この素晴らしい世界に祝福の音色を   作:レイファルクス

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第33話

 

 

カズマがアイリスの城へ招待(らち)された翌朝…。

 

 

「ん…、朝か…。ふああぁぁぁ~~っ」

 

 

カズマはベッドの上で大きなあくびをする。

 

 

「ってあれ?知らない天井…ってそうか、ここはアイリスの城の一室だったっけ」

 

 

カズマは一瞬自分が今何処にいるのか分からなかったが、昨日の事が鮮明に思い出されていた。

 

 

「さて…、そろそろ起きてトレーニングを…んん?」

 

 

カズマは伸びをしようとするが、何かがカズマの腕に乗っかって動かなかった。カズマは恐る恐る自分の右腕に視線を向けると

 

 

「すぅー…、すぅー…」

 

 

カズマの腕を枕にして寝ていたアイリスの顔が間近にあった。

 

 

「んみゅぅ…」

 

 

しかも寝惚けているのか、カズマが着ているパジャマを掴み、顔がカズマに近づいて来た。しかもその時に肩が露出してしまい、アイリスは"パジャマを着ていない"事が判明した。

 

 

「~~~っ!」

 

 

カズマは近づくアイリスの顔を起こさない様に押し退け、パジャマを脱いでベッドから降りた。

 

 

コンコンコンコンッ、コンコンコンコンッ

 

 

ガチャ「どうかされましたか?」

 

 

そして素早くパジャマから普段の冒険者風の服へ着替え、扉を軽くノックした。すると護衛の一人が扉から顔を覗かせた。

 

 

「はぁ~」

 

 

カズマは素早く部屋から出ると、大きなため息を吐いた。

 

 

「カズマ様、一体どうかされましたでしょうか?」

 

 

「いや、どうも何も…「カズマ殿、どうかされたのか?」…あっ、クレアさん」

 

 

護衛の一人がカズマを心配していると、クレアが部屋の前まで来た。

 

 

「クレア様」

 

 

「ご苦労、そのままで。カズマ殿、アイリス様が何処におられるかご存知ではないか?先程部屋を訪れた時にはもぬけの殻だったのだが…」

 

 

クレアはカズマにアイリスが何処にいるのか質問をすると、何故か護衛の人達が冷や汗を流し始めた。

 

 

「…んっ?どうした、お前達?」

 

 

「アイリス様なら部屋の中にいるよ、しかも"何も着ていない"状態で寝てる」

 

 

「何だと?」

 

 

カズマの言葉を聞いたクレアの表情が一瞬で優しい表情(かお)から怖い表情(かお)になった。

 

 

「確か貴殿は"潜伏"スキルをお持ちでしたな…。まさかそのスキルを使って部屋で寝ていらしたアイリス様を…」

 

 

「誤解しないで下さい、幾ら潜伏スキルを使っても扉の開閉だけはどうしようもありませんよ。扉が開いたり閉じたりしたら、護衛のお姉さん達が気づくはずですよ?」

 

 

「むっ…、そうか」

 

 

カズマの説得にクレアの表情が戻った。

 

 

「それに…、クレアさんがアイリス様の事を聞いた途端、何故か冷や汗を流している様子ですし」

 

 

「何?お前達、何か知っているのか?」

 

 

「じ…、実は…」

 

 

護衛の人達は怯えながら顛末を話した。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「なるほど…、寝惚けたアイリス様が間違えてカズマ殿の部屋に…」

 

 

「私達はお止めしようとしましたが…」

 

 

「制止も聞かずに中に入ってしまった…と言う訳ですか」

 

 

カズマの言葉に護衛の人達は頷いた。

 

 

「クレア様、申し訳ございませんでした!」

 

 

「此度の事は我々の失態!どうかカズマ様を責めないで下さい!」

 

 

「…ふぅ、事情は分かった。今回の事は不問にする」

 

 

クレアの言葉に護衛の人達は胸を撫で下ろした。

 

 

「ところで…、何故アイリス様は何も着ていなかったんですか?」

 

 

