この素晴らしい世界に祝福の音色を   作:レイファルクス

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時系列は前後しますが、先に屋敷入手します。


第6話

 

 

共同墓地でリッチーのウィズと出会ってから丸一日経過した日の昼、カズマはアスタとクリスの案内の下、とある店に辿り着いていた。

 

 

「ここがウィズが経営している"ウィズ魔法具店"よ」

 

 

「ネーミングそのまんまだな…」

 

 

カズマのツッコミを他所に、アスタは扉を開けた。

 

 

「ウィズ、こんにちは」

 

 

「アスタさん、クリスさん。それにカズマさんも、いらっしゃいませ」

 

 

カズマたちが扉を潜ると、ウィズが出迎えた。

 

 

「相変わらず閑古鳥が鳴いてるわね、ちゃんとご飯食べてる?」

 

 

「あはは…、この前頂いたお金で久しぶりに固い食べ物を口に…」

 

 

苦笑いを浮かべるウィズを横目に、カズマは身近な棚を見ていた。

 

 

「あっ、気をつけてください!その棚は爆薬が置いてますので!」

 

 

「ウェッ!?」

 

 

カズマはびっくりして棚から離れた。

 

 

「今お茶を淹れますので、少しお待ちくださいね」

 

 

ウィズはそう言って店の奥に引っ込んでいった。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「お待たせしました」

 

 

ウィズは来客数と同じ数のティーカップをトレイに乗せ、カズマたちの前に置いた。

 

 

「ありがとう。……うん、いい香りね」

 

 

「……美味しい」

 

 

「クリスの言う通りだな、クッキーとか持ってくれば良かったかな?」

 

 

ウィズが出した紅茶をカズマたちは飲んだり匂いを嗅いだりした。

 

 

「お気に召して良かったです。ところで、今日は何のご用で?」

 

 

ウィズは来店した理由を訪ねる。

 

 

「実はカズマがウィズにお願いしたいことがあるみたいなの」

 

 

「カズマさんが…ですか?」

 

 

「ああ。ウィズに何か使えるスキルを教えて貰えないかなって思ってな」

 

 

カズマは来店した理由を口にする。

 

 

「私からスキルを…?」

 

 

「俺のパーティーって、前衛と後衛が二人ずつなんだ。クルセイダーに盗賊、アークウィザードにアークプリースト。んでもって俺は前衛と後衛どっちでもいけるオールラウンダーだから」

 

 

「確かにそうね。カズマは武器次第で前も後ろもこなすから」

 

 

そう、カズマは音撃棒・烈火と音撃弦・列雷と言った接近戦に加え、音撃管・烈風と言った遠距離攻撃もこなすため、前衛、後衛どちらもこなせるのだ。

 

 

「……わかりました。では"ドレインタッチ"なんてどうでしょうか?」

 

 

「"ドレインタッチ"ね…、確かに覚えて損は無いと思うよ」

 

 

ウィズの提案にクリスは頷いた。

 

 

「"ドレインタッチ"?」

 

 

「"ドレインタッチ"はリッチーのスキルの一つで、触れた相手の生命力や魔力を奪うことができるの」

 

 

「それを応用して、魔力を渡したい人に触れて魔力を送ることもできます」

 

 

「なるほど…、奪うだけじゃなく、与えることもできる…か。それって"他人の魔力を他人に与える"ってことはできるのか?」

 

 

クリスとウィズの説明を聞いたカズマはウィズに質問をする。

 

 

「できますよ、ただ、加減を間違えれば相手を死なせてしまう恐れがありますので…」

 

 

「そのあたりは大丈夫だと思う。それじゃウィズ、早速"ドレインタッチ"を教えてくれるか?」

 

 

「はい!」

 

 

カズマはウィズからドレインタッチを教えてもらい、無事習得し、授業料として"衝撃を与えると爆発するポーション"を幾つか買ったのだった。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「この屋敷…か」

 

 

カズマたち一行はアクセルの街外れにある屋敷へと来ていた。その理由は、カズマたちがウィズの店から出ようとしていた時に不動産屋が訪れ、"屋敷に巣くう悪霊をお祓いして欲しい"と言う依頼をしたのが始まりである。

 

 

ウィズはその依頼を受けようと思っていたが、その日は用事があるらしく、そこでアークプリーストであるアスタがウィズの代わりにお祓いをすることになったのだ。

 

 

「随分と立派な屋敷ですね…」

 

 

「不動産屋の店長の話だと、何処ぞの貴族の別荘だったって話よ。でも、随分前に売りに出されたみたいなんだけど…」

 

 

「悪霊騒ぎのせいで、買い手が見つからず…って訳か」

 

