「リザードン、『ドラゴンクロー』だ!」
「ピカチュウ、『アイアンテール』で受け流せ!」
「リザッ!リーザーッ!」
「ピカ!チュ~…、ピッカ!」
ここはカズマ達が暮らしている屋敷の庭。そこでカズマとダストはポケモンバトルをしていた。
リザードンは緑色のエネルギーを纏った爪を繰り出し、それをピカチュウは鋼鉄化した尻尾で受け流した。
「まだまだ!リザードン、『かえんほうしゃ』!」
「ピカチュウ、『10まんボルト』!」
ダストの指示でリザードンは口から炎を吐き、ピカチュウは頬から電撃を放つ。二体の技は中央でぶつかり、爆発が起こる。
「…流石だなダスト。ここまでリザードンの力を引き出しているとは」
「褒めてもこれくらいしか出ないぜ?リザードン、『かえんほうしゃ』!」
「っ!ピカチュウ、『でんこうせっか』で撹乱させるんだ!」
カズマの指示でピカチュウは『でんこうせっか』を使い、リザードンの周りを動き回る。リザードンはピカチュウの動きに目が追い付いておらず、狙いを付けられないでいた。
「くそっ、すばしっこくて狙いが付けられねぇ!」
「今だピカチュウ、『10まんボルト』!」
カズマの指示でピカチュウはリザードンに『10まんボルト』を浴びせる。ひこうタイプを持つリザードンにとってでんきタイプの技である『10まんボルト』は効果バツグンであり、『10まんボルト』を浴びたリザードンは地面に膝を着いた。
「リザードン!!」
「勝負あったな」
カズマの言う通り、リザードンのダメージは大きく、リザードンは戦える程の体力は残っていなかった。
「…ちっ、俺の負けだ」
ダストが負けを認めると、カズマとピカチュウは力を抜いたのだった。
「良いバトルだったぜ、また機会があればやろうぜ」
「…そうだな」
ダストとカズマは握手をして、次のバトルの約束をするのだった。
…
……
………
「ふぅ~」
「ピカ~」
「お疲れですね、カズマ。ピカチュウ」
『リザードンと一緒に訓練をする』と言ったダストと別れ、屋敷のリビングにあるソファーに座ったカズマとピカチュウに飲み物と新聞を持ってきためぐみんが声を掛けた。
「サンキュー、めぐみん。…いや~、まさかダストの訓練に何時間も拘束されるとは思っても見なかったよ」
カズマはめぐみんから飲み物と新聞を受け取り、愚痴を溢した。
「ダストも何か思う事があるのでしょう、今現在ダストに付き合えるのはカズマだけなのですし」
「とは言ってもなぁ…んっ?」
カズマは新聞を広げ、読み始めると、とある記事に目が止まった。
「『魔王軍幹部が最前線に参戦し、戦況一変。王都の危機』…おいおい、アイリス達大丈夫なのかよ…?」
「…カズマ、その記事詳しく」
「…『王都近くの最前線にある砦が魔王軍幹部の攻撃を受けている…。砦はなんとか持ちこたえているようだが、時間の問題』…とも書かれているな。しかもその幹部は『恐るべき魔法を操る"邪神"だ』と書かれている」
めぐみんにお願いされ、カズマは記事を読み上げる。
「…カズマ、その新聞私にも見せて下さい」
カズマは新聞を横にずらし、めぐみんはカズマの隣に座り、記事を黙読する。
「…『戦況を一変させた魔王軍幹部は…、"邪神ウォルバク"』との事…」
「「なんですって!?」」
めぐみんが幹部の名を読み上げた瞬間、リビングに来たアスタとクリスが同時に声を上げた。
「アスタにクリスじゃないか、宝の鑑定は終わったのか?」
「ある程度は。あたし一人じゃどうしても回らなかったから、お姉ちゃんに手伝ってもらったんだ」
「そう言う事。…って今はそんな話をしている場合じゃ無いわよ!今"ウォルバク"って…」
アスタはめぐみんに詰め寄った。
「お…落ち着いて下さいアスタ!」
「ただいま~」
そこにゆんゆんがリビングに現れた。
「ゆんゆん!良い所に来ました!お願いですから、アスタを引き剥がすのを手伝って下さい!」
めぐみんに急かされ、ゆんゆんはアスタを引き剥がすのを手伝った。
