「おお…、これが異世界か!」
不運にもトラックに轢かれたカズマは女神アクアとエリスの二人から『仮面ライダー響鬼』の特典を受け取り、ここ『始まりの街・アクセル』に降り立った。
「……でも、ここからどうすればいいんだ?」
本来は女神から何処にどう行けば良いかを言われるのだが、カズマはその説明を受けてはいなかった。
「あれ?君…見ない顔だね、服も見たことが無いデザインだし…」
途方に暮れる寸前だったカズマに一人の少女が声を掛けた。
「あっ…、あぁ。俺は田舎からこの街に来たばっかりだから…」
「ふぅん…そっか。じゃああたしが案内してあげる!っと…、そう言えば自己紹介がまだだったね。あたしは"クリス"、見ての通り"盗賊"だよ」
「わざわざありがとう。俺はサトウカズマ、カズマって呼んでくれ」
カズマとクリスは互いに自己紹介を済ませる。
「わかった!じゃあカズマ君、まずは"ギルド"に行こう!」
クリスはカズマの手を取って引っ張る形で案内を始めた。
「(この子…、"あたし"とか言ってたけど、もしかして女の子か?)」
…
……
………
「はい到着」
クリスに手を引かれたカズマは、冒険者ギルドに到着していた。
「いらっしゃいませ~」
早速中に入ったカズマが見た光景は、昼にも関わらず、ガヤガヤと酒を飲みながら賑わっている冒険者たちだった。
「カズマ君、こっちこっち!」
クリスに呼ばれたカズマは急ぎ足でクリスの元へと向かった。
「この人はギルドの受付嬢の"ルナ"さん。ルナさん、彼はカズマ君って言って、田舎からこの街に来たみたいなんだ」
「そうでしたか。ようこそ、始まりの街・アクセルへ!」
「はじめまして、サトウカズマと言います。それでクリス、俺を呼んだ理由は?」
「うん、ここで冒険者の登録をしてくれるから呼んだんだ」
カズマはクリスに自分を呼んだ理由を聞き、クリスはルナさんを見ながら説明する。するとルナさんは一枚のカードをカズマの目の前に置いた。
「本来でしたら登録料として千エリス支払っていただくのですが、そちらは既にクリスさんが支払ってくださいましたので結構です。次にこちらのカードに触れていただければ、あなたのレベルやステータスが表示され、適した職業を選ぶことができます」
ルナさんの説明を聞いたカズマは早速カードに触れる。するとカードが光り、カズマのステータスが表示された。
「はあああっ!?筋力と生命力、幸運がずば抜けて高いですよ!?他のステータスは平均よりやや上なのに…。これなら"剣士"や"クルセイダー"がお勧めですよ!」
カズマのステータスを見たルナさんは興奮気味に喋る。
「あっ…、えっと…。すいません、"冒険者"でお願いします…」
「……えっ?あの、冒険者は基本職で"最弱の職業"なんて言われていますが…」
「冒険者でお願いします」
どうやらカズマは冒険者として登録したいようだ。
「……わかりました。ではサトウカズマさんは冒険者という事で登録します」
ルナさんはカズマからカードを受け取り、登録をする。そして登録が済んだカードをカズマに返した。
「登録が済みましたので、カードをお返しします」
「ありがとうございました」
「ねぇねぇ、なんで冒険者にしたの?ルナさんが勧めてた剣士やクルセイダーでも良かったのに…」
クリスはカズマが冒険者に拘る理由を聞いた。
「確かに剣士やクルセイダーでも良かったけど、それだと使える武器に制限が掛かる恐れがあるんだ。だから武器の制限が無いであろう冒険者にしたって訳さ」
「ふ~ん…」
カズマの説明にクリスは疑問を持った。それもそのはず、今のカズマは武器を"一切持っていない"のだ。
「ま、いいや。それよりも、これで晴れて冒険者の仲間入りだね!」
「ああ!それと登録料払ってくれてありがとうな」
「いいよいいよ、これも何かの縁だから」
カズマとクリスはお互いに笑った。
…
