アルカンレティアから少し離れた場所で、ウィズとバニルはゆんゆんと一緒に紅魔の里へとテレポートした。
そしてカズマ達がアクセルの街の外れにある屋敷に到着した数日後、ゆんゆん達三人が屋敷を訪れ、結果報告をした。
結果は上々で、カズマの名を出した途端、紅魔族は歓喜に震え、叫び出したそうな。そして紅魔族随一の魔道具の製作者であるめぐみんの父"ひょいざぶろー"が製作に当たる事になった。
ウィズとバニルはホクホク顔で、めぐみんもまた、実家に纏まった金が入り、父や母、妹に美味しい物を食べさせられる事に喜んでいた。
それから数日後…。
「ごめん下さい、どなたかいらっしゃいませんか?」
カズマの屋敷に執事風の男性が訪れた。
「はい…、どなたですか?」
「私、ダスティネス家の執事をしておりますハーゲンと申します。ララティーナお嬢様はおられますでしょうか?」
「いますよ、とりあえず立ち話もなんですから、どうぞ」
玄関から出てきたのはクリスであり、ハーゲンをリビングに案内した。そこではカズマとキョウヤがカードゲームをしており、カズマの周りにはめぐみんとゆんゆん、ダクネスが。キョウヤの周りにはフィオとクレメアがいた。
「僕のターン、ドロー!僕は『マッド・デーモン』を攻撃表示で召喚!バトル!『マッド・デーモン』で「メインフェイズ終了時に
「俺のターン、ドロー!俺は魔法カード『古のルール』を発動!手札の
「……いや、無いよ」
「なら、俺は
「なっ!?」
キョウヤは伏せていたカード『次元幽閉』と『万能地雷グレイモヤ』を墓地へ送った。
「まだまだ行くぜ!手札から魔法カード『カオス・フォーム』発動!手札に戻した『青眼の白龍』を墓地に送り、『ブルーアイズ・カオスMAXドラゴン』を儀式召喚!バトル!『ブルーアイズ・カオスMAXドラゴン』で『マッド・デーモン』に攻撃!」
「…『マッド・デーモン』の効果で、このモンスターを守備表示に変更する」
「『ブルーアイズ・カオスMAXドラゴン』の効果!このモンスターが相手の守備表示モンスターを攻撃し、攻撃力が守備力を上回っていた場合、その差の"2倍"のダメージを相手に与える!」
「……僕の負けだね」
カズマのモンスターの攻撃によってキョウヤの
「いや~、途中からヤバかったな。このターンで『青眼の白龍』を引けたのは幸いだった」
「そうだったんだ。次は負けないよ」
カズマとキョウヤはカードを束ねながら反省会をしていた。
「カズマ~、ダクネスにお客さんだよ」
「む?ハーゲンではないか。ここには緊急の用事以外顔を出さない様に言っていたはずだが…」
「ただいま~。あれ?お客さん?」
カードを片付け終えたのを合図にクリスがカズマに声を掛けると、ダクネスが反応し、ハーゲンが屋敷にいる事に疑問を持った。そこに外で特訓をしていたダスト、リーン、テイラー、キースが戻って来た。
「はい、その緊急の用事でございます。このままでは、お嬢様の唯一の取り柄が失われてしまいます!」
『唯一の取り柄?』
「…胸か」
「胸ね」
「胸だな」
「胸だろ」
「…胸」
「胸?」
「あ~…、打たれ強い所…かな?」
「「いじめられるのが好き」」
「え~っと…」
ダクネスの取り柄と聞いて、ダスト、リーン、テイラー、キース、めぐみん、クリス、キョウヤ、フィオとクレメア、ゆんゆんの順番で口にした。
「いやいや、他にあるだろ!?ってかクリスにめぐみんは知ってるだろう!」
「ダクネスの取り柄ってダスティネス家のご令嬢だろ?」
ダクネスが突っ込みを入れると、カズマがサラッと答えを口にした。
「そうだ、流石はカズマ!それに比べ…、お前達は!」
「まあ一番マシな答えはキョウヤだったな」
「そんな和気藹々としないで下さい!このままでは当家が持つ貴族の資格を剥奪され、お嬢様が一般人になる可能性が!そうなっては世間知らずなお嬢様の事、そのいやらしい身体を使って生きていくしか…」
