バニルとの商談が成立してから数日後…。
「カズマカズマ、モンスターの討伐に行きませんか?」
めぐみんがカズマをクエストに誘った。
「あ~…、行くのは構わないが…。少し寄り道をしてからで良いか?」
カズマはこの日、用事があるのでめぐみんに了承を得ようとした。めぐみんは少々疑問に思いながらも承諾し、カズマとめぐみんは屋敷を出た。
…
……
………
「カズマ、寄り道とは言いましたが、何処へ?」
「武器屋だよ。以前からお願いしていた武器が完成したらしいから、それを見に…な」
めぐみんはカズマに寄り道の理由を聞き、カズマは頬を掻きながら答えた。
「ここだよ。おっちゃん!頼んでた物は出来ましたか?」
「んっ?おおカズ坊か!一応言われた通りの形状にはしてみたんだが…」
カズマは武器屋に入り、店長に声を掛ける。店長もカズマを見て挨拶し、頼まれた物をカズマに差し出した。
「……うん、それっぽくできてる」
「カズ坊が言ってた"焼き入れ"とか何とかは調べてもサッパリだったが、それなりに楽しかったぜ!それと、ソイツはちょいと特殊な鉄を使っていてな。何でも『一年中太陽の光が降り注ぐ山』から採掘された鉱石と砂鉄を使っているんだ」
カズマが店長から受け取ったのは『小太刀』だった。カズマは小太刀を鞘から引き抜き、形状を確認する。
「カズマ、カズマにはもう既に幾つかの武器を持っているではありませんか。更に武器を増やしてどうするのですか?」
「……これは俺が持つんじゃ無いんだ」
めぐみんはカズマに質問をする。そしてカズマは小太刀は自分が使う物では無いと答えた。
「では誰に?」
「…めぐみん、お前だよ」
「……えっ?」
めぐみんは誰に小太刀を渡すのか質問をすると、カズマから帰って来た答えに呆然とした。
「いくら前衛職が複数いるとは言え、全てを護りきれるとは限らない。キースは身軽だし、リーンは魔法で牽制できる。ゆんゆんも同じだ。だけどめぐみんは違う、使える魔法は最強の爆裂魔法だけど、自衛の手段が無い。だから万が一の為にめぐみんの自衛手段用で作ってもらったんだ」
カズマの説明にめぐみんは目に涙を浮かべた。
「カズマ…、私のために……」
「固定用のベルトを作成したから、今から取り付けるからな」
カズマはバッグからベルトを取り出し、めぐみんの腰に巻き付け、そこに小太刀を差した。
「うん、似合ってるよ」
カズマが製作したベルトは、めぐみんに合わせた『紅色のベルト』だった為、めぐみんの服とも良く似合っていた。
「カズマ…、ありがとうございます!」
「いいって、それじゃ早速ソイツの切れ味の確認も兼ねて、クエストを受けに行こうか!」
カズマとめぐみんは意気揚々とギルドに向かった。その間、めぐみんはカズマにべったりだったのは言うまでもない。
…
……
………
めぐみんがカズマから小太刀『銘刀・悪鬼滅殺』を受け取った翌日、めぐみんはカズマの前に一匹の黒猫を抱えてやって来た。
「…つまり、その猫を屋敷で飼いたい…と?」
カズマの質問にめぐみんは頷いた。
「おとなしい子なので、迷惑は掛けないと思いますが…、ダメでしょうか?」
「別にいいんじゃないか?動物アレルギーを持ってる人はメンバーの中にはいないだろうし。…でも、ソイツ何処で拾ったんだ?」
カズマはあっさりと承諾し、何処で見つけたのかを質問する。
「カズマに出会った頃からいましたけど、すぐにどこかへ隠れてしまうので、気付かなかったと思います」
「なるほどな…。……へえ、案外人懐っこいじゃないか」
カズマは黒猫に手を差し向けると、黒猫はカズマの手で遊び始めた。
「あら?何かしら」
アスタがカズマたちの側に寄ると、黒猫はアスタの顔を見ると、めぐみんの手から逃げ出し、アスタに飛び移った。
「あら、結構人懐っこいわね」
アスタが黒猫を撫でると、黒猫は気持ち良さそうにあくびを持ってるした。
「そういやめぐみん、あの黒猫の名前は?」
「"ちょむすけ"です」
紅魔族特有のセンスの無さにカズマたちは呆然とした。
「あっ、そうそう。さっき噂で聞いたんだけど…」
…
……
………
「おぉ~っ、カッコいいです…。馬のような体躯に青白い肌、白い
「なあアスタ…」
「うん…、私も思った」
「「何でモ○スターハン○ーのキリンがここにいる
カズマたちはアスタが聞いた噂を確かめる為にギルドに向かうと、建物の前にキリンが入った檻が鎮座していた。
「とても珍しいモンスターがいる…と何処かで聞いた別の街の領主が熟練の冒険者を何十人も雇って捕獲したようです」
カズマの隣にいるルナが説明をしていると、めぐみんは檻にしがみつく勢いでキリンを見ていた。
…
……
………
それから数日後、めぐみんはちょむすけに可愛らしい服とリボンを着けていた。
「めぐみん、ちょむすけをおめかしさせて何をする気だ?」
「お見合いです、ちょむすけとあの子をお見合いさせて、ちょむすけにカッコいい子を産んでほしいのです!」
ちょむすけのおめかしを終えたであろうめぐみんは、ちょむすけを連れてキリンがいる所へと向かった。
「あれ?」
めぐみんとカズマがキリンがいる檻に到着すると、キリンは寝そべったまま、動かなかった。
「どうしたのでしょうか、元気がありませんね…」
