この素晴らしい世界に祝福の音色を   作:レイファルクス

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第47話

 

 

「全員集合したな?…では作戦会議を始めたいと思う」

 

 

カズマの部屋にはめぐみんとゆんゆん、アスタにクリス、ダクネスにダスト、リーンにテイラー、そしてキョウヤがいた。

 

 

「あの…リア達は?」

 

 

「リア達アクセルハーツには騎士達の慰安と言う事で簡易的なライブを開いてもらっている」

 

 

めぐみんの質問にカズマが答える。その証拠に耳を澄ませると、確かに軽快な音楽が流れていた。

 

 

「カズマ、先程ここの司令官と会ってな。魔王軍幹部を何度も撃退していると話したら、私達に指揮権を預けたいと言われたのだが…」

 

 

「…予想していた範疇だな。実は俺達も報告がある。先程キョウヤと一緒に砦の外壁を見たんだが、爆裂魔法を撃たれてクレーターだらけになっていたんだ」

 

 

『な…っ!?』

 

 

カズマの報告に現場を見ていないメンバーが驚き、キョウヤを見ると、キョウヤは肯定するかのように頷いた。

 

 

「カズマ君の言ってる事は間違い無いよ」

 

 

「……なあカズマ、ダクネスの防御力なら耐えられるんじゃねえのか?」

 

 

「それは私達も思ったわよ?ダクネスの防御力に私とシエロの支援魔法の重ね掛けを検討したけど、無理だと判明したわ。あのクレーターの具合を見る限り、威力や魔力の練り方はめぐみんよりも上よ」

 

 

「それにダクネスの鎧はドラゴンゾンビ襲撃の時に壊されているからな」

 

 

ダストの提案はカズマ達も考えてはいたが、ウォルバクの爆裂魔法の方が上と判断され、却下となった。

 

 

ズドオオン……

 

 

そこに爆音が響き渡った。

 

 

「な、なんだ!?」

 

 

「敵襲だーっ!ウォルバクが攻めて来たぞーっ!」

 

 

「何だって!?俺達も行くぞ!」

 

 

カズマは全員を引き連れて襲撃があった場所へと向かった。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「こりゃひでえ…、崩壊寸前じゃねえか…」

 

 

カズマは爆裂魔法の跡を見て愕然としていた。

 

 

「カズマ君」

 

 

「キョウヤ、どうだった?」

 

 

「…ダメだったよ、ウォルバクはもう逃げた後だった。ウォルバクは爆裂魔法を放った後、テレポートで引くから捕まえる事ができない。かと言って魔王軍は精鋭部隊を送りこんでいる上に陣地は森の中。相手が得意な地形にモンスターが蔓延っている。…僕達が苦戦している理由がそれさ」

 

 

キョウヤは近くにいた騎士の一人に状況を聞いた後、カズマに報告した。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

カズマが部屋に戻り、作戦を考えている中…。

 

 

「カズマ、私にチャンスをもらえませんか?」

 

 

めぐみんがカズマに声を掛けた。

 

 

「私がウォルバクに爆裂魔法を撃ち込む事ができれば…」

 

 

「…その作戦は一人じゃできない。敵感知と千里眼、潜伏スキルを持ってる俺が同行する。それで良いな?」

 

 

「……はい!」

 

 

カズマが作戦を練り上げた翌日、カズマはめぐみんと索敵補佐にクリス、テレポート要因のゆんゆん、支援担当のアスタを連れて偵察に出た。

 

 

「(あんな近くにまで魔王軍が接近しているのか…。モンスターの影は見えないが、数が多いのは分かる)」

 

 

「カズマ~、どうでしたか?」

 

 

「よ…っと。キョウヤの言うとおり、魔王軍の陣地があった。それも予想より数が多かった」

 

 

木の上から千里眼を使って監視していたカズマは、下にいるめぐみんに呼ばれ木から飛び降り、見た光景を話した。

 

 

「とりあえず、俺はめぐみんと一緒に潜伏スキルを使って隠れる。クリスは近くで敵感知を使って反応があったら教えてくれ。アスタはゆんゆんと一緒に行動を。もし戦闘になったら俺とクリスとゆんゆんの三人で時間を稼ぐ、それでいきたいんだが良いか?」

 

 

カズマの作戦に全員が頷いたのを確認したカズマは、めぐみんとクリスを連れて砦近くの茂みに隠れ、スキルを発動させた。

 

 

「さあ…、どこからでも来るがいい…」

 

 

カズマが一言呟いたその時、マントで身を隠し、フードを目深まで被った人物が現れた。

 

 