…
……
………
「やっと離れたか…」
「つ…疲れました~」
十数分に及ぶ格闘の末、アスタを引き剥がす事に成功したカズマ達だが、余計な体力を消耗してしまった為、疲労困憊となっていた。
「ごめんなさい…」
めぐみんから引き剥がされたアスタは、カズマとクリスの二人による『バインド』でロープをぐるぐる巻きにされ、芋虫状態になっていた。
「それでめぐみん、何でアスタさんはめぐみんに突っかかっていたの?」
「それは…、私が新聞の記事に書かれている邪神の名前を口にしたら… 」
「邪神?」
「確か名前は"ウォルバク"って書かれていたな」
カズマの発言にゆんゆんは驚いた。
「めぐみんっ!"ウォルバク"って確か紅魔の里に封印されていた…」
「はい、偶然かどうかは知りませんが…」
「…どうやら、二人は何か事情を知ってるみたいだな」
カズマの質問にめぐみんは話し始めた。
…
……
………
邪神ウォルバクは『怠惰と暴虐を司る邪神』であり、めぐみん達のご先祖様と激戦を繰り広げていた。そして遂に邪神を封印する事ができたのだが、ご先祖様の数人が『邪神が封印されている地ってなんか格好いいよな』と言う事で封印を解き、里の隅っこに再封印し、観光名所にした。
それから時は経ち、めぐみんが今のこめっこよりも幼い時に偶然にもウォルバクの封印を解いてしまい、そこから現れた"漆黒の猛獣"に襲われそうになるが、何処からともなく現れた"巨乳の女性"が爆裂魔法を使って倒し、再封印をした。因みにこの出来事がめぐみんが爆裂魔法を覚えようとした切欠である。
そして更に時が経ち、今度はこめっこが封印を解いてしまった。
…
……
………
「…それで現れたのがこのちょむすけなのです」
めぐみんは自分の足元にいるちょむすけを撫でた。
「……分からないな」
「カズマ?」
「もしちょむすけの正体が邪神ウォルバクだったとしよう。なら、最前線の砦を攻撃している邪神ウォルバクは何者なんだ?」
カズマの疑問にその場にいるめぐみんとゆんゆんとアスタとクリスはハッとした。
「確かに…、
「……考えても仕方ない。クリス、庭で訓練しているダストと一緒にギルドに向かってテイラー達を連れ戻してくれ。確かクエストを受注するって言ってたから、リザードンに乗って飛べば追い付くだろう。めぐみんはゆんゆんと一緒にリア達を連れて来てくれ、長丁場になるだろうから、食材の買い出しも頼む」
「カズマ、私は?」
「アスタはバインドが解けるまで留守番、バインドが解けたらめぐみん達の手伝いをしてくれ」
カズマはめぐみん達に指示を出す。
「カズマはどうするのですか?」
「今ダクネスが実家に帰っているから、ダクネスにも遠征の協力をお願いする。それと、領地を離れるからイグニスさんとバルターに領主代行をお願いするつもりだ」
「分かりました。…では皆さん、カズマの指示に従って行動を開始!迅速且つ的確に!」
めぐみんの言葉でカズマとアスタ以外全員が行動を開始した。
…
……
………
「ねえカズマ、それは何?」
翌日、カズマが持っている瓶に興味を持ったアスタがカズマに質問をした。
「これは以前ウィズからドレインタッチを教わった時に買った『衝撃を与えると爆発するポーション』だよ。今まで使い方が分からなかったんだが、これは点火しても爆発する事が分かったんだ。つまり、これは俺の世界にある"ニトログリセリン"と言う少しの衝撃でも爆発する物と同類なんだよ」
「ほう…、カズマの世界にはそんな危険な代物があるのか…」
カズマの横にいるダクネスが感心…と言うか少し怖じ気づいた表情をした。
「まあ扱うにはそれなりの知識と資格が必要だからな、俺のような一般人には程遠い代物さ。…それで、こいつを使った物が"コレ"だ」
カズマはダイナマイトの試作品をダクネスに見せた。
「これがダイナマイト。この導火線を着火させて…」
「なるほど…」
カズマの説明にダクネスは目の色を変えて聞いていた。
