この素晴らしい世界に祝福の音色を   作:レイファルクス

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第35話

 

 

カズマ達の荷物にアイリスが紛れ込んでアクセルの街に来た翌日、カズマはアイリスに街を案内していた。

 

 

と言うのも、カズマはアイリスの冒険者カードを見て愕然とした。何故なら"スキルを一つも覚えていなかった"からだった。

 

 

幾ら一国の姫とは言え、自衛の術を持っていないのは流石にまずいので、カズマは自分が覚えているスキルの中で"片手剣スキル"をアイリスに覚えさせた。片手剣スキルを選んだ理由だが、城の滞在中にアイリスがクレアと模擬戦をしていたのを思い出したからだった。

 

 

そしてアイリスの為に武器や動きやすい服を調達する為に服屋や武具店を訪れていた。

 

 

「お兄ちゃん、私の為にわざわざありがとうございます」

 

 

今のアイリスの格好は動きやすさ重視のピンクのパーカーに同じピンクのハーフパンツのルックスで、腰にはめぐみんと同じ小太刀が備えられていた。

 

 

「別にこれくらいいいって。それじゃ、軽いクエストでも受けるか」

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

それからカズマとアイリスはギルドでジャイアントトードの狩猟を受注し、街の外へと出た。

 

 

「わあぁ~っ!お兄ちゃん、カエルです!カエルがいます!」

 

 

「あれが今回倒すジャイアントトードだ。俺は援護に回るからまずはアイリスが戦ってみてくれ、危なくなったら必ず助けるから」

 

 

「はいっ!」

 

 

アイリスは小太刀を抜いてカエルに挑み掛かった。

 

 

「やあっ!」

 

 

アイリスの攻撃はカエルの腹を斬り、絶命した。

 

 

「これならいけます!」

 

 

「アイリスっ!待て!」

 

 

アイリスは調子に乗ったのか、カズマの声も聞かずカエルの群れに突っ込んで行ってしまった。だが…。

 

 

「ふええぇぇ~っ!多すぎます~っ!お兄ちゃん、助けて~っ!」

 

 

アイリスはカエルに取り囲まれてしまい、カズマに助けを求めた。

 

 

「言わんこっちゃない…、ハアッ!」

 

 

カズマは烈風をバッグから取り出し、カエルを次々に撃ち抜いた。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「はい、ジャイアントトード五体の討伐、確認しました。それも持ち込みなので、一体5千エリスで、合計2万5千エリスににります」

 

 

ギルドの受付でクエストの報酬を受け取ったカズマとアイリスは帰路に着いた。

 

 

「ごめんなさいお兄ちゃん…」

 

 

「まあ最初は失敗するもんさ、次から気をつければいいだけの話さ」

 

 

カズマはしょんぼりするアイリスの頭を撫でた。

 

 

「……はい!」

 

 

アイリスは笑顔を見せて、カズマの手を握った。

 

 

「…ところで、その"卵"…どうするのですか?」

 

 

カズマの背中には、"巨大な卵"が背負われていた。

 

 

カズマとアイリスがカエルを倒した後、群れから離れた場所にポツンと置かれている卵をカズマが見つけた。そしてカズマがその卵に触れた瞬間、カズマはこの卵を持って帰る事を決めたのだった。

 

 

「この卵に触れた瞬間、感じたんだ。『産まれたい』って。だから俺達の手で孵してやりたいんだ」

 

 

「流石ですお兄ちゃん!」

 

 

アイリスはカズマの考えを気に入ったのか、カズマを褒め称えた。そして二人が屋敷に到着すると、そこにはダクネスとキョウヤ、クレアとレインの四人が待ち構えていた。

 

 

無論、アイリスを心配したクレアとレインに、アイリスが叱られたのは言うまでもない。

 

 

そしてカズマはクレアとレインを屋敷に招き入れ、アイリス当人の希望により、しばらくカズマの屋敷で厄介になる事となった。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

《ここからはモンスターが喋りますが、他の人には何を言っているのか分かりません。》

 

 

カズマは拾った卵をジラフに預けていた。

 

 

『卵…か。このような卵を見るのは何時ぶりだろうか…』

 

 

時間は深夜、ジラフは卵を守るように寝そべりながら、卵を見守っていた。

 

 

『大きい卵だね』

 

 

そこに屋敷の地縛霊であるアンナが近づいた。

 

 

『アンナか…、今日は主達の冒険話を聞かなくて良いのか?』

 

 

『うん、だってこの子が気になるから』

 

 

アンナは卵をじっと見つめる。

 

 

『……この子、このままじゃ死んじゃう』

 

 

『…何?死ぬだと?』

 

 

アンナが言った事にジラフは思わず聞き返してしまった。

 

 

『うん。この子の魂が消えかかってる、このままじゃ産まれる前に死んじゃう…』

 

 

『……どうすればこの子を助けられる?』

 

 

