とある緋弾のソードアート・ライブ ──挟間の帳──   作:常盤 赤色

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第二二話「異世界同士の交流」

 

1,

 

 

 

 

 

 

 

 学園都市にて起こる様々な出来事。そこにいる様々な人物と異世界から現れた船の住民達は、徐々に交わり始めていた。

 

 ある場所では

 

「なんや知らんけど目の前のピンク色の見ただけで性欲がすすらされそうな煙が全裸の男に変わったで!?」

「はははは!どうも!淫靡な精霊、インキュバスの伊藤・けん……な、なんで君はそのモップの先にU字の金具付けたみたいな道具を僕の首元に突きつけてくるんだい!?」

「変態死すべき慈悲はなし」

「目が怖いよこの人!ネンジくーん!僕ら一体全体、どこに来たのかなーホント!」

「それよりこの状況、明らかにヤバいことには変わりあるまい。何より、なぜあの様な所に武蔵がある」

「このスライム……ダンディ。HPは三くらいしか無さそうだけど」

「明らかに人間じゃないのだけは確かわね。……まさか、学園都市の裏側で主導されているという、生物兵器が意欲を持ってしまって、この混乱に乗じて脱走したのでは……」

「そ、それは多分違うと思います……。と、ともかく!生徒さん達は下がってください!私も先生です!生徒さん達は私が守りますよ!」

「あ、一応僕らも学生ですよ」

「ひょえ!?」

 

 また、ある場所では

 

「──ここが僕らとは違う世界ということは分かったぞ。この景色、技術力、そして摂理も僕らの知ってるものとはまるで違う。……ならここは未来の世界なのか……?いや。それなら通神や術式といった技術が一片も残っていないのはおかしい。何より人間以外の人種がまるでいない。今の技術が失われ、人間以外の人種が滅んだ遠すぎる未来の話としても、ここが極東だとしたら重奏領域が見られないのは変だ。この位置からなら見ることができる位置にあるはずなのに──。もう一つの可能性としては、神代の更に前──まだ人々が神となって星々に至る前の世界ということがありえる。現にこの人は『服部半蔵』の子孫なんて答えてるし、こっちは『風魔』だ。ジャンヌ・ダルクを名乗っている子もいる。時代的に考えて歴史再現ということは考えられない……。なら……!まさかここにいる君たちは、歴史再現の中の襲名者でなく……本物の偉人達の子孫ということなのかい!?」

「……長い。無駄に長いですよ」

「ってか誰なんですか?この人」

「いきなり会議室に入ってきたかと思って取り押さえてみれば、執拗にブツブツ言うからとりあえず事情を聞こうとして成り行きで名前を言ったら、半蔵様と陽菜ちゃんとジャンヌちゃんの名前聞いたら更にブツブツと独り言を言い始めましたけど」

「一つだけわかることは、こいつヤベェってことだ」

「あ、もし君が本当にあの服部半蔵、しかも本人の子孫だっていうならサインくれませんか!よろしくお願いします!」

「……とりあえず、とっとと襲われている病院とやらに行きましょう」

「この人はどうしましょうか……」

「ぜひご同行させてくださいよろしくお願いします!あ、あとサインには、ネシンバラ・トゥーサンくんへ、も付けてくださいお願い致します!」

「「「「…………」」」」

 

 またある場所では。

 

「ほーらほらほら。学園都市が総力を挙げて開発した犬用の甘〜いおやつですよ。味も抜群ですが栄養もたっぷり!ほら先生あーん」

「この犬用のお菓子、美味しそうですねぇ……。これ、人でも食べれるんじゃないですか?ここのお菓子って発展してるんですか……」

『だから私はそんな食品添加物たっぷりの甘味などいらないと言っているだろう!持ってくるなら葉巻にしてくれたまえ!あとアデーレ・バルフェット君。君が貧乏なことは知っているが、流石に犬用のお菓子を食べるとはどうかと思うがね……』