「あいつか…。…さあ、爆裂魔法を撃つ準備をするがいい。その間にめぐみんの爆裂魔法が火を吹く事になるぜ…」

 

 

その人物は砦に近づく中、急に立ち止まると、カズマ達の方へ視線を向けた。

 

 

「なんだ…?まるでこっちを見ているかのような…?…まさか、気づかれた!?」

 

 

カズマは気づかれた事に気づき、めぐみん達と一緒に茂みから出た。

 

 

「………」

 

 

フードを被った人物はカズマ達…特にめぐみんを凝視していた。

 

 

「なんだ…?こっちを…特にめぐみんをずっと見ている感じだが…?」

 

 

「……まさか、こんな所で会うなんてね」

 

 

フードを被った人物は、目深に被ったフードを取り払うと、頭から生えた立派な角が見え、マントからは女性特有の豊満なボディが見えた。

 

 

「私はウォルバク、魔王軍幹部の一人にして怠惰と暴虐を司る女神、ウォルバクよ」

 

 

ウォルバクは自己紹介をするが、それをちゃんと聞いていたのはカズマだけだった。めぐみんとゆんゆんはウォルバクを見て呆然としており、アスタとクリスは震えていた。

 

 

「…おね「「ウォルバク"せんぱ~い"!!」」…ってええ!?」

 

 

めぐみんが何かを口にしようとした瞬間、アスタとクリスはウォルバクを"先輩"と言いながら詰め寄った。

 

 

「な…っ!?何だいアンタ達は!?」

 

 

「先輩、私です!あなたの後輩のアクアです!」

 

 

「同じく、エリスです!」

 

 

「アクア…?エリス…?…って、まさかあのアクアとエリス!?うそ、久しぶりじゃない!元気そうね!」

 

 

ウォルバクは詰め寄ったアスタとクリスに戸惑っていたが、アスタとクリスが自分の正体を口にすると、ウォルバクは目を輝かせながらアスタとクリスの手を握った。

 

 

「……えっと?」

 

 

「ああ、ごめんなさい。先輩との再会に嬉しくてつい…」

 

 

「紹介するね、あたしとお姉ちゃんの先輩のウォルバク先輩」

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「改めて私はウォルバク、魔王軍幹部の一人にして、怠惰と暴虐を司る女神、かつてアクアとエリスに女神の仕事を教えていた者よ」

 

 

「これはご丁寧にありがとうございます。俺はサトウカズマ、別の世界から来た転生者の一人です」

 

 

「サトウ…?」

 

 

カズマの名前を聞いたウォルバクは何やら聞き覚えがありそうな表情をした。

 

 

「あの…俺の名前がどうかしましたか?」

 

 

「いえ…お伽話に出てくる勇者の名前が『サトウ』だったからつい…」

 

 

「先輩、カズマがいた世界では『佐藤』って名前は一番多い名前なんですよ。多分同じ『佐藤』でも別人だと思いますよ。それはそうと先輩、何でこの世界で"邪神"なんて名乗っているのですか?」

 

 

「そうね…、どこから話せば良いかしら…?」

 

 

アスタの疑問にウォルバクは考えながら答え始めた。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

ウォルバク含む"神"の殆んどは"ご神体"として崇められ、そのご神体を中心に"宗教"が生まれ、その宗教に入信した信者の数によって"神格"を持つそうだ。

 

 

そしてウォルバクはアクアとエリスの二人に女神としての仕事を教える最中に自分の信者が一人もいなくなった事を知った。

 

 

ウォルバクはアクアとエリスにバレないようにエリスが管理する世界に降り立ったまでは良かった。だが不運な事に偶然そこにいたアクシズ教徒がウォルバクの事を『邪神』と言い出した。

 

 

ウォルバクの目の前は悪魔そっくりだった為、ウォルバクは誤解を解こうとしていたが、アクシズ教徒達は聞く耳持たず、石や魔法を放ち、ウォルバクを討とうとした。

 

 

そして命からがら逃げ延びたウォルバクの目の前に魔王が現れ、『我が軍の幹部になるのなら、我が部下を貴女の信者にしよう』と言われたそうだ。

 

 

背に腹は変えられないウォルバクはやむを得ず魔王の誘いに乗ったのだった。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「……これが私が邪神を、ひいては魔王軍幹部を名乗る理由よ」

 

 

ウォルバクの過去を聞いたカズマ達は誰しも言葉を発する事が出来なかった。

 

 

「……先輩」

 

 

「なに?」

 

 

「私の過去の信者達が先輩を苦しめた事、今更謝っても許されるとは思っていません。…ですが、謝らせて下さい。先輩、本当に申し訳ありませんでした」

 