ハーゲンも他の皆と同じ考えだったようで、ダクネスの容姿を口にした。
「………」ギリギリ
「お嬢様…、この老体にこれはご無体でございますっ…!何卒…、何卒…!」
ダクネスは無言でハーゲンの首を絞め始めた。
「おいダクネス、お前をここまで育ててくれた執事さんへの恩をそんな仇で返すなよ」
そこにカズマがダクネスの腕を取り、止めさせたのだった。
「それで執事さん、家督が奪われる程の緊急の用事って何なんだ?」
「ゴホッ…、ゴホッ…。はい…、実は…」
ハーゲンは懐に入れていた手紙をテーブルに置いた。
「おや…?この封蝋…、王家の物だね」
「知ってるのかキョウヤ?」
「うん、僕がこの街を拠点にする前は王都を拠点にしていたからね。時々王家から勅命を受ける事があったんだ、こんな風に封蝋をした手紙をもらったりね」
キョウヤは手紙を持ち上げて、封をしていた蝋を指差した。
「ふーん…、なあ、手紙読ませてもらってもいいか?」
「はい、寧ろサトウ様が当事者と申しますか…」
ハーゲンはしどろもどろになるが、カズマはお構い無しに手紙を広げた。
「何々…『数多の魔王軍幹部を倒し、この国に多大なる貢献を為した偉大なる冒険者、サトウカズマ殿。貴殿の華々しいご活躍を耳にし、是非お話を伺いたく。つきましてはお食事などをご一緒出来ればと思います。ベルゼルグ・スタイリッシュ・ソード・アイリス』」
「アイリスと言えば知らない人はいないと言う国の第一王女の名前ですね」
「すごいじゃないかカズマ君!王女様からお食事の誘いを受けるなんて!」
キョウヤは興奮しながらカズマに詰め寄った。
「まあ、名誉な事には違いなさそうだから、この誘いを受けるか」
カズマは王女からの誘いを受ける事にしたのだった。
…
……
………
それから数日後、カズマ、クリス、めぐみん、ダクネス、そしてアスタとキョウヤはダクネスの実家であるダスティネス家に来ていた。因みにダスト達はと言うと、絶対に緊張して粗相をしかねないとの事で、カズマとダクネスの二人から留守番を言い渡されたのだった。
「いいなお前達、何度も言うようだが相手は一国の姫君だ。くれぐれも粗相の無いようにな」
「分かってるわ、ダクネスの家の名に泥を塗るような真似はしないから」
水色のドレスを身に纏ったアスタはうんざりした様子で答えた。
「大丈夫ですよ、私とて自分の言動がどう転ぶのか弁えています。紅魔族流の派手な演出をしようとあれこれ仕込んでいましたが、カズマにドレスを捲られて没収されましたから」
黒のドレスを身に纏っためぐみんもアスタに同意するかのように答えた。
「あはは…、流石にそれはカズマに没収されるよ…」
白いドレスを身に纏ったクリスは、苦笑いしながら頬を掻いていた。
「しかし…、僕まで出席しても良かったのかい?」
ワインレッドのスーツを着たキョウヤがカズマに質問する。
「ダクネスだけじゃ重荷になるからな、多少なりとも王族に顔が利くお前がいれば、ダクネスも不安が無くなるだろ」
カズマは以前厄介になった時に頂戴した執事風のスーツを着て、キョウヤの質問に答えた。
「では参ろうか。良いな?くどいようだが、くれぐれも粗相はしないようにな」
ダクネスも普段の格好では無く、ドレス風の服を着て、王女がいる部屋へと皆を連れていった。
「ここだ、失礼します」
そして扉の前に立ったダクネスが扉を開けると、豪華な食事が並んでいるテーブルの上座に少女が座っており、騎士風とウィザード風の側近らしき女性二人が両脇を硬め、更に部屋の端にはメイドが並んでいた。
「お待たせしました、アイリス様。この者が我が友であり、パーティーのリーダーであるサトウカズマと仲間のアークプリーストのアスタ、盗賊のクリス、紅魔族でアークウィザードのめぐみん、そして魔剣の勇者ミツルギです」