「うぉっ。犬が喋った。へぇー。どんな術式使ってんですかこれ?」

『なでなでするな!!一応年齢的にも肉体的にも精神的にも私は君よりも歳上なのだぞ!敬意を払いたまえ敬意を!こら!聞いてるのか!?』

「聞いてますよー。可愛いですねー」

『聞いてないだろう君!?あと唯一君も乗じてなでなでするな!ええいアデーレ君はなでなでのスピードをアップするではない!』

 

 またあるいは。

 

「おィ」

「カレーデスネー」

「…………おィ」

「カレーデスネー」

「…………」

「イライラしている時も、カレーを食べれば元気でますネー」

 

 更に、ある場所では。

 

「生命礼賛!幼女は小生が守りますよー!他は知らん」

「その極論は人としてはどうかと思うの、ってミサカはミサカはあなたが叫んでることについて少し引いてみたり」

「ってか、年齢だけならミサカもまだ幼女って範囲に入るだよなぁ……」

「はぁ?ババアが何言ってんですか。その年食った見た目で幼女とか片腹痛ィィィィィィィィィッ!?」

「ホッント、あのモヤシ含めロリコンはろくな奴がいないよな。しかしロリコンと筋肉ムキムキの巨漢コンビって見ただけで犯罪臭すごいよな」

「…………」

「喋ったほうがいいと思うよ?とミサカはミサカはあくまで寡黙を貫くあなたを心配してみたり」

 

 彼らは交わる。運命や因果律などよりも大きな力によって。

 

 それこそが、彼らが物語にて活躍する登場人物たる理由なのかもしれない。

 

 

 ⚫︎

 

 

 しかし、この自転車は随分とスピードが出るものである。

 

 見た目で電動自転車だということはわかっていた。二人乗りの電動自転車なんて中々見ないな、というのがキンジが抱いた最初の感想だった。

 

 が、そこは学園都市製の自転車。やはりそこらの電動のチャリとは一味も二味も違っていた。

 

 まずはこの自転車、電動自転車ではなく電動補助付き自転車の二人乗り版であった。

 

 アクロバイク。

 

 ほんの少し先の未来で上条当麻と御坂美琴が、魔神という脅威から逃亡するべく助けを借りた代物である。

 

 最高時速は50km以上。これならば外部にでも探せばありそうな、ただ早いだけの電動自転車となるだろう。

 

 だが、その真価は〈サイクルアーツ〉と呼ばれる様々な曲芸の数々でこそ発揮される。電子制御式サスペションによりあらゆる衝撃を緩和し、それを応用すれば2m以上のジャンプも可能。そして前後輪を挟む円盤型ジャイロは傾斜が70度を超えても、機体を安定させる。

 

 何よりも自転車競技の経験を持たなくとも使いこなせる簡便性を持ち合わせる、学園都市の科学技術に恥じないミラクル自転車なのである。

 

 何よりもこの自転車はタンデム自転車なのである。二人で漕ぐことにより出力は二倍となり更に高速での走行、そして学園都市の科学技術を用いタンデム自転車が一人用自転車に劣る登板や低速走行、小回りなども一人用アクロバイクに負けずとも劣らずな性能となっている。その代わり〈サイクルアーツ〉の再現は、二人の息があわなければならず、多少難易度が上がっているのは事実である。

 

 「──二人乗り用アクロバイクで、スリルで快適な自転車旅行を」という謳い文句から分かるように、自転車旅行用として生まれたこれは、自転車旅行には不要なほどの高スピードと確実に必要なさそうな高度な性能が祟り、あまり売り上げが伸びていないのだった──。

 

 そんなことは露知らず。キンジと白雪は少しの間だがお世話になったアクロバイクをちきんとスタンドにかけ(もちろんことが終わったら警備員に紛失物として出して持ち主に返す予定である)、トールに連なる形である場所へと向かった。

 

「……廃倉庫か。ベタだな」

「まぁそう言うなって。お前らが驚く奴もいるしな」

「何?」

 