「そう言えば、貴殿はそんな事を言っていたな」

 

 

「あの…」

 

 

カズマとクレアが首を傾げていると、扉からアイリスが顔を覗かせていた。

 

 

「アイリス様」

 

 

「何かあったのですか?先程から何か騒がしかったので…」

 

 

アイリスが質問をすると、カズマとクレアは先程の事を説明する。

 

 

「そうでしたか…、あの…お兄様、申し訳ありませんでした」

 

 

「いや気にして無いから別にいいよ。それより、何故俺の部屋に?」

 

 

「お兄様と一緒に寝たくて…、ダメ…でしたでしょうか?」

 

 

アイリスは上目遣いでカズマを見つめる。

 

 

「ダメでは無いが、せめて事前に一声掛けてもらえると助かる。目が覚めたらいきなり顔が近くにあったらびっくりするからね」

 

 

「分かりました。では、これからはそうしますね」

 

 

アイリスは満面の笑みを浮かべると、クレア達は頭を抱えるのだった。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「それで、俺はこれからどうすればいいのかな?アイリス様の教育係とか?」

 

 

トレーニングと朝食を終えたカズマは、中庭でアイリスとクレアに質問をする。

 

 

「いや、アイリス様の教育係は私ともう一人で担っている。貴殿にはアイリス様の習い事が無い日の遊び相手になって頂ければ」

 

 

「そう言う事ね、了解」

 

 

「ではお兄様、今日は習い事がお休みなので、早速遊び相手になってくれますか?」

 

 

アイリスは上目遣いでカズマを見つめる。

 

 

「もちろん。それじゃ、今日はこれで遊ぼうか」

 

 

カズマはバッグからオセロのボードを取り出した。

 

 

「カズマ殿、これは?」

 

 

「これは"オセロ"って言うボードゲームの一種です。…そうだ。クレアさん、もし時間が良ければ一緒にやりませんか?」

 

 

「誘ってくれるのか?是非とも」

 

 

「では、あちらにテーブルがありますから、そこでやりましょう!」

 

 

アイリスはカズマとクレアの手を握り、東屋へと二人を引っ張ったのだった。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「カズマ殿、もう一局!もう一局!」

 

 

「クレアさん、一体何回するおつもりですか…」

 

 

カズマ達がオセロを始めてから数時間後、クレアはカズマに再戦を要求していた。

 

 

「そうですよクレア!私なんてまだ数回しかしていないのに…」

 

 

「クレア!やっと見つけました!」

 

 

そこにレインが慌てた様子で走って来た。

 

 

「レインではないか、どうしたのだ?」

 

 

「どうしたもこうしたも、今何時だと思っているのですか!?」

 

 

「もうだいぶ日が傾いて来ていますね…」

 

 

「そろそろ夕食の時間帯か?」

 

 

クレアは仕事があるにも関わらず、カズマとの勝負に熱中してしまい、仕事をすっぽかしてしまったのだ。

 

 

「今日は寝られると思わないで下さいね!?」

 

 

「なぁ!?痛い痛い!レイン、耳を引っ張るな!カズマ殿、もう一局、もう一局だけ~っ!」

 

 

クレアはレインに耳を引っ張られながら、東屋を去った。

 

 

「……後でレインさんにお詫びの品でも持っていこう」

 

 

「その方が良さそうですね。…それで、お兄様。今日も一緒に寝ても、いい…ですか?」

 

 

アイリスはまた上目遣いでカズマを見つめる。

 

 

「もちろん。護衛のお姉さん達やレインさんには、俺から伝えとくよ」

 

 

「ありがとうございますっ!」

 

 

この後、カズマとアイリスは同じテーブルで夕食を食べ、別々に入浴した後、同じベッドで眠った。因みにこの後判明した事だが、アイリスは寝惚けている時に服を脱ぐ事がよくあるようで、翌朝カズマが起きた時に、昨日と同じ状況になっていたのだった。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「ーと、この様な理由から、代々王族の方々は一般人よりも多くの才を持ってお生まれになり、魔王を倒した勇者を婿に迎える事は、単に勇者への褒美というだけでなく…」

