ここは王都にある貴族の屋敷。その屋敷の地下に通じる階段を一人の男性がランタンを片手に降りていた。
そして階段を降りた先にある部屋に、眼鏡を掛けた一人の男性が『ヒュー…』、『ヒュー…』と音を立てながら寝そべっていた。
「おい"マスク"、起きろマスク!」
貴族は寝転がっていた男性を"マスク"と呼びながら蹴り起こした。
「ヒュー…、ん…あ…。やあ"アルダープ"、僕に何か用なのかい?」
起きたマスクは貴族を"アルダープ"と呼んだ。そう、マスクを蹴り起こしたのは、アクセル領主のアルダープだった。
「用が無ければ貴様なんぞの元に来るか!」
アルダープは苛立ちながらマスクを何度も足蹴にする。
「いいい、痛いよアルダープ~。ヒュー…、でも今日も心地良い感情を発しているね」
「(バカにしおって、この"悪魔"め!)いいから仕事だ!ワシの神器がどこかの盗賊に盗まれた上に、封印を施されたらしい。それを取り返し、封印を解くのだ!分かったか?」
「アルダープアルダープ!それは無理だよ!だって…、神器の場所がまず分からないし…、本当に封印がなされたのなら僕にはどうしようも…」
「そんな事もできないのか役立たずめが!貴様は一体いつになったらワシの願いを叶えるのだ!!」
苛立ったアルダープはマスクを何度も足蹴にする。
「ええい物覚えの悪いヤツめ、命令を下してもすぐに忘れおって!いいか?ララティーナだ!貴様はララティーナを連れて来ればいいのだ!!」
「…くそ、うまくいってると思って油断したわ。あの神器だけは何としても取り返せさなくては…!(やはり焦って王子の体など狙うものではなかったな…。ララティーナと婚約を結んだ王子の体を乗っ取り、望むものを手にする…。そんな一度で全てが叶うチャンスを…!王子の手に神器が渡ってしまえば、後は呪文を唱えてこの体を壊すだけで全てが手に入ったのに。悔やんでも悔やみきれないが、今は神器を探す事が先決…)」
アルダープは自分の手を見つめていると、マスクがニヤニヤしながらアルダープを見ていた。
「くそが!(こんな事なら、いつまでももったいぶらず、息子のバルターと体を入れ替えておけば良かった!このまま神器が戻らなければ、わざわざ
「ヒュー…、素晴らしい、素晴らしいよアルダープ!欲望に忠実で残虐で…。そんな、きみが好きだよアルダープ!早く…早くきみの願いを叶え、報酬が欲しいよアルダープ!さあ、僕に仕事をおくれよアルダープッ、アルダープ!!」
アルダープはマスクを足蹴にし、欲望を露にする。それを見ていたマスクは興奮した。そのマスクには本来あるべき"後頭部が無かった"。
「(全く…、本当にコイツは何なのだ。何度ワシの願いを叶えても、叶えた事自体忘れる能無しめ!)」
アルダープはポケットに手を突っ込む。
「(…簡単に報酬を踏み倒せるのでなければ、とっとと
ポケットから手を出したアルダープの手には、一つの宝石みたいな物が握られていた。
「まあいい、ワシの願いはたった一つだ!ララティーナを連れてこい!アレはワシの物だ!」
…
……
………
「え~っと…、御存じとは思いますが…、ベルセルク・スタイリッシュ・ソード・アイリスです」
「皆、しばらくの間だが俺達のパーティーに入る事になったから、よろしく頼む」
『なったから…じゃ
カズマは留守番メンバーにアイリスを紹介したのだが、留守番メンバーは口を揃えて叫んだ。
「お前が王女様に誘われてダクネスの家に行ったと思ったら城まで連れて行かれて、そして一週間も帰って来なかったと思ったら今度は王女様を連れて来やがって!何だよ?俺達の頭を沸騰させたいのかよ!?情報が多過ぎて頭が混乱しそうだぞコラ!」
ダストの言い分に留守番メンバー全員が頷いた。
「だってしょうがないだろ?アイリスにとって冒険話は厳格な城の中での唯一の楽しみだったんだから。それにアイリス自身から頼まれたんだよ、『遊び相手になってほしい』って」