「カズマ、準備の殆んどが完了しました。テイラー達ももう少しで消耗品の買い出しから戻って来ると思います」
そこにめぐみんが準備の報告にやって来た。
…
……
………
「『エクスプロージョン』ッ!!」
「全てを燃え上がらせる様な深紅の炎に初夏を思わせる様な心地良い風…だが、伝わる爆音や衝撃がイマイチ。72点」
「辛口ですね…」
めぐみんの日課である爆裂散歩に付き合う為、カズマ達は途中でテイラー達と合流し、街から離れた山岳地帯に来ていた。そしてめぐみんは爆裂魔法を撃ち、カズマは辛口の評価を出した。
「しばらく一緒に散歩できていなかったからな、その喜びの余り魔力の収集が若干疎かになっていたみたいだな」
「流石はカズマです。次は辛口で百点を取ってみせます!」
カズマから魔力を分けてもらっためぐみんは、立ち上がると次の目標を決めたのだった。
「う~ん…」
「ダスト、どうしたのだ?」
「いや…、今の爆裂魔法なんだが、相棒のリザードンもできるんだよ」
『えぇっ!!Σ(Д゚;/)/』
ダストの発言にカズマ以外全員が驚いた。
「今から見せてやっから。リザードン、行け!」
「リザ!リザーッ!!」
リザードンは拳を地面に叩きつけると、少し離れた岩から炎の柱が現れ、岩を跡形も無く吹き飛ばした。
「爆裂魔法…に似てなくもない…が」
「やはり『ブラストバーン』だったか」
「知ってるのかカズマ?」
「ああ、リザードンのような一部のほのおタイプのポケモンが覚える技でな、高い威力を持っているんだが、使える回数が少ない上に、使った後少しの間反動で動けなくなるんだ」
カズマはブラストバーンの説明をすると
「何か…めぐみんの爆裂魔法に似てるな…」
そう感想が帰って来た。
「確かに爆裂魔法に似てはいるが、威力は爆裂魔法の方が上さ。…それじゃ今度はコイツの威力を見てもらおうか」
カズマは岩の隙間にダイナマイトを差し込んだ。
「『ティンダー』。…これで良し、皆もう少し離れて」
カズマに言われ、全員が更に距離を離した。するとダイナマイトは破裂し、岩を粉々にしてしまった。
「凄いじゃないか!これがダイナマイトか!」
「確かに凄いですが…、私の爆裂魔法の方が上ですね!」
「めぐみんには以前説明したと思うが、爆裂魔法並の威力を出すには百本単位で使わないといけないから、そうほいほい使えないんだよ」
カズマは苦笑いしながら他のメンバーに説明したのだった。
…
……
………
「…よし、準備万端!」
遠征の準備を整えたカズマ達は、テレポート屋に来ていた。
「カズマ、テレポートならゆんゆんが王都を登録しているのに、何故テレポート屋に頼むのですか?」
「今回は人数が人数だからな、ゆんゆん一人に負担を掛けさせるわけにもいかないさ」
カズマの後ろにはアスタを始め、ダスト、テイラー、キース、リーン、ゆんゆん、リア、エーリカ、シエロ。そして馬車に繋がれたジラフがいた。
「ダスト、リザードンはどうした?」
「相棒なら、この中さ」
ダストは手のひら大のボールをテイラーに見せた。
「そいつは"モンスターボール"って言って、ポケモンを捕獲したり、連れて行く時なんかに使われる道具なんだ」
「…じゃあ、何でピカチュウはカズマの肩に乗っているんだ?」
キースの指摘通り、カズマの肩にはピカチュウが乗っていた。因みにカズマの両隣にはめぐみんとクリスがいる。
「コイツはボールの中とか狭い所が嫌いでさ、一応ボールには入ってもらえたが、結局俺の肩が居心地が良いみたいなんだ」
「ピカ」
カズマの言葉を肯定するかのようにピカチュウが頷いた。
「さて、そろそろ出発するぞ。最終確認だが、備え忘れた物は無いよな?」
カズマが質問すると、全員が頷いた。
「大丈夫みたいだな。…よし、ではいざ王都へ!」
カズマはテレポート屋の人に事前に説明していたのか、すんなり了承され、ジラフを中心に転送用の魔方陣が展開し、カズマ達は王都へテレポートしたのだった。