 

 

この日はアイリスの勉強の日であり、アイリスの遊び相手であるカズマは暇を持て余していた…訳では無く。

 

 

「おぉ…!カズマ殿がクレア様と互角に戦っている…!」

 

 

「クレア様は昨日徹夜だと伺ったのだが、それに劣らない剣技だ…!」

 

 

午前中はクレアに頼み、騎士団の稽古に飛び入りで参加したり。

 

 

「ごめんなさいね、カズマ様。私の買い物の手伝いをさせてしまって…」

 

 

「構いませんよ。それに、こちらから王都の案内をお願いしたんですから、荷物持ちくらい余裕ですよ」

 

 

「カズマ様って律儀ですね、昨日だって熱中したクレアが悪いのに、カズマ様がお詫びの品として甘い食べ物を持って来てくれたじゃないですか」

 

 

午後はレインと一緒に街へ買い出し(と言う名の観光)。

 

 

「お兄ちゃん、今日は昨日教えてくれたカードゲームをやりたいです!」

 

 

「よしきた!負けないぞ!」

 

 

夜はアイリスとゲーム。

 

 

そんなこんなで、あっという間に一週間が過ぎた。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「俺がこの城に来て、もう一週間か…」

 

 

この日カズマは部屋のベッドで寝転がっていた。と言うのも、アイリスはクレアと勉強、レインは実家に用事がある為、昨日の夜に帰省しており、トレーニングを終えたカズマは手持ちぶさたになっていたのだ。

 

 

「アイリスは表情が豊かになってきたな、最初の頃はあんまり感情を表に出さなかったのに…。それに釣られたのか、クレア"姉さん"やレイン"姉さん"も、よく笑う様になったな…」

 

 

この一週間、クレアとレインはカズマとよく話す様になり、アイリスがカズマの事を"お兄様"と呼んでいるからなのか、二人はカズマの事を弟の様に接していた。

 

 

カズマも二人の事を姉の様に思っていたのか、名前の後ろに姉さんを付けて呼んだら、二人に『これからはそう呼んでほしい!』と言われたのだ。

 

 

コンコンコンコンコンコンコンコンッ

 

 

すると扉が"八回"ノックされた。

 

 

「(誰だ?もしかしていつもベッドメイクをしてくれているメアリーさんかな?でも、ノックの音が八回鳴ったって事は…)めぐみんとクリスか?」

 

 

ガチャ「正解~っ!」

 

 

「カズマっ!」

 

 

扉が開かれると、そこからお洒落したクリスが顔を覗かせ、更にめぐみんが扉を開き、カズマめがけてダイブした。

 

 

「あら随分と豪華な部屋にいるわね」

 

 

「失礼するぞ」

 

 

「アスタにダクネス、それにキョウヤも。随分と遅いお迎えだな」

 

 

カズマはめぐみんの頭を撫でながらアスタ達に視線を向けた。

 

 

「クレアから聞いたぞ、何でもアイリス様の遊び相手になってくれているそうだな」

 

 

「彼女からのお願いでね、カードゲームやオセロとかで遊んだよ。最も、熱中したのはクレア姉さんとレイン姉さんだけどね」

 

 

カズマは苦笑しながら反対の手でクリスの頭を撫でる。

 

 

「それで?城に残るの?それともアクセルに帰るの?」

 

 

「流石に帰らないとまずいからな、めぐみんの禁断症状で屋敷が大変な事になってるだろうし」

 

 

「屋敷なら無事ですよ、流石の私も住む所が無くなるのは嫌ですし。禁断症状は出てはいましたが、クリスやアスタ達に手伝ってもらって、爆裂散歩を行っていましたから」

 

 

カズマはアクセルに帰る事と決めると、そこにアイリスとクレアが入室した。

 

 

「ララティーナ、お兄様と帰るのですか?」

 

 

「アイリス様、申し訳ございません。アクセルには屋敷もあり、この者を心配する者もいます。かく言う私達も、カズマを心配する者の一角なのです。どうかご理解の程を…」

 

