この素晴らしい世界に祝福の音色を   作:レイファルクス

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第8話

 

 

魔王軍幹部の一人であるデュラハンのベルディアを討伐してから数日後、カズマは久しぶりにギルドに顔を出していた。すると酒場でシュワシュワを飲んでいた冒険者がカズマに声を掛けた。

 

 

「よう英雄!体はもう大丈夫なのか?」

 

 

「もう既に筋肉痛は治まってるよ!」

 

 

カズマは筋肉痛を治すためにしばらくは屋敷で療養していた。しかもめぐみんが爆裂散歩に行かず、カズマを甲斐甲斐しく介護していたのだ。

 

 

食事の時は『あ~ん』をしたり、トイレに行く時も付き添ったり、挙げ句の果てには風呂やベッドまで一緒と言う始末である。

 

 

「ならいいことだ!……それと、クエスト受けるのは止めた方がいいぜ?まだ高難度のクエストしかねぇからな」

 

 

冒険者は一言注意をすると、再びシュワシュワを飲み始めた。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「カズマ~っ!こっちこっち!」

 

 

「悪い、待たせたか?」

 

 

クエストボードに集まっていたアスタたちは、カズマを見つけると手を振り、カズマは足早に近づいた。するとめぐみんがカズマに抱き着いたのだった。

 

 

「あの~、めぐみんさん?いきなり抱き着いて一体何を…」

 

 

「私は1日数時間カズマの心臓の音を聞かないと禁断症状が出る体質になってしまったのです。ですのでそのまま心臓の音を聞かせてください」

 

 

めぐみんはカズマの胸に耳を押し当てて心臓の音を聞いていた。

 

 

「因みに、禁断症状ってのは…?」

 

 

「所構わず爆裂魔法を撃ちたくなってしまいます。それこそ狭い部屋の中とかで」

 

 

めぐみんの発言に全員言葉を失った。

 

 

「……それで、何かいいクエストはあったのか?さっき酒場にいた冒険者が言ってたが、高難度のクエストしか残っていなかったとか…」

 

 

「確かに、先程ボードを拝見したら高難度のクエストが殆んどだった」

 

 

カズマはとりあえずめぐみんの頭を撫でながら質問をすると、ダクネスが現状を報告した。

 

 

「"殆んど"?後は?」

 

 

「うむ、アスタが見つけた『湖の浄化』と言うクエストの他は『グリフォンとマンティコアの討伐』に『白狼の群れの討伐』や『一撃熊の討伐』、後は『起動要塞"デストロイヤー"の偵察』くらいだ」

 

 

ダクネスはボードに残っているクエスト用紙を指差しながらカズマに説明する。

 

 

「確かに高難度や低報酬のクエストばかりだな。…それで、そのクエストを受けるのか?」

 

 

「まだよ。勝手にクエストを受注するのは気が引けるし、とりあえずカズマのリハビリも兼ねてみんなに負担が掛からないようなクエストを選んだつもりよ」

 

 

カズマはアスタの気遣いが嬉しかったようで、アスタの頭を撫でたのだった。

 

 

「それじゃ、この『湖の浄化』のクエストを受けようか。さしあたっては、何か必要な物とかあるか?」

 

 

「……今の所無い…あっ」

 

 

カズマはクエストを受けることを決意し、必要な物が無いか確認すると、アスタが何かを閃いた。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「うぅ…、自分で言っといてなんだけど、これから売られる希少モンスターみたい…」

 

 

カズマ一行は件の湖に到着した。その中には"檻に入ったアクア"の姿もあった。

 

 

何故『アスタがアクアの姿になって檻に入っている』のか、それは"湖の水の浄化を早める"ためである。

 

 

「だったら何でこの作戦を考えたんだ?俺は何度も確認したよな?『それで大丈夫なのか?』って」

 

 

カズマはアクアを責め立てると、アクアは涙目になった。

 

 

「だって…、浄化中にモンスターに襲われたくなかったから…」

 

 

「ちゃんと俺たちが駆除するから安心しろ。それじゃ、降ろすぞ?ダクネス、そっちを支えてくれ!」

 

 

カズマはダクネスに手伝ってもらいながら、アクアが入った檻をゆっくりと湖に降ろした。

 

 

「俺たちは少し離れた所にいるから、危なくなったらちゃんと呼べよ?」

 

 

「分かったわよ。…うぅ、紅茶のティーバッグになった気分…。『ピュリフィケーション』…、『ピュリフィケーション』…、『ピュリフィケーション』…」

 

 

