この素晴らしい世界に祝福の音色を   作:レイファルクス

30 / 48
第30話

 

 

アルカンレティアの源泉に向かうことになったカズマ一行+ウィズ&バニルは、源泉がある封鎖区画に来ていた。封鎖区画の門では、『管理人以外立入禁止』と門番に言われたが、ダクネスが家紋入りのペンダントを見せると、すんなり通された。

 

 

「悪かったなダクネス、こんな事の為に家名を使わせて…」

 

 

「気にするな。私とて家名が必要な時に渋る程馬鹿では無い」

 

 

「……ありがとう。しかし、門番が言っていた事が気になるな」

 

 

「管理人が『誰が来てもここを通すな』…か」

 

 

カズマとダクネスは門の前で合った事を気に掛けていた。

 

 

「ちょっとカズマ、こっち来て!」

 

 

アスタがカズマを呼び、カズマとダクネスは急いでアスタがいる所に向かう。

 

 

「アスタ、どうした?」

 

 

「"あれ"…、なんだけど…」

 

 

アスタが指を差した所を見ると、そこには動物の死骸が転がっていた。その死骸をキョウヤは観察していると

 

 

「……間違いない、これは初心者殺しの死骸だよ。それも、まだ新しい死骸だ」

 

 

キョウヤは死骸が初心者殺しである事を確信した。

 

 

「……なあキョウヤ、この死骸…"妙じゃない"か?」

 

 

「カズマ君も気づいたかい?この死骸、剣や魔法で倒された形跡が無いんだ。まるで"強力な酸で溶かされた"ような…」

 

 

「まさか……」

 

 

キョウヤとカズマの頭の中に"一つの可能性"が浮かんだ。

 

 

「このままじゃ管理人が危ない!皆、急ぐぞ!」

 

 

カズマは森の中を走り、アスタたちもカズマを追いかけるように走った。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

森を抜けたカズマたちが見た光景は、幾つもある源泉が毒々しい色をしている光景だった。

 

 

「不味いわ!こんな毒々しいものが街に流れたら今以上の被害が出るわよ!"ピュリフィケーション"!!」

 

 

アスタは直ぐ様源泉の一つに浄化魔法を使うが、源泉は中々浄化されなかった。

 

 

「中々浄化できないわね、こうなったら!」

 

 

アスタは女神の姿となり、源泉に手を突っ込んだ。

 

 

「アスタ…じゃなかった、アクア!何考えてんだ!ウィズ、フリーズを!」

 

 

「わ、分かりました!"フリーズ"!!」

 

 

カズマはアクアの腕が大火傷しない様にウィズに頼み、ウィズはアクアの腕を冷やした。

 

 

「あ…、ありがとうウィズ」

 

 

ウィズの魔法で腕を冷やしながらアクアは源泉を浄化し終えた。

 

 

「…よし、これでいいわ。でも、パイプの中までは浄化できなかったから、毒が抜け切るまで相当時間が掛かると思う」

 

 

アクアは源泉の一つを浄化し終えたが、パイプの中までは浄化することはできず、悔しがっていた。

 

 

「っ!カズマ、あそこに…」

 

 

めぐみんが源泉の側に誰かいるのを発見し、カズマに知らせた。

 

 

「…アンケート用紙に書いてあったのと、ウィズが言ってた容姿の男だな。もしかして…、アイツがハンスか?声を掛けてみよう」

 

 

カズマは源泉の側にいる男に声を掛ける為に近づいた。

 

 

「あの…すみません」

 

 

「おや、何か御用ですか?確かここは管理人以外立入禁止の筈ですが…」

 

 

カズマは男に声を掛けると、男は意外そうな表情をして振り返った。

 

 

「それは"お互い様"ではありませんか?あなたは管理人ではありませんよね?」

 

 

「いえ私は管理人ですよ?何なら門番に確認していただいても…っ!?」

 

 

男はカズマの後ろにいるウィズとバニルの姿を見つけ、驚いていた。

 

 

「なっ…、何でお前達が…!?」

 

 

「その反応…、ウィズとバニルを"知っている"ようだな。もう言い逃れはできないぜ?"魔王軍幹部のハンス"さん?」

 

 

「……ちっ、いつから気づいていやがった?」

 

 

ハンスはこれ以上隠す必要が無いと分かったのか、態度を改めた。

 

 

「最初からさ。俺の仲間が街中にアンケートを配ったら、そこにアンタの容姿が書かれていてね。そして二人の記憶と照らし合わせた結果、アンタに辿り着いたって訳さ」

 

 

「成る程…、そんな方法で俺に行き着くとはな…。せっかく管理人の爺さんを"喰って"まで計画したんだがな」

 

