この素晴らしい世界に祝福の音色を   作:レイファルクス

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第24話

 

 

「そう言えば、めぐみんはあのぶっころりーとか言う人と知り合いなのか?」

 

 

ぶっころりーたちのテレポートによって無事紅魔の里に到着したカズマ一行は、ゆんゆん案内の下、族長の家へと向かっていた。

 

 

「はい。私たちと彼等はこの里にある学院の同期、つまり同級生なのですが、彼等は普段から働きもしないニート集団なので。家の手伝いはしないわ、街へ働きに出ようともしないわで、勝手に『魔王軍遊撃部隊』などと名乗っている始末です」

 

 

めぐみんの説明にカズマの目が点になってしまった。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「はははっ、何を言ってる我が娘よ!あの手紙はお前に宛てたただの近状報告だよ」

 

 

ゆんゆんの家に到着したカズマ一行だが、流石に全員は入れないとの事で、カズマを含む初期メンバーが族長と対談することになった。そしていざ手紙の内容について質問すると、意外な返答が返って来たのだった。

 

 

「いやいや、手紙を書いている間に乗ってしまってついついあんな内容にな。紅魔族の血がどうしても、普通の手紙を書かせてくれなくて!」

 

 

豪快に笑う族長をカズマは"殴りたい"と思った。

 

 

「それじゃあ、『魔王軍の軍事基地を破壊する事もできない状況』って…」

 

 

「あれは連中が随分立派な基地を造ってなあ…、破壊するか、このまま新しい観光名所にするかで、意見が割れているのだよ」

 

 

「族長殿、軍事基地が存在すると言う事は、魔王軍の幹部が来ていると言う内容は…」

 

 

「ええ、手紙の通り。魔法に強いのが派遣されているようです」

 

 

『魔王軍警報!魔王軍警報!手の空いている者は里の入り口グリフォン像前に集合!敵の数は千匹程度と見られます!』

 

 

そこに魔王軍が襲来したことを告げる警報は鳴り響いた。

 

 

「どうやら、言った側からおいでなすったようだな。よかったら見ていくかいお客人?最強の魔法使い達が奏でる葬送曲(レクイエム)で敵が灰塵に帰していく様を…!」

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

カズマたちが見た光景は圧巻としか言い様がなかった。魔王軍の連中は紅魔族の魔法に為す術無くやられていたからであった。

 

 

「いや~、圧巻だったな」

 

 

「紅魔族は大人になると全員が上級魔法を覚えるんです。言うなれば紅魔の里はアークウィザードの里…」

 

 

「あたしはミツルギたちが迎撃に参加していた事にびっくりしたけどね」

 

 

「いや…、警報を聞いたらいてもたっても居られなくて…」

 

 

「でも、そのおかげでいつもより早く撤退させられたので、里の皆は感謝していましたよ」

 

 

カズマたちは紅魔族VS魔王軍の戦いを見た後、感想を述べながらとある家へと向かっていた。

 

 

「ここがめぐみんの実家か?」

 

 

「そうです、連絡をしていなかったので、誰かいると良いのですが…」

 

 

めぐみんは家の扉をノックすると、中からめぐみんを幼くした様な女の子が出てきた。

 

 

「"こめっこ"、ただいまです。いい子にしていましたか?」

 

 

「……お父さーん!お姉ちゃんが男ひっかけて帰って来たー!」

 

 

こめっこと呼ばれた女の子はカズマを見た瞬間、とんでもない事を口走りながら家の中へと戻って行った。

 

 

「カズマ、何も言い返さないんだね…」

 

 

「ある意味その通りだからな…」

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「……あ~、ゴホン!日頃から娘のめぐみんが世話になっているようだね、それについては心から感謝する」

 

 

めぐみんに促され、家の居間に通されたカズマの目の前には、めぐみんの父の"ひょいざぶろー"と母の"ゆいゆい"がいた。そしてゆんゆんの家同様、流石に全員は入れないので、家の前で初期メンバー以外のメンバーはゆんゆん案内の下、紅魔の里の観光をすることになった。因みにめぐみんは旅の疲れが出たのか、居間に着くと同時に眠ってしまった。

 

 

「…で、もう一度聞くが。君は娘とどのような関係なんだね?」

 

 

「…もう一度ハッキリ言います。俺はめぐみんと結婚を前提とした恋人関係に…」

 

 

「なあああああああああー!!」

 

 

「やめてあなたあああー!今月は特にお金が無いの!ちゃぶ台壊さないで!」

 

 

ひょいざぶろーがカズマにめぐみんとの関係を聞き、カズマがハッキリと答えると、ひょいざぶろーはちゃぶ台返しをしようとし、ゆいゆいに止められていた。

 

 

「…でしたらこれを」

 

 

カズマはバッグから自身が製作したちゃぶ台を出す。

 

 

「俺が作ったちゃぶ台です。脚は折り畳み式になっていて、しまう時にスペースを取らない構造にしています。更に台の間には鉄板を挟んでいますので、余程の事が無ければ壊れません」

 

 

カズマは折り畳み式のちゃぶ台をゆいゆいに渡した。

 

 

「あらあら、こんな良い物をくださるなんて。カズマさんは優しいですね」

 

 

「いえいえ。それと、これはつまらない物ですが…」

 

 

