「さて…、久しぶりに王都に来た訳だが、まずは情報収集からだな」
カズマは門の前にいる兵士に近づいた。
「どうも、お仕事お疲れ様です」
「ん…?おぉ!誰かと思えば、以前クレア様と一緒に鍛練していたカズマさんではないか!」
兵士の一人はカズマの顔を見て驚いた。どうやらカズマが王都を訪れていた時にカズマの存在を知った兵士の様だった。
「君も知ってるとは思うが、今王都は魔王軍の襲撃の警戒中なんだ。王女様やクレア様にご用があるなら、早めに門を通ると良い」
「そうしたいのは山々なんですが、今回は王都では無く、襲撃を受けている砦に援軍として行きたいんですよ」
「そうだったのか!いや早とちりしてすまない。目的の砦はここから歩いて二日程掛かるが、途中には宿泊施設もあるからぜひ利用してくれ。これは砦までの地図と、モンスターの分布図だ。活用してくれ」
兵士はカズマに道案内と地図、モンスター分布図を渡し、カズマは兵士にお礼を言いながら離れた。
…
……
………
「ねえカズマカズマ、これは何かしら?」
「それは『ケサランパサラン』って言う綿毛の精霊みたいだな。雪精と同じで無害な精霊らしい」
「因みにケサランパサランは雪精の亜種と言われていますから、危害を加えたりしたら冬将軍のような大精霊が襲い掛かって来るので」
ジラフが引いている馬車から身を乗り出したアスタはカズマに質問し、カズマはモンスター分布図と照らし合わせながら答え、それにめぐみんが補足をした。
「待ちな!ここを通りたければ金と荷物を全部置いていきな!」
そこに武装した男集団が茂みから現れた。
「さ…「山賊よ!」って、俺のセリフが…」
「カズマカズマ!カモネギよりもレアだと言われる人型モンスター、山賊が現れましたよ!これは是非魔導カメラで写真を撮らなくては!」
「山賊か…、一体どんな辱しめを受けるのか…」
アスタ達の騒ぎを聞き付けたのか、荷台に乗っていたメンバーも山賊の物珍しさに騒いでいた。
「テメェら…、舐めてると痛い目を見るぞ!?大人しく金と荷物を置いて失せやがれ!」
「痛い目を見るのは…、どっちかな?リザードン!」
「リザーッ!!」
ダストはモンスターボールを頭上に投げると、中からリザードンが出て来て、威嚇で炎を頭上に向けて吐いた。
「な…、何だこの
リザードンを見た山賊は一目散に森へ逃げ帰ってしまった。
…
……
………
「やれやれ…、ダクネスが山賊を追い駆けるから、野宿する羽目になっちまったじゃねえか」
「うぐっ…、だが私は騎士として民に害を与える存在を野放しには…」
「変態としての
キースの言葉にダクネスは顔を赤くして俯いてしまった。
「ところでカズマ、紹介された宿泊施設は後どれくらいなんだ?」
「徒歩で半日もしない所にあるみたいだな。何事も無ければ日暮れ前には着けたんだ、何事も無ければ…な」
カズマの言葉にダクネスは更に萎縮してしまった。
「そうか…、なら見張りは俺がやろう。カズマ達は休んでいてくれ」
「いや、見張りは俺がやる。敵感知や暗視のスキルを持っているのは俺とクリスだが、クリスは昼間にやってもらったから、休ませたいんだ」
カズマの言葉にクリスは胸をキュンキュンさせながらカズマを見ていた。
「はいはいご馳走さま。んじゃ俺は一足先に休ませてもらうぜ」
ダストは手を振りながら荷台に向かって歩いて行った。休むと言いながら荷台の見張りをするつもりのようで、リザードンがダストの後を追いかけるように歩いて行った。
…
……
………
そして日時が変わり、草木が眠る丑三つ時…。カズマは暖めたコーヒーを一口啜りながら見張りをしていると、敵感知に反応があった。
「モンスターの気配…、やはり現れたか。数は一つだが、焚き火は消しているから潜伏スキルを使えば何とか…」
やり過ごそうと考えたカズマはアスタの姿を思い浮かべ、考え直した。