 

「"喰った"…?」

 

 

ハンスの呟きにカズマが反応した。

 

 

「ああ、俺達スライムは"喰う"事で擬態できる。だが一つ難点があってな、喰った人間にしか擬態できないんだ『カースド・クリスタルプリズン!』が!?」

 

 

カズマの後ろにいたウィズが凍結魔法を使ってハンスを凍らせた。

 

 

「…ウィズ?」

 

 

「…確か私が中立でいる条件は『戦闘に携わらない人間は殺さない』と言う事でした。冒険者が戦闘で命を落とすのは仕方ない事です、彼等だって日夜モンスターの命を奪い、それで生計を立てていますから。…でも、でも!管理人のおじいさんには何の罪もないじゃないですか!!」

 

 

ウィズは何の罪もない管理人がハンスによって殺された事に怒っていた。

 

 

「…なあバニル、ずっと疑問に思っていたんだが…。お前やハンスの事を知ってるって事は、ウィズさんって…」

 

 

「おや、知らなかったのか?カズマの想像通り、あの貧乏店主は初代の我輩と同じ"魔王軍の幹部"の一人である。しかも初代の我輩と同じで、魔王城の結界を維持させるだけの"なんちゃって幹部"なのだ」

 

 

カズマは以前から感じていた疑問をバニルに打ち明けると、バニルはウィズの正体を口にした。その間もウィズはハンスを凍り付けにしようと凍結魔法を連発し、ハンスの足を凍らせた。

 

 

「相変わらず詰めが甘いなウィズ!」

 

 

するとハンスはスライム状になった自分の腕を切り落とし

 

 

「俺にはこういう手もあるんだぜ!」

 

 

源泉に向かって投げた。

 

 

「させないよ!『ウインドブレス』!」

 

 

しかしリーンが風の魔法を使って腕の軌道を反らし、腕は源泉に落ちずに済んだ。

 

 

「へぇやるじゃねえか、だが…、これはどうだ!?」

 

 

ハンスは再生しかけている腕を掴むと、次々に源泉に向かって投げ出した。

 

 

「『ウインドブレス』!『ウインドブレス』!…くっ、魔力が…持たない…っ!」

 

 

リーンはハンスの一部を悉く源泉に落ちないように軌道を変えているが、数が多く、彼女の魔力が先に尽きるのが目に見えていた。

 

 

そして遂にリーンの魔力が底を尽き、ハンスの一部が源泉に落ちようとしていた。

 

 

「『ウインドブレス』!」

 

 

だがカズマがハンスの一部を源泉から遠ざけ、事なきを得た。

 

 

「カズマナイス!後でハグしてあげるわ!」

 

 

「そいつは嬉しいが、謹んでご遠慮させてもらうぜ。俺の花嫁達が嫉妬で狂いそうになるからな」

 

 

アクアはカズマにハグをする約束をするが、カズマは丁重に断った。

 

 

「……どいつもこいつも、俺をコケにしやがって…!ウオオオオオオ!!」

 

 

ハンスが雄叫びを上げた途端、ハンスの体が膨張し、下半身を凍らせていた氷を砕き、ハンスは本来の姿に戻ったのだった。

 

 

「……でけぇ」

 

 

本来の姿となったハンスを見て、ダストは思わず呟いた。

 

 

「あんなデカいの、どうやって倒すんだよ!?」

 

 

「そんな事私が知る訳無いでしょ!?」

 

 

キースはメンバーにどうやって倒すのか質問するが、帰って来たのはリーンの言葉のみだった。

 

 

「っておい!今言い合っている場合じゃねえぞ!」

 

 

ダストがハンスを指差すと、ハンスは触手を伸ばして周りにある樹木や岩を補食していた。

 

 

「あの野郎…、見境無しに喰い始めやがった!」

 

 

「どうするの!?このままじゃ、私達も奴に喰われちゃうわよ!?」

 

 

「打つ手はある!」

 

 

メンバーが慌てていると、カズマがいつの間にか響鬼(打)に変身していた。

 

 

「カズマ!」

 

 

「まずはウィズ、『ドレインタッチ』を使ってキースやダストの魔力をリーンに渡してほしい。それとテイラーはクルセイダーだから『デコイ』か『フォルスファイア』とか使えるよな?」

 

 

カズマがテイラーに質問すると、テイラーは頷いた。

 

 

「ああ、『デコイ』はダクネスから、『フォルスファイア』はアスタから教わったが…?っ!そう言う事か」

 

 

「察しが良くて助かる。悪いが早速頼む」

 

 

