この素晴らしい世界に祝福の音色を   作:レイファルクス

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第36話

 

 

カズマに『アンナ』と言うメスのジンオウガの子供が産まれてから数日後、カズマアスタとダクネスを引き連れて『ウィズ魔法具店』を訪れていた。

 

 

「よく来たなカズマ、商品生産の報酬は用意してある。持って来るから少し待っておれ」

 

 

「待つのはいいが、ウィズはどうしたんだ?姿か見えないが…」

 

 

「あのポンコツ店主なら、奥で死んだ様に眠っているよ」

 

 

バニルが言うには、店の赤字を黒字に変えるにはどうしたら良いか、それを考えると、一つの結論に辿り着いた。それは『店主が余計な事を考える暇が無い程働けば良い』だった。

 

 

バニルは早速ウィズを食事をする暇も無い程に二十四時間、延々と働かせた。

 

 

その甲斐あってか、商品は飛ぶ様に売れたのだが、ウィズが急に笑い出したり泣き出したりし出したので、やむ無く休ませる事にしたのだった。

 

 

「いや…、ブラック過ぎるだろ…」

 

 

流石のカズマも、バニルのウィズの扱いに引いた。

 

 

「ところで、そこのクルセイダーの娘よ。お主に"破滅の相"が出ている、よかったら報酬を渡した後で我輩が占ってやろう」

 

 

バニルはそう言って店の奥に引っ込んだ。

 

 

…

 

 

……

 

 

………

 

 

「待たせたな、まずはカズマへの報酬だ」

 

 

バニルはエリス金貨が入った大袋をカズマに渡した。

 

 

「それから娘よ、まずこの水晶玉に触れるのだ。本来なら結果が出るまで恥ずかしい思いをする質問をするのだが、事が事だけに今回は何も質問はせん」

 

 

ダクネスはバニルに言われた通り、水晶玉に手を置いた。

 

 

「…ふむ、やはり破滅の相が出ているな。貴様の家、そして父親がこれから大変な目に遭うだろう。…ふむ、良い回避方法は……おや、貴様の力"だけ"ではどうにもならんと出たな」

 

 

バニルは水晶玉に写った結果をダクネスに告げた。

 

 

「…バニル、占いには感謝する。だが、どんな事態に陥っても逃げる事は出来ない」

 

 

ダクネスはそれだけ言って、店から出たのだった。

 

 

「…なあバニル、俺達にできる事は無いのか?」

 

 

占いの結果にカズマが物申した。

 

 

「うむ…、更なる売れ筋商品を沢山作れば、どうにかなるかもしれんぞ?」

 

 

バニルはカズマに意味深な言葉を投げ掛けた。

 

 

「…そうか。サンキュー、バニル」

 

 

「お主とはビジネスを共にする仲間だ、お主がいなければ我輩の野望がいつまで経っても叶えられん。それだけだ」

 

 

バニルは照れくさそうにそっぽを向く。

 

 

「それでも、感謝をしたいのさ。困った事があれば、相談くらいはするから」

 

 

「……なら、一つ買ってもらいたいがある」

 

 

…

 

 

……

 

 

………

 

 

「バニルに押し付けられる形で買っちまったけど…、"本物"なのか?これ」

 

 

カズマが手にしている物は、ウィズの店でバニルに無理やり買わされた"箱"だった。

 

 

「バニルが言ってたけど、"この箱の蓋を開ければ『異世界』に行ける"って。…何か眉唾物の匂いがぷんぷんするんだが」

 

 

「ぎゃう」

 

 

カズマは屋敷の庭で、日向ぼっこをしながら芝生に寝転がっており、その側にアンナとジラフが寝そべっていた。

 

 

「ぎゃう、ぎゃう」

 

 

「何だアンナ、興味あるのか?」

 

 

「ぎゃう!」

 

 

カズマはアンナに箱を渡すと、アンナは前足で器用に箱を転がして遊び始めた。

 

 

「ははは、アンナは手先が器用だな…。ん?」

 

 

カズマはアンナが遊んでいる箱の蓋が開きかけている事に気づいた。

 

 

「アンナ、ちょっとまっ…」

 

 

カズマが言い切る前にアンナが蓋を開けてしまった。

 

 

