この素晴らしい世界に祝福の音色を   作:レイファルクス

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第32話

 

 

「え~…、サトウカズマ様。ようこそ当城へ。客人としてお招きしたのですから、色々な気遣いは無用です。ちなみに当面はここがあなたの部屋となりますので、どうぞお寛ぎ下さい。では冒険話の続きを!…との事です」

 

 

「いやいやちょっと待って下さい魔法使いのお姉さん!色々急過ぎて考えが追い付かないんですが!?」

 

 

アイリスはカズマを城へ招待(らち)した後、用意させた部屋に招くと、冒険話の続きを催促したが、カズマは余りにも急な展開で思考が追い付いていなかった。

 

 

「何でしょう?ああ…、私の事はレインで結構です。一応は貴族の端くれですが、ダスティネス家とは比べるまでもない小さな家ですし…」

 

 

「ではレインさんと呼ばせていただきます。あの…、これって誘拐では…?」

 

 

「呼び捨てで結構ですのに…。後、アイリス様がお招きしましたので、誘拐ではありませんよ」

 

 

「いや当人の了承を得る前に連れて行ったら誘拐になるから!そもそも…、冒険話の続きと言っても、先程の話で全部終わってしまったのですが…」

 

 

カズマは申し訳なさそうに話すと、レインはその事をアイリスに伝える。

 

 

「カズマ様、あなたを連れてきてしまったのは、私を叩いたララティーナへの軽い仕返しを兼ねたイタズラと…。突然こんなワガママを言ってごめんなさい。少しだけでもいいので、私と遊んでもらえませんか?…との事です」

 

 

「えっ…?遊んでって…」

 

 

「カズマ様、アイリス様は常に厳格な王族である事を強いられ、普段から聞き分けが良かったのですが、初めてこのような行いに出たのです。…私からもお願いします。アイリス様の初めてのワガママに免じてしばらく遊び相手を務めて頂けないかと…」

 

 

レインの耳打ちにカズマは暫く考えると

 

 

「分かりました、俺なんかで良ければ」

 

 

レイン…いや、アイリスのお願いを承諾したのだった。

 

 

「ありがとうございます。ダスティネス卿にはこちらからご連絡致しますので」

 

 

レインはそう言って退室した。

 

 

「カズマ様…、私のお父様は将軍やお兄様と共に魔王軍との最前線となる街へ遠征に行っておりますので、多少の事なら誰も咎める者はおりません。なので二人きりの時等は普段ララティーナと話している時の言葉遣いで結構です。教えて下さい、城の外の事を色々と!」

 

 

「分かり…いや、分かった」

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「アイリス様は?」

 

 

「はっ、客人と中に」

 

 

レインが退室してから暫くして、騎士風の側近が扉の前まで来ると、護衛にアイリスの事を尋ねる。護衛はカズマと一緒に中にいる事を伝えると、騎士風の側近は扉を開け、入室した。

 

 

「私のターンです、ドロー。私は『ゴブリンドバーグ』を攻撃表示で召喚します。この召喚に何かしますか?」

 

 

「いや、しないよ」

 

 

「では召喚成功と言う事で、『ゴブリンドバーグ』の効果を発動します。手札からLv(レベル)4以下のモンスターを一体特殊召喚します。私は『ゴゴゴゴーレム』を攻撃表示で特殊召喚します」

 

 

「その特殊召喚にチェーンして(トラップ)カード『奈落の落とし穴』を発動。相手が攻撃力1500以上のモンスターをフィールドに出した時に、そのモンスターを破壊してゲームから除外するよ」

 

 

「はぅ…。『ゴブリンドバーグ』の効果によって、このモンスターは守備表示になります。…他に出せるカードがありませんので、このままターンエンドです」

 

 

「なら俺のターンだな、ドロー。俺は儀式魔法『カオス・フォーム』を発動。手札の『青眼の白龍』を墓地に送って『ブルーアイズ・カオスMAXドラゴン』を儀式召喚。バトルフェイズに移行して、『ブルーアイズ・カオスMAXドラゴン』で守備表示の『ゴブリンドバーグ』に攻撃。この時に『ブルーアイズ・カオスMAXドラゴン』の効果で、2倍の貫通ダメージを与えるよ」

 

 

「……負けました」

 

 

「……何をやっておられるのですか?」

 

 

決闘(デュエル)が終わったのと同時に騎士風の側近が二人に声を掛けた。

 

 

「あっ、クレア!」

 

 

「騎士のお姉さん、今アイリス"様"とやっていたのは、俺とキョウヤの故郷で流行しているゲームですよ」

 