「了解した!『デコイ』!『フォルスファイア』!」

 

 

テイラーは早速モンスターを引き寄せる魔法を使い、ハンスの気を引いた。すると事前にカズマから聞いていたのか、ダクネスとアクアもハンスの気を引く為に魔法を使っていた。

 

 

「ではダストさん、失礼します!『ドレインタッチ』!」

 

 

ウィズは離れた所でダストから命を落とさない程度の魔力を吸収し、その魔力をリーンに渡した。

 

 

「リーン、ゆんゆん!炎系の魔法をハンスに浴びせるんだ!」

 

 

「了解!『ファイヤーボール』!」

 

 

「分かりました!『インフェルノ』!」

 

 

リーンとゆんゆんはハンスに向かって炎系の魔法を使った。

 

 

「俺も、ハァ!」

 

 

カズマも『鬼幻術・鬼火』を使い、ハンスの体を燃やす。

 

 

「カズマ達、一体何を…?」

 

 

「そうか!スライムの体の9割は水分!カズマ君達はハンスの体を燃やす事で、体内の水分を蒸発させて弱体化を狙っているんだ!」

 

 

そう、ハンスの正体はデットリーポイズンスライム。毒があるとは言え、所詮はスライム。毒もまた水分を含んでいる為、体を燃やせば水分が蒸発し、弱体化するとカズマは睨んだのだった。

 

 

そして水分を補給させない為に、ダクネス、テイラー、アクアの三人にそれぞれ『デコイ』や『フォルスファイア』を使って源泉から遠ざけたのだった。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

カズマ達が作戦を開始してから数十分、カズマの鬼火、リーンのファイヤーボール、ゆんゆんのインフェルノ、そしてバニルの"7"を冠する光の巨人が出す光線を模した『殺人光線』を駆使した結果、ハンスの体は当初に比べ、大分小さくなっていた。

 

 

「今なら凍結させられます!『カースド・クリスタルプリズン』!!」

 

 

ウィズの渾身の凍結魔法を受けたハンスは、凍り付けにされ、身動きが取れなくなった。

 

 

「アクアさんっ!!」

 

 

「ウィズ…、感謝するわ。滅びなさい!『ゴッド・レクイエム』!!」

 

 

「ぐああああっ!!こっ、この力はまさか…!アクシズ教団が崇拝する忌々しい女神とは…、お前の事かァァァァー!!」

 

 

アクアは渾身の浄化魔法をハンスに喰らわせ、ハンスはアクアの正体を知ったと同時に消滅した。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

その後、アクアは源泉の毒を全て浄化する事に成功するが、全ての源泉がお湯に変わってしまい、アルカンレティアの産業の一つを潰してしまったカズマ達はギルドにハンスの懸賞金全てを復興に回す約束を取り付け、アルカンレティアから逃げるように去った。

 

 

「……以上が今回の騒動のまとめとなります」

 

 

「ー何と、猛毒を持つハンスを倒しただけでなく、汚染された源泉全てを浄化してしまうとは…!ハンスの猛毒は腕のいいアークプリーストが大勢、しかも数ヶ月と言う時間を要してできるかどうかなのに…」

 

 

アクシズ教団の教会の一室、そこで教祖とおぼしき人物が騒動の顛末を聞いていた。

 

 

「…源泉の方は?」

 

 

「はい、温泉は出なくなりましたが、そのお湯に浸かると傷が癒えたり、アンデットに掛けると聖水の効果があったりで……。ハッキリ申し上げますと、温泉を経営するよりも遥かに利益が上がるようになったと……」

 

 

そう、アクアが浄化した源泉は、彼女の女神の力を吸収し、温泉の時以上の力を得たのだった。

 

 

「それで浄化をされた方ですが、多額の賠償を背負わされたそうで、その方の仲間の冒険者が、ハンスの懸賞金を全て差し出すと言ってそれで手打ちとはなりましたが…」

 

 

「むう…、それはいかん。本来なら我々が街を救って下さったお礼をしないといけないのに…、その冒険者の方々が向かった先を調べなさい。そして教団の者を使者として向かわせ、謝罪とお礼を」

 

 

「了解致しました、ゼスタ様」

 

 

報告をしていた女性は頭を下げて退室した。

 

 

「ああ…、まさかお姿を変えてまでこの街の危機を救って下さったとは…!アクシズ教団有能アークプリーストアスタ、否我らが崇拝する水の女神アクア様!アクシズ教団の代表として、心より感謝致します!」

 

 

ゼスタと呼ばれた男性は椅子から立ち上がると、歓喜な表情でアクアに感謝の言葉を送ったのだった。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。