めぐみん、ダクネス、アスタ、クリスの四人を仲間にしたカズマは意気揚々とクエストを受ける…ことは無く、のんびりする…ことも無く、日々忙しそうに動いていた。
ある時はアクセルの街を囲う壁を補習するために大工仕事を。
ある時はキャベツ狩りで知り合ったウィザードや剣士に初級魔法や両手剣スキルを教えてもらったり。
ある時は料理スキルを習得するためにギルドの厨房で料理したり。
ある時は武器の手入れをするために鍛治屋で鍛治スキルを教わったり。
カズマは着々とスキル能力を伸ばしていた。
…
……
………
「ふぅ…」
この日、カズマはギルドの厨房の手伝いを終えて、飲食スペースで寛いでいた。
「おやカズマ」
「ダクネスとめぐみんか」
するとそこにダクネスに背負われためぐみんが現れた。因みにダクネスの今の格好はレディースーツである。普段着用している鎧はキャベツ狩りの時に所々凹んでしまい、修理に出していた。
「二人が一緒ってことは、"日課"か」
カズマが言った"日課"とは、めぐみんが一日一回爆裂魔法を放つ"爆裂散歩"のことである。
「ここ二~三日カズマが付き合ってくれなかったので、ダクネスに頼みました」
「と言うことだ」
「あ~、それはすまなかったな。お詫びと言ってはなんだが、俺が作った料理があるから、それを食べよう。明日は俺が爆裂散歩に付き合うから」
カズマはダクネスからめぐみんを引き取り、めぐみんを椅子に座らせると、厨房へ行き、料理を両手いっぱいに持って帰って来た。するとめぐみんたちがいる所にアスタとクリスがいた。
「……って、アスタにクリス。いつの間に来てたんだ」
「ちょうど今よ、めぐみんたちが座っていたから相席したら、カズマがちょうど料理を持って来たのよ」
「…まあいいや、料理を持って来たから、食べてくれ」
カズマは次々に持っていた料理をテーブルに並べていった。
「悪いわね、それじゃいただきます」
「「「いただきます」」」
アスタを真似して三人が料理を前に拝み、カズマの料理を口にする。
「「「「美味しい~っ!」」」」
どうやらカズマの料理は絶品だったようで、みんな一心不乱に料理を平らげていった。
「「「「御馳走さまでした!」」」」
「はいお粗末さま。…で、味はどうだった?」
「どれもこれも美味しかったわよ!味付けも好みだったし、点数を付けるなら100点満点!」
カズマは料理の感想を聞くと、アスタは親指を立てながら高評価を出し、めぐみん、ダクネス、クリスの三人はアスタに同意するかのように頷いた。
「こんな美味しい料理を食べたから、今夜のクエストも張り切れるってもんよ!」
「んっ?クエスト?」
「実は…」
クリスが言うには、街の共同墓地に現れる"ゾンビメーカー"の討伐をルナさん直々から依頼されたそうな。
「"ゾンビメーカー"?」
「"ゾンビメーカー"とは、死体に乗り移ってゾンビを操る悪霊のことです」
カズマが疑問に思っていたことにめぐみんが説明をすると、カズマは理解したようで、頷いていた。
「なら今夜、その共同墓地に現れるゾンビメーカーを倒せばいいんだな?」
「カズマ、付き合ってくれるの?」
「当たり前だろ?プリーストとはいえ、夜中に女の子を歩かせるわけにはいかないからな」
カズマははにかみながらアスタの頭を撫でる。するとアスタは顔を紅くし、俯いてしまった。
「お~お~、男前だねぇ~。因みに、あたしたちも女の子なの?」
「なに当たり前のこと聞いてんだよ?みんな可愛い女の子に決まってんじゃん」
カズマは当然と言わんばかりに言うと、全員の顔が紅くなった。
「あはは~、ありがとう…(うぅ~、そんなこと平然と言われたら恥ずかしいよ~!)」
「(何でしょうか…?カズマにあんなこと言われたら、顔が凄く熱いです)」
「(このような攻めは好きでは無いのに、顔が熱くなる!)」
カズマは顔が紅くなったメンバーを見て、首を傾げた。
「とにかく、今日はゾンビメーカーの討伐をやろう、俺は用意しなきゃいけない物があるから、これで失礼するぞ。アスタ、クリス。悪いが手伝ってくれ」
