何故カズマが眠っているのか、それはシルビアと戦っている間、カズマは響鬼・紅の状態を維持していたからだ。
ただでさえ体への負担が大きい強化形態に加え、短い時間ではあるが、最強形態になった事での負担が戦闘終了後に一気に襲い掛かり、カズマは燃え盛る炎の中で倒れ、変身が強制解除されたのだった。
運良くぶっころりーの仲間がカズマを素早く救助した為、カズマの外傷は軽い火傷を負うだけだったが、蓄積された疲労のせいで今も眠っている状態だった。因みに火傷はリーンがフリーズを使って体を冷やし、アスタがヒールを使い完治していた。
トントントン…。
『めぐみん、入るね』
襖の外からゆんゆんの声がして、当人が襖を開けた。めぐみんの部屋には布団で寝ているカズマの横にめぐみんが座っていた。
めぐみんはカズマが倒れてからずっと、カズマの側でカズマの介護をしていた。それも日課にしている爆裂散歩にも行かずに。
「めぐみん、ご飯持ってきたから食べて。食べ終わったら外に置いといて」
ゆんゆんはそう言って部屋から出る。めぐみんは食事すら取らず、じっとカズマを見続けていた。
…
……
………
「んぁっ…、ここは…」
カズマが倒れてから4日目の昼、カズマは意識が戻り、目を覚ました。
「すぅ…、すぅ…」
「めぐみん?…って事は、ここはめぐみんの部屋か?」
カズマは隣で眠っているめぐみんを見ると、今自分がどこにいるのかを把握した。
「んん…、…あっいけません。眠ってしまいまし…た……」
「おはよう、めぐみん」
「カズマ…、カズマッ!」
めぐみんは寝惚け眼を擦りながら目を開けると、目を覚ましたカズマが挨拶をした。するとめぐみんはカズマに詰め寄った。
「カズマ…、目を覚まして良かったです…」
「また心配掛けさせたな…、でも、魔神の丘の呪いのおかげだな。こうしてめぐみんの所に戻ってこれたんだから」
カズマは布団から腕を伸ばし、めぐみんの頭を優しく撫でた。
「カズマ…」
めぐみんはカズマとの距離を縮める。そして後数センチまで距離を縮めると
「めぐみん、カズマの具合はどう?」
アスタがノックをせずに入室した。
「………」
「………」
「………あはは、ごゆっくり~」
気まずい空気に耐えられなくなったアスタは退室した。
…
……
………
その後アスタからカズマが目を覚ました事を聞いたメンバー一行は続々とめぐみんの部屋へ雪崩れ込んで来たが、全員は入れない為、人数制限を掛け、少数での面会となった。因みにジラフはと言うと、めぐみんの部屋には入れないので、部屋の外から窓越しで面会しており、他のメンバーよりも長い時間、カズマと会っていた。
それからカズマはめぐみんとクリスの介護のおかげで回復し、ジラフの背に乗りながらではあるが、里を散歩していた。
「凄いな、里がもう復興している」
「里の皆が悪魔やゴーレムを召喚して復興しましたので。他所の復興速度を知らないので、どれくらいなのか知りませんがこの里では大体3日もあれば復興します」
カズマは里の復興具合に驚き、めぐみんが補足をする。
「そう言えば…、里が燃えていく所を見ていためぐみんと同い年くらいの女の子がいたんだけど…」
「その人の特徴はわかりますか?」
「確か…、めぐみんが着けていたのと同じ眼帯をしていて、後頭部にコウモリの羽根のような髪飾りを…」
カズマが特徴を言っていると
「やあめぐみん、探したよ」
カズマが言っていた特徴と同じ特徴を持つ女の子が現れた。
「そうそう、この子だよ」
「カズマが見たのはあるえでしたか」
「何の話だい?」
あるえは頭にハテナマークを浮かべていると、めぐみんが説明をする。
「…ああ確かに私が言っていた事だね。それよりも、ついさっき『紅魔族英雄伝』の第二章が書き上がってね。私的には紅魔の里が燃えるシーンが秀逸な傑作だと思うんだよ!」
「やれやれ…、それを聞いてか知りませんが、あるえの発言でカズマが4日も目を覚まさない状態になったのですから、気をつけて下さいね」
めぐみんはあるえに注意をして、カズマとジラフと一緒にその場を去った。
「あっ、めぐみん!カズマさん!」
「ゆんゆんではありませんか。カズマが寝ている間、ご飯を持ってきてくれて助かりました。ありがとうございます」