アクアは水に浸かりながら浄化魔法を唱え始めた。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「カズマ、少しアクアに厳しくないか?」

 

 

ダクネスは紅茶を飲みながらカズマに質問をする。因みにダクネスがアクアのことを呼び捨てにしているのは理由がある。それはアクア自身が『呼び捨てで構わない』と言ったからである。

 

 

姿は違えど、"アクア=アスタ"なので、姿が変わって言葉遣いを変えられるのは彼女自身が嫌うのである。

 

 

「カズマカズマ。お昼も近いですし、ご飯にしませんか?」

 

 

めぐみんはバスケットを取り出し、カズマに見せた。

 

 

「だな、昼食にするか!」

 

 

カズマはバッグからシートを取り出して地面に広げ、めぐみんは風で飛ばされないようにシートの四隅に石を置いてからバスケットを開けた。

 

 

「おっ、サンドイッチか」

 

 

「クリスと一緒に作りました」

 

 

カズマはめぐみんとクリスを見ると、めぐみんは胸を張り、クリスは少し苦笑いをしていた。

 

 

「めぐみんに朝早くに叩き起こされまして…」

 

 

「その割にはやけにノリノリで作っていたみたいですが?」

 

 

めぐみんにジト目をされたクリスはそっぽを向いた。

 

 

「あはは…、それじゃ早速いただきます!」

 

 

カズマはサンドイッチを一つ取ると、口に運び、咀嚼した。

 

 

「ドキドキ…」

 

 

「ワクワク…」

 

 

「……うん、美味しい」

 

 

カズマの高評価にめぐみんとクリスはハイタッチした。

 

 

「めぐみんとクリスは料理が上手なんだな」

 

 

「私は妹が一人いますから、それで」

 

 

「あたしはお姉…先輩が原因ですね」

 

 

クリスの言葉に何か引っ掛かったのか、カズマはクリスに質問をする。

 

 

「天界にいた時ですが、先輩は自分が食べる用にってクッキーとかをよく作っていたそうなんです。それであたしはまだ新人の頃に先輩が作ったクッキーを一つ、つまみ食いしちゃいまして…」

 

 

クリスは頬を掻きながら説明をする。

 

 

「それからというもの、先輩はお菓子を差し入れてくれるようになり、そのお返しで作ってあげたら…」

 

 

「喜んでくれた訳…ですか」

 

 

めぐみんの言葉にクリスは頷いた。

 

 

「なるほどな…。さて、俺はアクアにコレを持って行くよ」

 

 

カズマはサンドイッチが入ったバスケットを持って、アクアがいる所へと向かった。

 

 

「アクア、調子はどうだ?それと昼飯を持って来たぞ」

 

 

「ありがとうカズマ。この調子なら夕方くらいには終わりそうよ」

 

 

アクアの言う通り、湖の水は大分綺麗になっていた。

 

 

「それは良かった。ところで、さっきクリスから聞いたんだが…」

 

 

「料理のこと?概ねクリスが言った通りよ。あの子がつまみ食いして、美味しいって言ってくれたから、それで…ね。天界にいた頃は後輩の女神や天使たちの楽しみの一つになってたくらいね」

 

 

「……今アクアがこの世界にいたんじゃ、『先輩のお菓子を食べさせろ!』なんて暴動が起きてたりしてな」

 

 

カズマが冗談で言うと、アクアは黙ってそっぽを向いた。

 

 

「……おいまさか」

 

 

「…クリスが上司に言われたの。『次戻って来る時には女神アクアのお菓子を持ってきて欲しい。でないと他の女神や天使たちが"アクア先輩のお菓子を持ってこないとストライキするぞ!"』…って」

 

 

カズマは自分が言った冗談がまさか本当になりつつあったことに驚いた。

 

 

「それでクリスが天界に帰る時にはお菓子を用意するようにしたって訳。カズマたちがウィズに挙げたりしてるクッキーは私が作った物よ」

 

 

「だからやたらと美味しかった訳か、いつも御馳走さま」

 

 

「どういたしまして、ところで…、その…」

 

 

アクアは急にもじもしし始めた。カズマはその行動を察した。

 

 

「アクア、"パワード"をかけてくれ。俺一人ではこの檻を運ぶのは骨だ」

 

 

アクアはカズマに筋力増加の支援魔法をかけ、カズマは檻をゆっくりと湖から出す。そして檻の鍵を開け、アクアを出すとアクアは一目散に茂みの中に入った。その行動を見ていためぐみんはカズマの側に寄った。

 

 

