「まったく…、一度ならず二度までも!アンタ、私の妹になにするのよ!」
「面目次第もございません…」
路地裏から出てきたカズマ一行だが、アスタは怒りが収まらない感じで、クリスは顔を赤くしたまま俯いており、カズマに至っては左の頬に真っ赤な紅葉を作っていた。
「もし次にクリスに恥ずかしい思いをさせたら…、わかってるわね?」
「イ…、イエッサー!」
カズマはアスタの威圧感に震え、思わず敬礼してしまった。
「お姉ちゃん、もういいよ。それにお姉ちゃんも言ってたでしょ?『"窃盗"は幸運度に左右される』って」
クリスが言ったことを思い出したのか、アスタはバツが悪そうな顔をする。
「それよりも、これからどうする?」
「どう…とは?」
「パーティーメンバーだよ。あたしたちはいつも一緒に行動できる訳じゃ無いからね、カズマ君なら一人でも大丈夫だと思うけど、できることなら仲間を増やした方が一人で戦うよりも戦いやすいし、負担も減ると思うんだ」
クリスの考えにカズマは思考を巡らせる。
「(…確かに仲間がいれば、俺は前衛か後衛のどちらかに集中することができる。)そのパーティーメンバーはどうやって集めるんだ?」
「おっ、乗り気だね。まあ集め方はギルドの掲示板に"メンバー募集"の張り紙を張ればいいと思うよ?」
クリスの提案に乗ったカズマは早速クリスに手伝ってもらい、パーティーメンバー募集の張り紙をギルドの掲示板に張ったのだった。
…
……
………
「来ないな…」
「来ないね…」
掲示板に張り紙を張ってから3日、カズマとクリスは項垂れていた。
掲示板に張り紙をしたのが夕方近くだったため、受付のルナさんに募集に関しての一言を伝え、解散したのだったが、宿屋は満室で唯一空いていたのが馬小屋だったので、カズマは仕方なく馬小屋を借り、そこで寝泊まりすることになった。
張り紙を張った翌日、カズマはクリスとアスタの二人と合流し、ギルドで張り紙を見た冒険者を待つことにしたが、その日は誰も来ず、2日目は金銭的余裕が無くなったのでクエストを受注。そして3日目の今、1日目と同じ状況になっていたのだった。
因みにこの日はアスタは用事があるらしく、不在だった。
カズマは椅子の背もたれに体を預けながらクリスを横目で見る。
「(クリスって顔整ってんな…、きっと色んな男から声掛けられてるんだろうな…)」
カズマの視線に気づいたのか、クリスはカズマの方に顔を向ける。が、それと同時にカズマが視線を反らしたので、クリスはカズマが自分を見ていたことに気づかなかった。
「すみません。募集を見て来たのですが…、ここでよろしいでしょうか?」
すると二人の目の前にいかにも魔法使いの格好をした少女が現れた。
「そうですが…、あなたは?」
カズマが少女の質問に答え、誰なのかを訪ねる。すると少女はマントを翻し
「我が名は"めぐみん"!紅魔族随一のアークウィザードにして最強魔法『爆裂魔法』を扱う者!」
魔法使いの少女"めぐみん"の自己紹介に二人は呆気に取られた。
「(なあ、コイツ頭大丈夫か?)」
「(ああ、カズマ君は知らないんだね。あの子は"紅魔族"って言って、紅い瞳とユニークな名前が特徴なんだよね)」
正気を取り戻した二人はめぐみんに背を向けて内緒話をする。
「あの…、もしよければご飯を……。もう三日も食べていないので…」
「あまり高いのはナシな?すみませーん!」
カズマはギルド内にいるウェイトレスに食事の注文をするのだった。
…
……
………
「もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ」
三日ぶりの食事にありつけためぐみんはものすごい勢いでサンドイッチを咀嚼していた。
「そんなに慌てて食べると喉につまらすぜ?」
カズマはそっとオレンジジュースをめぐみんに渡す。
「
「それでカズマ君は彼女をメンバーに加えるの?」
ジュースを飲んでいるめぐみんを横目に、クリスがカズマに質問をする。
「カードを見た所、確かに職業はアークウィザードだし、後衛には向いている。だけどこれだけじゃ判断はできないから、後でクエストを受注してみようと思う」