……
………
「さて…と、クリス、初心者の俺にお勧めのクエストはあるか?」
カズマはクリスにお勧めのクエストを聞いた。
「そうだねぇ…、これなんてどうかな?」
クリスが指差した紙には『ジャイアントトードの討伐』と書かれていた。
「この辺りに生息する蛙で、比較的強くはないんだ」
「成る程…、こいつの特徴は?」
「体長は三メートルくらいかな?それと体が柔らかいから打撃が効かないんだよね」
カズマはクリスからジャイアントトードについて質問をし、クリスは特徴を述べる。
「打撃が効かないとなると、烈火は相性的に却下だな。それなら烈風か列雷が妥当かな?」
カズマはクリスから教えられた特徴から、戦略を練る。
「あらクリス?」
「お姉ちゃん!」
すると後ろからクリスを呼ぶ声がしたので振り返ると、そこには水色の髪の女性がおり、クリスは彼女のことを『お姉ちゃん』と呼んだ。
「クリスのお姉さんか?」
「あっ、紹介するね。あたしのお姉ちゃんの…」
「"アスタ"よ、よろしく。職業は"アークプリースト"よ」
クリスかれ自己紹介を引き継いだ女性"アスタ"はカズマに手を差し出した。
「カズマだ、職業は冒険者。よろしく」
カズマは差し出された手を握り、握手をする。
「ところでクリス、アンタこんな所でなにを?」
「彼にお勧めのクエストを紹介してたんだ。カズマ君は冒険者に成り立てだから」
アスタはカズマを見て、クリスが言っていたことに嘘が無いことを悟った。
「ねえ、もしよかったら私も一緒にクエストに参加してもいい?」
「えっ?なんでまた…」
「可愛い妹が毒牙に襲われないか心配だから」
アスタはクリスを抱きながらカズマをひと睨みする。
「あはは…、お姉ちゃんは心配性だなぁ。カズマ君はそんなことしないよ、ねっ?」
「ああ」
クリスの質問にカズマは力強く頷いた。
…
……
………
それからカズマは受付でジャイアントトードの討伐のクエストを受注し、カズマ、クリス、アスタの三人はジャイアントトードが出没する平原に来ていた。
「あれがジャイアントトードか…、確かにデカいな」
カズマは遠目でジャイアントトードを見ていたが、そのデカさに若干引いていた。
「んじゃまずはサクッと倒しますか!」
カズマは四次元バッグから列雷を取り出した。
「あ…、アンタ!それ今どこから出したの!?」
アスタはカズマが出した列雷に驚いていた。
「俺のこのバッグは特別製でね、大きさ関係無しに出し入れできるんだ。っと悪いクリス、これ預かっててくれ!」
カズマの説明にアスタは口が開いたままになり、クリスはカズマが投げてよこしたバッグを受け取った。
「さてそれじゃ…、『音撃道・弦』!」
《弦・ゲン・ゲーン!》
カズマは音角に音声入力をすると、音角から奇妙は音がした。
「なに?今の音」
「……音は気にしないでくれ」
カズマは音角の角を展開し、鳴らす。すると音角の角から波紋が拡がり、カズマは音角を自分の額に近づけた。
そしてカズマの額に鬼の紋様が浮かび、カズマの体は紫の炎に包まれた。
「ちょ、カズマ君!?」
「アンタ、なにやってんの!?」
「ハアアアァァァ…、ハァッ!」
二人が炎に包まれたカズマに驚くのを尻目に、カズマは右腕を
左から右に振り抜くと、カズマの姿が変貌していた。
筋肉が盛り上がった身体に紫の皮膚。顔は目と鼻と口は無く、額からは二本の角。たすき掛けに似た銀の装飾に腰に巻いたベルトには雷轟が装着されていた。
今異世界に『魔を滅する鬼』仮面ライダー響鬼が誕生した。
「「へ…、変身した!?」」
「へへっ…、そんじゃ行くぜ!」
カズマは列雷を担ぎ、ジャイアントトードに向かって走り出した。
「オリャ!」
ズバッ!ドシャ…。
カズマが列雷を一振り、横凪ぎに振るうと、ジャイアントトードは胴体を真っ二つに切り裂かれ、絶命した。
「よっしゃ次!」
ズバッ!ズバッ!ズバッ!
