カズマたちが屋敷を手に入れ、アスタとクリスの正体が判明した翌日…。
「カズマ、爆裂散歩に付き合ってください」
カズマがリビングで寛いでいると、めぐみんが爆裂散歩の催促をしてきた。
「あぁ良いぞ。ちょうど暇だったしな」
カズマは二つ返事でめぐみんの要望を聞き、二人は散歩に繰り出した。
…
……
………
屋敷から出たカズマとめぐみんは、街から離れた湖畔に辿り着くと
「『エクスプロージョン』!」
早速めぐみんが爆裂魔法をぶっ放した。
その後カズマはめぐみんを背負い、屋敷に戻る。
それからと言うもの、雨が降る日も
「『エクスプロージョン』!」
晴れた昼下がりの日も
「『エクスプロージョン』!」
風が強い日も
「『エクスプロージョン』!」
カズマはめぐみんの爆裂散歩に付き合った。時には突如現れた廃城に放ったり。そして気づけばカズマはめぐみんの爆裂魔法の良し悪しが分かるほどになっていた。
…
……
………
「うん、昨日の爆裂魔法は中々良かった。骨身に走る衝撃波がなんとも」
「カズマも爆裂道と言うものが分かってくれて嬉しいです。どうでしょうか?この機会にカズマも爆裂道を極めるのは」
「いや、遠慮しとく。それに俺は、音撃道を極めたとは言い難いからな。まずは音撃道を極めて、その後考えるかな」
ギルドの酒場でカズマはめぐみんの爆裂魔法を評価し、めぐみんはカズマにも爆裂魔法を撃てるよう勧める。だがカズマはめぐみんの誘いをやんわりと断った。
「アンタたち、よくやるわね」
「あぁアス…タ?」
そこにアスタが現れ、カズマは声を掛けようとした所で言葉が詰まった。なぜなら今のアスタの格好は普段の青色の修道着では無く、メイドの格好をしていたからだった。
「アスタ…?何でそんな格好を?」
「この前のキャベツ狩りなんだけど…、どうやら私が捕まえた殆んどが"レタス"だったみたいでね、まあ報酬は少し上乗せしてもらったんだけど」
「それにお金には不自由してないわよ?クエストでもらったお金は殆んど使ってないし。でも、最近"魔王軍の幹部"が街の近くに住み着いたらしくて、近辺の弱いモンスターが出てこなくなったらしいのよ」
「それで暇だったから、ウェイトレスのアルバイトをしているって訳。それに、このメイド服も一度着てみたかったしね♪どう、似合う?」
アスタは何故メイドの格好をしているのかを説明し、その場でくるりと一回転する。ロングスカートがふわりと浮かび、靴下に包まれた足が見えた。
「とても似合いますよアスタ」
「ありがとう♪それじゃ私は仕事に戻るから。ご注文の追加がございましたら、ぜひ仰ってくださいね?」
アスタはウインクをしてカズマたちがいるテーブルから離れた。
「あんなあざとい仕草をされたら、大半の男連中はアスタ目当てで集まるだろうな…」
カズマはちらりとめぐみんを見た。
「……何ですかカズマ、私の顔を盗み見て」
「……別に(やっべぇ、めぐみんのメイド姿を想像していたなんて、口が裂けても言えねぇ)」
カズマが想像していためぐみんのメイド姿とは、『アスタのメイド姿のミニスカート状態』だった。
《緊急!!緊急!!》
すると、ギルドから緊急放送が流れた。
《全冒険者は装備を整え、正門前に集合して下さい!》
「何かありましたかね?キャベツの時期はもう過ぎましたし…」
「だよな?…なあアンタ、一体何があったんだ?」
カズマは近くを通り掛かった冒険者に話を聞いた。
「俺も聞いただけなんだがよ、何でも"魔王軍の幹部"が来たって話だぜ?あんたも冒険者なら早く正門前に来たほうがいいぜ!」
冒険者は話すことだけ言って足早に正門前に向かった。
「魔王軍の幹部…ですか」
「とりあえず、俺たちも向かった方が良さそうだな」
カズマとめぐみんは頷いて正門前に向かうのだった。
…
……
………
カズマとめぐみんが正門前に到着すると、既に集まった冒険者でごった返していた。
「カズマ!これは一体何の騒ぎだ!?」
そこにダクネスが人混みわ掻き分けて来た。
「ダクネス!何でも"魔王軍の幹部"が来たとか…」
「何だって!?」
カズマとダクネスが正門に視線を向けると、そこには漆黒の甲冑を身に纏った騎士が漆黒の馬に跨がっていた。だが、漆黒の騎士は首を左脇に抱えており、馬もまた、首が無かった。
「あれはまさか…、強大な力を持つアンデットモンスターの"デュラハン"か!?」
「マジかよ…、でも何でそんな奴がこの街に…」
カズマが何故初心者の街と呼ばれるこのアクセルの街にデュラハンが来たのか疑問に思っていると、デュラハンは馬から降りた。