「で…でもよ、こんな所に王女様が来ちまったら流石に向こうも慌てるんじゃ…」
「それは俺も予想できたから、ダクネスとキョウヤの二人に、もう一度王都に向かって来れたから大丈夫だ」
そう、カズマはダクネスの家から戻る前にダクネスとキョウヤにお願いし、王城にいるクレアとレインの元へアイリスの事を伝えに向かったのだった。
「とりあえず、今日はもう遅いから早速飯を作るな?ダスト達男性陣は掃除を、女性陣はアイリスと一緒に風呂に入ってくれ」
カズマはテキパキと指示を出すと、ダスト達は久しぶりのカズマの飯を堪能する為に張り切ったのだった。
…
……
………
「さあ飯が完成したぞ!今日は豪勢にフルコース料理だ!」
カズマはテーブルに人数分の料理を並べた。
「あれ…?これって、BBコーン…」
「ああ、
「美味しそうです~!お兄ちゃん、このキラキラした物は何ですか?」
アイリスはBBコーンに振りかけられた金色の粉についてカズマに質問した。
「それは『メルクの星屑』と言って、"食べられる砥石"なんだ。その粉だけでも、凄い旨いんだ」
「そうなのですか~、いただきます」
アイリスはナイフでポップコーンを一口大に切り、口に運ぶ。
「あむ…、んっ!飲み込んでしまいました…。美味しいです!」
アイリスはポップコーンを噛まずに飲み込んでしまうと、笑顔になった。それを皮切りに全員がBBコーンを完食した。
「スープは"百年に一度しか採れない幻のスープ"、『センチュリースープ』。バケットの替わりに『薬膳餅のエコのり巻き』を」
カズマが出した皿には、無色透明のスープだった。
「このスープ…、凄く澄んでいる。しかも湯気がオーロラになってて綺麗…」
アスタは
「スープなのに味が濃厚!しかも顔がニヤけちゃう!」
アスタは顔がニヤけてしまい、手で顔を覆ってしまった。女性陣もアスタと同じように顔を隠していた。
「魚料理は『オウガイー
「高級な食材ばっかりね」
アスタ達は出てきた高級魚に驚いた。
「肉料理はその昔、数多の狩人がその肉を食べた事で、仕事を引退したと言われる『完像エンドマンモスのステーキ』。上には空の上にある宇宙から飛来したニンニク、『メテオガーリック』のスライスを乗せたよ。周りには『
「ふあぁ~、食べた瞬間に体がキラキラ光りました!」
アイリスは自身の体が光だした事に驚いた。
「さあいよいよメインディッシュの登場だ!その名に相応しい"食材の王様"、『
テーブルに並べられた皿の上には、
「サラダは食宝『エア』、その下に敷いているのは"天空の野菜畑"と呼ばれる"ベジタブルスカイ"でしか育たない"野菜の王様"『オゾン草』だよ」
「"宝"とか"王様"とか、ものすごい名前が着いているわね…」
リーンは驚きつつも、エアの食感を楽しんだ。
「デザートは『虹の実ゼリー』、中には『ビックリアップル』に『シャボンフルーツ』、そして臭いを極限まで抑えた"臭いの爆弾"と呼ばれる『ドドリアンボム』を入れたよ」
「うぅ…、くちゃい」
クリスは鼻を摘まみながら食べていた。
「最後のドリンクは、『ビリオンバードの卵』に『メロウコーラ』を混ぜた『ビリオンバードのメロウドリンク』だ」
「とってもシュワシュワしていて、美味しいです~!」
一口飲んだアイリスは満面の笑みを浮かべた。
…
……
………
「お兄ちゃん、とても美味しいフルコースでした!私の為にわざわざありがとうございます!」
「ははは、喜んでくれて何よりだよ。でも、アイリスの為に作った訳じゃあ無いんだ。ここ最近、メンバーの皆には迷惑を掛けっぱなしだったから、そのお詫びも兼ねて…ね」
カズマはアイリスの頭を撫でながら、メンバーを見渡す。そしてメンバーはニッコリと微笑んだ。
「さあ皆、明日から冒険稼業頑張るぞ!!」
『おぉ~っ!!』
カズマが拳を上に突き上げると、メンバー全員が拳を上に突き上げた。その中にはアイリスの姿もあった。