 

ダクネスはカズマと一緒に帰る事を伝えると、クレアはアイリスに耳打ちをする。

 

 

「…でしたら、せめて私の遊び相手になってくれたお礼と言う事で、晩餐会を開きたいのですが…」

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「へぇ~、生ハムメロンなんて初めて」

 

 

「この料理も美味しいです」

 

 

アイリスが晩餐会を提案した後、トントン拍子で開催が決まり、貴族を招いて晩餐会が開かれた。

 

 

「いや何でウニの軍艦巻き…てか寿司があるんだよ?俺、教えた覚え無いぞ?」

 

 

「あはは…」

 

 

アスタ達は以前着ていたドレスに身を包み、カズマは新調したスーツを着て晩餐会に出席していた。

 

 

「ダスティネス卿、パーティー嫌いのあなたがこうした催しに参加されるとは珍しいですね!いや、今宵は参加して良かった!こうしてお美しいあなたの姿を拝見できたのですから!」

 

 

「おっとヴィルヘルド卿、抜け駆けは許しませんよ。ダスティネス卿、お父上のイグニス様はお元気ですか?わたくし、イグニス様にお仕えしていた事がありまして…」

 

 

「ああ!今宵あなたに会えた事を、女神エリスに感謝します!」

 

 

「このパーティーが終わったら、ぜひわたしと…」

 

 

「あなたの美に比べれば百年に一度咲くと言われる月光華草ですら霞んでしまう!」

 

 

カズマは視線を横に向けると、そこにはイケメンの若い男性貴族がダクネスを取り囲んでいた。

 

 

「ミツルギ様、今宵はあなた様にお会いできた事を感謝します!」

 

 

「ミツルギ様、ぜひ私と一曲…」

 

 

「ああ、私も!」

 

 

カズマはダクネスとは反対側に視線を向けると、そこではキョウヤが若い女性貴族達に囲まれていた。

 

 

「こんな所にいましたか、カズマ殿」

 

 

「セナさん、お久しぶりです。元気そうでなによりです」

 

 

そこに王国検察官のセナがグラスを持って現れた。

 

 

「お久しぶりです、そちらもお元気そうで。あなたの名は王国にも広まっておりますよ、何でも魔王軍の幹部を次々と倒した上に、王都を襲撃した魔王軍を壊滅状態にしたとか」

 

 

「自分は出来る事をしたまでですよ、自慢する程ではありません」

 

 

「ご謙遜を、今ではカズマ殿は『音撃の勇者』と言われる程ですよ?」

 

 

セナが口にした二つ名にカズマは飲んでいた飲み物を吹き出しそうになった。

 

 

「……その二つ名、一体誰が?」

 

 

「アイリス様にクレア様とレイン様が」

 

 

「あの三人ですか…」

 

 

カズマは突如付けられた二つ名に恥ずかしさの余り頭を抱えてしゃがんでいると

 

 

「カズマ、どうしたのだ?こんな所で頭を抱えてしゃがみこんで」

 

 

「カズマ君、大丈夫かい?」

 

 

ダクネスとキョウヤがカズマの下にやって来た。

 

 

「ダスティネス卿、ミツルギ殿。お久しぶりです」

 

 

「セナ殿、お久しぶりです。いつぞやの時はお世話になりました」

 

 

「セナさん、お久しぶりです。あの…、カズマ君は何故しゃがみこんでいるのですか?」

 

 

キョウヤがカズマの事について質問をする。

 

 

「カズマ殿ですか?私が彼の二つ名の出所を口にした途端…」

 

 

「こうなった…と言うわけですか」

 

 

ダクネスとキョウヤはカズマの心境を察した。

 

 

「それより、お二人は何故ここへ?」

 

 

「いえ、飲み物を頂こうと思い、辺りを見渡していると、ちょうどお二人を見掛けたので…」

 

 

「僕も彼女と同じで…」

 

 

セナはダクネスとキョウヤが同時に現れた理由を聞くと、二人は飲み物を探していたらしく、そこにカズマとセナが話している所を見つけ、近寄ったらしい。

 

