03
(イメージと動きが大事……)
切政の後ろを歩きながら、アンネはか・みの言葉を心中で復唱する。「凄腕のソロプレイヤー」であることと名前は知っていたが、有名だから知っているだけで今回が初対面であり、しかも功績以外の詳細が一切不明の人物。
怪しいとしか言えない人物の言葉を安易に信じていいのだろうかと不安を募らせつつも、今頼りになるのは彼一人だけというのも事実である。
(加瀬さんの足手まといにならないようにしなきゃ……!)
アンネの前を歩く切政もまた、一握の不安と一抱えの怖れを胸に思案を重ねていた。
(念じながら動作をする……つまり動きを絶やさず、常に次の一手を考えながら行動しなきゃならねぇ……)
今回相対するモンスターと自分とでは、攻撃力と防御力に雲泥の差がある。か・みもまた「冷静な状態なら通常攻撃でも十分倒せる相手」と評しており、おそらく間違いはないのだろう。
(つまり、遠回しだが油断するなと言ってるんだ)
何気ない日常生活でさえ、一つのことに集中し過ぎればその分他の行動に遅れやズレが生じて何かしらの失敗を起こすことになる。
まして今回行うのは生物を相手取っての戦闘であり、文字通り生まれて初めて経験すること。バックアップがあるとは言え、失敗すればただでは済まない。
(アンネって言ったっけか……足引っ張らないように気を付けなきゃな)
決意したように大太刀の柄に右手を、鞘に左手を添えて水平に構え、少し早足になって草原へと進んで行った。
04
後方に控えて自分たちの順番を待つ一行は、モンスターの群れに向かう二人の後ろ姿を見守りつつ、言い表し様のない不安感を内心に抱えながらか・みに視線を移す。
「あっ、えっと、あの!か・みさん!」
アルタナが上擦った声で話しかけるのを、か・みは掌を向けて諌める。急に聞こえた声に立ち止まって振り向いた切政とアンネに、心配が不要であることを伝えるように大きく手を振り、二人が再び歩き始めたのを見送ると改めてアルタナに言葉を返した。
「分かってる。どうして初対面同士でペアを組ませたのかを知りたいんでしょ?」
ステータス画面から“パーティー編成”と書かれた枠を選び、二人組パーティが標示されたウィンドウを8組出現させる。そしてその中から“第一組”と書かれたウィンドウを選ぶと、パーティメンバーの情報が簡潔に表示される。
[加瀬切政 ドワーフ 《武士》]
[Lv.65 HP.7015 MP.6918 《鬼島津》]
[アンネ 狐尾族 《施療神官》]
[Lv.47 HP.3249 MP.4091 《Love On the Marine》]
上から名前、種族、職業、現在のステータスと所属ギルドの順に文字が浮かんでいるのを確認し、か・みは続ける。
「ド素人同然の自分の勘に任せただけ。大学中退してからもう20年以上他人と関わってないから……」
放った言葉に対する呆れのあまり、その場にいる全員が「は?」としか答えられない。
「…………お前、すげーのに残念なやつだな」
誰かの呟きは、そよ風に掻き消された。