ドシャ…、ドシャ…、ドシャ…。
カズマは縦横無尽に列雷を振り、ジャイアントトードを次々に屠る。
「これで…、最後!」
カズマはジャイアントトードの腹に列雷を突き刺し、雷轟を列雷にセットすると、列雷に格納されていた刃が展開した。
「音撃斬・雷電激震!」
カズマは音撃モードになった列雷を何度も鳴らす。激しいギター音と共にジャイアントトードも苦しみ出す。
そして最後に一回列雷を鳴らすと、ジャイアントトードは爆散した。
「「す…、凄い…」」
唖然としている二人を横目にカズマは列雷を一回転させ、再び肩に担ぐと、変身を解いた。
「どうだった?」
カズマは自分の戦い形を質問するが、クリスは顔を真っ赤にして手で隠した。
「アンタ…、何で"服を着ていない"の?」
「えっ?…あっ」
アスタに指摘され、カズマは気づいた。今まで戦闘によって張っていた緊張の糸が戦闘終了と共に緩んだことで、"全身の変身"を解いてしまったのだ。
「あの…、これは…」
「いいから早く服を着なさ~い!/////」
アスタに投げられたバッグを顔面で受け取ったカズマはいそいそと着替えるのだった。
…
……
………
「本当にごめんなさい…」
「あはは…、もういいよ。"アレ"を聞いたらしょうがないって思うもん。それに、カズマ君だって不本意だったんでしょ?」
ギルドにクエスト成功の報告を終えたカズマ一行は街の大通りを歩いていた。その際にカズマはなぜあんな格好をしていたのかを説明し、クリスに何度も謝っていた。
カズマからの説明を聞いたクリスは苦笑いしながら頬を掻いて今もなお頭を下げるカズマを許したのだった。
「それはそうと、カズマはジャイアントトードを討伐したおかげでレベルもアップして"スキルポイント"も手に入れたから、何かスキルを覚えた方がいいかも」
「スキル?」
「スキルは言うなれば職業の能力だね。盗賊なら奪う系、プリーストなら癒し系みたいに」
クリスはカズマにスキルの説明をし、カズマはクリスの丁寧な説明で理解が早かった。
「そうだ!よかったら僕のスキル"
「…確かに。相手の攻撃で武器を落とすことはあるだろうし、取りに行く暇が無かった時には重宝するな。クリス、教えてもらえるか?」
カズマはクリスに窃盗のスキルを教えてほしいと頼むと、クリスはニコニコ顔で了承した。
「まずスキルは覚えたいスキルを持っている人に使い方を教わると、カードの習得可能欄に表示されるの。それでポイントを振ればスキルを習得できるわ」
カズマ一行は大通りから路地裏に移動し、アスタからスキル習得の方法を教わる。そしてある程度距離を取り、クリスは窃盗を発動させた。
「あちゃー、石ころだったよ」
クリスの手のひらには石ころが1つ握られていた。
「まあしょうがないわね、"窃盗"は幸運度で成功率が左右されるから」
「だね。それじゃカズマ君、カードに"窃盗"のスキルが追加されていると思うから、早速習得して練習しよ!目標はあたしが持ってるナイフだよ」
カズマはカードの習得可能欄にある窃盗のスキルにポイントを振り、"窃盗"を習得。そしてクリスに手のひらを向けて"窃盗"を発動させた。
「…んっ?」
「あっ…」
「ふぇ…?」
カズマが"窃盗"したもの。それは"女性用のパンツ"だった。クリスはスカートの上から股を探り、カズマが"窃盗"したパンツが自分の物であることに気づいた。
カズマはクリスにパンツを返すと
「どうかこの卑猥なクソ野郎を殺してください」
その場で土下座したのだった。