散歩の途中でゆんゆんに出会ったカズマたちは、挨拶をする。
「あっ、めぐみんにゆんゆんだ!」
「本当だ!久しぶり!」
そこに二人と同い年くらいの女の子二人が現れた。
「"ふにふら"に"どどんこ"ではありませんか、お久しぶりです」
「ふにふらさん!どどんこさん!」
めぐみんとゆんゆんは二人に挨拶をする。
「あっ、カズマは知りませんでしたね。二人は私達の同級生で、ふにふらとどどんこです」
「「はじめまして!」」
「はじめまして。我が名はカズマ!始まりの街アクセルの最強冒険者にしてめぐみんとゆんゆんが加入しているパーティーのリーダーである者!そして魔王軍を倒す音色を奏でし者!」
「「おお~っ!」」
カズマがビシッと名乗りを上げると、ふにふらとどどんこは目を輝かせた。
「あの!カズマさんって戦いの時に悪魔みたいな姿になっていましたよね!?」
「あの姿、とっても格好良かったです!私達、その姿に一目惚れしてしまったんです!それで…、その…。付き合っている人って…、いますか?」
二人はカズマに恋人がいないか質問をする。それを聞いていためぐみんは不服そうに頬を膨らませていた。
「付き合っている人…か。いるぞ、それも二人。魔神の丘でプロポーズもしたしな」
「「…えっ?」」
「カズマが言っていることは本当ですよ。二人の内一人は私です」
めぐみんはカズマに寄り添う形でカズマに近づいた。
「ま…、まさかあのネタ魔法にしか関心がなかっためぐみんに男が…」
「カズマは優しいです。爆裂魔法しか使えない私をパーティーメンバーに加えてくれたり、クエストの時は私を切り札として活躍させてくれる作戦を考えてくれたり、夜はその逞しい腕で私を逃がさないように…」
「「わああああ!お子ちゃまめぐみんに負けたああ!!」」
ふにふらとどどんこの二人は泣きながら走り去った。
「ねえめぐみん、さっき魔神の丘でプロポーズされたって…」
「はい、クリスと共にカズマからプロポーズされました。もちろん返事はOKですが」
「そうなんだ…。めぐみん、おめでとう」
「ありがとうございます!」
ゆんゆんは満面の笑みでめぐみんを祝福し、めぐみんも満面の笑みで返事をしたのだった。
…
……
………
ふにふらとどどんことの騒動から一夜明け、カズマたちは紅魔族全員に見送られながら紅魔の里を後にした。
「さて…、これからどうするかな?」
「カズマはここ最近戦いっぱなしなので、何処かでゆっくりしたい所ですね」
「ならカズマ、『水と温泉の都』アルカンレティアに行きましょうよ!」
カズマはどうするか悩み、最早定位置となっているカズマの右側に座っていためぐみんが今までの騒動を思い返しながら考えていると、後ろの客席からアスタが頭を出し、アルカンレティアに行きたいと言った。
「『水と温泉の都』か…、そう言や紅魔の里の帰りに寄りたいって言ってたもんな。よし、アルカンレティアへ行こう!」
「そうだね、ついでにカズマの湯治や慰安も兼ねて…ね」
カズマがアルカンレティアに行く事を決めると、めぐみんと同じく定位置であるカズマの左側に座っていたクリスが賛成し、一行はアルカンレティアへと向かった。
…
……
………
紅魔の里を発ってから2日、一行はアルカンレティアへ到着した。
「へぇ~、ここがアルカンレティアか」
カズマたちは当初紅魔の里へ向かう為、アルカンレティアへと続く門の前までしか来た事が無かったので、アルカンレティアの中までは見た事が無かった。その為まずはアルカンレティアを観光することにした。すると
「ようこそいらっしゃいましたアルカンレティアへ!」
「観光ですか?洗礼ですか?入信ですか?」
「仕事を探しに来たならぜひアクシズ教団へ!」
街の人々がカズマたちに声を掛けて来た。
「今なら他の街でアクシズ教の素晴らしさを説くだけで、お金がもらえる仕事がありますよ!」
「その仕事に就きますと、もれなくアクシズ教徒を名乗れる特典が付いてきます!さあ!」
街の人々はカズマたちをアクシズ教へ入信させようとする。
「なあアスタ、もしかしてこの街って…」
「あれ?言ってなかった?アルカンレティアは"アクシズ教の総本山"って」
カズマはまた騒動に巻き込まれる予感がして項垂れたのだった。