とある緋弾のソードアート・ライブ ──挟間の帳──   作:常盤 赤色

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とある緋弾のソードアート・ライブ
英雄の選別


プロローグ act.1〈ソラリス〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〈ソラリス〉は悩んでいた。

 

 目の前に浮かぶ画面を見ながら。

 

 〈ソラリス〉は考えた。

 

 多数ある画面の中で誰が一番、自分の計画に最適な〈英雄の火種〉かと。

 

 魔王から姫を幾度も護った赤い英雄。

 

 音速を超える風の具現者。

 

 海賊王を目指す少年。

 

 自らの推理で真実を導く小さな探偵。

 

 滅竜の魔法を使い竜の居場所を探す少年。

 

 鋼の手足を持つ錬金術師の少年。

 

 地球侵略を企む緑色の宇宙人。

 

 困ってる者を見捨てられないおかしな自称いたずらの王。

 

 両目に特殊な蛇を宿した少年。

 

 巨大な民を狩る狩り人。

 

 空を舞う黄金の英雄。

 

 巨大なる宇宙の兵団と神に立ち向かう6人のヒーロー。

 

 護るべきものへの愛以外の感情を失った劣等な魔術師。

 

 地上2階の六畳一間で正社員を目指す異世界の魔王。

 

 周りの力を借りながら世界を変えようと翻弄する付与術者。

 

 人類で唯一の理を崩した計算外(イレギュラー)の少年。

 

 最悪の結末(バッドエンド)を避けるため、覇王の元で歴史を変えようとする高校生。

 

 英雄を召喚し運命に巻き込まれた、狂った少年。

 

 運命を変え自分の足で歩き始めた人造人間(ホムンクルス)

 

 怪盗に妖怪、霊界探偵にシャーマン、更には宇宙人やロボットまで。

 

 様々の人物の姿が映し出される中、〈ソラリス〉は決めた。

 

 この4人にしようと。

 

 

 ──1人。その右手にあらゆる幻想を殺す力を持つ少年。

 

 ──1人。あらゆる「不可能」を「可能」へと変える少年。

 

 ──1人。精霊たちの「絶望」を「希望」へと変える少年。

 

 ──1人。電脳の世界で全てを護るべく剣を振るう少年。

 

 

 〈ソラリス〉は笑った。

 

 これから始まる祭りを予感し笑った。

 

 ──全ては、これからだ

 

 

 

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 ──上条当麻は良くも悪くも「いつも通り」だった。

 

 朝ご飯にインデックスのリクエストのパンケーキを焼いてあげたというのに、サイズもできるだけ同じになるように気を付けたのに「オティヌスずるい!」と言われ、退院後始めての学校で「上条ちゃんは休みすぎです!よってこれから一ヶ月、ずっと補修です!」と担任の小萌先生からラブコールを受け、帰りが遅くなったと思えば第三位やら第五位やら第七位やらイギリス清教やらロシア清教から追いかけ回され帰りが遅くなり、インデックスに噛みつかれるという良くも悪くも「いつも通り」だった。

 

 

 

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 ──遠山キンジは良くも悪くも「いつも通り」だった。

 

 起きたら白雪に夜這いされており、それを見たアリアが勘違いしてガバメントを乱発し、慌てて家を飛び出しそのまま学校へ直行、朝あったレキに挨拶すると「……」と無言の圧力をかけられ、教室に入れば白雪に入れ知恵したと思われる理子、更に武藤にからかわれ、それに乱入して勝手にキレたアリアのガバメント乱発にまた巻き込まれるという良くも悪くも「いつも通り」だった。

 

 

 

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 ──桐ヶ谷和人ことキリトは良くも悪くも「いつも通り」だった。

 

 学校が終わってからエギルの店に集まり作戦会議をした後、聖剣エクスキャリバーを手に入れるためのクエストを受け、なぜかALOの危機を救うことになり、なんだかんだで邪神たちを救い、シノンにいじられ、他の女性陣とクラインからジト目で見られ苦笑するという、良くも悪くも「いつも通り」だった。

 

 

 

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 ──五河士道は良くも悪くもいつも通りだった。

 

 学校へ十香、耶倶矢、夕弦らと一緒に登校し、他の男子からジト目で見られ、クラスにつくと十香と折紙が自分を挟みながら喧嘩を繰り広げ、巻き込まれ、また男子・及び女子達にジト目で見られ、家に帰ったら四糸乃や美九、七罪がおじゃましていて、ぎゅうぎゅうの中で夕食を食べていると折紙が突入し、また喧嘩になるという良くも悪くも「いつも通り」だった。