「なっ!?」

 

 

「ぎゃう!?」

 

 

「ブルルッ!?」

 

 

すると箱が強く光り始め、カズマとアンナとジラフは光に包まれてしまった。

 

 

「カズマーっ!今日のご飯だけど…あれ?」

 

 

…

 

 

……

 

 

………

 

 

「んっ…、ここは…?」

 

 

カズマは瞑っていた目を開く。そして目に入った光景に目を疑った。

 

 

「ここは…、草原?しかも向こうに見えるのはアクセルの街の外壁…」

 

 

カズマはいつの間に街の外に出てしまったのか、分からなかった。

 

 

「ぎゃう!ぎゃう!」

 

 

「ブルルッ!」

 

 

「アンナ!ジラフ!」

 

 

するとカズマの元にアンナとジラフが駆け寄って来た。

 

 

「お前ら、無事だったんだな!」

 

 

「ぎゃう!」

 

 

「ブルルッ!」

 

 

カズマの問いかけにアンナとジラフは肯定するように鳴いた。

 

 

「…とりあえず、いつまでもこんな所にいる訳にもいかないな。アクセルの街が向こうに見えるのなら、ひとまず街に向かうか」

 

 

カズマはアンナを抱っこしてからジラフに跨がると、ジラフはアクセルの街に向けて歩きだした。

 

 

…

 

 

……

 

 

………

 

 

「…ひとまず街には入れたけど、何で門番さんが不思議そうな顔をしたのだろうか?」

 

 

カズマは街の門まで来ると、ジラフから降り、そのまま街へ入ろうとした。だが、門番はカズマに冒険者カードの提示を促した。

 

 

カズマは仕方なくカードを門番に見せると、門番は驚いた表情をした後、カズマ達を通したのだった。

 

 

「…とりあえず、ギルドに向かうか」

 

 

カズマはまず腹ごしらえをする為にギルドへ向かう事にした。

 

 

…

 

 

……

 

 

………

 

 

カズマ達は奇異な視線を浴びながら、ギルドの前まで到着した。すると…

 

 

「この駄女神!一体いつになったら覚えるんだ!」

 

 

「なによ!引きこもりニートの癖に!」

 

 

自分と瓜二つな青年がアクアと瓜二つな女性と言い合っていた。

 

 

「ちょっと…、カズマもアクアも落ち着いて下さい…」

 

 

「そうだぞ?こんな所で騒いだら迷惑になるだろう」

 

 

更にはめぐみんに瓜二つな少女とダクネスに瓜二つな女性が二人を宥めていた。

 

 

「「だってコイツが!」」

 

 

「なんだよ!」

 

 

「なによ!」

 

 

仲間が宥める甲斐無く、二人の喧嘩はヒートアップしていった。

 

 

「大体お前…が……」

 

 

すると、青年がカズマに気づいたのか、視線をカズマに向けると、顔を真っ青にした。

 

 

「カズマ?どうしたの?」

 

 

「あ…、あ…お…」

 

 

「「「青?」」」

 

 

「俺が……、"二人いる"!!?」

 

 

青年はカズマがいる方を指差した。そして三人が指を指された所を見た。

 

 

「プークスクス!カズマの物真似をしている人がいるなんて!」

 

 

「カズマが…二人?」

 

 

「もしや、"ドッペルゲンガー"か?」

 

 

アクアと瓜二つな女性がカズマを見た瞬間笑いだし、めぐみんと瓜二つな少女はカズマと青年を見比べ、ダクネスと瓜二つな女性はカズマがドッペルゲンガーではないかと思案する。

 

 

「えーっと…、とりあえず落ち着いて話し合いません?」

 

 

カズマは青年達にそう切り出したのだった。

 

 

…

 

 

……

 

 

………

 

 

《ここからは本作品のキャラ以外のセリフの前に名前を入れます。例:○○「」》

 

 

「え~、まずは自己紹介を。俺はサトウカズマ、"この世界"とは違う世界で冒険者をしています。それとこの子はジンオウガの『アンナ』で、コイツはキリンの『ジラフ』」

 

 

「ぎゃう!」

 

 

「ブルルッ!」

 

 

ギルドの外でカズマは別世界の自分達に自己紹介をした。

 

 

