アルカンレティアの調査が失敗した翌日…。カズマたちは朝食を終え、カズマとクリスとめぐみんの三人は散歩のため、街中を歩いていた。すると
「あれ?あの人ウィズさんじゃありませんか?」
「「えっ?」」
めぐみんが指を差した所にいたのは、ウィズとバニルだった。
「ホントだ、ウィズさんがいる」
「その横にいるのはバニルだな」
「あら?カズマさんにめぐみんさんにクリスさん」
「こんな所で会うとは奇遇であるな!」
ウィズとバニルもカズマたちに気づき、声を掛けた。
「久しぶりだなウィズさんにバニル。しかし何でまたここに?」
「実はバニルさんが"紅魔の里"に用があるそうで…」
「我輩一人でも良かったのだが、我輩がいないとこの貧乏店主は次々に売れない商品を仕入れるので、仕方なく店を休みにして交渉に引っ張って来たのだ」
バニルはアルカンレティアに立ち寄った理由をカズマたちに話す。
「成る程…、なら紅魔の里に着いたら俺の名前を出すといい。里の連中とは知り合いだから、俺の名前を聞けば2つ返事で了承してくれる筈だ」
「ほう…、それはありがたい事だ。…だが、それを口にすると言う事は、我輩たちの手を貸して欲しい事があるみたいだな?」
「バレたか、流石全てを見通す悪魔。実は…」
カズマはアルカンレティアで起きている出来事をバニルに話す。
「…ふむ、温泉の質が悪くなっている原因の調査であるか…。その原因は恐らく"毒"であろう。確か我輩の記憶の中に魔王軍の幹部に"毒を扱う者"がいるな」
「あっ、それって『ハンス』さんの事ですか?『デットリーポイズンスライム』の」
「"デットリーポイズンスライム"?」
聞き慣れない言葉にカズマは首を傾げた。
「聞いた事があります。スライムの中でも特に毒性が強く、触れただけでも死に至らしめる…と」
「マジかよ…。とりあえずこの情報を皆に共有しないと、ウィズさんとバニルも一緒に来てくれ」
カズマのお願いにウィズとバニルは頷き、カズマと共に宿へ向かった。
…
……
………
カズマたちが宿に戻ると、フロントに支配人とオーナーがおり、ウィズとバニルについてカズマが説明すると、快く通され、カズマたちは借りているスイートルームに戻った。
「カズマ、めぐみん、クリス。お帰りなさい…ってウィズとバニルもいるじゃない、久しぶり」
「お久しぶりです、アスタさん」
「邪魔するである」
「それで、何であなた達はカズマと一緒に?」
アスタはウィズとバニルがいる事をカズマに質問し、カズマは二人がアルカンレティアに立ち寄った理由と、調査の協力及び容疑者の情報をアスタに伝えた。
「"毒を扱う魔王軍の幹部"、『デットリーポイズンスライムのハンス』…ね。ねえウィズ、そのハンスって人の特徴とか分かるかしら?」
「ハンスさんはデットリーポイズンスライムの"変異種"で、擬態能力を持っています。なので、私が知らない人に擬態されたら、まず見分けが着きません。普段の容姿なら、『浅黒い肌で茶色い短髪の男性』で、背が高く、筋肉質ですね」
「……ちょっと待って」
アスタはウィズからハンスの容姿を聞くと、手に持っていた用紙に目を通した。
「…なあアスタ、その紙はなんだ?」
「これはアルカンレティアの温泉宿に配ったアンケート用紙よ。犯人は何かしらの細工をする為に、何度も客として温泉に入っていると思ったのよ。それで昨夜の内に温泉宿全てにこの用紙を配って、何度も来た人の特徴を記入してもらって、ついさっき回収し終えた所だったの。……やっぱり」
アスタはアンケート用紙に目を通しながらカズマへの説明をする。そして全ての用紙を見終えた後、確信を得たように呟いた。
「何か分かったのか?」
「ええ、アンケート用紙にはさっきウィズが言った容姿の男が何度も出入りしている事が分かったわ。全ての用紙に書いてあるの」
カズマたちがアンケート用紙を見ると、アスタが言った通りウィズが言った容姿が記載されていた。