 

 

 

 ⚫︎

 

 

 

 皆が皆、今日という一日だけは、良くも悪くも「いつも通り」だっ

 

 ──バキッ

 

 

 

 ⚫︎

 

 

 

バキッ、と何かが壊れた。

 

ベキっ、と何かにひびがはいった。

 

バラバラ、と何かが崩れていった。

 

ガラガラ、と何か落ちていった。

 

パキン、と何かがガラスのように割れた。

 

 

 

 ⚫︎

 

 

 

「は………」

 

 上条当麻は我ながら素っ頓狂な声を出したものだと思いながら、その声を出さずにいられなかった。

 

 確かに上条はほんの一瞬、瞬き一つする前は自分の部屋で洗い物をしていた。

 

 インデックスとオティヌス、三毛猫(オティヌスを見ながら目を爛々としていたが)は仲良くテレビを見ていた。

 

 それは間違えなかった。

 

 変えようのない事実だった。

 

 だが今、上条の目にはインデックスも三毛猫も自分の部屋を見えなかった。

 

 暗闇。その場所をそう呼ぶのは相応しくないかもしれない。いや、そもそもここは『場所』ですらない。あえて言うなら、本当に何も見えない世界。

 

 この言葉が一番似合うような空間に上条はいた。

 

 

 そして、上条はこの空間を知っている。

 

 

「……暗黒の位相…ッ」

 

 ──全てが滅んだ後、訪れる暗黒の世界。

 

 上条の全身からどっと、嫌な汗が噴き出す。

 

「間違いないな」

 

 と、頭の上から声が聞こえてきた。

 

 そこにはわずか15センチほどの少女がちょこんと仁王立ちしている。

 

「オティヌス……」

「無事か?上条」

「オティヌス!!ここって──」

「ああ、間違いなく〈暗黒の位相〉。私が世界を滅ぼした後にできた位相だ」

 

 信じたく無かった。

 

 できれば嘘であって欲しかった。

 

 しかし足元の少女はこんな時に嘘をつくような性格ではないことを上条は知っていたし、

 

 何より、 その顔は苦痛に歪んでいた。

 

「……ッ。どういうことだ!?まさかまた誰かが『主神の槍(グングニル)』を──」

「それは無いだろう…もし完全な『主神の槍』を使えば魔神としての殆どの力を失った私が無事でいられるはずが無い。もし人間用にカスタムした物を使おうとしてもそれには魔道書図書館が必要だ。彼女にそんな素振りは一切無かったしな」

「じゃあ誰が一体こんなことを!!」

 

「──〈ソラリス〉さ」

 

「「!!」」

 

 突然の声に2人は背筋を震わせ、そして後ろへ振り返る。

 

 そこには男がいた。

 つんつん頭の白い髪と冷酷そうな切れ長の青い瞳をした30代の男が。 一見、どこにでもいそうな会社員のようにも見えなくない。

 

 しかし上条には分かる。何度も死線を、そして様々な人間を相手にして来た上条には分かる。

 

 ──こいつはヤバイ。

 

「貴様は誰だ?何故無事でいられる?」

 

 上条の頭の上で仁王立ちしたオティヌスは、男に向かって静かに問う。

 

 すると男はオティヌスを一目し、少し驚いたような顔をしてから言葉を返す。

 

「…それはこちらのセリフだろうな。キミは精霊か?こんな精霊は見たこと無いがね」

「残念ながら私は精霊などという可愛げのある物ではない。私は魔神。魔神オティヌスだ」

「魔神?………オティヌス……オーディーンのことか?」

 

 男は少し考えるかのような表情をすると、思い出したかのように顔を上げる。

 

 オーディン。北欧神話の神々の中でもトップの存在で又の名を──オティヌスとも呼ばれる。

 

「ほう繋げられるか。博識だな」

「目指していることに神話が関係していてね。一通り調べたことがあるんだよ」

 

 不敵に笑う男。上条にはその笑みがまるで兎を嘲笑しながら追う、狼の冷徹な笑みに見えた。

 

「成る程……で、お前の番だが」

「ちょっと待ってくれ。少年、キミは誰だ?」

 

 そう言うと男は上条のことを人差し指で指差す。

 

「お、俺?」

「そう、君だ。見たところただの高校生のようだが…」

「……俺の名前は上条当麻だ」

「カミジョウトウマ、か……私はアイザック・レイ・ペラム・ウェスコット。DEM社の代表取締役をしている。よろしく」

 