ダクネスはカズマ達を紹介し、紹介されたカズマ達はその場で膝を付き、頭を下げた。
「お初にお目にかかります、私がララティーナお嬢様からご紹介いただきましたサトウカズマと申します。以後お見知りおきを」
カズマは頭を下げながら挨拶をし、頭を上げて微笑んだ。
「………」
「…?あの…」
アイリスはカズマの微笑みを見て呆然としてしまい、カズマはアイリスの側近に視線を向けて首を傾げた。
「…失礼」
騎士風の側近がカズマの視線に気付き、一言断りを入れてアイリスに近寄った。するとアイリスはまるで正気に戻ったかの様に体を震わせると、近寄った騎士風の側近の一人に耳打ちをした。
「『呆けてしまって申し訳ない、感銘な紹介ありがとうございます。さあ、席に着いて冒険譚を』と仰せだ」
騎士風の側近はアイリスが耳打ちした事を話し、カズマ達は着席した後、カズマの冒険譚を拝聴するのだった。
…
……
………
「……と、まあこんな具合で、俺達は仲間達の協力もあって、ハンスの討伐に成功した訳です」
「『凄いわ!あなたの様にハラハラした戦い方をする人を初めて知りました!他の冒険者の方はお話は確かに凄いのですが、絶対に負けない勇者が一方的にモンスターを退治するお話ばかりでしたので…!』と、仰せだ」
カズマはベルディアとの戦いから最近戦ったハンスの事を途中に嘘を交えながら話すと、アイリスは目をキラキラさせながら聞いていた。
「『カズマ様は冒険者になる前はどんな仕事をなさっていたのですか?』と、仰せだ」
「そうですね…、この国に来る前は"学校"と言う所に通って勉学を学んでいました。この国の流儀で言えば"学院"や"学園"と言った方が分かりやすいかと…」
「『なるほど…、そこで魔法等を学ばれたと言うのですね』と、仰せだ。…しかし、そんな貴殿がミツルギ殿に勝った事があるとは…。カズマ殿、無礼とは思いますが貴殿の冒険者カードを拝見させてはもらえないでしょうか」
カズマは何の躊躇も無くカードを側近の一人に渡した。
「ありがとうございます。…職業は『冒険者』、最弱職ですか。……あの、ここに『ドレインタッチ』があるのですが、このスキルは確かリッチーが持つスキルでは?」
「確かに『ドレインタッチ』はリッチーが持つスキルの一つです。それはとあるダンジョンに住んでいた心優しいリッチーに教わりました。信じられないかもしれませんが、そのリッチーの名誉の為に言います。事実ですので」
カズマはドレインタッチを覚えた経緯を言う。
「そうでしたか…。ふむ、やはり貴殿がミツルギ殿に勝ったと言う事は信じられません。ミツルギ殿、彼の話に嘘偽りは?」
「彼の為に言いますが、全て事実です。僕は彼に勝負を挑み、そして負けました。それからは彼が言った通りです」
「しかし、彼が覚えているのは『ドレインタッチ』の他には『窃盗』と初級魔法が幾つか。これで貴殿に勝ったと思う方が無理だと「失礼ですが」な…、何か」
「僕は事の真偽の前に言いました、『彼の為に』と。今あなたが言っている事は、彼を侮辱している事と同義です」
キョウヤは騎士風の側近が言った事に異議を唱えた。そこにアイリスが騎士風の側近の袖を引っ張り、耳打ちをした。
「アイリス様はこう仰せだ。『ミツルギ様が仰るのであれば、事実でしょう。ですが、実際に見てみなければ分かりません。なので、今この場で勝負の再現を』と」
側近の代弁にカズマ達全員が絶句した。
「申し訳ございません、流石にそれは…」
「できないと言うのか?ならカズマや貴殿が言った事は嘘と言う事になるが」
「できない訳ではありませんが…」
キョウヤは言い淀む。その理由はカズマにあるのだが、キョウヤはそれを口にしなかった。