アクア「じゃあ次は私ね!私は水の女神アクア様よ!」

 

 

めぐみん「我が名はめぐみん!アークウィザードにして紅魔族随一の爆裂魔法の使い手!」

 

 

ダクネス「私はダクネス、クルセイダーを生業としている」

 

 

カズマ「最後に俺はサトウカズマ、冒険者だ」

 

 

別世界のカズマ達も自己紹介をした。

 

 

アクア「ねえねえ!あなたの世界の私ってどんな感じなの?」

 

 

「えーと…、アクアは後輩の女神や天使に慕われていて、料理が上手で「うんうん」、仲間の事を第一に考えていて「うんうん」、仕事熱心で四六時中休まず仕事していて、後輩の女神や天使が心配したり「え"っ?」、上司の神様に仕事を休む様頭を下げられたり…」

 

 

アクア「お願いだからもうやめてぇ!」

 

 

カズマがアスタの事を話しているとギャップを感じたのか、別世界のアクアが止めた。

 

 

カズマ「ギャハハハハッ!こっちのアクアとは全くの別人だな!」

 

 

ダクネス「そちらのアクアは仕事が好きなのだな、ところで私はそちらと比べて何か違いはあるか?」

 

 

「ダクネスは俺の世界のダクネスと変わらないな」

 

 

ダクネス「そ…、そうか…」

 

 

別世界のカズマはアクアの慌てぶりを見て笑いだし、ダクネスは別の世界と変わらない事に若干落ち込んでいた。

 

 

めぐみん「では、私はどうなのでしょうか?」

 

 

「めぐみんは俺の世界とは変わりは…、いや俺の世界のめぐみんの方が少しだけ"胸が大きい"な」

 

 

めぐみん「そうなのですか!?」

 

 

別世界のめぐみんはカズマの世界の自分が少しだけ胸が大きい事に驚いた。

 

 

「まあ…、"ほぼ毎日揉んでいる"から…かな?」

 

 

カズマ・アクア・ダクネス・めぐみん「「「「なんだって!?」」」」

 

 

カズマ「揉んでるって…、あのお子ちゃま体型のめぐみんの胸を!?」

 

 

めぐみん「おい私の何処がお子ちゃまなのか聞こうじゃないか!」

 

 

カズマの発言で全員が驚き、別世界のめぐみんは別世界のカズマに喧嘩をしようとしていた。

 

 

「落ち着けってめぐみん」

 

 

めぐみん「えっ…」

 

 

カズマ・アクア・ダクネス「「「なっ!?」」」

 

 

カズマは別世界のめぐみんを抱き寄せ、彼女の頭を自分の胸に押し当てた。その様子を見ていた別世界のカズマ達は絶句した。

 

 

めぐみん「あああ…、あの…!」

 

 

「へっ?ああ申し訳ない。彼女にしている事をつい無意識に…」

 

 

カズマは別世界のめぐみんに謝罪しながら解放した。

 

 

カズマ「彼女にしているって…、つまりお前は…!」

 

 

「ああ、俺はめぐみんと"恋人関係"だ。それに紅魔の里にある"魔神の丘"でプロポーズもしているぞ」

 

 

カズマ達「「「「えええ~~~っ!!?」」」」

 

 

別世界のカズマ達は心底驚いた。

 

 

ダスト「おいおい、一体何の騒ぎ…だよ……」

 

 

キョウヤ「サトウカズマ!僕と勝負…を……」

 

 

ゆんゆん「めぐみん!私と決着…を……」

 

 

そこにギルドから別世界のダスト達が、建物の右側からキョウヤが、建物の左側からゆんゆんが現れ、言葉を言い切る前に言葉を失った。

 

 

ダスト達『(サトウ)カズマ(さん)が二人いる~~~っ!!?』

 

 

カズマ「わかるぞ、その気持ち」

 

 

アクア「私達も同じリアクションをしたからね」

 

 

ダクネス「うむ、あの時はモンスターかと思ったからな」

 

 

別世界のダスト達は驚愕し、別世界のカズマ達はそのリアクションを見て頷いていた。

 

 

…

 

 

……

 

 

………

 

 

「……と、言う訳なんだ」

 

 