 にっこりと微笑むアイザック。しかしそれに友好の証を上条は微塵も感じ取れなかった。

 

 しかしDEM社とは何だろうか。聞いたこともない会社だが、この男はその会社のトップに立つ者らしいが。

 

「……で、元魔神の私やコイツはともかく、なんでただの人間らしきお前が無事でいられるのか聞かせてもらおうかアイザック」

「さぁね。私とてこんな空間に来るのは初めてなんだ」

 

 即座に肩を竦め首を横に振るアイザック。その様子を見て上条は、どうやら本当に何も知らないと見ていいだろう、と判断する。

 

「ただわかっているのは、ここが世界が終わった後の果てであること。それと…」

 

 と、アイザックの言葉が止まる。その目線の示す先を見るために上条とオティヌスは後ろへ振り返る。

 

「──どうやら無事なのは我々だけではないようことだ」

 

 

 

 ⚫︎

 

 

 

 ──少年がいた。

 

 黒髪の鋭い双眸をしたブレザー姿の少年が。

 

 ──少女がいた。

 

 ピンク色のツインテールにまるでツノみたいな髪留めをした可愛い少女が。

 

 ──少女がいた。

 

 ストレートの黒髪を足元ぐらいまで伸ばしオレンジ色の尻尾を生やした。

 

 ──少年がいた。

 

 少し痩せ気味の黒のマントを羽織った少年が。

 

 ──少女がいた。

 

 長い黒髪と大きな黒目を持つ小さな少女が。

 

 ──男がいた。

 

 屈強な、正に戦士と呼べるような落ち着いた雰囲気の男が。

 

 ──少年がいた。

 

 中性的な顔立ちをした優しそうな双眸の少年が。

 

 ──少女がいた。

 

 夜色の髪と水晶の瞳が特徴的な美しい少女が。

 

 ──人間がいた。

 

 見た目は男性にも女性にも、老人にも子供にも、聖人にも罪人にも見える人間が。

 

 

 

 ⚫︎

 

 

 

「な……んだ。ここは……」

「あたしたち……さっきまで教室にいたわよね…」

「フ、フハハハハ。面白い!面白いぞ!こんな面白いことは生まれてこのかた、数えられるほどしかあるまい!」

 

 

 

 ⚫︎

 

 

 

「──ア、アスナ?ど、どうなってるんだ」

「パパ。なんだか……怖いです」

 

 

 

 ⚫︎

 

 

 

「──こ、琴里!?折紙!?四糸乃!!耶倶矢、夕弦!!美九!!」

「な、なんなのだここは…シドー。なんだか嫌な感じがする場所だ」

 

 

 

 ⚫︎

 

 

 

「ふむ……これは興味深いな」

「まさかここまで計画が進んでいたとは…驚きだよ」

 

 

 

 ⚫︎

 

 

 

「こ、猴ッ!!」

「ッ!!」

 

 

「──ヒースクリフ!?」

 

 

「おまえはっ!?」

「貴様何故ここに!?」

 

 

 

 ⚫︎

 

 

 

「まぁそう気張るな遠山。私は別にお前らを取って食う気もないし、まだ殺し合う気もない。第一、ここでは上手く「緋弾」の力が働かんようだしな」

「……つうか、お前日本語喋れたんだな…」

 

 構えたベレッタ、二丁ガバメントを降ろし、改めて猴──中身は孫であることを彼らはまだ知らない──のことを正面から見据えるキンジとアリア。

 

「可のようなこと、この五十六億という永き歴史でも始めてのことだろう!お前たちは可のような出来事に立ち会っているのだぞ!」

 

 そう言いながらくるくると回り始める孫。見た目は可愛いが、こいつが放った「あんな物」が自分の弟を貫いた後なのだ。気は抜けない。

 

 

 

 ⚫︎

 

 

 

「ヒースクリフ──いや茅場明彦。なんであんたがここにいるんだ?」

「私に聞かれてもね。君たちはここに来る前の記憶があるようだが、私にはまったくここまでの記憶がないのだよ」

「…というと?」

「SAOの最期でキリトくん、君とアスナくんと会話を交わしたことは覚えている。キリトくんとどこかで、一度再開していることもうっすらだが覚えている。それ以外の記憶がないのだよ」

「……」

 

 ヒースクリフの表情をキリトは伺うが、それだけでは何もわからない。ここはこの男の言うことを信じておくしかないだろう。

 