「貴様らに問う…。毎日毎日俺の城に爆裂魔法を撃ち込んでくる大馬鹿は誰だぁーっ!!」
「よく聞け貴様等!この街には低レベルの雑魚しかいないのは知っている!どうせ俺には手を出せまいと放置していればポンポンポンポン撃ち込みおって!おかげで耳鳴りは止まらんわ食事は喉を通らんわで陰湿にも程があるわーっ!!」
どうやらこのデュラハンは自分の城に爆裂魔法を撃ち込まれた鬱憤を言うためだけに来たようだ。
そして冒険者たちは"爆裂魔法"と言うフレーズを聞き、一斉にめぐみんへと視線を向けた。視線に耐えかねたカズマはめぐみんの手を握り、デュラハンの前に立った。
「むっ、何だ貴様」
「俺はカズマ、この街を拠点に活動しているパーティーのリーダーだ。そして彼女は紅魔族のめぐみん、あなたの城に爆裂魔法を撃った張本人だ。知らなかったとは言え、あなたの城に爆裂魔法を撃つよう指示したのは俺だ。本当にすまなかった」
カズマはデュラハンの前で頭を下げる。
「ほう…、潔いな。それで、貴様はその紅魔の娘を差し出すのか?」
「馬鹿を言うな。例えこちらに非があるとしても、仲間を売ったりは絶対にしない。もう城には爆裂魔法を撃たないと約束するから、この場は引いてくれないだろうか?」
カズマはデュラハンに交渉を持ちかける。
「…良かろう、貴様に免じてこの場は引こう。だが、紅魔の娘。貴様には然るべき報いを受けてもらうぞ!」
デュラハンは右手をめぐみんに向けると、漆黒の矢を打ち出した。
「めぐみん!」
ダクネスがめぐみんの前に移動するが、カズマがダクネスを押し退け、漆黒の矢がカズマに突き刺さった。
「ぐぅっ?!」
「ふんっ、予定は狂ったが…、紅魔の娘よ!その小僧は"死の宣告"と言う一週間後に死ぬ呪いを受けた!もし助けたくば「カズマ、カズマ!!」って人の話を…んん?」
デュラハンを他所にめぐみんはカズマの側に寄り、彼の名を叫んでいた。そしてカズマはその場に踞り、苦しそうに胸を押さえていた。
「カズマ、しっかりしてください!カズマ!!」
「ハァ…、ハァ…、うっ、グボッ!」
「……えっ?」
カズマは苦しそうに息をすると、口から"何か"を吐き出した。
「なんですか…これ…?…"血"…ですか?はは…っ、冗談はやめてください。私を驚かそうと仕込んでいたのですよね?そうですよね?カズマ…」
めぐみんはカズマに問い質そうとするが、カズマは咳き込む度に口から血を吐く。
「すみません、ちょっと通してください!めぐみん、大丈…夫……」
そこにクリスが到着すると、彼女は言葉を失った。
「カズマ君!ダクネス、この状況は一体…」
カズマは血を吐き、めぐみんはカズマが血を吐いたことによるショックで放心状態となっていた。クリスはダクネスに説明を要求すると、ダクネスは先程までの出来事を話した。
「それって"死の宣告"じゃない!早くなんとかしないと!お姉ちゃん!お姉ちゃんはいる!?」
クリスは人混みの中にいるであろうアスタを呼ぶ。すると人混みの中からアスタが現れた。
「ちょっと退いて!…ふぅ、やっと着いたわね。…って、何この状況!?」
アスタは血を吐くカズマと放心状態のめぐみんを見て驚いていた。
「お姉ちゃん!カズマ君が…カズマ君が…!」
アスタはカズマの状態を察すると
「クリス、退いて。『セイクリッド・ブレイクスペル』!!『ハイネス・ヒール』!!」
アスタはカズマに解呪の魔法と回復魔法を掛けた。
「……あれ?」
すると踞っていたカズマの顔色が良くなり、カズマは立ち上がることができた。
「解呪と、とりあえず回復の魔法を掛けたわ。体力は回復してるとは思うけど、あまり無理はしない方がいいわよ」
「そうか…、ありがとうアスタ」
「どういたしまして♪ほらめぐみん、カズマは無事よ」
カズマは助けてくれたアスタにお礼を言い、アスタは放心状態のめぐみんを正気に戻そうと、めぐみんの肩を揺すった。
「カズマ…?カズマ!!」
正気に戻っためぐみんは泣きながらカズマに抱き着いた。
「めぐみん…、心配掛けて済まなかったな」
カズマはめぐみんの頭を優しく撫でると、めぐみんは頭をカズマに強く押し付けた。
「めぐみん、今はあいつを何とかしないといけないから、今は離れてくれるか?」
カズマはめぐみんを離そうとするが、めぐみんは抱き着く力を強め、離れようとはしなかった。
「……めぐみん、約束する。俺は絶対に生きて帰ってくる」
「…約束ですよ?もし破ったら地獄の果てまでも追いかけて爆裂魔法を撃ちますから」