 意味深なトールの発言に眉をひそめながらも、廃倉庫の中に入るキンジと白雪。もちろん、警戒は緩めることはなく。

 

 だが、そこにいた隻腕の男と見知らない金髪碧眼の男に身構えかけたのは、ほんの一瞬のことだった。

 

 何故なら、その横で知った顔が治療を受けていたのだ。

 

「…………金三」

「だからその名前で呼ぶなって」

 

 そこにいたのはGⅢリーグの面々。ほとんどが顔見知り程度には知っている相手達だが、知らない上に怪しい人物がいる緊張感と自らの弟と妹がいるという安心感からか、今はものすごく頼れる味方のような気がしていた。

 

「お前……腕はどうした?」

「軍覇にやられた。まあスペアがあるし」

 

 そしてもう四人。一人はGⅢと同じように包帯ぐるぐる巻きで治療を受けているレベル5の第七位、削板軍覇だ。GⅢが義手を壊したと言っていたが、二人の状態を見る限り、派手に闘いでもしたのだろうか。

 

「トール、済まないな。わざわざ呼び寄せる役割をしてもらって」

「なーに。道中で人助けも出来たし、GⅢが言ってたように中々面白い奴と出会えたしな」

 

 金髪碧眼の男に気安く話しかけるトール。これを見るには、どうやら知り合いということらしい。

 

「──で、あんたらは誰だ?」

「初めましてキンジくん。私はオッレルスという男だ。よろしく。こっちはフィアンマ」

「よう」

 

 ……普通に初対面に対する対応だな。

 

 まぁ一応はGⅢが一緒にいるんだし、敵ということもないだろう。とりあえず伸ばされた手はキンジも白雪も握り返さなかったが。

 

「星枷白雪です」

「……遠山キンジだ。理由くらいは教えてくれないか。なんで俺達をアリアと分担してこんなところに連れて越されたか」

「連れないね」

 

 握り返されなかった腕を苦笑混じりで見ながら、視線をキンジ達に向け直すオッレルス。

 

「君たち二人を呼び寄せたのは他でもない。他の人達にはこの街の騒動の鎮圧を任せるとして、君たち二人にはやってもらわなければならないことがあるんだ」

「やってもらわなければならないこと……?俺がか?」

「もしかして……あの船についてのことですか」

 

 白雪が上空を見上げた。残念ながら屋根に阻まれそれは直接見えなかったが──

 

「その通り。“武蔵”についてさ。まぁ、詳しい話は後にするとして……。まずは二人に紹介したい人物がいる」

 

 オッレルスのその言葉と共に、削板を除く初対面の人間が三人、こちらに近づいてきた。

 

 一人は金髪碧眼の青年だ。ただ同じ金髪碧眼でも、オッレルスのような頼りない感じはせず、貫禄が見受けられた。

 

 その隣にいるのは少女だ。見たこともない帽子と明らかに素の腕ではなさそうな巨大な腕を持つ少女。

 

 そして最後のは女武者を絵に描いたような少女であった。手に持った槍や立ち振る舞いは、まるでどこぞの無双ゲーに出てきてもおかしくはなさそうな印象を抱かせた。

 

 合計三人。それは

 

「武蔵副長、本多・二代と申す者で御座る」

「同じく武蔵副長補佐を務めさせていただいています。立花・宗茂と申します」

「立花・誾です。宗茂様と同じく副長補佐を務めています」

 

 極め付けは武蔵が持つ、最大級の戦力三人だった。

 

 

 

 

 

 

 

2,

 

 

 

 

 

 

 

学園都市 窓のないビル 回線「E-squirrel」

 

 

理事長:『──それで、君はどうするつもりかね?』

闇竜:『?どうする、とはどういうことだ?』

機械仕掛けの神:『ソラリスの目的についてだよ、“闇竜”。だろう?“理事長”』

理事長:『これはこれは──どうやってこの回線に割り込んできた?“機械仕掛けの神”』

機械仕掛け:『何。回線の割り込み程度なら簡単な仕事だったよ。こちらはこちらで、支社の方が襲撃を受けていてね。木原とは、中々狂っているのが揃っているのを再確認しているところさ』

