サファギンの群れは順調に数を減らされていった。
偃月刀を横薙ぎに振るえば、2匹が吹き飛ばされる。
切っ先を正面に向けて突っ込めば、1匹の体を貫通する。
振り返りざまに後ろへ切り返せば、更に1匹が倒れる。
「18秒」
残る敵は19匹。嵐に揉まれ激しく揺れる船上にありながら、まるで平地で戦うかの如き
踏み込みの力加減、打突の柔軟性、切り払いの速さ。全てに無駄がない。
「15秒」
たった一人の敵に武器を構え直す
襲撃時には89匹もいたサファギンの群れは、たった一人の、しかし恐ろしく強い冒険者を相手に、わずか3分たらずでここまで蹂躙された。もはや勝ち目などない。否、か・みが船に乗っていたという事実自体が、始めから勝機の見えない戦いを招いただけとも言える。
「8秒」
こうして7秒が経過する頃にもまた8匹が四散した。甲板は雨に打たれ、波に煽られて水浸しの状態。そして80匹以上のモンスターが倒されたことで大量の金貨やアイテムがそこかしこに散らばったり、あるいは海に沈んだり浮かんだりしている。
「6秒」
か・みが2秒を数える間にまた4匹が切り捨てられた。残るは倒れたサファギンたちの後ろに密集する4匹。逃げ場はない。当然希望も、残さない。無慈悲な狩人の刃が、今まさに、振り向けられる。
「2秒……っと」
残すところわずかに2秒。遂に最後の一体に刃が打ち込まれ、船を襲撃したサファギンは全滅した。
「はぁ~……疲れた~」
大してか・みはどっかりと甲板に座り込み、大きく息を吐く。この
「やっぱり15秒で23匹は……大げさ過ぎたなぁ」
15秒以内に20匹以上いるモンスターを全滅させるという目標は、定めた時間を3秒超過してしまい達成できずに終わった。しかし結果を見ればわかる通り、乗員乗客に被害はなく船の損傷も微々たるもの。何よりか・み本人がまだ生きている。
「〘
思い出したかのように髪を整えながらステータス画面のメニューを操作し、手に持つ偃月刀を装備からマジックバッグに移動させる。危うく残量が1100を切るところでHP減少が止まり、今度こそ安堵の溜め息を吐く。
か・みの背後では海賊たちが
「被害報告を」
「甲板僅かに損傷あり、しかし人員の損害ありません!」
「乗客全員の無事を確認!軽傷者は二名、命に別状はなし!」
「よし、畳んだ帆を再度張り直せ!進路を東へ修正!」
「面舵いっぱい!晴れ間へ向けて進め!」
予想外の事案に遭遇したが、目的地である《蛇神島アマミ》には無事に到着できそうだ。黒い雨雲には切れ目ができ、日の光が筋を張っている。
「……このペースだとアキバまで二週間はかかっちゃうな……」
か・みは今になって時間の心配をし始めるのであった。