 

「騎士のお姉さん…。あっ、失礼。まだ自己紹介をしていませんでしたね、私はダスティネス家と並ぶ貴族"シンフォニア家"の長女で"クレア"と言います。……それと、なぜアイリス様は不服そうな顔を?」

 

 

カズマがアイリスに"様"を付けて呼んでいる時に、アイリスは頬を風船のように膨らませていた。

 

 

「信じられないかもしれませんが、彼女から"呼び捨て"で呼んで欲しいと…」

 

 

「カズマ様が仰っている事は本当です、私が呼び捨てで呼んで欲しいと頼みました。でもカズマ様、何で急に様付けなんて…」

 

 

「事情を知らない人、特にクレアさんが聞いたら不敬罪とか言って、剣を突き付けられるかもしれませんからね」

 

 

カズマの説明にクレアは喉を鳴らした。

 

 

「ぐっ…、確かに私ならやりかねんな…」

 

 

クレアはテーブルに広げたままの状態になったカードの束をチラ見する。

 

 

「あ~、もし良ければルールを教えましょうか?それでその後俺と一局…」

 

 

「是非」

 

 

クレアは椅子に座り、カズマはクスリと笑いながらアイリスにも読ませたこの世界の文字に翻訳したルールブックを広げながら、クレアにルールを教えた。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「私はLv4の『ゴゴゴゴーレム』と『ガガガマジシャン』でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!現れろ!No.(ナンバーズ)39、『希望皇ホープ』!」

 

 

「その召喚にチェーンはありません」

 

 

「ならバトル!『希望皇ホープ』でダイレクトアタック!」

 

 

「その攻撃にもチェーンはありません」

 

 

「ならこの瞬間、『希望皇ホープ』の効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、攻撃を無効にする!」

 

 

「ええっ!?折角の攻撃を無効に!?」

 

 

「ご安心下さいアイリス様、私はこの瞬間に速攻魔法『ダブルアップ・チャンス』を手札から発動!攻撃を無効にされたモンスターの攻撃力を2倍にして、もう一度攻撃!」

 

 

「凄いですクレア!これならカズマ様に「残念だけど」えっ?」

 

 

「俺は罠カード『魔法の筒(マジック・シリンダー)』を発動。相手モンスターの攻撃を無効にして、その攻撃力分のダメージを相手に与えるよ」

 

 

「なっ…!?…負けた」

 

 

決闘が終わると、クレアはガックリと項垂れた。

 

 

「惜しかったですクレア。あの攻撃が決まればクレアの勝ちだったのに…」

 

 

「クレアさんは顔に出やすいですからね、さっきのドローで良いカードを引いたのを確信したので、警戒していたんですよ」

 

 

「そうだったのか…。いや、とても面白かったです。またお相手願えますか?」

 

 

「こちらこそ」

 

 

カズマとクレアはがっちりと握手をした。

 

 

『魔王軍襲撃警報!魔王軍襲撃警報!騎士団はすぐさま出撃してください』

 

 

すると魔王軍が襲撃してきた事を告げる警報は鳴り響いた。

 

 

「何だ!?襲撃?」

 

 

「やれやれ、また来たのか。アイリス様はこの部屋にいて下さい、失礼します」

 

 

クレアは迎撃の指揮を取る為に退室しようとする。

 

 

「ちょっと待ってくれ、俺も手伝うよ」

 

 

しかし、カズマがクレアを引き留めた。

 

 

「何を仰るのですか!貴殿はアイリス様のお客人、そんな貴殿を戦線に出させる訳には…」

 

 

「俺だって冒険者の端くれだ、他人(ひと)の幸せを脅かす存在を無視できない。それに…、見てみたくないか?俺の固有スキル『響鬼』を」

 

 

カズマはニヤリと笑う。

 

 

「……分かった。助太刀、感謝する」

 

 

クレアはカズマの申し出を受ける事にした。

 

 

「…クレア、カズマ様。どうかお気をつけて」

 

 

「…招致しました。ではカズマ殿、こちらへ」

 

 

クレアはカズマを連れて騎士団が集まっている所へと向かった。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「クレア様!」

 

 

クレアとカズマが集合場所に到着すると、既に甲冑を着た騎士団が並んでいた。

 

 

「遅れてしまってすまない。皆に伝える事がある、こちらのカズマ殿が今回の迎撃に当たって助太刀を申し出てくれた」

 

 

クレアの説明に騎士団はざわついた。

 

 

「心配するのも無理はない。だが、彼は幾度も魔王軍の幹部と戦い、勝利を納めている猛者だ。きっと心強い味方となる」

 

