『なあ、聞いたか?』
『また出たんだろ?伝説の廃人が』
日本サーバー、シブヤ。ヤマトの五大都市に数えられるこの街には、現在およそ8000人に昇るプレイヤーがログインしている。
そして街にいるプレイヤーたちの話題は、あるプレイヤーの噂で持ちきりとなっていた。
『【か・み】が出たって?』
『そ。《監獄》に遠征に行った茶会からの情報よ。百パーどころか百万パーの確率で間違いないわ』
話題の中心はやはりか・み。自らを「
分かっているのは名前と性別だけであり、この二つ以外の全てが謎に包まれた伝説的な人物。彼の名が表舞台に現れる度、世界中のゲーム愛好家たちが意識を注ぐほどの有名人でもある。
『西欧サーバー最難関クラスの《
『そうそう!向こうじゃ新聞にも載ったってさ!』
エルダー・テイルに限らず、現実で資金と時間に余裕があるトッププレイヤーが海外サーバーまで遠征するということは、まさしく自由度の高さが売りのMMORPGでは良くある話だ。だが渦中のか・みは遠征の頻度と規模が、他のトッププレイヤーやギルドとは大きく違う。
『北米サーバーの《
『南米サーバーの《
彼の存在を有名としている理由は、なにも数々のレイドボスを
そしてゲームである以上、プレイヤーたちの名はその功績を達成した確固たる証拠としてダンジョンの最奥に出現するモノリスに刻まれるため、か・みも例外なくその名簿に
『バランスブレイカー過ぎるだろ。チーターか運営のスパイじゃないのか?』
『最高レベル統一パーティでも半年かかるレギオンレイドのクエストを三ヶ月ちょっとで攻略したこともあったらしい。これは運営の
だが当然ながらその功績や存在に懐疑的な意見を持つ者も多数存在する。その内容は多岐に渡り、不正な手段を用いて功績をでっち上げるチーター説、運営が開発したテストプレイ用の高性能AI説、運営がシステムや難易度等の調整の参考にするためプレイヤーに紛れ込ませたスパイ説などが有力だが、いずれも明確な証拠がなく信憑性は薄い。
いずれにせよ彼が実在することは事実であるし、人々の興味をそそる格好の的であることもまた、彼のプレイヤーとしての技量を確かなものとしている。
『ともかく、どこにか・みが現れてもおかしくないな。というかもう日本サーバーに戻ってる頃じゃないか?』
『まだ海外サーバーにいるかもよ?先月も韓国サーバーの有名ダンジョンを単独攻略したって聞くし』
『特にアフリカの有力ギルドが
『海外サーバーは高難易度クエストが多いから味方につければ幸運って感じじゃない?』
ことか・みというプレイヤーにおいて、エルダー・テイルの世界を楽しむプレイヤーたちの話題は尽きることはなさそうだ。