カズマは優しくめぐみんに話しかけると、めぐみんはそっとカズマから離れたのだった。
「ははっ、そんなことされたら閻魔大王様も真っ青になっちまうな!……行ってきます」
カズマはバッグから音撃棒・烈火を取り出し、バッグをめぐみんに預け、人差し指と中指を立てた右手を顔の前で一回転させ、右手首を捻り、敬礼をした。
「……待たせたな。デュラハン!俺との一騎打ちを申し込む!!」
カズマはデュラハンの前に立ち、決闘を申し込んだ。
「それは別に構わんが…、本当に大丈夫か?」
デュラハンはカズマの容態を心配しているのか、思わずカズマに質問をしてしまった。
「敵の心配より、己の心配をしたらどうだ?」
「……この俺を挑発するとは、要らぬ心配だったようだな。良かろう!貴様との一騎打ち、受けて立とう!」
デュラハンは何も無い空間から剣を取り出した。
「そう言えば、まだ名乗っていなかったな。我が名は"ベルディア"、魔王軍幹部が一人、デュラハンのベルディアだ」
ベルディアは名乗りを上げる。
「行くぜ、『音撃道・打』!!」
《打・ダーン!》
カズマはいつものように音角に音声入力をし、音角を展開させる。そして烈火に当てて波紋を出し、自身の額に近づけた。すると額に鬼の顔が浮かび、カズマの身体が紫の炎に包まれた。
「ハアアァァァ……、ハアッ!!」
カズマは炎を振り払い、響鬼へと変身を遂げた。
「貴様…、変身したと言うのか…!貴様に問う、貴様は一体何者だ!」
「我が名はカズマ!始まりの街アクセルを拠点にする最弱職にしてパーティーのリーダーになった者!そして悪しき者を清める音色を奏でし鬼となる者!我が名はカズマ!またの名を…、『仮面ライダー響鬼』なり!!」
カズマは烈火を構え、ポーズを取る。
「ほう…、良い名乗りだ。ならばカズマ…否、仮面ライダーヒビキ!いざ尋常に勝負!!」
ベルディアは剣を片手で構え、カズマは烈火を両手で一本ずつ持ち、間合いを図る。
「「ハアッ!!」」
そして二人同時に走り出す。リーチの長いベルディアの剣が先に当たると予想されたが、カズマは剣を避け、烈火をベルディアに当てた。
ベルディアは少し後退り、再び剣を振るうが、カズマは既に剣の間合いを見切っていたのか、容易に剣を避けた。
攻撃が当たらないことに苛々したのか、ベルディアは剣を頭上に掲げた。
「その時を待っていたぜ!!」
カズマはベルトに装着されている『音撃鼓・爆裂火炎鼓』をベルディアの胸目掛けて投げる。すると爆裂火炎鼓はベルディアの胸に張り付き、巨大化した。
「『音撃打・
カズマはベルディアに接近し、爆裂火炎鼓を何度も叩く。時折リズムを変えながら何度も、何度も叩く。
「これで終わりだ、ベルディア」
「そのようだ…、貴殿のような猛者と戦えたこと、騎士として誇りに思うぞ」
カズマは最後の一撃を爆裂火炎鼓に叩き込み、ベルディアは爆散したのだった。
…
……
………
「サトウカズマさん!魔王幹部ベルディアの討伐、おめでとうございます!」
カズマがベルディアを討伐した後、冒険者たちはギルドに集まり、ベルディアを討伐した英雄を称えようと集まった。
そして当のカズマ本人は椅子に座った状態で、メンバーを後ろに携えており、目の前にはルナさんがいた。
カズマはベルディアを討伐した直後、大の字に仰向けで倒れ、パーティーメンバーがカズマの安否を確認しようと走ったが、アスタとダクネス以外が小さな悲鳴を上げた。
カズマは倒れた後、変身が解けており、全裸の状態となっていたのだった。
その後アスタはめぐみんにバッグから服を出すよう指示し、めぐみんは言われた通りに服を出し、アスタがその服をカズマに着させ、ダクネスにおんぶしてもらい、アクセルへと戻ったのだった。
「ベルディア討伐に大きく貢献なされたカズマさんには、特別報酬"三億エリス"が贈呈されます!」
「あの…、今カズマは"動けない"状態なので、代わりに私が代理として受け取ります」
そう、カズマが椅子に座っている理由は、"動けない"からだった。
と言うのも、カズマがベルディアを討伐するために使った『音撃打・業火連舞』は響鬼の中では最強を誇る技なのだが、筋肉を酷使するため、全身の疲労が激しいのが難点である。
そのため、現在のカズマは筋肉痛を患っており、まるで『爆裂魔法を撃った後のめぐみん』状態となっていたのだ。
「わかりました。ではめぐみんさん、カズマさんの代理と言うことで、こちらをお受け取りください」
めぐみんはお金が入った袋を受け取り、カズマたちの方へ振り向くと、その袋を高々と頭上に掲げた。