「確かに…。これで犯人は魔王軍の幹部、デットリーポイズンスライムのハンスである事は確実だが、何故コイツはこんな事しているんだ?」
カズマはアルカンレティアの温泉に毒を入れているのがハンスである事を確信するが、何故こんな事をしているのか、疑問に思った。
「失礼します!カズマさんはおられますか!?」
そこにオーナーが慌てた様子で駆け込んで来た。
…
……
………
「皆さん落ち着いて下さい!まずは話し合いましょう!」
「うるせぇ!お前達エリス教徒が仕組んだ事だってのは分かってんだ!」
「ですから、私達ではありません!」
カズマたちが利用している宿の外では、アクシズ教徒達が集団で押し寄せて来ており、何やら言い合っていた。
「一体何事だ!?」
そこにカズマたちが宿の中から現れた。
「おい兄ちゃん達、気をつけな!このエリス教の奴等は俺達の営業を妨害する為に温泉に毒を入れやがったんだ!しかも自分達が疑われないように自分達の温泉にも毒を入れてな!」
「ですから、私達も被害者なんですよ!温泉に毒を入れたなんて、身に覚えがありません!」
「ハンッ、そうやって被害者ぶって同情を誘おうだなんて、流石エリス教徒様だな!俺達は騙されねぇぞ!」
アクシズ教徒達はヒートアップし、罵詈雑言をエリス教徒達に与える。
「あなた達、いい加減にしなさい!!」
そこにアスタがペンダントを見せながら現れた。
「おお…、あのペンダントは!」
「アクシズ教徒の中でも、有能な人しか持つ事を許されない証…!あの方がいればエリス教団の悪事を暴けるぞ!」
アクシズ教徒達はアスタのペンダントを見て騒ぎ出し、エリス教団を追い出そうと考えていた。
「アクシズ教団所属アークプリーストとして発言します、今回の騒動はエリス教団が行った事ではありません!」
しかしアクシズ教徒達の思惑とは違い、アスタはエリス教団の味方をした。
「今回の騒動の犯人を、私達は見つけました!これから、その者に天罰を与えます!その間、エリス教団への弾圧はこの私が許しません!この街はここにいる皆さんが協力して繁栄した街です!謂わば皆さんは苦楽を共にする仲間の筈!それなのに仲間同士で罪を擦り付けるなんて言語道断!」
アスタの言葉にアクシズ教徒達は黙ってしまった。
…
……
………
「ありがとうございます!何とお礼を申し上げれば良いのやら…」
「気にしないで下さい。元はと言えば私達アクシズ教徒が悪いので…」
スイートルームに戻ったカズマたちは、オーナーにお礼を言われ、アスタは気まずそうに答えた。
「しかし…、犯人を見つけたって仰っておりましたが、一体誰が…?」
「犯人は魔王軍の幹部、デットリーポイズンスライムの変異種です。回収した用紙と仲間が持つ情報と照らし合わせた結果、判明しました。それと、この情報は他言無用でお願いします。もしこの情報が知れたら、先程よりも大勢のアクシズ教徒達が来てしまうでしょうから」
アスタの注意にオーナーは頷いた。そしてオーナーはスイートルームを後にした。
「街中の温泉から毒…か。幾ら短期間とは言え、全ての温泉に毒を混入させる事って出来るか?」
「恐らくは無理かと…。一つ一つの温泉に毒を入れても、時間が足りないと思います」
「となると…、源泉が怪しいな」
カズマはアルカンレティアの地図を広げ、源泉を示した所に石を置いた。
「確かに源泉に毒を入れれば、時間差はあるとはいえ、全ての温泉から毒が出ます」
「…決まりだな、総員第一種戦闘用意!万全の態勢で挑め!それからダクネス、もしかしたらダクネスの家名を使う事があるかもしれないから、その時は頼む」
『了解!!』
「分かった。本当ならあまり家名を持ち出したくは無かったのだが、四の五の言ってる場合では無いからな」
メンバー全員はカズマに向かって敬礼をし、各々装備を整えるのだった。