言ってるだろう!今はサトウカズマとは面会出来ないと!」
「ふざけるなっ!カズマがどんな冤罪を受けているのかこっちは知ってるのよっ!とにかくカズマを返せ!」
警察署の門前ではめぐみんとクリスを筆頭にパーティーメンバー全員が集まっていた。
「早くカズマを解放しなさい。さもないと、あなたたちの後ろにある建物に爆裂魔法を撃ち込みますよ?」
「止めなさい!」
署の正面玄関口から出て来たセナが止めに入るも、めぐみんは有言実行と言わんばかりに魔力を込め始めた。
「はいはい、めぐみんストップ」
すると、めぐみんは誰かに抱き締められた。
「この声…、この温もり…、この心臓の音…。カズマですか?」
「その通り、めぐみんが愛するカズマですよ」
めぐみんを抱き締めたのはカズマだった。カズマはセナが正面玄関口から出たと同時に『潜伏』スキルを発動させ、密かにめぐみんの側まで移動したのだった。
「カズマ…」
めぐみんはカズマに頭を押し付けると、カズマはめぐみんの頭を優しく撫でた。
「すまないカズマ君、皆を抑えることが出来なかった」
すると後ろからキョウヤが現れたが衣服が所々破れたり汚れてしまっている所を見ると、どうやらその身を挺して皆が暴走するのを抑えていたようだ。
「気にするなキョウヤ、その様子だと相当頑張ったようだな。アスタ、キョウヤにヒールを掛けてやってくれ」
アスタはカズマに言われた通り、キョウヤにヒールを掛け、キョウヤの体は回復した。
「セナさん、カズマ君は王国への反逆など企てたりはしません!ましてや魔王軍の手の者などあり得ません!」
「そうよそうよ!カズマは寧ろ魔王軍と戦っているのよ!カズマがどんな人なのかも知らずに!」
キョウヤとアスタを筆頭にパーティーメンバー全員が次々に訴える。
「静かにしないかっ!我々に楯突くなら、貴様らも国家転覆罪で逮捕するぞ!」
「やってもらいましょうか、私はカズマと一緒なら例え牢屋だろうが地獄だろうが何処でも行きますよ」
「あたしだってそうよ!」
セナが脅してもめぐみんとクリスはカズマに抱きつき、頑なに離れようとはしなかった。
「……はぁ、仕方ない。この暴動を静めるにはサトウカズマが戻らねばならないようだな。サトウカズマ、今日は屋敷へ帰っても良い、明朝改めて聴取するので逃げも隠れもしないように」
セナはそう言って兵士たちを連れて署内へと入っていった。
…
……
………
カズマが逮捕された翌日、宣言通りセナが屋敷に訪れ、カズマはリビングに通した。
「セナさん、遥々お疲れ様です。良ければ紅茶をどうぞ」
「すまない…、ほぅ?美味しいな。まるでローズティーみたいな香りと味だ」
セナは出された紅茶を一口啜ると、その旨さに驚いた。
「『紅茶ンバラ』と呼ばれる薔薇から抽出した紅茶です」
「聞いたこと無い薔薇の名前だな?」
「それは企業秘密と言う事で。…それで、聴取は何時から?」
カズマはセナが来訪した目的を訪ねると
「そうだな、今やろう」
セナは鞄からベルと紙と羽根ペンとインク瓶を取り出し、テーブルに置いた。
「これは"真偽の鐘"と言って、嘘を付くと鳴るようになっている。くれぐれも嘘は吐かないようにな」
「では…、サトウカズマ16歳、冒険者…、出身地と冒険者になる前は何をしていた?」
「出身地は"日本"と言う所で、冒険者になる前は学生と言うのをしていました」
カズマは正直に答えると、ベルは鳴らなかった。
「出身地、経歴に嘘は無し…。では冒険者になった動機は?」
「日本からこの"世界"に来る時に女神様から『魔王を倒して欲しい』と頼まれて、それで自分が持つ
ベルは鳴らなかった。
「動機も嘘は無し…、では次に「ちょっと待ってください」…何だ?」
「そういう回りくどいことは止めませんか?正直に質問して下さい、『貴様は魔王軍の手の者なのか?』と。もちろん答えは『いいえ』ですが」
ベルは鳴らなかった。
「…鳴らない。……どうやら自分が間違っていたようですね…。あなたに関しては良い噂しか聞かなかったので…、申し訳ありませんでした」
セナは立ち上がると頭を下げた。
「…頭を上げてください。それで国家転覆罪に関してなのですが…、どういった経緯で?」
「……この街の"領主"があなたの…、その……、"オークのような姿"を偶然にもデストロイヤー襲撃の時に見られたらしく…」
カズマはセナに質問をし、セナが答える。セナの答えにベルは反応しなかった。
「領主が…ですか。因みにどんな風に聞かれたのかお答え頂いても?」
「構いません。領主が言うには"あれは人では無い!モンスターだ!"と…」
セナの答えにカズマは頭を抱えた。確かに響鬼は端から見たらモンスターに見えなくもない。実際にキョウヤと戦った時にフィオとクレメアから『オークみたいな姿』と言われたのだ。
「それで…、つかぬことをお聞きするのだが…、何故そのような姿に?」
「話せば長くなるのですが…」
カズマは自身の身に起きたことを包み隠さずセナに話した。
…
……
………
「……と言う事なんです」
「何と言うか…、理解が追い付かないです」
セナは目眩がしたのか、眼鏡を外して目頭を押さえた。
「まあ無理に理解して頂かなくても結構ですよ?」
「申し訳ありません、今日の所はこれで…」
セナは疲れた様子で荷物を纏め、帰っていった。
…
……
………
「サトウ…カズマ、殿…」
カズマの取り調べが行われた翌日、セナが目の下に隈を作った状態で来訪した。
「セナさん、どうしたんですか!?」
この日カズマは庭の掃除をめぐみんとクリスの三人で分担して行っていたため、セナの異変にいち早く気づいたのだった。
「昨夜、仕事を終えて眠ったら声が聞こえたのです。『これ以上お兄ちゃんをいじめないで。もしまだいじめるなら、許さないから』って…。それから寝付けず…」
「あ~、クリス?」
「そう言えば、昨日彼女は見なかったよ」
カズマはクリスにアンナのことを聞くと、クリスからは意外が答えが返ってきた。
「アンナって地縛霊のはずですよね?なぜこの屋敷から離れてこの人の所へ?」
「多分だけど…、カズマはよくアンナのお墓を掃除してくれてるし、果実酒をお供えしたり冒険譚も話してくれているから、カズマがいなくなったらあたしたちもいなくなると思って警告したんじゃないかな?地縛霊が屋敷から離れられた理由は分からないけど」
めぐみんの疑問にクリスは仮説を立てた。
「…幽霊にも愛されているあなたが、魔王軍の手の者とは思えませんね。今回の罪状ですが、自分たちの方で取り下げるよう進言します」
セナはカズマに掛けられている罪を取り下げると言った。
「でも、それだとあの領主が黙っていないのでは?」
「確かにあの領主なら何が何でも、あなたを死刑にしたがるでしょう。ですが今後のあなたの活躍次第では、その訴えを退けることも出来ましょう」
カズマの疑問にセナは肯定しながらも打開策を示した。
その後、カズマに掛けられた国家転覆罪は取り下げられたことをセナ自身がカズマに伝え、カズマは平穏な日々を手に入れるのだった。
『紅茶ンバラ』
茎が異様に固い薔薇で、その茎を使ったチャンバラ大会が開かれるほど。
葉と花びらは乾燥させると、とても美味しいローズティーになる。