カズマはアスタとクリスを連れてギルドから出ていった。
…
……
………
夜、カズマパーティーはゾンビメーカーを討伐するため、共同墓地に来ていた。
「カズマ、焼けたわよ」
「ありがとう」
ゾンビメーカーやゾンビたちが動き出すのは夜中らしく、動き出すまでは暇なので、バーベキューをすることとなり、カズマたちは網の上で焼かれた肉や野菜を頬張っていた。
「"クリエイトウォーター"、"ティンダー"」
カズマはマグカップにコーヒーの粉を入れ、水の初級魔法である"クリエイトウォーター"でコーヒーを作り、火の初級魔法である"ティンダー"でマグカップの底を熱し、温かくなったコーヒーを一口啜った。
「カズマ、私にも水を下さい」
「あいよ、"クリエイトウォーター"」
「カズマ、もうちょっと火を強めてもらえる?」
「わかった、"ティンダー"」
カズマはめぐみんのマグカップに水を注ぎ、火を強くした。
「って何で器用に初級魔法を使いこなしているんですか!!余りにも自然過ぎて違和感を感じませんでしたよ!」
初級魔法を器用に扱うカズマにめぐみんは驚いていた。
「確かに初級魔法は使用魔力は少ないが威力も少ない。けど"状況"や"組み合わせ"次第で強くなる。例えば土の初級魔法"クリエイトアース"と風の初級魔法"ウインドブレス"を組み合わせれば目潰しになったりな。"モノは使いよう"ってヤツさ」
カズマは誰もいない所で実演してみせた。
「なるほど、私の故郷である"紅魔の里"でも初級魔法を覚える人はいませんが、これはこれで便利そうです。今度里へ帰った時に進言してみるのもアリですね」
めぐみんは初級魔法の使い所を考えていた。
「…っ、冷えてきたな」
ダクネスは冷えた体を暖めようと自分の体を抱き締める。
「クリス、このブランケットをダクネスに渡してくれ。ダクネス、そのブランケットを太もも辺りに被せれば、ある程度寒さを凌げるぞ。でも火元には近づき過ぎないようにな?ブランケットに火が移るから」
カズマは四次元バッグからブランケットを一枚出し、クリスに渡した。そしてクリスはダクネスの太ももにブランケットを被せたのだった。
「用意が良いな」
「昼間"用意しなきゃいけない物がある"って言ったろ?いくら季節が春とはいえ、夜は冷える。それにここ数日晴れが続いていたから"放射冷却"で体温を大幅に奪われると思ったからな」
「「「「放射冷却?」」」」
「"放射冷却"ってのは、日中地面が暖められても遮蔽物が無いと夜に暖まった熱が無くなる現象のことだ。主に砂漠とか遮蔽物が無い所では日中の気温はかなり高いが、夜になると一気に冷える。時と場合には水が氷になるほど冷たくなるんだ」
カズマの説明に全員が感心していた。
「「っ!」」
するとカズマとクリスは同時にある方向を向いた。
「…感じた?」
「ああ、向こうに"反応"がある。数は…五」
「カズマ、もしかして"敵感知スキル"を?」
ダクネスがカズマに質問すると、カズマはゆっくり頷いた。
「買い物をしている時にクリスから教わった、とにかく行こう!」
カズマはクリエイトウォーターで火を消し、全員で敵感知の反応があった場所へ向かった。
「あれは…?」
小高い丘でカズマたちは様子を見ると、ゾンビたちが一ヶ所に集まっていた。すると中央にいた人影を中心に魔方陣が展開された。
「あれ…?あの人…」
「お姉ちゃん、もしかして…」
魔方陣の光によって照らし出された人物を見たアスタとクリスは、互いを見て頷いた。
「知ってる奴か?」
「まあね、害は無いから行きましょう!」
「あっ!おい待て!」
アスタとクリスは魔方陣を展開している人物の下へ向かった。カズマたちも二人の後を追うように走った。
「久しぶりね、"ウィズ"」
「えっ…?あっ、アスタさんにクリスさん!」
魔方陣を展開していた人物、ウィズと呼ばれた者は被っていたフードを外した。
「あ~。アスタ、知り合い…か?」
めぐみんを背負ったカズマがアスタに質問をする。
因みに何故めぐみんを背負っているのかと言うと、アスタとクリスを追いかけている途中、めぐみんが先に力尽きてしまい、仕方なくカズマがめぐみんを背負う形となった。