闇竜:『狂ってるって君が言うかい?それ。まぁ、この回線には何故か奇人変人しか集まらないけど……』

理事長:『それは遠回しに自分のことも奇人、もしくは変人と言っていることだが?“闇竜”』

闇竜:『はははは。“理事長”も、『20世紀最大の変人』なんて呼ばれた君が、それ言うかい?──いや。なんでもない。で、ソラリスの目的がなんだって?』

理事長:『……幻想殺しを始めとした彼らに話すか否か。という話だよ』

闇竜:『…………』

理事長:『彼らがそのことを知れば、意見が割れるかもしれないことくらい、君が分かっていないわけがないだろう?『異能を消し、誰にとっても幸せな世界を作る』。ソラリスの目的はその一言で表せる。が、これがどれほど難しいことか、くらいは彼らだって分かるだろう。

 もし、彼らが奴がそれを本当にやってしまうほどの力を持っていると知れば、幻想殺しはどのようになるだろうか』

機械仕掛け:『カミジョウトウマは間違いなくそれを否定するだろう。彼はそれを実際に経験し、それを真っ向から否定することに成功している。十中八九救いを突っぱねるだろうな。

 イツカシドウに関しても、悩みはするだろうが結局出す答えはカミジョウトウマと似たような物だろう。

 ──が、キリガヤカズトとトオヤマキンジに関しては、こうはいかないだろうな』

闇竜:『…………』

機械仕掛け:『『大切な誰かが幸せになれるなら』と考えれば、彼らが異能を否定することだってありえる。カミジョウトウマのようにあの黄金の世界を乗り越えたりでもしていれば別の話だが』

闇竜:『……言いたいことはわかっている。ソラリスの目的を告げれば、彼らがそれに賛同するかもしれないことも』

機械仕掛け:『なら──』

理事長:『だが、それに明確な生贄が分かればどうなる?』

機械仕掛け:『……ああ、なるほど』

闇竜:『なんてことはない。奴はそれを実現するために上条当麻を潰そうとしているんだ。君たちもそれは知っているだろう?

 確かに奴が世界から異能を打ち消し、世界を幸せにしたなら上条当麻はなにもなかったかのようにその幸せを享受するだろう。それでも、彼が死ななければならないことにはなんの変わりもない。

 オティヌスの時と同じさ。そこに明確な生贄が必要となれば、彼らは迷うことになるだろう。幸せを受け入れない者も出てくるだろう。最後まで迷い続ける者も出てくるだろう。だから、奴は──……。

 すまない。少し長々と話してしまったな』

機械仕掛け:『構わないさ。……エレンから連絡だ。私は落ちるよ』

闇竜:『ああ。そうか。それじゃ、学園都市での件は頼むぞ』

機械仕掛け:『彼の計画はこちらの成そうとしている目的を妨害するものだからね。悪いけど、潰さなければこちらが困るんだ、では』

 

 

理事長:『……アイザックが通信に参加してきたのは意外だったが、“教授”や他の奴についてはどうした?彼らのことだからこの事態を周知はしているのだろう?』

闇竜:『おいおいアレイスター。ここでは名前を出すのは禁止って言ったじゃないか。もう忘れたのかい?』

理事長:『……君は私をおちょくっているね?』

闇竜:『いや、すまん。つい…………解剖癖のある“ガスマスク”や“ウサミミ”は間違いなくこの事態を何がなんでも監視すると思ってね。諦めてこちらが持つラインを解放して傍観者として見せてやってるよ。ほっとくとホント何をしでかすか分からないからな』

理事長:『彼らの知的好奇心と異常性は、木原ですら手の余るようなものだからね。君の苦労には同情するよ』

闇竜:『同情する気なんてかけらも無いくせに……。他の面子については御察しの通りだ。元々あの人はこのような場面を眺めて喜ぶような人では無いし、あっちはあっちで色々と親族関係で忙しいらしいしね』