カズマはあの後別世界のカズマの計らいによって、ギルドで食事を取る事となり、どうせならと別世界のダスト達も一緒に食事をする事となった。

 

 

キョウヤ「まさか"並行世界"から来たとは…」

 

 

ダスト「なあ、その"変貌世界"って何だ?」

 

 

「"並行世界"ね。そこの俺とキョウヤは同郷だから知ってると思うけど、世界は一つじゃ無いんだ。似たような世界に、自分とそっくりな人間が暮らしている。けど、世界が違えばその人が歩んで来た人生も違う」

 

 

ダスト「う~ん…、分かったような、分からなかったような…」

 

 

カズマの説明にダストは首を傾げた。

 

 

カズマ「つまり、別の世界に別の自分がいるって事だ」

 

 

ダスト「なるほど」

 

 

別世界のカズマが分かりやすく説明すると、別世界のダストはやっと納得した。

 

 

「しかし、変わっている人がいれば、変わっていない人もいるな」

 

 

カズマ「誰が変わっているんだ?」

 

 

「まず、今この場にいる全員だが…、実は俺の世界じゃ全員パーティーメンバーなんだ。しかも俺がリーダー」

 

 

全員『ええ!?』

 

 

カズマの発言に全員がまたしても驚いた。

 

 

キョウヤ「僕達が…、君のパーティーに?」

 

 

「ああ。ダスト達はパーティー入れ替えの後に、キョウヤ達はデストロイヤーの後に、ゆんゆんは屋台巡りをしていた時に加入したんだ」

 

 

カズマの説明に全員が呆然としていた。

 

 

クリス「あれ?皆集まってどうしたの?」

 

 

そこに別世界のクリスが現れた。

 

 

「あれ、クリス?」

 

 

クリス「えっ?カズマ君が二人?どういうこと?」

 

 

カズマは頭に『?』を浮かべている別世界のクリスに現状を説明した。

 

 

クリス「なるほどね…。しかし驚いたなあ、まさかあたしがもう一人のカズマ君の恋人だなんて…」

 

 

カズマ「別世界とは言え、俺に恋人が二人も…」

 

 

アクア「それもプロポーズして一発オッケー」

 

 

別世界のカズマが落ち込んでいる所に別世界のアクアが追い討ちを掛け、更に落ち込んでしまった。

 

 

『緊急連絡!緊急連絡!冒険者の皆様は直ちにギルドまでお越し下さい!繰り返します…』

 

 

そこにギルドからの緊急招集連絡が入った。

 

 

…

 

 

……

 

 

………

 

 

ルナ「冒険者の皆さん、お集まりいただきありがとうございます!」

 

 

ダスト「なあ、なんで急に招集を?」

 

 

別世界のダストは招集理由を質問した。

 

 

ルナ「実は、モンスターの大群がこのアクセルの街に向かって来ているのです!」

 

 

『なんだって!?』

 

 

別世界のルナが招集理由を伝えると、集まった冒険者全員が驚いた。

 

 

ルナ「現在確認できたモンスターは"リザードランナー"を筆頭に"走り鷹鳶"に"ジャイアントトード"、更に"グリフォン"や"マンティコア"が確認されています」

 

 

ダクネス「"リザードランナー"に"走り鷹鳶"、"ジャイアントトード"ならこの街の冒険者でも対応できると思うが…」

 

 

キョウヤ「問題は"グリフォン"に"マンティコア"だね。奴らの強さは上級の冒険者でないと…」

 

 

別世界のダクネスとキョウヤが考えていると

 

 

「なら、俺が指揮をしようか?」

 

 

カズマが手を上げながら申し出た。

 

 

ルナ「あの…、カズマさんの実力では…」

 

 

「心配ありませんよ、ほら」

 

 

別世界のルナはカズマの申し出を断ろうとしたが、カズマは冒険者カードを別世界のルナに見せた。

 

 

ルナ「失礼します…、こ…これは!?冒険者レベルがミツルギさんと同等のレベルです!」

 

 

『なんだって!?』

 

 

カズマ「アイツと同等のレベルって…、どれだけ高いんだよ!?」

 

 

「自分では自覚が無いけど…」

 

 

別世界のルナはカズマのレベルが高い事に驚いたが、カズマはその自覚が無かった。

 