 

アスタはウォルバクに土下座をしたのだった。

 

 

「……もういいわよ、貴女が悪いんじゃないんだから」

 

 

ウォルバクは哀しそうな表情をしながらアスタの頭を優しく撫でた。

 

 

「先輩…、先輩~っ!」

 

 

アスタはウォルバクに抱きつき、その胸の中で涙を流した。ウォルバクはアスタの頭をずっと優しく撫で続けるのだった。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「落ち着いたかしら?」

 

 

「グスッ…先輩、ずびばぜん…」

 

 

数分後、ウォルバクから離れたアスタは目を充血させていた。

 

 

「…それでウォルバク先輩、これからどうするのですか?」

 

 

「そうね…、魔王軍幹部になるのと引き換えに信者を手に入れたけど、色々と疲れてしまったわ。いっそのこと誰かが私を滅ぼしてくれないかしら…?」

 

 

「……ちょっと良いですか?提案があるのですが…」

 

 

ウォルバクは空を見上げながら破滅願望を口にすると、カズマが挙手しながら全員の視線を集めた。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「……と言う感じ何ですが、どうでしょう?」

 

 

「…アンタ、よくそんな事を思い付くわね。……でも、試してみる価値は有りそうね」

 

 

カズマの提案にウォルバクは呆気に取られながらも、その提案に乗り気だった。

 

 

「……いいわ、あなたの提案に乗りましょう!どうせこのまま待っても来るのは破滅だけ。ならば残りの人生を有意義に過ごさないと」

 

 

「ありがとうございます。…それで決行は何時に?」

 

 

「そうね…"準備"が整ったら"合図"を送るから、その時に」

 

 

カズマとウォルバクは提案の詳細を決め、お互い何もせずに帰って行った。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

一週間後…

 

 

ドゴオオオン…

 

 

「クソッ、一週間攻めて来ないと思った矢先に!」

 

 

「クリエイトアースとゴーレム生成できる奴連れて来い!」

 

 

砦の外壁に爆裂魔法が撃たれ、騎士達はてんやわんやになっていた。その中

 

 

「…来たな」

 

 

「…来たね」

 

 

「…来たわ」

 

 

カズマとクリスとアスタの三人だけは落ち着いていた。

 

 

「それじゃカズマ、私は外壁の補修に向かうわね」

 

 

「頼む」

 

 

アスタは外壁補修をする為、部屋を退室した。

 

 

「……さて、めぐみん、ゆんゆん。そろそろ出番だぜ?」

 

 

「はい!任せてください!」

 

 

「これもあの人の為…、やりましょう!」

 

 

カズマの言葉にめぐみんとゆんゆんはやる気を見せていた。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「あそこか、魔王軍の連中ウォルバクの魔法で勝利を確信しているのか、すっかり宴会ムードだな。めぐみん、どデカいのを一発喰らわせてやれ」

 

 

「分かりました。『エクスプロージョン』!」

 

 

《vib:1》ドオオオオ《/vib:1》

 

 

「なっ、何だああああ!?」

 

 

「敵襲だああーっ!!」

 

 

「っ!見ろあそこっ!あいつらだ、あいつらが魔法を…!」

 

 

「『テレポート』!」

 

 

カズマ達は魔王軍に見つかると同時にテレポートでその場を離脱、無論襲撃された魔王軍は仕返しとばかりに砦へ進撃をするが、そこは"魔剣"と"音撃"、二人の勇者候補が率いる腕利きの冒険者の軍。魔王軍に勝ち目は無かった。

 

 

それからというもの、カズマ、めぐみん、ゆんゆんの三人は毎日魔王軍の陣地に爆裂魔法を撃ってはテレポートで離脱すると言う事を繰り返し、

 

 

時には夜に、時には食糧庫が被害にあったり、

 

 

時にはリザードンに乗ったダストが導火線に火が着いたダイナマイトをばら蒔いたり。

 

 

途中からはめぐみんのレベルが面白い様に上がり、狂気に狂ったような笑いをしたりと、魔王軍の心を完膚なきまでへし折った。

 

 

そして…

 

 

『降参します!命だけは助けてください!!』

 

 

魔王軍はカズマ達の姿を見るや土下座をし命乞いをした。

 

 

だが…

 

 

「……『エクスプロージョン』!!」

 

 

めぐみんは躊躇無く爆裂魔法を撃ったのだった。

 

 

その後もめぐみんの容赦ない爆撃は続き、何時しか魔王軍の陣地はクレーターだらけになっていた。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「さて…、打ち合わせ通りだとそろそろのはずだけど…」

 

 