理事長:『──しかし、よくこんな連中を一同に介しようと考えたものだ』

闇竜:『そこは“司令”くんに言ってあげなよ。こんなことを始めることになったのは、彼の息子の一言と彼の突拍子も無い発想のおかげだ』

理事長:『君らにとってはいいんじゃないか?私たちが単独で場に介入して悪化するのを、事前に防げるようになったのだから』

悪竜:『……他人事みたいに言ってるけど、君が一番こっちの中では最重要危険人物なんだよね』

理事長:『わかって言っている』

悪竜:『…………アレイスター君』

理事長:『なんだい?』

 

悪竜:『君、やっぱり「食人鬼」とか呼ばれても仕方ないよ』

 

 

 

 

 

 

 

3,

 

 

 

 

 

 

 

「…………事情は分かった」

 

 トールに連れられオッレルスやフィアンマといった魔術師、二代や宗茂、誾たち武蔵の住人との会合を果たしたキンジと白雪。そんな彼らが言った衝撃の事実の数々をなんとか飲み込むことは、今まで様々な修羅場を抜けてきた二人にも難しいことであった。

 

 このような事態が起こることをある人物から伝えられ、事前に学園都市をGⅢの協力と共に忍びこんだオッレルス、フィアンマ、トール。学園都市にて偶然保護し、途方に暮れていたところをここの面々に助けられた二代と宗茂と誾。彼らがここに至るまでの経緯と理由についてはとりあえずのところは理解できた。

 

「で、あんたらは武蔵が故意に墜落させられることを防ぐために俺と白雪の手助けが欲しい……ってわけか」

「………んが。…うむ。その通りで御座る」

 

 削板と一緒になって牛タン弁当(紐を引っ張ると温かくなるやつ)を頬張っていた女性──本多・二代はアンガスから差し出されたペットボトルを受け取り、中のお茶の力を借りて弁当を全力で食い尽くしてから、声とも吐息ともゲップともつかぬ音を漏らしながら答えてきた。

 

「そんなに急いで食べることはありませんよ、二代様」

 

 そんな彼女の慌てぶりを見かねたのか、フォローを入れたアンガスに対し、

 

「むう、そうで御座るか。では遠慮なく」

 

 と三つ目の牛肉チャーシュー丼にトライする女武者。

 

 ……いや、まず食べるのをやめろよ。もう十分だろ。

 

 削板に至っては、こちらの話を聞いてすらいない始末だった。かと言って、あそこの二人みたいにお互いに「アーン」しあいながら食べるのもどうかと思うが。というかあの二人──立花・宗茂と立花・誾といったか──彼らは名字が同じところをみるに結婚でもしているのだろうか。見たところ血のつながりは感じられないが。

 

「「…………いいなぁ」」

 

 同時に火花を散らし出した白雪と金女は放っておいて、オッレルスに向き直るキンジ。

 

「けどやってもらいたいことってなんだよ。俺ができることなんてたかが知れているぞ」

「いや、君じゃないとダメなんだ。君だからこそ、と言うところかな」

「?」

 

 意味が分からなく、首をかしげる事になる。そんな自分の周りでは

 

「あなたになんかにキンちゃんとの『あーん』は譲らないわよ……」

「お兄ちゃんに『あーん』するのは妹の特権なんだから、ヤンデレ女は黙ってて!」

「ヤンデレ女とは何ですか!?私は由緒正しい星枷神社の長女、巫女なんですよ!キンちゃんに対しては愛があるからちょっと行き過ぎることもあるけど……」

「ほう。そなたは巫女殿で御座ったか。となるとやっぱり浅間殿のように矢の砲撃で戦艦を撃沈させたり、人を射抜いたりするので御座るか」

「すいません。その方とは巫女とは何かについて、たっぷりお話ししたいのですが……。それに普通、巫女は矢を人に向けたりはしませんよ」

「そうで御座るか?拙者が知る浅間殿は戦闘中はそれはそれはイキイキと砲撃してるイメージで御座るが……」

「それ、巫女じゃなくてバーサーカーじゃないの?」

 