「トイレですか、カズマはアクアの側にいなくていいのですか?」

 

 

「側に行くのは流石に恥ずかしいだろうしな」

 

 

カズマは檻に寄りかかっていると、視線を湖に向けた。

 

 

「めぐみん、"敵感知スキル"に反応があった。数は5、多分クリスも気づいていると思うから、アクアの側にいてくれ」

 

 

「わかりました」

 

 

めぐみんはカズマの指示を聞いて頷いた後、カズマの頬に口付けをした。

 

 

「頑張ってください」

 

 

めぐみんはそそくさとクリスたちの下へと戻った。カズマは数秒呆けていたが、敵感知に反応した"額に角がある(ワニ)"『ブルータルアリゲーター』の姿を見て、思考を切り替えた。

 

 

「"魔力注入"、"音角剣"!」

 

 

カズマはバッグから烈風を取り出し、更に音角を剣の姿に変え、鰐と対峙した。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「いやぁ、無事浄化できて良かった良かった」

 

 

クエストを無事終えたカズマ一行は街に戻って来た。

 

 

「アクア、何時までその中にいるつもりだよ?」

 

 

馬が引いている荷台に置かれた檻の中にはアクアが体育座りで入っていた。その理由は、無事ワニを倒したカズマたちはアクアに浄化の続きをお願いし、アクアが湖の浄化を続けた矢先、再びワニが襲来し、アクアが危うくワニの餌食になりかけたのだった。

 

 

「ワニ怖い…、ワニ怖い…。ここ天国…」

 

 

「ダメだ…、トラウマになっちまってる」

 

 

カズマはどうにかしてアクアを檻から出そうか考えていると

 

 

「女神様っ!?、やっぱり女神様だ!」

 

 

高そうな鎧を身に纏った剣士が現れた。

 

 

「何故このような檻に入っているのですか!?フンッ!」

 

 

剣士は檻の鉄格子を無理矢理広げ、手を差しのべた。

 

 

「さあ女神様、もう大丈夫ですよ」

 

 

「イヤ~っ!何するのよ!私の世界に入ってこないで!」

 

 

だがアクアは差しのべた手を払い、剣士から離れた。

 

 

「女神様、どうして…。君たち!女神様に何かしたのかっ!?」

 

 

「何かしたっつ~か…、されたっつ~か…。ところで、おたく誰?」

 

 

「僕は御剣響夜(ミツルギキョウヤ)、女神アクア様によってこの"魔剣グラム"を授かった者だ。それより、何故アクア様がこんな檻に入って、あまつさえあんなに怯えているんだ!」

 

 

カズマはキョウヤに先程まで行っていたクエストについて話をした。

 

 

「有り得ない!湖の浄化のためにアクア様を閉じ込めてモンスターの囮にするとは!君にアクア様を任せる訳にはいかない!アクア様は僕のパーティーに入ってもらう!」

 

 

キョウヤはカズマの胸ぐらを掴み、まくし立てた。

 

 

「そこまでにしてください、その案は彼女自身が言ったことで、カズマは寧ろ否定的でしたよ。あなたにそこまで言われる謂れはありません」

 

 

そこにめぐみんがキョウヤの腕を掴んだ。

 

 

「君は…」

 

 

キョウヤは初めてめぐみんたちの存在に気づいた。そしてめぐみんたちはキョウヤに嫌々ながらも自己紹介をする。

 

 

「クルセイダーにアークウィザード、盗賊…。君たちは不遇な扱いをしている彼に文句は無いのか!」

 

 

「先程も言った通り、檻に入るのを決めたのはアクア自身です。そしてカズマは私たちを不遇に扱ってはいません。寧ろ大事にされています」

 

 

「……そうか分かったぞ、君はあの男に何か弱味を握られていて、それで庇っているんだね?」

 

 

キョウヤは急に意味不明なことを言い出した。

 

 

「アクア様共々君たち四人を僕のパーティーに受け入れよう!僕なら苦労はさせないし、豪華な装備も用意できる。それに僕の仲間である戦士と盗賊との相性はピッタリだよ!」

 

 

「……なんか無性に爆裂魔法を撃ち込みたくなりました」

 

 

「あたしも、そのスカした顔をズタズタにしてやりたいよ…」

 

 

「攻められることが好きな私も、この男は生理的に受け付けないな」

 

 

「「「というわけで断固断る!!」」」

 

 

キョウヤはめぐみん、ダクネス、クリス、アクアの四人を引き入れようとするが、めぐみん、ダクネス、クリスの三人に真っ向から否定された。

 