「えぇ、紹介するわ。アクセルの街で魔法具店を営んでいる"リッチー"のウィズよ」
「はじめまして、"リッチー"のウィズと申します。"ノーライフキング"なんてやってます」
"リッチー"とは魔法を極めた大魔法使いが人の身体を捨て成り果てたアンデットの王である。絶大な魔力と魔法防御を持ち、通常の武器では傷一つつけられず、加えて触れるだけで相手の魔力や生命力を吸い取る伝説級のモンスターである。
「ところでウィズ、アンタなんでこんな所に来てるのよ?」
「実は…、この共同墓地の魂はお金が無いためロクに供養してもらえず、天に還ることもできず、毎晩彷徨ってまして……」
「あぁ~、リッチーであるアンタは死者の声を聞くことができるから、いてもたってもいられなかった訳ね」
アスタがウィズが共同墓地に来ている理由を聞くと、ウィズは恐る恐る話し、アスタは全てを理解した。
「それは立派だが、それって普通街のプリーストがするんじゃないのか?」
カズマは最もな疑問をウィズに投げ掛ける。
「その…、この街のプリーストさん達は"お金第一"で…。お金が無い人は後回しで…、ほとんどここに足を運ぶ人も居ませんし…」
「まったく、同じプリーストとして腹が立つわね!『彷徨える魂を導き、救い、天に還す』がプリーストの本懐だと言うのに!」
ウィズの話を聞いたアスタは怒りを露にした。
「流石アスタ、プリーストの鑑だな。でもウィズ…だっけ?魂を天に還すのなら、この周りにいるアンデットは?」
「あっ…、これは私が意図的にしている訳では無く、私の魔力に死体が勝手に反応して目覚めちゃうんです。私としてはここで彷徨う魂が無くなればここに来る理由も無くなるのですが…」
カズマはアスタを褒めつつ、ウィズにアンデットのことを質問すると、ウィズは困ったように答えた。
「いいわ!私が纏めて天に還してあげる!」
そこにアスタが胸を張って答えた。
「本当ですか!?」
「私だって、彷徨える魂が居続けるのは嫌だしね。カズマ、ウィズを連れて墓地から離れてくれない?大掛かりな浄化の魔方陣を展開するから、ウィズを巻き込まないようにしないと」
アスタのお願いにカズマは頷き、ウィズとダクネス、めぐみんを連れて墓地から離れた。
…
……
………
《アスタside》
「……うん。お姉ちゃん、みんな墓地から離れたよ」
感知スキルを使っていたクリスがみんなが墓地から離れたことを伝えてくれた。本当に良くできた"妹"だこと。
さてと、そろそろ魂を天に還してアンデットを浄化しないと!私は"この世界の姿"から"本当の姿"に戻って…っと。
「それじゃあなたたち、還る所へ行きましょう!"セイクリット・ターンアンデット"!」
私は頭上に墓地を覆うような巨大な魔方陣を展開し、アンデットを浄化し、魂を天に還したのだった。
《アスタ→"アクア"side end》
…
……
………
「供養されていない魂が…ですか」
翌朝、カズマたちはクエストの報告のため、ギルドに来ていた。
「えぇ、その魂がゾンビメーカーになってアンデットを出していたようで。でも、アスタが"全て浄化"してくれたのでしばらくは大丈夫だと思います」
カズマは嘘を混ぜながら報告をする。
「……わかりました。わざわざありがとうございました!報酬をお受け取りください」
カズマはルナさんから報酬を受け取り、アスタたちの下へ向かった。
「カズマ、お帰り」
「あぁただいま。報告は嘘を混ぜながらだったけど、報酬は貰えたぞ」
カズマはテーブルに報酬が入った袋を置いた。
「それで配分だけど…、まずウィズが半分、残りの半分を俺たち五人で分け合う。報告前に確認したことだが、本当にこれでいいんだな?」
「えぇ。元々ウィズが善意でやっていたことだし、私たちはそのお手伝いをしただけ」
カズマの確認にアスタは首を縦に振る。そしてアスタに同意するかのようにクリス、ダクネス、めぐみんも首を縦に振った。
「…ありがとうございます」
ウィズは遠慮がちにお礼を言い、カズマは報酬の半分をウィズに渡したのだった。