「ひょっとして…、近づいているのはアンデットなのか?なら潜伏スキルは通用しない、けど皆を起こせば他のモンスターをも呼び寄せてしまう…。ゾンビやスケルトン程度なら、響鬼にならなくても…」
カズマの目の前に現れたのは、アンデットではあるがゾンビやスケルトンでは無く、"ドラゴンゾンビ"だった。
「すぅ~…、総員起床!ドラゴンゾンビ襲来!各員迎撃に当たれ!」
カズマは息を大きく吸い込み、大声で号令を掛けたのだった。
…
……
………
「何とかなったわね」
「はい!」
アスタとシエロはハイタッチを交わす。
「俺達は良かったけど…」
「うん…」
カズマとクリスの視線の先には、倒れているダクネスとキースがいた。
「ダクネスはシエロ達を庇う為にドラゴンゾンビの攻撃を受けてこうなったのは仕方ないけど…」
「まさかキースがシエロを起こす為に近づいただけで、殴られて気絶しちゃうなんて…」
そう、ダクネスはドラゴンゾンビの攻撃で気絶しているのだが、キースはシエロ達を起こす為に近づき、揺さぶって起こしたのだが、シエロは力一杯キースをぶん殴ってしまったのだ。
「すまない、先に言っておくべきだった」
シエロの失態をリアが代わりに謝った。
「過ぎた事は仕方ないけど、何だってシエロは男を拒絶するんだ?焚き火の時だって、俺達と距離を取っていたし…」
「その事なんだが、実はシエロは貴族の出身で、跡継ぎが生まれるまで、男として育てられたんだ。それで跡継ぎが生まれた後、自分を偽る事はしなくて良くなったのだが、貴族の闇を見てしまったのか"男性恐怖症"になってしまったんだ」
「そうだったのか…、あれ?じゃあ、あのキースをぶっ飛ばしたアレは?」
「それは護身術の一環で武術を嗜んでいたそうなんだ」
リアの答えにカズマは呆気に取られてしまった。
「カズマー!荷物の収用、終わったよーっ!」
そこにクリスが荷物を全てしまい終わった事を伝えた。
「分かった!それじゃ全員馬車に乗り込んでくれ!さっきの戦闘騒ぎで他のモンスターが集まりだしている、早くこの場所から離れるぞ!」
カズマは指示を出して野営場から離れたのだった。
…
……
………
出発してから十数分後、カズマ達は宿泊施設に到着した。
「カズマ、この施設には温泉があるみたいですよ」
めぐみんが指差した所には、温泉を意味する地図記号があった。
「みたいだな。…よし、今日1日ここで休息を取って明日出発しよう」
カズマが予定を決め、全員は宿泊施設に入ったのだった。
…
……
………
明け方、カズマは疲れを癒す為にダストとキースの二人を連れて温泉に入っていた。
「はぁ~、癒される…」
「同感だ」
カズマとキースは湯船の縁に体を預け、寛いでいた。一方ダストは…
「こいつを絞って…っと。よし、んじゃ相棒。体を拭くからじっとしていろよ」
「リザ…」
濡らしたタオルを硬く絞り、リザードンの体を拭き始めた。リザードンはおっかなびっくりな様子でダストを見ていた。
「大丈夫だ、尻尾の火を消さないように注意するからよ」
ダストは慣れた手つきでリザードンの体を拭く。リザードンは最初不安な表情だったが、ダストの手つきに骨抜きになり、気持ち良さそうな顔をした。
「よし、これで終わり…っと!どうだ相棒?」
「リザーッ!」
ダストがリザードンに質問すると、リザードンは笑顔でダストの顔にすり寄った。
「ダスト、随分と慣れた手つきだったな?」
「んっ?ああ、小さい時にドラゴンの世話をしていたからな。それにカズマから聞いていたんだが、ほのおタイプのポケモンは水が苦手って言っていたんだが、体が汚いと気持ち悪いだろ?」
キースはダストの手つきを見て質問をすると、ダストはすんなりと答えた。
「ポケモンも俺達と同じで生きてるからな、体が汚れていると気持ち悪いと思うのは一緒…か」
「そういうこった」
ダストも体を洗い、湯船に体を浸け疲れを癒した。
…
……
………
宿泊施設で疲れを癒したカズマ一行は、施設の管理人にお礼を言って出発。そして約半日で目的の砦に到着した。