 

「なっ、何故だ!こんな女性の扱いすら知らなそうな男の側にいたって「いい加減にして!」…」

 

 

キョウヤの言葉を遮ったのはアクアだった。

 

 

「さっきから聞いていればいけしゃあしゃあと!あのね、檻に入ったのは私の意思よ!カズマは私のことを気遣って何度も作戦を変えるよう進言してくれてたわよ!それにモンスターに襲われそうになっても必ず助けてくれて、その時の彼の背中はとってもカッコいいんだから!」

 

 

「あの…、アクアさん?」

 

 

「料理だって得意だし、私たちの得意分野を把握して的確な指示も出してくれるし、危険が迫れば我が身を省みず助けてくれるし、私たちはカズマのおかげで冒険者稼業ができてるのよ!私たちはカズマが好きで彼のパーティーに入っているのよ!」

 

 

「確かに私はアンタにその魔剣を渡したわよ?でも、アンタはその魔剣(とくてん)に頼りきりじゃない!それに比べてカズマは自分の特典に極力頼らずに依頼を達成しているのよ?どっちに着くか一目瞭然じゃない!」

 

 

アクアは少々惚気ながらカズマがどんだけ素晴らしいかを述べ、めぐみん、ダクネス、クリスの三人はアクアに同意するかのように頷いていた。

 

 

「…申し訳ありませんがアクア様、僕はどうしてもこの男が許せません。カズマと言ったな?僕と正々堂々勝負だ!」

 

 

「悪いが断る」

 

 

キョウヤはカズマに勝負を持ちかけたが、カズマはきっぱりと断った。

 

 

「なっ…、何故だ!?」

 

 

「だって勝負を受けるメリットが無いし、みんなのこと好きだし、メンバーを賭けての勝負なんてそんな恩を仇で返すようなことしたくないし」

 

 

カズマは腕を組みながら勝負を断る理由を述べる。

 

 

「カズマカズマ、こんなナルシストなんか放っておいて早くギルドに行きましょう」

 

 

めぐみんはカズマの側に寄り、催促をする。

 

 

「そうだな、こんなことしてる暇は無いもんな。みんな、そろそろ移動するぞ」

 

 

カズマはめぐみんの頭を数回撫で、ギルドへと足を向けた。

 

 

「待てっ!僕と勝負を…」

 

 

キョウヤはカズマを引き留めようと魔剣を抜く。

 

 

「っ!?めぐみん、危ない!」

 

 

キョウヤの行動にいち早く気づいたクリスがめぐみんを背中から押し出した。そしてクリスの目の前にはキョウヤの魔剣が写り、クリスは斬られる恐怖で目を瞑る。

 

 

ガキンッ!

 

 

だがキョウヤの魔剣はクリスに届くことは無かった。何故ならカズマが音角剣でキョウヤの魔剣を受け止めていたからだった。

 

 

「おいテメェ、自分の気に食わないことがあれば剣を振り回して無理矢理言うことを聞かせるのがテメェの正々堂々か?|

 

 

「いや…、それは……」

 

 

普段は温厚な性格をしているカズマだが、仲間の窮地に関わることに関しては怒りの沸点が低くなるのだ。

 

 

「勝負したがっていたな、いいぜ?受けて立ってやろうじゃねぇか」

 

 

カズマはキョウヤとの勝負を受けることにした。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

カズマはまず、冷静を装ってギルドにクエスト成功を告げるが、ギルドは檻を壊した弁償代を請求、カズマは仕方なく弁償代を払い、キョウヤが待っているギルド前の広場へと向かった。

 

 

「待たせたな」

 

 

カズマがキョウヤの下に戻ると、キョウヤのパーティーメンバーである盗賊のフィオと戦士のクレメアがいた。

 

 

「そんなに待ってはいないさ。さて、勝敗だが『どちらかが気絶、又は降参の意思を示した場合で決する』でいいかい?それてと僕はハンデとしてこの魔剣しか使わない。君は何をしても構わない。僕が勝てばアクア様を僕のパーティーに入れ、君が勝てば僕は何でも言う事を聞こう。それでいいかい?」

 

 

キョウヤはカズマにルールを説明し、カズマはそのルールに賛同した。

 

 

「それでは、行くぞ!」

 

 

キョウヤは魔剣グラムを鞘から抜き、カズマに振りかぶる。だがカズマはキョウヤの攻撃を悠々と避けた。

 

 

「くそっ、ならこれならどうだ!」

 

 