「──また、会えるとはな…」

「私も驚いたよ」

 

 

 

 ⚫︎

 

 

 

「おのれ!シドーには指一本触れさせんぞ!」

 

 夜刀神十香はそう言うと、その身体が淡く輝き、光のドレスが顕現した。

 

 ──霊装。精霊を精霊たらしめる要素の一つにして、最強の鎧である。

 

 次いで十香の右手に天使鏖殺公(サンダルフォン)を顕現させ、その切っ先をアイザックへ向ける。

 

「おやおや〈プリンセス〉。いきなりそんな物騒な物を向けないでくれないか」

 

 アイザックは不敵な笑みを浮かべながら士道と十香に目を向ける。

 

「黙れ!前はよくもシドーにあんなことを…」

「落ち着け十香!こんなところで暴れたらあいつの思うがままだ!」

 

 五河士道は慌てて止める。いきなり飛ばされパニックに陥ったものの、この世界は何が起こるかわからない。もしアイザックが仕掛けた罠なら迂闊に動いてはならない、と考えたのだ。

 

「あいつも──魔神なのか!?……いや、それにしては感じる力が魔力とは違う……一体奴は…」

 

 

 

 ⚫︎

 

 

 

 上条当麻がうろたえていた時だった。

 

 遠山キンジが孫を睨みつけていた時だった。

 

 桐ヶ谷和人ことキリトがこの状況を理解しようとした時だった。

 

 五河士道が慌てて十香を止めていた時だった。

 

バキッ

 

 

 

 ⚫︎

 

 

 

バキッ、と暗黒の位相が壊れた。

 

ベキっ、と暗黒の位相にひびがはいった。

 

バラバラ、と暗黒の位相が崩れていった。

 

ガラガラ、と暗黒の位相が落ちていった。

 

パキン、と暗黒の位相がガラスのように割れた。

 

 

 

 ⚫︎

 

 

 

 ──その様子を見ていた者がいた。

 

 かつてアレイスターが砕いたはずの、

 

 暗黒の位相と薄皮一枚で隔たっている、「もうひとつの位相」。

 

「──この「亜空の位相」へただ1人乗り込むとは…。流石だ、アレイスター・クロウリー」

 

 そこで、全ての元凶でもあり、全ての始まりである〈ソラリス〉は、小さく笑った。

 

 彼の目の前には「人間」がいる。

 

「……あの黒の世界の座標を十進歩で変換するのに比べれば簡単なものだったよ」

「いってくれるねェ」

 

 アレイスターは後ろからの声に、少し振り返る。

 少年がいた。右目に星型の刺青をし、二股の帽子を被った少年が。

 

「……『道化』、か。魔神どころか魔術師にもなれなかった君が何故ここにいる?」

「ギャハハ!言うじゃないの!「最高にして最低の魔術師」……アレイスターさァん?計画がうまくいかないからってイライラしてなァい?」

「…」

 

 アレイスターという「人間」の顔が一瞬、「不快」そうに歪む。

 

「まぁまぁ。彼は僕と手を組んでくれているだけです。」

 

 その2人の間に割り込むかのようにして〈ソラリス〉は2人を鎮める。

 

「……さて、教えてもらうか。君が目指す「力」について──」

 

 その時だった。

 

バリン

           

 アレイスターの右腕に()()がはいり、みるみるうちにそのヒビは肩、身体、両足、左腕、そして頭にまで及んでくる。

 

「おやおや、どうやら強制的に「再構築」されるようだな。…残念だ」

 

 するとアレイスターの身体がボロボロと崩れ去っていく。それはまるで大岩が石に、石が砂利に、砂利が砂になるかのような光景だった。

 

「まぁあなた方の世界は1度崩壊してますから、ある程度「軸」に近い人間は再構築されても違和感を持つでしょうが…ってもう完全に「分解」されましたか…」

「ったく面白いヨネー。「世界」ってのはサ。あんな奴がワンサカいるんだロ?ホント面白いのサ。──ところでパトの野郎は?」

「もう「波導石」を持って、行動してるよ。全く…あの男の執念には脱帽するものがあるね」

「アハハハ。違いなイ」

「さ、て、と…始めますかね」

 

 次の瞬間。

 

 亜空に侵入した2人の「愚か者」に、破滅の火が襲いかかった。

 

 

 

そして、「理解」され、「分解」された四つの世界は──

 

一つの世界へと「再構築」される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プロローグ 完

 

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