(仮題)エルダー・テイルのソロプレイヤー   作:御代川辰

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あなたは何者?

03

 不意に声をかけられたあんまろんたちは、目を点にして声の主の方へと視線を移した。見ればそこに立っているのは一人の男。レベルは最高値の90、メイン職業は《神祇官(カンナギ)》、所属ギルドはなし。衣装は《神祇官(カンナギ)》が装備できる防具の中でも超が二つ付くほどレアな代物で、HPの数値の高さからも実力者であることが一目で分かる出で立ち。

 これだけならただのトッププレイヤーで終わっていたのだが、問題は彼の名前である。

 

「「「「か・みいいぃぃ~!?」」」」

 

 何しろその存在自体が“伝説”と称されるトップ中のトップであり、そして話題に名前が上がる度にたちまち注目をかっさらってしまう程の超有名人が目の前にいるのだから、その場にいた冒険者たちが驚くのも当たり前。

 

「おや、ぼくってやっぱり有名人?」

 

 自身を前にして硬直するプレイヤーたちに対し、か・みは飄々(ひょうひょう)とした口調で返す。対してあんまろんたちは突然現れた彼に釘付けになるばかりで、緊張のあまり声も出せない。これにはか・みも苦笑いを浮かべながら、

 

「…………ってことでいいんだよね…………?」

 

 と、呟く他なかった。もちろんあんまろんたちも狐につままれたような表情でか・みを名乗る男を見つめ、(しば)し場は静寂の空間となる。

 

(大きな声出しちゃった……名前は同じだけどこの人本物……だよね?)

 

 食事場の隅の席で本を読んでいた魔女風のエルフの女は、手元の魔導書で朱色に染まった顔を覆い隠してか・みの様子を伺う。

 

(成り済ましじゃないよな!?本物だって言ってくれ!)

 

 《武士(サムライ)》の風貌をしたドワーフの男は、興奮のあまり再び叫び声をあげそうになるのを(こら)えながら目の前の料理を勢いよく頬張る。

 

(嘘でしょ本物!?本物のか・み!?マジ!?マジなの!?)

 

 あんまろんの隣の席に座る肌面積が多く布地の少ない衣装を纏うヒューマンの女は、当然だが初めて目の当たりにするか・みを前にして完全に気が動転しているのが分かる。

 

(俺は……夢でも見てるのか?もう何もかもが信じられないよ……)

 

 驚愕のあまり転倒した猫人族(ウェアキャット)の少年も、立ち上がる気力もなく乾いた笑い声を出すことしかできない。

 

(え?……え!?)

 

 そしてあんまろんもまた己の目を疑い、目の前に立ってこちらを見下ろす男を見つめている。

 

「…………大丈夫?」

 

 か・みはその場にいる全ての冒険者にもう一度声をかけなおすことしかできず、この混乱が治まったのは十数分後のことだった。

 

 

 

04

 

 か・みと相対したことで硬直していた冒険者たちが落ち着きを取り戻し、各々(おのおの)が状況の整理を終えた頃。詳細不明ながら伝説的な功績を持つ人物が目の前にいることに安堵する者、あるいは興奮者、あるいは更なる不安に震える者もいる。

 

「改めて……ぼくは本名土蔵(つちくら)将助(まさすけ)、今は【か・み】を名乗っているハーフアルヴの神祇官(カンナギ)だよ」

 

 短い自己紹介をし、軽く頭を下げて「よろしく」と続ける。

 

「お、お初にお目にかかります!」

 

 緊張で上擦(うわず)った声とたどたどしい口使いで挨拶をするのは、つい先ほどまで食事場の隅にいたエルフの女。(つば)の広い帽子を目深(まぶか)に被り、切り揃えた長い前髪で目元を隠しているのも、恐らく朱色に染まっているであろう自分の顔を見られることを躊躇(ちゅうちょ)しているのだろう。

 

「わっ、わ、私は【アルタナ】と申します!メイン職業は妖術師(ソーサラー)です!よろしくお願いします!」

 

 アルタナは深々と何度も頭を下げなから席に座り、顔を背けて背を丸める。

 

「あんまろんです。Love On the Marineのギルドマスターで、吟遊詩人(バード)の……」

 

 あんまろんも囁くような声しか出せず、自己紹介も途切れる。

 

「俺は……【(しん)】。“こころ”って書いて……読みは“しん”。メインは武闘家(モンク)でサブは……えーと……功夫(カンフー)

 

 猫人族(ウェアキャット)の少年も自己紹介を簡潔に終わらせてしまい、その他のプレイヤーたちも手短な紹介しかしなかったためにどうも釈然としない結果となった。

 

「んー…………状況確認は不要として、情報交換から始めようか。まずはぼくから、と言いたいところだけどその前に」

 

 やはりと言うべきか、話題を切り出したのはか・み。

 自分のフレンドリストには他のプレイヤーの名前が一つもないため、少なくとも自身よりは多くのプレイヤーと関わっているこの場の人物たちから情報を得た方が手っ取り早いのだ。だがここにあって最年長なのも自分自身であることから、隗より始めよとばかりに話を進める。

 

「君たちの中に、今この姿になった後にモンスターと戦った子はいるかな?」

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