ジラフは思わず卵の子を助ける方法をアンナに聞いてしまった。

 

 

『…多分だけど、私がこの子と"一つ"になれば、助かると思う』

 

 

『"一つ"に…だと!?そんな事をすれば…!』

 

 

『うん…、私は消える。でも…私はこの子を助けたい、この子にいろんな世界を見て欲しい』

 

 

アンナは自分が見る事が出来なかった世界を、卵の子に見て欲しいと思っていた。

 

 

『……分かった。お前の好きにすれば良い』

 

 

『…ありがとう』

 

 

アンナはそう言って、卵に触れる。するとアンナは吸い込まれるように卵の中に入っていった。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

《ここから元に戻ります。》

 

 

「ううぅぅぅ~~~ん……、はぁ~」

 

 

早朝、カズマは庭で背伸びをしていた。

 

 

「さて…、トレーニングを始める前に卵の様子を見てくるか」

 

 

カズマはジラフがいる小屋へと足を向けた。

 

 

「おはよう、ジラフ。卵の様子はどうだい?」

 

 

カズマがジラフに声を掛けると、ジラフも返事をするかの様に鼻を鳴らした。すると

 

 

ピシッ

 

 

「…えっ?」

 

 

ピシッ…、ピシッ…

 

 

「う…産まれる」

 

 

ピシッ…、バガンッ

 

 

「ぎゃあ!」

 

 

卵から産まれたのは、"金色の角"、"青色の甲殻"、"白い体毛"の狼の様な生物。そう、『雷狼竜(らいろうりゅう)"ジンオウガ"』だった。

 

 

「産まれた…、産まれたぞ!」

 

 

カズマは産まれたばかりのジンオウガを抱き上げた。

 

 

「ぎゃう!ぎゃう!」

 

 

ジンオウガは嬉しそうに鳴く。

 

 

「んっ…?お前…"女の子"か。まあ、何はともあれ、産まれて来ておめでとう!」

 

 

「ぎゃう!」

 

 

カズマは抱き上げたジンオウガがメスだと判明した後、屋敷にいる全員を叩き起こした。

 

 

「何だよカズマ…、こんな朝っぱらから起こしやがって…」

 

 

「んみゅう…、眠いです…」

 

 

ダストは叩き起こされた事に悪態を言い、アイリスはまだ眠いのか、眼を擦っていた。

 

 

「悪かったな。実は、昨日手に入れた卵が孵ったんだ!」

 

 

カズマは夕食の時に卵の事を話しており、その卵が孵った事を伝えた。

 

 

『ええ~~っ!!』

 

 

「本当ですかお兄ちゃん!?」

 

 

カズマの発言に全員が驚き、眠たげだったアイリスも覚醒した。

 

 

「本当さ、今俺の足元にいるコイツがそうさ」

 

 

カズマはジンオウガを抱き上げると、ジンオウガはカズマの顔を舐め回した。

 

 

「わぷっ、こら、擽ったいぞ!」

 

 

「ぎゃう!ぎゃう!」

 

 

「何かカズマに懐いてるね」

 

 

「あれじゃない?"刷り込み"ってやつ。鳥類の雛が最初に見たものを親と認識する…」

 

 

クリスはジンオウガがカズマに懐いているのを疑問に感じていると、アスタが懐いている理由の仮説を唱えた。それを聞いた全員が『あぁ~』と納得していた。

 

 

「カズマ、その子の名前はもう決めました?もしまだ決まっていないのであれば、私が格好いい名前を…」

 

 

「格好いいって…、コイツはメスだぞ?せめて可愛い名前にしてくれよな?」

 

 

「…ねぇカズマ、その子から"アンナの気配"を感じるんだけど…」

 

 

『……えっ?』

 

 

アスタの言葉に、全員がアスタに視線を向けた。

 

 

「本当かアスタ?」

 

 

「うん。昨日の深夜にアンナへお供え物と冒険話をしようと思っていたんだけど、全然来ないからそのまま寝ちゃったんだけどね。そしたら今朝になってアンナの気配がしないと思ったら…」

 

 

「コイツからアンナの気配を感じた…って訳か」

 

 

カズマの言葉にアスタは頷いた。

 

 

「……めぐみん、悪い。コイツの名前が決まった」

 

 

「奇遇ですね、私も今しがた名前が決まりました。せーので言いましょう、せーの…」

 

 

「「『アンナ』」」

 

 

「ぎゃう!」

 

 

カズマとめぐみんが同時に同じ名前を言うと、ジンオウガは嬉しそうに鳴いた。

 

 

「…決まりだな、今日からお前の名前は『アンナ』だ。これからもよろしくな、アンナ」

 

 

「ぎゃう!(これからもよろしくね、"パパ")」

 

 

こうして地縛霊の少女だったアンナは新しく生まれ変わり、愛するパパと、その仲間達から祝福されたのだった。

 

 

 

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