「おい、ウォルバクだ!ウォルバクが来たぞ!」

 

 

冒険者の一人が窓の外を見ていると、ウォルバクが近づいているのを見つけた。

 

 

「来たか!めぐみん、準備はいいな?」

 

 

「はい!」

 

 

カズマはめぐみんに質問すると、めぐみんは力強く返事をした。そしてお互い頷き合うと、ウォルバクの元へと向かった。

 

 

「ようウォルバク、随分と遅い報復だな?」

 

 

 

「………」

 

 

カズマとめぐみんがウォルバクの前に現れ、カズマがウォルバクを挑発する。が、ウォルバクは何も言わなかった。

 

 

「黙りか…(…どうやら、必要以上の発言をさせないようにしているみたいだな)」

 

 

カズマはウォルバクを監視していると、ウォルバクは爆裂魔法を撃つ姿勢を取った。

 

 

「…無駄です、既にあなたの敗北は決まっています。『エクスプロージョン』!!」

 

 

めぐみんは"無詠唱"で爆裂魔法を放ち、ウォルバクを消滅させたのだった。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

魔王軍幹部ウォルバクを討伐した事で、砦は飲めや歌えやの宴会騒ぎとなった。リア達アクセルハーツのライブも相まって冒険者達は日々の疲れを発散するかのように騒いだ。

 

 

そして一夜明け、カズマはめぐみん達を引き連れて砦を後にし、以前利用した宿泊施設に泊まっていた。

 

 

「ふう~」

 

 

カズマは一人湯船に浸かっていた。

 

 

「失礼するわね」

 

 

するとそこに"見知った顔"の女性がタオル一枚の姿で湯船に入り、カズマの横に座った。

 

 

「どうでしたか?」

 

 

「…流石としか言い様が無いわね。おかげで気分が楽になったわ」

 

 

「それは良かったですよ…"ウォルバク"さん」

 

 

そう、湯船に入って来たのは他ならぬウォルバクだった。

 

 

何故彼女が爆裂魔法を喰らっても平気だったのか?その理由はカズマ達がウォルバクと初めて会った時まで遡る。

 

 

カズマがウォルバクに提案したのは『ウォルバクの身代わり』だった。

 

 

ウォルバクの"魔王軍幹部"と言った肩書き等を身代わりに移す事で、ウォルバクを討伐したように見せ掛けたのだった。

 

 

ウォルバクはその提案を受け入れた後、一度魔王城に戻り、城の宝物庫から『魔力人形』と呼ばれる物を持ち出した。

 

 

『魔力人形』は、身代わり人形の一種で、身代わりにしたい人物の血や髪の毛等を媒体にして、魔力を注入し術式を構成する事で動く人形である。

 

 

ウォルバクはその人形に術式を施し、魔王軍幹部の肩書きを移し、自分の変わりに消滅させたのだった。

 

 

「近くで見させてもらったけど、あの子随分と爆裂魔法の扱いが上手くなったわね」

 

 

「昔救われた貴女に、自分の爆裂魔法を見せたいと言っていましたからね」

 

 

「ふふっ…」

 

 

ウォルバクはお湯を手で掬い、顔に掛けた。

 

 

「…それで、私はこれからどうすれば良いのかしら?」

 

 

「紅魔族の里にある神社でご神体になって欲しいんです。紅魔族の連中は働いている者はいますが、大体がニートですし、戦いになれば容赦無く魔法をぶっ放しますから」

 

 

「"怠惰"と"暴虐"を司る私にとってうってつけって訳ね…。良いわよ」

 

 

ウォルバクは紅魔族のご神体になる事を承諾したのだった。

 

 

「それで…、あなたにお礼がしたいのだけど」

 

 

「お礼なんて結構ですよ。俺はあいつらの想いに答えただけですから」

 

 

「それじゃ私の気が済まないのよ。…ねえ、ちょっとこっちを向いて?」

 

 

「えっ?一体何を…むぐっ」

 

 

ウォルバクは体に巻いたタオルを取りながらカズマとキスをした。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「ふふっ、凄かったわ」

 

 

「そ…そりゃどうも…」

 

 

カズマはウォルバクと一線を越えた後、ぐったりとしていた。

 

 

「あの…何でこんな事を?」

 

 

「言ったでしょ?"お礼"だって。それに…私があなたとしたかったから…かしらね?」

 

 

ウォルバクはカズマにウインクをした。

 

 

「私を救ってくれてありがとう。…大好きよ、チュッ」

 

 

ウォルバクは最後にカズマに口づけをして脱衣所に向かった。カズマはその後起こり得る出来事に悩みながら湯船に身を沈めたのだった。

 

 

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