 

「…なら、そこに俺が提供した飲み物があるから、持っていくといい」

 

 

ある程度立ち直ったカズマは側にあるテーブルを指差した。そのテーブルにはグラスに入った飲み物が並んでいた。

 

 

「そうか、ではありがたく頂こう。…んっ、美味しい」

 

 

「…確かに。ワインの風味はあるのに、飲みやすい。カズマ君、この飲み物は一体…?」

 

 

「ダクネスが飲んだのは『ワインメロン』、キョウヤが飲んだのは『ワインスイカ』だ。アルコールが全く入っていないから、酒が苦手な人や子供でも飲めるワインなんだ」

 

 

カズマが飲み物について説明をすると、セナが興味を持ったのか、ワインスイカを一口飲んだ。

 

 

「んっ…、確かにワインの風味があるのに飲みやすいですね。これなら王都で売れば大人気になりますよ」

 

 

「まあそれは追々「お兄様」…って、アイリス様」

 

 

そこにアイリスが近寄って来た。

 

 

「お兄様がご提供して下さった飲食物が、大変人気になりまして。厨房の方々が嬉しい悲鳴を上げているとクレアから聞きまして」

 

 

「そうですか、後で厨房の方々にお礼を言わないと。…ところで、そのネックレスは?」

 

 

「これですか?これは今遠征に赴いている私の本当のお兄様が下さったネックレスです」

 

 

「…ちょっと拝見させてもらっても?」

 

 

「ええ、…どうぞ」

 

 

アイリスはネックレスを外し、カズマに手渡した。そしてカズマはネックレスをまじまじと見る。

 

 

「あの…、お兄様?」

 

 

「……アイリス、これは恐らく"神器"だ。しかも他者との肉体と魂を入れ換える…」

 

 

「ええ!?」

 

 

カズマの真面目な発言にアイリスは驚いた。

 

 

「こういった神器に詳しい人物を俺は知ってる。…クリス!」

 

 

「ん、なぁに?」

 

 

カズマは近くで食事をしていたクリスを呼び、クリスはカズマに近寄った。

 

 

「クリス、これなんだが…」

 

 

「ちょっと見せてもらうね。……カズマ、これ神器だよ。しかも入れ替わりの魔法の類いの」

 

 

クリスはネックレスを見た途端、表情を固くした。

 

 

「何でそんな物をお兄様は…」

 

 

「アイリス様、これは裏に書かれている呪文を唱えると発動する神器です。……もし宜しければこちらで厳重に封印しますが」

 

 

「はい…、よろしくお願いします…」

 

 

アイリスは覇気の無い返事をするので精一杯な感じだった。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

翌日…

 

 

「クレア姉さん、レイン姉さん。この一週間、お世話になりました」

 

 

めぐみん、クリス、アスタ、キョウヤを連れたカズマは、二人に頭を下げていた。

 

 

「いや、こちらこそ有意義な一週間だった。…カズマ殿、もし次に城へ訪れた際には、ゲームの決着を着けましょう」

 

 

「もちろんです!」

 

 

クレアとカズマはがっちりと硬い握手をした。

 

 

「カズマ様、私達はあなたの事を可愛い弟と思っています。…もし寂しくなったら、いつでも来て下さって構いませんからね?」

 

 

レインはカズマを抱きしめ、頭を撫でた。

 

 

「ありがとうございます。その…、アイリス様は…」

 

 

「……あの後、まるで塞ぎ込むように部屋からお出にならない」

 

 

「余程ショックだったのでしょうね…」

 

 

そう、アイリスはカズマ達の見送りの場に来ていなかった。

 

 

「でしたら、『一緒に過ごした一週間は、とても楽しかった』と伝えて下さい」

 

 

「分かりました。アイリス様も、きっと同じ気持ちですよ」

 

 

「カズマー!荷物、入れ終わったわよーっ!」

 

 

アスタはカズマに荷物を入れ終わった事を伝える。実はアイリス、クレア、レイン三人の計らいで、カズマに服や食糧などをお礼の品として贈呈していたのだ。そしてアスタとクリスの二人がバッグにしまっていたのである。