カズマはめぐみんにカードを返しながら自分の考えをクリスに伝える。
「そういうことでしたら、存分にお見せしましょう私の力を!」
ジュースを飲み終えためぐみんは鼻息を荒くしていた。
…
……
………
めぐみんを加えたカズマ一行は、平原にいるジャイアントトードを討伐するために出掛けていた。
「私が使う"爆裂魔法"は発動するのに若干時間が掛かりますので、その間カエルの足止めをお願いしたいです」
「それくらいなら任せとけ」
早速ジャイアントトードを発見した一行は、まずめぐみんの実力を見るために、彼女に攻撃をさせることにした。
「見ていてください。これが人類が行える魔法の中で、最も威力がある魔法。これこそが究極の攻撃魔法…」
めぐみんは瞳を閉じ、魔力を集めるため集中する。すると彼女の魔力が空気を震わせた。
そしてめぐみんが魔力を一気に解放させた瞬間、三匹のジャイアントトードを中心に爆発が起こり、爆煙が晴れた所にはジャイアントトードはおらず、クレーターが残っているだけだった。
「(すげぇ…、カエル共を一瞬で!)凄いじゃないかめぐみ…」
カズマはめぐみんに言葉を掛けようとして止まった。何故ならめぐみんが地面にうつ伏せで倒れていたからだった。
「ちょ、めぐみん!大丈夫?」
「大丈夫ではありません。爆裂魔法は威力が絶大ですが、消費魔力も絶大で…。一日一発が限度な上、使用したらしばらくは動けなくなります…」
「「(なにその中途半端な魔法は!)」」
この時カズマとクリスの心は1つとなった。
「っ!カズマ君、あたしの"敵感知"スキルに反応があったよ」
するとクリスは敵の増援が来たことをカズマに伝える。
「数は?」
「数は3つ。動き方からしてジャイアントトードみたい」
クリスは敵の増援がカエルであることをカズマに伝えた。
「ならクリスはコイツとめぐみんを頼む。寄ってきたカエルは俺が処理する」
カズマは四次元バッグから烈風を取り出すと、バッグをクリスに渡した。
「音撃道・管!」
《管・カ・カーン!》
「なんですか今の音は?」
「……音は気にしないでくれ」
音角から流れた音が気になっためぐみんはカズマに質問をするが、カズマは気にしないように言った。そしてカズマは音角を鳴らし、響鬼へと変身する。しかし腰に装着されているベルトには以前装着されていた雷轟では無く、鳴風が装着されていた。
「フッ!」
カズマは烈風のピストンバルブを操作し、空気の弾を撃ち、カエルを次々に穴だらけにした。
「最後は…、これだ!」
カズマは再び烈風のピストンバルブを操作し、銃口をカエルに向け、引き金を引く。しかし発射されたのは空気の弾では無く、紅い光を放つ3つの石だった。
カズマはその石を
そしてカズマは腰に装着している鳴風を烈風の銃口に装着させて引っ張り、烈風に装着されているマウスピースを烈風の後ろに装着させ、烈風を音撃モードにした。
「音撃射・疾風一閃!」
カズマはカエルに向けて烈風を吹き鳴らす。するとカエルは苦しむようにもがき、腹に埋め込まれた石が共鳴するように紅い光が強くなっていった。
そしてカズマが最後の一吹きを終えると、カエルは爆散したのだった。
…
……
………
「カズマ、凄いです!まさかあなたも爆裂魔法を使えるとは!」
「ありがとう。でもあれは爆裂魔法じゃないんだ」
クリスとめぐみんの下に戻ったカズマは、顔だけ変身を解いた。
「ねぇねぇ、さっきカエルに撃ち込んだのは何?」
「カエルに撃ち込んだのは"
カズマが説明すると、クリスは納得したように頷いた。
「さて、早くギルドに戻ってクエスト成功の連絡と報酬を貰おうぜ。めぐみんの歓迎会をしなくちゃならねぇしな」
「えっ…?加えていただけるのですか…?」
「めぐみんの爆裂魔法は切り札になり得るし、使い所を間違えなければ心強い戦力になる。これからも頼むぜ?めぐみん」
「……はい!」
めぐみんはまさか自分がパーティーに加入されることにびっくりしてカズマに質問をする。そしてカズマから帰ってきた返答を聞いて、めぐみんは満面の笑みを浮かべるのだった。