「恐らくだけど、長い間この檻に閉じ込められていたせいで、弱っているんじゃ…」
カズマとめぐみんがキリンを心配していると、ちょむすけがめぐみんの手から逃げ出し、檻の中へと入っていった。
キリンは頭だけ持ち上げ、ちょむすけを一瞥する。そしてキリンは頭を降ろした。
「…お見合いは失敗のようですね」
「貴様らどかんかっ!!」
カズマたちの後ろから怒声が聞こえたと思いきや、無理やり檻から離された。
「こちらです、アクドー様」
「うむ。…ほう、コイツが噂のモンスターか…って何だ!死んでいるのではないか!?珍しいモンスターだと言うからわざわざ買いつけに来てやったのに!責任者は誰だ!?」
アクドーと呼ばれた豚貴族は動かないキリンを一瞥すると、死んでいると勘違いをし、責任者を探しだそうとした。
「…死んではいませんよ、耳が動いているでしょう?」
「平民は黙っておれっ!…まあいい、とりあえず持って帰るぞ。このまま檻ごと運び出せ」
アクドーは馬車に繋いだ荷台に檻ごと乗せるよう指示を出す。そして馬車はアクセルの街の正門を抜けた。その様子をカズマとめぐみんは黙って見ていた。
「うーむ…、ピクリとも動かんな…。これは俺の街まで保たないかもしれん…。仕方ない、ロープを括り付けて外に出せ。檻はいらん。それだけ弱っていれば問題なかろう、死んだら剥製にでもすればよい」
アクドーの指示で部下たちがキリンの首にロープを括り付け、檻から引っ張り出そうとする。するとキリンは即座に起き上がり、アクドーを踏みつけた。
「ヒッ…、ヒイイイ!よっ…弱ってなどいないじゃないか!たっ、助けてくれ!!おっ、おい!そこの娘っ、お前紅魔族だろっ!?紅魔族なら上級魔法を使えるはずだ!たっ頼む!コイツを殺してくれ!」
「お断りします。散々私たちを馬鹿にしてきた報いです」
アクドーはめぐみんに助けを求めるが、めぐみんはそっぽを向きながら断った。
「まずいな…、"怒り状態"になっていやがる。自分を殺そうとしていたのを理解したのか…」
キリンは自分を殺そうとしたのを理解したのか、全身に紫電が走り、口から出ている息が白くなっていた。
「おいそこの平民っ!冒険者ならぼんやりと見ていないで、コイツを殺して俺を助けろっ!!金ならいくらでも払う!だから…」
「カズマ、あんな男の言うことなんか聞かなくていいですよ」
「いや、そういう訳にも行かないだろ…。仕方ないな…、おいオッサン!何が起きても一切関与するなよ!?」
カズマはアクドーに向かって声を上げた。カズマはアクドーが首を何度も縦に降ったのを確認すると
「ちょっ、カズマ!?何をしてるんですか!?」
着ていた服を脱ぎ、上半身裸になった。
「キリン、こっちを向いてくれ」
カズマの声に反応したのか、キリンはカズマの方へ視線を向ける。
「俺はお前の敵じゃ無い。だから大人しくなってくれないか?」
カズマは両手を横に広げ、無防備の状態でキリンに一歩ずつ近づく。めぐみんはいつでも魔法を撃てるよう魔力を溜め、キリンはそんなカズマの様子をジッと見つめ、アクドーから足を離していた。
そしてカズマがキリンに触れる距離まで近づくと
「もう大丈夫だ、お前を殺そうとする奴は俺が追い払ってやる。だから、落ち着いてくれないか?」
カズマはキリンの首を優しく撫でた。キリンは身動き一つしなかったが、カズマの撫で心地が良かったのか、目を細め、カズマにされるがままとなった。
「よ…、良くやった平民よっ!さあ何をしているっ、早くコイツを殺せっ!!」
アクドーは安心したのか、部下にキリンを殺すよう命令する。だが…
「おい、コイツを殺そうとするなら…、容赦しないからな?」
カズマは怒りを含めた視線をアクドーたちに向ける。それと同時にキリンの角からは紫電が走り、めぐみんからは魔力が洩れ出していた。
「ヒッ…、ヒイイイッ!」
「ア…、アクドー様っ!お待ち下さい!」
カズマたちの威圧感に押されたのか、アクドーは腰を抜かした状態で逃げ出し、その後ろを部下たちが追いかけたのだった。
…
……
………
「…それで、そのモンスターの世話を任されたわけね」
その後、騒ぎを聞きつけたルナたちにカズマは事の顛末を説明、ルナたちはキリンがカズマに懐いている様子を見て、キリンの世話をカズマに頼んだのだった。
そしてカズマはキリンを屋敷に連れて行き、キリン専用の小屋を作っている所にアスタたちがやって来て、めぐみんがあらましを説明したのだった。
「あの時のカズマは本当にカッコ良かったです、あの逞しい筋肉…」
「いいなぁ…、あたしも見たかった…」
めぐみんはその時を思い出したのか、顔を紅くし、クリスはそんなめぐみんを羨ましがった。
「これでよし…っと!それじゃ"ジラフ"、ちょっと寝そべってくれるか?」
「ジラフ?」
「あのモンスターの名前だそうです。私が名前を付けようと言ったのですが、既にカズマが決めていたので…」
ジラフと呼ばれたキリンはカズマが建てた小屋に入り、寝そべった。
「どうだ?居心地は」
カズマが質問すると、キリンは満足そうに嘶いた。
「大丈夫そうだな。ジラフ、これからもよろしくな」
カズマがキリンの首を撫でると、キリンは嬉しそうに首をカズマに擦り付けたのだった。