 

カズマたちはとりあえず屋敷の中へと入っていった。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「なぁアスタ、除霊はいつするんだ?」

 

 

夜、カズマの手料理を堪能したメンバーが寛いでいると、食器を洗い終わったカズマがアスタに質問をする。

 

 

「そうね…、悪霊に限らず幽霊って大体夜中に活動するから、それに合わせてって感じね。それと、この屋敷には悪霊はいないわ。代わりに地縛霊はいるけど」

 

 

アスタはさらっと爆弾発言した。

 

 

「地縛霊?」

 

 

「カズマが料理している間にちょっと調べたのよ。名前は『アンナ=フィランテ=エステロイド』、この屋敷の持ち主だった貴族とその貴族の下で働いていたメイドの間に生まれた隠し子ね」

 

 

「でも彼女は厄介者扱いされて幽閉されていたみたい。しかも親の貴族は病弱で生まれて数年後に病死、その翌年にメイドもそれから行方知れず…。彼女もまた貴族と同じ病になって、親の顔を知らずに…」

 

 

アスタの調べに全員が口を閉ざした。

 

 

「それじゃ、悪霊騒ぎの原因はもしかして…」

 

 

「クリス、勘違いしないで。恐らくだけど、彼女を慰めたり遊んだりしていた所を目撃されただけよ。だから私たちが話し相手になったり、お供え物をすれば、幽霊は来ないはずよ」

 

 

クリスが勘違いしそうになったのをアスタはやんわりと訂正させた。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

夜中、カズマは自室にしていた部屋のベッドから起きた。どうやらトイレに行きたかったらしく、寝ぼけ眼を擦りながらベッドから出ようとする。だが、カズマの視界に"その場に無い物"が入った。

 

 

「(ななな…っ、何だ今のは!?あんなの昼間には無かったぞ!……いや、落ち着け。これってもしかして…)」

 

 

カズマは急いでベッドに潜り、思考を巡らせる。そしてベッドから頭を出すと、『酒瓶を持った女の子型の西洋人形』がカズマを覗いていた。

 

 

「○%§▲%&△□※#‡▼%△§!!!」

 

 

カズマは悲鳴を上げ、アスタがいる部屋へと走った。

 

 

「アスタ!」

 

 

「きゃああああ!!」

 

 

「うわあああっ!!…って、めぐみん!?」

 

 

カズマがアスタの部屋に入ると、そこにはめぐみんと言う先客がいた。

 

 

「カズマですか…、驚かさないでください」

 

 

「済まない…って、何でめぐみんがアスタの部屋に?」

 

 

「実は…、部屋で寝ていたら人形が私を上から見ていまして…、それでアスタに助けてもらおうと。…それと、一緒にトイレに…」

 

 

どうやらめぐみんもカズマ同様、アスタに助けを求めて来たようだった。

 

 

「……この際だ。めぐみん、俺と一緒にトイレに行こう。実は俺もトイレに行きたくて…」

 

 

「……わかりました。本来なら嫌なのですが、背に腹は変えられません」

 

 

カズマはめぐみんの手を引いて、恐る恐るドアを開け、人形がいないことを確認すると、一目散にトイレへと向かった。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「ふう…、すっきりしました」

 

 

トイレに到着したカズマとめぐみんは交代でトイレで用を済ませた。

 

 

「ところでカズマ、先程歌っていたのはどんな曲ですか?」

 

 

カズマはめぐみんに気を利かせるため、自分がそこにいることを証明するために歌を歌っていた。

 

 

「俺の故郷で流行っていた曲さ」

 

 

「へぇ~、今度私にも教えてください」

 

 

「機会があれば…な。それよりも、アスタはどこにいるんだ?」

 

 

トイレから出た二人はアスタを探すため、廊下を歩いていた。

 

 

「……もしかしてあの人形たちに」

 

 

「縁起でも無いことを言わんでくれ。……んっ?」

 

 

カズマは違和感を感じ、敵感知スキルを発動させると、外に反応があることに気づいた。

 

 

「…外に気配を感じる。行ってみよう!」

 

 

カズマはめぐみんの手を引いて、屋敷の外へ出た。

 

 

「あっ!カズマにめぐみんじゃない!」

 

 

「っ!アスタの声だ!どこにいる!?」

 

 

「カズマ、上です!」

 

 

めぐみんが上、つまり屋敷の屋根を指差すと、そこには女神の姿となったアスタとクリス、そして淡く光る球体が幾つも浮いていた。

 

 

「ア…、アスタ…?」

 

 

「そうよ?何、仲間の顔すらわからなくなったの?」

 

 

「あの…、"先輩"?今のあたしたち…」

 