「うはぁ~、でっけぇ砦だな…」
「この砦は千人ほどが暮らしていけるくらいの規模があると聞いている」
ダストは壁を見上げながら呟くと、ダクネスがその呟きに答えた。
「そこの冒険者!ここは魔王軍を食い止めるための砦だ、一体この地に何用で来た?」
そこに数人の騎士が現れ、質問を投げ掛けた。
「俺達は援軍に来た冒険者です」
「上級職が多いので、役に立つと思いますよ」
「何…?上級職が多いのならこちらとしても助かる…のだが、念のために身分を証明できる物を拝見したい」
騎士の一人が身分証明の提示を要求してきた為、カズマ達は冒険者カードを騎士に見せた。カードを拝見していた騎士はめぐみんとゆんゆんの名前に若干引いていた。
「では次にサトウカズマ…、サトウカズマ!?あの始まりの街アクセルの新しい領主にして、アイリス様達のお眼鏡に掛かったと言われる『音撃の勇者』サトウカズマ様ですか!?」
「知ってるのか?」
「隊長は知らないのですか!?この御方は王都に侵攻してきた八万の魔王軍をたった一人で壊滅状態にした勇者で、アイリス様にクレア様、レイン様から有望視されている方なのですよ!サトウ様、先程はご無礼な態度を取り、失礼しました!遥々援軍に駆けつけて下さった事、心より感謝申し上げます!」
騎士の一人がカズマ達に敬礼すると、隊長を含む全員が敬礼した。
「…で、俺達は砦に入っていいの?」
「もちろんでございます!自分がご案内致します!」
騎士に促され、カズマ達は砦の中へと入っていった。
…
……
………
「まさかこんな良い部屋に案内されるとはな…」
カズマ達はそれぞれ個室を与えられ、カズマは案内された部屋を見るなり、驚いていた。
コンコンッ「カズマカズマ、砦の中を探索しましょう!」
「探索って…、遊びで来ているんじゃ無いんだが…。まあ良いか」
そこにめぐみんがクリスとアスタの二人を連れてカズマの部屋に訪れ、カズマを砦内の探索に誘った。カズマは少々苦笑いしながらだが、めぐみんに付き合うのだった。
「カズマ、すれ違う人達ですが、何か暗い表情をしていますね」
「そうなるほど戦況がよくないって事か…」
「あっ、カズマ!この扉『制御室』って書いてあるわよ」
めぐみんはすれ違った人達の表情が暗い事に気づき、カズマはそれだけヤバい状況になっている事を察する。そしてアスタは頑丈そうな扉に『制御室』と書かれているのを発見した。
「本当だな、…よし。何か差し入れでも持って行こうか」
「何か良い物あるかな?」
「ドーナツなんてどうだ?コーヒーとも相性が良いし、片手で食べられるし、作り方なら俺が知ってるから」
「なら食堂に行って厨房を借りられるか聞いてみましょう」
カズマ達は差し入れのドーナツを作る為、食堂に行こうとした。
「あれ…?カズマ君じゃないか!」
「キョウヤ!」
そこに鎧を着たキョウヤが現れた。
「何時此処に来たんだい?僕はまだ手紙を出していないのに…」
「手紙?俺達は新聞の記事を読んで此処に援軍として来たんだ」
「そうだったんだ…、来てくれて助かるよ」
キョウヤはカズマに感謝しながら頭を下げる。
「…ミツルギ、フィオとクレメアは何処ですか?」
「二人なら王都にいるよ。此処は何かと危険だから…」
めぐみんがキョウヤといつも一緒にいる二人の姿が見えないので質問すると、キョウヤは王都にいると答えた。
「…なあキョウヤ、すれ違った人達は何か暗い表情だったんだが、何か理由があるのか?」
「ああ…、それなんだが、あの女は"とんでもない魔法"を使っていてね…。その様子だと、"アレ"をまだ見ていないんだね。僕に付いてきてくれ」
キョウヤはカズマ達を砦の外壁へ連れて行った。そしてカズマ達が見た光景は、外壁に幾つものクレーターが存在し、今にも崩れ落ちそうな外壁だった。
「おいおい…、これって…」
「そう、魔王軍幹部ウォルバクは『爆裂魔法』を使うんだ」