 

ルナ「これなら指揮を任せられますよ!よろしくお願いします!」

 

 

「分かりました。皆!皆の命、俺に預けてくれ!俺達でこの街を守るぞ!」

 

 

『おおっ!!』

 

 

「ぎゃう!」

 

 

「ブルルッ!」

 

 

カズマの意気込みに全員が気合いを入れたのだった。

 

 

…

 

 

……

 

 

………

 

 

「いよいよか…」

 

 

カズマ達冒険者は、街の正門の前に陣取っていた。

 

 

「作戦を説明する。まずクルセイダー部隊、お前達は全員大楯を装備して最前線で待機。敵影が見えたと同時に囮スキルを使って注意を引いてくれ」

 

 

「それからプリースト部隊はクルセイダー部隊に筋力増加の支援魔法を頼む。その後は最後方に下がって怪我人が出た時の治療を」

 

 

『おう!』

 

 

ダクネス「了解した!」

 

 

アクア「任せて!」

 

 

別世界のダクネス率いるクルセイダー部隊は、自身を隠せる程の大楯を持っていた。因みにこの大楯は街にある武具屋でカズマが購入した代物である。

 

 

そして別世界のアクア率いるプリースト部隊は、クルセイダー部隊に支援魔法を使用した後、正門まで下がった。

 

 

「次に盗賊部隊、クルセイダー部隊が受け止めたモンスター達をバインドを使って動きを止めて欲しい」

 

 

クリス「了解したよ!」

 

 

別世界のクリス率いる盗賊部隊は、大量のロープを持ってクルセイダー部隊の後方に待機した。

 

 

冒険者「敵影確認!先陣は"リザードランナー"と"走り鷹鳶"!数はおおよそで"リザードランナー"が40!"走り鷹鳶"が10の、計50!後1分弱で会敵します!」

 

 

すると高台から千里眼スキルを使って索敵していた冒険者から、連絡が入った。

 

 

「了解した!総員戦闘配置!クルセイダー部隊、前へ!俺の合図でスキルを発動せよ!」

 

 

『了解!』

 

 

カズマの合図で大楯を装備したクルセイダー部隊が前に出る。

 

 

「………今だ!」

 

 

『フォルスファイア!』

 

 

『デコイ!』

 

 

カズマの合図でクルセイダー部隊全員が囮スキルを発動させた。するとリザードランナーと走り鷹鳶は一直線にクルセイダー部隊に突撃して行った。そしてクルセイダー部隊はモンスターの突撃を大楯で受け止める事に成功した。

 

 

「今だ!盗賊部隊、捕獲開始!」

 

 

『バインド!』

 

 

クルセイダー部隊の後ろで待機していた盗賊部隊が、一斉にバインドを発動させ、モンスターを次々に簀巻き状態にしていった。

 

 

「よっしゃ!近接部隊、捕獲したモンスターを一網打尽にしてこい!突撃!クルセイダー部隊は近接部隊と入れ替わりで後退!」

 

 

カズマ「行くぞ!」

 

 

ダスト「動けなくなっちまえば、こっちのもんだ!」

 

 

そして別世界のカズマとダストが率いる近接部隊が次々にモンスターを倒していった。

 

 

キース「敵影確認!次に来るのは"グリフォン"と"マンティコア"!数はそれぞれ5体!真っ直ぐこっちに突っ込んで来るぞ!」

 

 

高台から別世界のキースがグリフォンとマンティコアが襲来して来た事をカズマに伝えた。

 

 

「分かった!ウィザード部隊とアーチャー部隊は連携して撃ち落とせ!」

 

 

リーン「了解!」

 

 

ゆんゆん「分かりました!」

 

 

キース「腕が鳴るぜ!」

 

 

別世界のリーンとゆんゆん率いるウィザード部隊と、別世界のキース率いるアーチャー部隊が交互に攻撃を繰り出し、グリフォンとマンティコアを倒していった。

 

 

冒険者「ジャイアントトードの姿が見えたぞ!数は…なっ!?」

 

 

「どうした!?」

 

 

冒険者「数は…、百を越えてます!」

 

 

『ひゃく!?』

 

 

冒険者からの情報にカズマを除く全員が驚いた。

 

 