カズマはバッグから菓子折りを差し出す。と、ひょいざぶろーとゆいゆいは菓子折りを同時に掴む。

 

 

「…母さん、手を退けなさい。これはカズマさんがワシにくれた物だろう」

 

 

「あらあらやだわあなたったら。さっきまでカズマさんの事をキミなんて、よそよそしい呼び方をしておいて。これは今日の晩御飯にするんです、酒のつまみになんてさせませんよ」

 

 

ひょいざぶろーとゆいゆいの間には火花が散っていた。

 

 

「ねえねえ、それ食べ物!?いつも食べてるしゃばしゃばしたお粥じゃなくてちゃんとお腹に溜まる物?」

 

 

二人のにらみ合いを他所に、こめっこが菓子折りを見て興奮していた。

 

 

「こめっこ…、君と言う子は…!ゆいゆいさん、今日の夕飯は俺に作らせて下さい!」

 

 

「えっ?…えっと、どうぞ?」

 

 

こめっこの言葉を聞いたカズマは涙を流し、ゆいゆいに夕飯を作らせてほしいと頼む。ゆいゆいは驚きながらもカズマのお願いを聞き入れた。

 

 

「よし、それでは早速取り掛からせてもらいます!アスタ、クリス。手伝いを頼む!ダクネスはこめっこの遊び相手になってやってくれ」

 

 

カズマは次々に指示を出し、全員が頷いた。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

『いただきます!』

 

 

その夜、カズマお手製の夕飯をめぐみん以外のメンバー全員に加え、めぐみんの家族全員が食べることになった。

 

 

「今日の夕飯は『にんにく鳥の親子丼』にしました。全員分あるのでゆっくり味わって下さい」

 

 

「おいしぃ~」

 

 

こめっこは自分の親子丼をスプーンで頬張りながら食べていた。

 

 

「ところでカズマさん、冒険者は収入が不安定と聞きますが、貯蓄はいかほど?」

 

 

「そうですね…、まあ最低でも10億以上はあるかと…」

 

 

「「じゅうおく!?」」

 

 

ひょいざぶろーとゆいゆいはカズマの貯蓄の額に驚いた。

 

 

「で…、でもそれだけでは…」

 

 

「まあ遊んでいても毎月200万、多くても300万以上は入りますが…」

 

 

「「………」」

 

 

カズマの収入に二人は呆然としてしまった。

 

 

「あの…、因みに住まいは…?」

 

 

「アクセルの街に屋敷を」

 

 

「「…!?…!?…!?」」

 

 

二人は最早言葉に出来ない程驚いていた。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「はあ~、貯蓄の事とか言わない方が良かったかな…?」

 

 

食事も終わり、初期メンバー以外のメンバーはゆんゆんの家や宿に泊まる為に一旦別れ、残ったメンバーはめぐみんの家に泊まることになり、カズマは湯船に浸かっていた。

 

 

「あらカズマさん、湯加減は如何でしたか?」

 

 

風呂から上がり、居間に着いたカズマが見た光景は、ゆいゆいがダクネスをスリープで寝かせる所だった。そしてゆいゆいは何食わぬ顔でカズマに声を掛けた。

 

 

「アッハイ、トテモヨカッタデス」

 

 

カズマはカタコトになりながらも答えた。

 

 

「それは良かったです。それで…、申し訳ないのですが、ダクネスさんをアスタさんとクリスさんが寝ている部屋まで運んでもらえませんか?私はこめっこと夫の三人でこの居間で寝ますので」

 

 

ゆいゆいに頼まれ、カズマはダクネスをアスタとクリスが寝ている部屋へと運んだ。

 

 

「それで…、俺はどこで寝れば…?」

 

 

「家が非常に手狭で…、申し訳ないのですが、めぐみんの部屋で寝てもらえますか?」

 

 

ゆいゆいはダクネスを運んだカズマをめぐみんの部屋に押し込んだ。

 

 

「ではお休みなさい。『ロック』」

 

 

ゆいゆいは扉を閉めると、扉にロックの魔法を掛けてカズマが逃げられないようにした。

 

 

「やれやれ…、めぐみんの母親は間違いを起こさないと思っているのか?」

 

 

「思わないですね、むしろ良くやったと言うでしょう」

 

 

カズマが扉の前で佇んでいると、めぐみんが起き上がった。

 

 

「おそよう、めぐみん」

 

 

「何ですかその挨拶は?」

 

 

「昼や夜に起きた人にする挨拶さ。それより、いつ目を覚ましたんだ?」

 

 

めぐみんはカズマの変わった挨拶について質問し、カズマはそれに答えた。そしていつ目覚めたのかを質問する。

 

 

「ついさっきです。それより、いくら春が近いからとは言え、夜はまだ寒いですから、早く布団に入ってはどうですか?」

 

 

「それもそうだな、それじゃお邪魔します」

 

 

めぐみんは布団の端に寄り、カズマが入れるスペースを作ると、カズマはそこへ入った。

 

 

「……めぐみんさん、なぜ俺に引っ付くのですか?しかもカズマさんのカズマさんを撫でて」

 

 

「ここしばらくはご無沙汰でしたから。それに我慢は毒ですよ?」

 

 

めぐみんの誘いにカズマの理性の糸はプッツンと切れ、二人は愛しあったのであった。

 

 

 


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