 

 

「分かった!…では、俺はこれでアクセルに帰ります。ありがとうございました」

 

 

カズマはアスタ達がいる所へと駆け寄る。

 

 

「…では、皆さんをダスティネス家までテレポートします。これからのご活躍をお祈りします」

 

 

レインはテレポートを発動させる為の詠唱に入る。

 

 

「クレア姉さん!レイン姉さん!元気で!!」

 

 

「……テレポート!」

 

 

カズマは二人に別れの挨拶をし、アクセルへと帰ったのだった。

 

 

「……行ってしまったな」

 

 

「そうね…。でも、何か近い内にまた会えそうな気がするわ」

 

 

二人はカズマが去った後を見て、感傷深くなっていた。

 

 

「…さて、私はアイリス様にご報告に行ってくるよ」

 

 

「私も付き合うわ」

 

 

クレアとレインは二人揃ってアイリスの部屋へと向かった。

 

 

コンコンコンコンッ

 

 

「アイリス様、クレアとレインです。…アイリス様?」

 

 

クレアはノックをするが、中から返事が返って来なかった。

 

 

「アイリス様…、失礼します」

 

 

クレアは意を決して扉を開けると、そこにはアイリスの姿が無かった。

 

 

「アイリス様…?アイリス様!?」

 

 

「アイリス様、何処におられるのですか!?」

 

 

クレアとレインは必死になってアイリスを探す。

 

 

「一体何処に…、んっ?」

 

 

クレアはテーブルの上にある紙に気づき、持ち上げた。

 

 

「これは…、レイン!」

 

 

「クレア、どうしたの?何か見つかった?」

 

 

「これを…」

 

 

クレアはレインに先程の紙を渡す。

 

 

「……これは!?」

 

 

二人が見た紙とは…?

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「う~ん…、久しぶりのダクネスの家だぜ」

 

 

時を戻して、カズマ達はダクネスの実家にいた。

 

 

「それでカズマ、クレア達から受け取った品だが、どうするのだ?」

 

 

「流石に量が多すぎるから、ダクネスの実家に幾つか迷惑を掛けたお詫びとして渡そうと思う」

 

 

カズマはバッグに入れた荷物を全て取り出すと、ダクネスの実家に渡す物だけを選別しようと荷物の蓋を開ける。

 

 

そして箱の一つの蓋を開けた瞬間、カズマはゆっくりと蓋を閉めた。

 

 

「ははは…、疲れているのかな…?」

 

 

「カズマ、どうしたのだ?」

 

 

カズマの様子を見ていたダクネスは、カズマに近寄る。

 

 

「いや、この箱の中を見たんだが…、"あり得ない"光景だったから…」

 

 

カズマは箱の中身をダクネスに伝え、ダクネスは箱の蓋を開けた。そしてダクネスはカズマと同じ行動をした。

 

 

「カズマ…、これは一体…」

 

 

「もうっ、ララティーナもお兄様もひどいですわ!」

 

 

「「アイリス(様)!!?」」

 

 

蓋を押し退けたのは、城の部屋にいる筈のアイリスだった。

 

 

「アイリス、何で荷物に紛れてこっちに来たんだ?」

 

 

「お兄様と少しでも一緒に居たかったからです!それに、部屋に書き置きを残してあるので、心配ありません♪」

 

 

満面の笑みで言い放ったアイリスに、カズマとダクネスは頭を抱えたのだった。

 

 

 





ワインスイカ 捕獲レベル1以下

ワインメロン 捕獲レベル1以下


畑で採れるワインボトルの様な形のスイカとメロン。

ワインの様な味を香りだが、アルコール度数は0.00%と、アルコールが全く入っていない。

だが熟成させると、アルコールが生成される為、熟成されたワインスイカとワインメロンは高値で取り引きされている。


果肉は無く、中は果汁と種のみだが、種には微量の"毒"があり、そのまま飲むと種を飲み込んでしまうので、注意が必要。
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