 なんて常人が聞いたら間違いなく気がおかしいと感じるような会話が繰り広げられいてが、それは無視することにする。参加してもいいことなんてないに決まっている。

 

「……で、具体的に何をすればいいんだ?」

「今からここにいる面子で武蔵に乗り込むのさ。同時に他の連中も武蔵に集結する手筈だ。……だよな?オッレルス?」

「ああ。幻想殺しや禁書目録もそろそろ準備を始めているところだろう」

「上条当麻…………」

 

 脳裏に浮かんだのは、保護対象として位置付けられていた右手にとある能力を持つ少年。何度か世界を救っているという、真の英雄とか呼ばれる奴。

 

「そう嘆くことはない。お前らのいた世界と俺様たちの世界はまるで違う。今はあの男がお前たちの世界も救った救世主みたいになっているが」

「…………」

 

 複雑な気分だ。自分よりも一つ年下の少年がどうやったらここまでやってこれたのだろうか。自分なら確実に折れてるかもしれない道を、彼はどうやって歩んできたのだろうか。

 

 つい先日、力を持つ者には大きな責任があることを理解した。が、それは遅すぎたのではないか。

 

 ……もし、俺じゃなくてあいつだったらもっと上手くやれたことだって──。

 

 ……アリアに、あんな傷をつけることも無く──。

 

「…………ッ」

 

 ……何考えてんだ、俺。

 

 一瞬、そんな恐ろしいことを考えた自分に気づいて、慌ててその考えを頭から振り払う。今はこんなことを考えてる暇はないのだ。余計なことを、考えてる暇など。

 

「……兄貴?大丈夫か?」

「な、なんでもない。で、具体的に俺たちは何をすればいいんだ?」

「ああ。それなら──」

 

 今起こりつつある悲劇に対する対抗策へ辿り着く手段の説明が始まった。

 

 ──その場にいる一人の少年が心に抱いた、言い表せない感情を置き去りにしながら。

 

 

 

「「まずは武蔵に上陸する。どうやってかというと──」」

 

 別々の場所で同時に、手段が少年少女たちに知られることとなった。

 

 

「「ミサイルを使って、だ」」

 

「「「「…………は?」」」」

 

 その手段により、様々な少年少女の理解の先を超え事態はさらに動きを見せる。

 

 

 

 

 

 

 

4,

 

 

 

 

 

 

 

「…………あの……上条さんの聞き間違いかと思うんですけど……。武蔵にはどうやって行くんですか?」

「ミサイルよ」

「こ、琴里?シャトルとか、ロケットとかじゃなく?」

「ミサイルよ」

 

 固まる空気。突如訳がわからないことを言い出した琴里に、明らかに場の空気が先ほどとは別の物に変質する感じを、上条当麻は感じていた。

 

 しかし、土御門やステイルといった「必要悪の教会」の面々は驚いている様子はないし、椿は相変わらずニヤニヤしているので、嘘ではないらしい。自分的には、嘘の方が良かったのだが。

 

 キリトの声が廊下に響いた。

 

「いやミサイルでどうやってあそこまで行くつもりだよ。大体こんな空中戦艦あるんだったら、そっちで向かったほうがいいに決まってるだろ」

 

 至極まっとうな意見だと思う。おそらくは、これが一般論になるのだろう。

 

 しかし、今までの経験論から察するに、この事態はそれが通用しない場面らしい。

 