カズマ「どうすんだよ!?いくらカエルとは言っても数が多すぎる!」

 

 

キョウヤ「僕達が頑張っても、倒し切れるかどうか…」

 

 

めぐみん「こうなれば我が爆裂魔法で…」

 

 

ゆんゆん「ダメだよ!タイミングを計らないと…」

 

 

別世界のカズマ達が対策を考えていると

 

 

「ふ~ん、百匹か。思ったより少ないな」

 

 

ダクネス「別の世界のカズマよ、何呑気な事を言っているのだ!あれだけの数が街に押し寄せているのだぞ!ああ…あの中に私を補食するカエルがいると思うと…」

 

 

「ダクネス、歓喜に震えている所悪いが、ジャイアントトードは鉄を嫌うから、鎧を着用している間は補食されないぞ?それに…『俺が全部何とかする』から」

 

 

カズマはバッグを取り外すと、ジャイアントトードに向かって歩き始めた。

 

 

カズマ「別の世界の俺、何をする気だ!戻れ!」

 

 

「大丈夫、鍛えてますから。シュッ」

 

 

カズマは敬礼のようなジェスチャーをした後、音角を取り出した。

 

 

「行くぜ、『音撃道・打』!」

 

 

《打・ダーン!》

 

 

カズマは音声入力をした後、音角を展開させ、左指で弾いた。すると音角から波紋が広がり、カズマは音角を自分の額に近づけた。

 

 

ボワッ

 

 

アクア「ちょっと!体が燃えているんですけど!?」

 

 

リーン「早く消さないと!」

 

 

カズマ「いやちょっと待て!あれは…」

 

 

別世界のアクアとリーンが火を消そうとした所を、別世界のカズマが止めた。

 

 

「ハアアアァァァ…、ハアッ!!」

 

 

そしてカズマが右腕を振り払うと、カズマは響鬼に変身していた。

 

 

『へ…、変身したぁ!?』

 

 

アクア「何あれ何あれ!?私知らないんですけど!?」

 

 

めぐみん「おお…、紅魔族の琴線にビンビン触れますね!」

 

 

カズマ「やっぱり…、仮面ライダー響鬼だったか」

 

 

カズマの変身に全員が驚く中、別世界のカズマだけが冷静でいた。

 

 

「行くぞ!」

 

 

「ヒヒーン!」

 

 

カズマが走り出したと同時にジラフがカズマと並走し、カズマはジラフの背中に飛び乗った。

 

 

「ハアッ!」

 

 

カズマは音撃棒・烈火を持つと、先端から炎の刃を生成し、カエルをすれ違い様に切り裂いた。

 

 

キョウヤ「すごい…」

 

 

カズマ「ああ…」

 

 

カズマの戦い方に全員が見惚れていた。

 

 

「まだまだ行くぜ!"烈火迅雷剣"!」

 

 

カズマは烈火剣を頭上に掲げると、ジラフが雷を烈火剣に落とし、烈火剣の刃に紫電が走った。

 

 

「ソイヤッ!」

 

 

そしてカズマは烈火迅雷剣でカエルを一回斬ると、カエルの体に無数の切り傷ができ、絶命した。

 

 

…

 

 

……

 

 

………

 

 

カズマが戦い始めてから数十分後、カエルの数は三十まで減っていた。

 

 

「そんじゃ、そろそろやりますか」

 

 

カズマとジラフはまるでカエルを挑発するかのように動き回り、カエルを一ヶ所に集めた。

 

 

カズマ「アイツ、一体何を…?っ!そうか!めぐみんっ!!」

 

 

めぐみん「なっ、何でしょうかカズマ?」

 

 

カズマ「爆裂魔法を何時でも撃てるようにしておいてくれ!最大の見せ場だぞ?」

 

 

めぐみん「分かりました!」

 

 

別世界のカズマは響鬼がやろうとしている事に気づき、めぐみんに爆裂魔法を撃たせる準備を始めさせた。

 

 

そして…

 

 

めぐみん「カズマ、何時でも撃てます!」

 

 

カズマ「まだ撃つなよ!?もう少し…、もう少し…。…今だっ、めぐみん撃て!」

 

 

別世界のカズマはカエルが一ヶ所に密集した時を見計らい、別世界のめぐみんに指示を出した。

 