 

「あ…っ」

 

 

アスタは今自分たちがどういう格好をしているのか、忘れていたようだ。

 

 

「あの…、カズマ。あの二人は本当にアスタとクリスでしょうか?私には女神にしか見えないのですが…」

 

 

「安心しろ…、俺もそう見える…」

 

 

二人の招待を知ったカズマとめぐみんは呆然としていた。

 

 

「さて、あなたたち満足したでしょ?還る所へ還りなさい」

 

 

アスタが屋根の上で立ち上がると、光の球体はふわふわと上空へ登っていった。そしてアスタとクリスは屋根に括り着けたロープを使い、地上へと降り立った。

 

 

「さて…、まずは何から話そうかしら」

 

 

「なあアスタにクリス…、お前ら…その、本当に"アクア様"と"エリス様"…なのか?」

 

 

「……うん、あたしたちはカズマさんが以前天界でお会いした女神です」

 

 

「……カズマ、どういうことですか?私には何が何だかちんぷんかんぷんです」

 

 

めぐみんが状況の説明を要求すると、我に戻ったカズマが説明をする。

 

 

『自分が何処から来たのか。彼女たちが何者なのか』を。

 

 

「そういうことでしたか」

 

 

めぐみんはまだ信じられないようで、カズマてアスタとクリスを見る。

 

 

「カズマさん、今まで騙すような事をしていて、申し訳ありませんでした」

 

 

「あたしたちは、女神であることを隠すために、あんな格好をしていたんです」

 

 

アスタ…否、アクアとクリス…否、エリスはカズマに頭を下げて謝った。

 

 

「何でそんなことをしていたのか…、話しては…くれないんですね?」

 

 

「ごめんなさい、これに関してはカズマさんやこの世界の人に話すことはできません」

 

 

「わかりました。……でも、ここ最近、エリス様はともかく、アクア様はこの世界にいられますけど、何か理由でも?」

 

 

カズマはアクアが異世界に滞在している理由を聞いた。するとエリスが

 

 

「よくぞ聞いてくれましたカズマさん!」

 

 

泣きながらカズマにしがみついた。

 

 

「先輩ってば、全然"休まない"んですよ~っ!」

 

 

「……どういうこと?」

 

 

エリスが言っていることが分からず、カズマはエリスに聞き返した。

 

 

エリス曰く、アクアは24時間、365日、ずっと"休まず"に女神の仕事をしていたそうな。

 

 

更にエリスと言った後輩の女神や天使の面倒を良く見たりしており、仕事を丁寧且つ分かりやすく説明したりするので、エリスたち後輩女神はアクアが休んでいる所を見たことが無いそうだ。

 

 

しかもエリスたちが休むよう言っても『別に疲れていないから大丈夫よ!』と言われる始末であった。

 

 

「それでこの前、天界に帰ったらあたしたちの上司に当たる神様に言われたのです『女神アクア、そなたは働き過ぎじゃ。このままではいずれ身体を壊しかねん。そこで、女神エリスが担当する世界で、ゆっくり羽根を伸ばしなさい』って」

 

 

カズマはアクアを見ると、アクアはカズマの視線を逃れるかのように首を反らした。

 

 

「先輩、天界に還る魂のために色々な知識を取り込むのは結構です。ですが、時々は休んでくださいね?」

 

 

「……わかったわよ。そんな潤んだ瞳で見ないでくれる?罪悪感がひしひしと襲って来てるから」

 

 

アクアはバツが悪そうな顔でエリスと約束をしたのだった。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

翌日、カズマとアスタの姿となったアクアは不動産屋に訪れ、店長に除霊が完了したことを伝えた。すると事前にギルドに相談をしていたそうだ。

 

 

カズマはギルドに向かうことを伝えると、店長から二つ頼まれ事を聞き、それを承諾するとギルドへ向かい、ギルドから臨時報酬を受けとるのだった。

 

 

「まさかお墓の掃除と、冒険譚を話すことがこの屋敷に住む条件とは…」

 

 

カズマ、めぐみん、ダクネスの三人は中庭の掃除をしていた。

 

 

そう、店長に頼まれたこととは、『地縛霊の墓掃除』と『地縛霊に冒険譚を話す』の二つだった。

 

 

カズマは墓の前に座ると、墓石をたわしで擦り、苔を落とし、果実酒をお供えして合掌した。

 

 

「……俺たちの話で良かったら、聞いていいからな」

 

 

カズマは綺麗になった墓石を撫で、屋敷の中へと入っていった。

 

 

その墓石の後ろに女の子が立っており、優しく微笑んだのをカズマは知らなかった。

 

 

 

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