大胆不敵、あるいは無邪気とも解釈できるにやり顔を浮かべ、目の前で自分に視線を注ぐ十七人に向けてそう言い放った。
「戦う……?」
「戦うって言われても……」
「まさか今からですか?」
か・みの宣言にプレイヤーたちは呆気にとられ、そして最初に口にしたのが困惑の言葉であることからも、気の進まない提案であることは明白である。まずほぼ全員が初対面で、戦闘スタイルも異なり、しかも現実での実戦経験は皆無で、レベルに至っては最高でも75、最低が40と開きが大きくあまりにも中途半端な有り様だ。
加えてこのエルダー・テイルにあってベテランと呼ぶべきあんまろんたちですら生身で相対したモンスターに恐怖を抱き、まともな抵抗さえもできないまま安全地帯まで逃げ帰って来た事実がある。
(この人……掴み所がなくて……怖い……)
この場にいる全てのプレイヤーたちがモンスターとの戦いを恐れているのは確かだが、その中でもアルタナが恐れているのは何もモンスターばかりではない。ここまでのやり取りでか・みという人物にもまた恐怖を覚えていた。
考えても見れば、「自身は有名」だが「自身の詳細を誰も知らない」という致命的な欠点を抱えた状態である。にも関わらず、初対面であるはずの自分たちに対して
これまでの「ソロプレイヤーとしてのプレイスタイル」を根本から否定する行動であり、騙し討ちなどを警戒するのは必然であると言えよう。
「まだ明るいうちの方が安全に腕試しをできるからね」
両手指を組んで
「本当は今日のうちにイヤクに行きたかったんだけど、君たちも目的地はナカスでしょ?」
目的地が同じであることなど、この場にいる全員が理解していた。しかし予想もできない異常事態に巻き込まれたことによる混乱と、右も左もわからない世界での今後の不安からくる
だからこそ街という安全地帯の外に出る選択は避けたいというのが本音。
「でも……」
「大丈夫。まずはモンスターに慣れなきゃね」
しかし「何があっても安全だ」ということをアピールするかのようにウィンクするか・みの顔には、確信に近い自信の色があった。
(…………怖いけど、なんだろう……この人なら信じられるって思える)
あんまろんたちはいつの間にか、その表情に浮かぶ絶対の自信に僅かながらの可能性を賭けてみようと決意していた。根拠がある訳ではない。ただ目の前に伝説的な存在と思われる人物がいて、彼が今自分たちがするべきことを定めて促している。
ただそれだけのことなのに、不思議と勇気が沸き上がって来る。もちろんか・み本人に対する畏怖と恐怖がなくなった訳ではないが、少なくとも信頼はできる。
(どうせ地球に帰る方法なんて分からないんだ…………やってやるさ)
騙されているかも知れない。利用されているだけかも知れない。だが、親しい人物の多くは遠く《アキバ》の街にいる。今は遠くの親戚より近くの他人の他に頼りはない。
決意が定まれば、決断は早かった
「不安だし、怖いけど……やるだけやってみます」
一人が溢した言葉に、か・みはただ一言。
「それじゃ、始めようか」