 

クレアの更なる説明に騎士団のざわつきは収まった。

 

 

「う~ん…、これくらいなら俺一人でも迎撃できそうだな」

 

 

カズマは千里眼スキルを使い、魔王軍の数を確認すると、とんでもない事を言い放った。

 

 

「正気かカズマ殿!貴殿の身に何かあってはアイリス様や貴殿の仲間が心配されますよ!?」

 

 

クレアはカズマに考え直す事を提案する。

 

 

「大丈夫ですよ、俺達冒険者にとって、これくらい日常茶飯事ですから。あっ、これ預かっといて下さい」

 

 

カズマはバッグから烈火を取り出し、バッグをクレアに預けた。

 

 

「本当に行かれるおつもりなのですね…。分かりました。カズマ殿、ご武運を。総員現状維持のまま待機!」

 

 

「…行ってきます、シュッ!」

 

 

カズマは敬礼のようなジェスチャーをして、一人魔王軍の前まで歩いて行った。

 

 

「何だぁ?向こうから一人だけやって来たな」

 

 

「降伏でもするってか?」

 

 

魔王軍の兵士達はカズマを視認すると、ゲラゲラ笑いだした。

 

 

「行くぞ、『音撃道・打』!」

 

 

《打・ダーン!》

 

 

カズマは音角に音声入力をし、響鬼に変身した。

 

 

「んなっ!?何だあの姿は!?」

 

 

魔王軍の兵士達は変身したカズマの姿を見て驚き、その隙を突いたカズマが最前線の兵士に向かって飛び蹴りを喰らわせた。

 

 

「野郎…、やってくれるじゃねぇか!お前ら、やっちまえ!」

 

 

魔王軍の兵士達は次々にカズマへ襲い掛かるが、カズマは器用に攻撃を避けたり、カウンターを喰らわせたりと、たった一人で奮闘していた。

 

 

「チィッ、囲め囲め!囲んじまえばこっちのもんだ!」

 

 

魔王軍の兵士達はカズマを包囲するように動く。

 

 

「ありがとうよ、俺の"思惑通り"に動いてくれて」

 

 

カズマはそう言うと、ベルトに装着されている『爆裂火炎鼓』を地面に張り付けた。すると爆裂火炎鼓は大きくなり、通常の倍くらいある大きさになった。

 

 

「『音撃打・爆裂連打の型』!」

 

 

そしてカズマは烈火を両手で持つと、爆裂火炎鼓を叩き始めた。

 

 

「な…、何だ…?体が…動かねぇ…!」

 

 

魔王軍の兵士達は次々に動かなくなり、飛んでいる兵士達もまた、空から落ち、地面にへばり着いた。

 

 

「ハアアァァァ…、ハアッ!!」

 

 

カズマが最後の一撃を叩き込むと、爆裂火炎鼓を中心に音撃が波紋のように広がり、音撃をその身に受けた魔王軍の兵士達は次々に爆発したのだった。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「ただいま戻りました」

 

 

カズマは頭だけ変身を解き、クレアの下へと戻った。

 

 

「カズマ殿…、その姿は…」

 

 

「ああ、これが話していた『響鬼』です。言っときますけど、俺は魔王軍の手先ではありませんよ?もし疑うのであれば、セナさんに話を聞いて頂いても結構です。何なら『真偽の鐘』を使って頂いても結構ですよ?」

 

 

「…いや、彼女の名を口にするなら貴殿の言った事は本当だろう。とにかく、貴殿に怪我が無くて良かった」

 

 

クレアはゆっくりと、そして確かに微笑んだのだった。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「カズマ様、ご無事で何よりです!」

 

 

部屋に戻ったカズマは、入室した途端アイリスに抱き着かれた。因みにクレアは、戦闘の事後処理の為、カズマと別れた。

 

 

「ただいま戻りました、アイリス様」

 

 

「もぅ…、呼び捨てで良いと言いましたのに…。…でも、本当に無事で良かったです」

 

 

アイリスはカズマの腹に顔を埋めると、カズマはアイリスの頭を撫でた。

 

 

「……何だかカズマ様って、昔の頃のお兄様みたいです」

 

 

「ははっ、なら今だけは俺に甘えても良いんだぞ?」

 

 

「…ありがとうです、"お兄ちゃん"」

 

 

アイリスは満面の笑みを浮かべた。

 

 

「……えっ?」

 

 

カズマはアイリスの"お兄ちゃん"と言う言葉を聞いて、衝撃が走ったのだった。

 

 

 

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