 

めぐみん「分かりました!…さあモンスター達よ、我が魔法を喰らって灰塵に帰すがいい!」

 

 

『エクスプロージョン!!』

 

 

別世界のめぐみんは爆裂魔法を放った。

 

 

…

 

 

……

 

 

………

 

 

『かんぱ~い!!』

 

 

その夜、モンスターの大群を退けた冒険者一同はギルドで祝杯を上げていた。

 

 

カズマ「ゴクッ…、ゴクッ…、ゴクッ…。ぷはーっ!一仕事終えた後のシュワシュワは旨い!」

 

 

別世界のカズマはシュワシュワをイッキ飲みしていた。

 

 

キョウヤ「今日のMVPは誰が何と言っても"彼"だろうね」

 

 

別世界のキョウヤが見る先には、ジラフとアンナと戯れるカズマがいた。

 

 

ゆんゆん「あの…、その子…撫でても良い…ですか?」

 

 

「その子って…、ジラフ?それともアンナ?」

 

 

ゆんゆん「えっと…アンナ…さんです」

 

 

別世界のゆんゆんはカズマにアンナを撫でさせてほしいとお願いした途端、アンナが別世界のゆんゆんに飛び付いた。

 

 

ゆんゆん「きゃあ!?」

 

 

「ハハハ、アンナもゆんゆんに撫でてほしいってさ」

 

 

別世界のゆんゆんは恐る恐るアンナを撫でる。

 

 

ゆんゆん「あっ…、ふわふわ~」

 

 

「だろ?俺が毎日ブラッシングしているからな。女の子にとって、毛並みは命だからね」

 

 

カズマの説明を余所に、別世界のゆんゆんはアンナの毛触りを楽しんでおり、アンナも撫で心地が良いのか、目を細めていた。

 

 

…

 

 

……

 

 

………

 

 

「さてと…、今日の寝床どうしようかな?」

 

 

夜も遅くなった時間帯、カズマは寝床をどうしようか悩んでいた。

 

 

「宿の部屋が空いていれば良いけど、ジラフがいるから馬小屋、最悪野宿でも…」

 

 

カズマ「おーい!」

 

 

そこに別世界のカズマ達が寄って来た。

 

 

カズマ「今日泊まる所探しているんなら、俺の屋敷に泊まらないか?」

 

 

「良いのか?こちらとしては願ったり叶ったりなんだが…」

 

 

ダクネス「構わんさ、こちらも助けられた事だし、その恩返しをしたいんだ」

 

 

アクア「それに、あなたの冒険話をあの子に聞かせたいしね」

 

 

別世界のアクアが言う"あの子"とは、地縛霊のアンナの事である。

 

 

「…分かった。お言葉に甘えて…」

 

 

カズマが厄介になる事を言おうとすると、突如カズマの体が光り始めた。

 

 

カズマ「な…っ、何だ!?」

 

 

別世界のカズマ達が驚く中、光は段々強くなり、目を開けられない程になった。

 

 

そして光が収まると、カズマとアンナとジラフの姿は無かった。

 

 

めぐみん「い…いなくなっちゃいました!?」

 

 

カズマ「さっきまでそこにいたわよね!?」

 

 

ダクネス「ま…まさか……」

 

 

カズマ「…幽霊?」

 

 

別世界のカズマが口走った言葉に、別世界のアクア達が恐怖に震え上がった。

 

 

…

 

 

……

 

 

………

 

 

「ここは…、元の世界に戻ったのか?」

 

 

カズマは屋敷の庭に立っていた。その隣にはアンナとジラフもいた。

 

 

「カズマ!やっと見つけた!もうっ、今まで何処に行ってたのよ!」

 

 

そこにアスタが息を切らして走って来た。

 

 

「悪い悪い、ちょっとな…。ところで、そんなに慌ててどうしたんだ?」

 

 

「そうだった!大変なのよ!ダクネスが"クーロンヒュドラ"のクエストを一人で受けちゃったのよ!」

 

 

「……はい?」

 

 

カズマは自分の耳を疑った。そしてこの後起こる出来事を知る由も無かったのだった。

 

 

…

 

 

……

 

 

………

 

 

「ピカ?」

 

 

 

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