「もういいよキョウヤ、ありがとう」
「カズマ君…」
「彼が言い淀んだ理由ですが、俺が持つ"固有スキル"の性です。その固有スキルの名は『響鬼』と言いまして、姿形が雄のオークに似ている為、皆さんが刃を向け、再現を邪魔されないか心配だったからです」
カズマはキョウヤが言い淀んだ理由を察し、自分の口から再現できない事を話した。すると
「アイリス様は『理由は分かりました、ですが嘘を吐かれた事で気分を害しました。その最弱職の嘘付き男には冒険譚の褒美をとらせますので、それを持って早々に立ち去りなさい』と、仰せだ」
アイリスの代弁に全員がまた絶句した。
「お待ち下さいアイリス様!彼は嘘なんか言ってはいません!」
「そうです。なので先程の言葉を訂正し、彼に謝罪をしては頂けます様お願い致します」
キョウヤは思わず席から立ち上がり、ダクネスは落ち着いた表情でアイリスにカズマへ謝罪する様お願いした。
「何を言われるダスティネス卿!アイリス様に一庶民に謝罪せよなどと…!」
「…謝りません、謝りません!!嘘ではないと言うのなら、そこの男にどうやってミツルギ様に勝ったのかを説明させなさい!それができないと言うのなら、その男は弱くて口だけの嘘吐き…」
アイリスが言い終わる前に、ダクネスがアイリスの頬を叩いた。
「…な、何をするかダスティネス卿っ!!」
「あっ!ダ…、ダメ…!」
騎士風の側近が剣を抜いた瞬間
ドスッ…
剣が"カズマの腕"を貫いた。
「なっ…!?」
「~痛っつう…」
「カズマっ!」
カズマの腕を剣が貫いた事で全員が驚いた。
「カズマ!アスタ、早くヒールを!」
「駄目よ、先に剣を抜かないと二度手間になるわ」
「あ…、あぁ…」
剣を持った側近は弱々しい言葉を発しながらカズマの腕から剣を抜いた。
「だ…、大丈夫ですか?」
アイリスは誰よりもいち早くカズマの下へ走り、ドレスに着いていたリボンを外し、カズマの服を捲り、リボンを腕に巻いた。
「大丈夫ですよこれくらい」
カズマは痛みはあるが、アイリスを心配させまいと気丈に振る舞った。
…
……
………
「本当に、申し訳なかった!」
「いやもういいですよ!何回謝罪するつもりですか…」
あれから、カズマはアスタのヒールを受け、傷も痛みもさっぱり無くなり、事なきを得た…のだが、カズマを刺した騎士風の側近は何度も頭を下げ、謝罪していた。
「カズマもこう言っていますので、これで良かったではないですか」
「…そうですね」
騎士風の側近はダクネスに言われ、頭を上げて微笑んだ。
「アイリス様、それはご自分の口でおっしゃった方が良いですよ?それに、きっと大丈夫です。カズマ様は気にしてらっしゃらない様ですので」
アイリスはウィザード風の側近に耳打ちすると、側近はクスクスと笑いながらカズマを見ていた。
「……っ、あの、嘘吐きだなんて言って、ごめんなさい。それで…あの、また…冒険話を聞かせてくれますか?」
アイリスは意を決してカズマに謝罪し、上目遣いで冒険話をおねだりした。
「……もちろんですよ」
カズマは屈んでアイリスと目線を合わせると、微笑みながら了承した。
「ーさて、我々はこれで城に帰るとします。皆様方、大変ご迷惑をおかけしました。それでは行きますよ、アイリス様」
ウィザード風の側近が杖で床を突き、魔方陣を展開した。
「王女様、またいつか冒険話をお聞かせしに参りますので」
「……何を言っているの?」
「えっ?」
ウィザード風の側近がテレポートを発動する寸前、アイリスがカズマの腕を引っ張り、魔方陣に巻き込んだ。そしてカズマはアイリスと側近二人と一緒に王城までテレポートしてしまった。
「あの…、ここってもしかして…」
「また私に冒険話をしてくれるって言ったじゃない?」
アイリスはにっこり微笑むが、カズマは心底疲れた顔をした。