「現在、武蔵周辺には魔術結界が張られています。これは武蔵内の認識阻害の役割ともう一つ。ある役割を担っています」

「ある役割、ですかぁ?」

「はい。それが、侵入遮断。結界内の武蔵に外部からの侵入を許さないというものです」

「それじゃなんだ?武蔵に近づくことはできても、入り込むことはできないってか?いわゆる、バリアだな」

「バリアとは少し違うけど……うん、クラインが言っている通りの働きを持っている結界なんだよ」

「敵にとってすれば、僕らが武蔵墜落の妨害の為に武蔵住民と結託するのはやめて欲しいらしい。まぁ、黒幕もどうやらかなり力押しで武蔵をここまで持ってきたらしいからな。かなりの異変が起こって、武蔵内でも徐々にこの事態に気付きつつあるが」

「インデックスや当麻は魔術を消したりすることができるのだろう?それで消せばいいのではないか?」

「私やとうまでもあの結界を完全に解除するのは無理なんだよ。アレは私の魔道書図書館にもないルーツから来たものだし、私はもちろん、『必要悪の教会』にあれを解けるような魔術師も霊装もないんだよ」

 

 なるほど。通常の手段や魔術を用いた搦め手ではあそこに辿り着くことは不可能ということがわかった。だが、

 

「だけど、なんでミサイルなのかしら?」

「あの結界には一つの特徴がありやがるんですよ。それを突けば、武蔵に突入することもできるんですよ。オルソラ=アクティスやシェリー=クロムウェルたち暗号解読班が見つけた抜け穴です」

「抜け穴って……なんなんですか、それ」

 

 いい加減に異常な事態にもこういった質問を投げかけれるほどには慣れたのか。そんな直葉に率直な答えをもたらしたのは、いつもの定位置、すなわち上条の頭上にいたオティヌスであった。

 

「あの結界は攻撃が防げないんだ。

 バリアとは言い難いのもこれが起因するな。あの結界は外界からのあらゆる干渉を遮断できるが唯一、攻撃と呼べるもの遮断は不可能なんだ。

 黒幕的にはどこぞの馬鹿が武蔵に攻撃を加えてきて軋轢が生じたら、まさに思い通りという奴なのだろうよ」

 

 

 ⚫︎

 

 

「……だからってミサイルで突入とか、少し短絡的じゃないか?」

「Jud.私たちは最初ミサイルとは何だか分からなかったので、安易に了承してしましたが」

「ジャッジ……?なんだそりゃ」

「武蔵内での“応答”、“了解”の意を持つ掛け声です。元は咎人用の物でしたが……」

「そうか……。あんたらもなんか大変そうなんだな」

 

 咎人用の返事をなぜ彼らが使わなければならないのか、キンジは知らない。そこには深い意味があるだろうし、部外者の自分がずかずかと踏み込む部分ではないと判断したからだ。

 

「それが一番いい手だと分かったからね。まぁ、もちろん君らを乗せるのはただのミサイルじゃないが」

「まっさかこんな代物を真面目に学園都市は開発してるとはな。真面目に驚いた」

 

 その言葉に不信感を抱くキンジ。その当たっても欲しくない不信感は、本当に当たることになる。

 

 倉庫の奥。扉の向こうにある滑走路に鎮座しているのは一般人に「ミサイル」と言って描かせれば十中八九こうなるであろう形のミサイルであった。

 

 唯一違うところと言えば、その側面に扉らしき部分がついており、そこにタラップが架設しているところだった。

 

 何となくシャーロックのことを思い出す。彼も大陸間弾道ミサイル(ICBM)に乗って飛び去っていったが、

 

「まさか同じことをすることになるとはな……」

 

 冷や汗を滲ませながらも、坦々と乗り込んでいくGⅢリーグの面々や白雪、武蔵の三人や魔術師たちについていく。

 

 もはや引き返すことは無理そうだ。だったらさっさとこの事件を片付けるに限る。

 

 そうした思いを抱えながら、武蔵へと向かう片道のみの移動手段の中へと入る。

 

「……ってか、ミサイルの必要あるのか?他にいい方法とかは……」

「細かいこと気にしてたらもてないぞ兄貴」

 

 ……ほっとけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

第二二話「異世界同士の交流」終

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