キョウヤはスキルを使い、カズマを追い詰めようとする。が、カズマはまたしても避けてみせた。

 

 

「君は攻撃をする意思はあるのか!?」

 

 

「あるさ、喰らいな!」

 

 

カズマはバッグから烈風を取り出し、空気の弾をキョウヤに向けて撃ち出した。

 

 

「ぐわっ!?」

 

 

空気の弾はキョウヤに当たり、キョウヤは怯んだ。

 

 

「クリス、ちょっと預かっていてくれ」

 

 

カズマは烈火をバッグから取り出し、バッグと烈風をクリスに投げ渡した。

 

 

「行くぞ、"音撃道・打"!」

 

 

《打・ダーン!》

 

 

「ボヨヨンボヨヨン」

 

 

「めぐみん?」

 

 

「何故かやらないといけない気がしまして」

 

 

カズマは音角に音声入力をし、音角から音声が流れると、めぐみんが自分の胸を揺らす動作をした。

 

 

そしてカズマは音角を鳴らし、紫の炎に包まれ、響鬼へと変身したのだった。

 

 

「そっ…、その姿は…!」

 

 

「アクアのことを"女神様"と呼んだり、"魔剣を授かった"って言ってたから、もしかしたらと思ったんだが…、やっぱり俺と同じ『転生者』か。なら、この姿も知ってるよな?」

 

 

カズマはキョウヤの発言を聞いていたので、憶測を立てていたのだ。

 

 

「ああ、『仮面ライダー響鬼』。まさか君の特典がそれだったとは…」

 

 

キョウヤはカズマが変身した響鬼のことを知っているようだった。

 

 

「それでも、僕は負けるわけにはいかない!」

 

 

キョウヤはカズマに襲い掛かるが、カズマは『鬼闘術(きとうじゅつ)鬼爪(おにづめ)』や『鬼幻術(きげんじゅつ)鬼火(おにび)』を駆使し、キョウヤを翻弄した。

 

 

「これで終わりだ、"窃盗"!」

 

 

「なっ…、っ!?」

 

 

カズマは"窃盗"でグラムを奪い、即座に音角剣を作り、キョウヤの首元に刃を当てた。

 

 

「……僕の負けだね、降参だ」

 

 

キョウヤは両手を上げて降参の意思を示した。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「ひっ、卑怯者っ!卑怯者っ!!そんなオークみたいな格好をして恥ずかしくないの!?男なら正々堂々勝負しなさいよ!」

 

 

勝敗に納得がいかなかったのか、クレメアが異議を申し立てた。

 

 

「あなたは馬鹿ですか?あれはカズマが持つ能力ですよ?それにその男はカズマに"何をしても構わない"と言ったんですよ?カズマはちゃんとルールに従って勝利しました。それとも何ですか?その男が勝つまで勝負を続けるつもりですか?」

 

 

しかしめぐみんが正論を並べることで、クレメアは苦虫を噛み潰したような顔をした。

 

 

「クレメア、もういいよ」

 

 

「キョウヤ…」

 

 

「彼は正々堂々勝負をしてくれた、僕が負けたのは相手の力量すら計れなかったのが原因だ。それに、彼は"必殺技"を使っていなかったしね」

 

 

キョウヤはカズマの前で正座をすると

 

 

「カズマ君、君を馬鹿にした事、並びに君のパーティーに迷惑を掛けた事、謹んでお詫びしたい。本当に申し訳なかった」

 

 

頭を下げて土下座したのだった。

 

 

「……頭を上げてくれ、ミツルギ。もう俺は怒っちゃいないさ」

 

 

カズマは頭だけ変身を解き、キョウヤに頭を上げるよう言った。

 

 

「さて、俺が勝てば"何でも言う事を聞く"って約束だったな。まずはアクアたちに勧誘したことへの謝罪、それから壊した檻の弁償代の請求だ」

 

 

カズマは勝者の特典として仲間への謝罪と檻の弁償代を請求した。キョウヤはめぐみんたちに土下座で謝罪し、カズマには檻の弁償代20万エリスを支払ったのだった。

 

 

「それで、申し訳ないのだが…。虫がいい話だとは分かっているんだが、その魔剣を返してほしいんだ」

 

 

「そんなことか、ほらよ」

 

 

カズマはキョウヤに魔剣を返した。

 

 

「俺が持っていても意味無いからな」

 

 

「……ありがとう」

 

 

カズマはキョウヤに魔剣を返した後、めぐみんたちを連れて屋敷に戻る。その背中をキョウヤはずっと見守っていた。

 

 

 

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