二人組七組、三人組一組の計八組のパーティに分けられ、その各々が一通り実戦を終えて町に戻った頃。太陽はすでに地平線の彼方に沈み、見上げれば夜の帳が空を覆っていた。
微かな淀みさえもない限りなく澄んだ空気、雲ひとつない夜空を彩る煌々とした青白い星の光。今となってはなかなか見られない幻想的な光景は、実に美しいことこの上ない。
「……夜空ってこんなにきれいだったんだね」
町から少し離れた小高い丘の開けた場所に筵を広げ、〘六壬栻盤〙と〘大八洲山海図〙を使って翌日の吉凶を調べるか・みは、感慨深いとでも言いたげな表情で呟く。
「……か・みさんよ……」
「今は本名で呼んで欲しいんだけど……」
星空と地図を交互に見ながら栻盤を動かすか・みの隣に座り、これまた〘六十四卦図〙と〘六十干支の羅針盤〙を用いてヤマトの地図と睨み合う《森呪使い》の男が一人。
「ああ、悪い。将助お前、まさか引きこもりニートってやつ?」
「そうは言っても、大学を退学したって言った時点で普通分かるでしょ」
羅針盤の針が指す方角に合わせ、地図上の《蛇神島アマミ》の部分に六十四卦を翳しながら吉凶を占う男【Sutch☆】が問いかければ、か・みは何の偽りも繕いもせずに答える。
彼の返答を聞いたSutch☆はエルフ特有の尖った耳をだらりと下へ向け、呆れたように溜め息を吐き作業を止めてメモを取り始めた。
「つー事は《茶会》の【にゃん太】と同じく中年のおっさんだよな?」
がっかりした様子で茶化すように問いかけるが、当の本人にはSutch☆の発言にピンとこない様子で首を傾げる。実年齢が中年なのは事実なので否定はしないが、問題は彼が口にしたプレイヤーの名前。
《放蕩者の茶会》自体はその知名度の高さから存在は認知しているし、《茶会》メンバーの名前もその詳細こそ知らないものの過去に攻略したクエストの攻略者名簿に記載があるため、当然ながら知っている。
しかしなぜここで、話題とは無関係な人物の名前が飛び出すのかが理解できなかった。
「何でにゃん太が出てくるの?」
「いや、確かにゃん太もあんたと同年代だったなーって思い出してさ。それで言っただけだ」
メモを書き終え、吉凶占いの続きをしながらか・みの問いに答える。しかし、地図の上に置いていた六十四卦図を持ち上げた瞬間、作業を遮るように声を掛けられた。
「嘘」
か・みは北斗七星を指差し、次いで北極星へと少しずつ指し示す位置をずらしながら続ける。
「その様子だと……現実でもエルダー・テイルでも相当仲が良いみたいだね」
「ありゃ、もうバレた」
一本取られたと笑うSutch☆と羨ましいと言いたげに微笑むか・みは、しばし占いを中断して雑談に興じる。
天の川は見えないが、夜が更けてもなお空は輝いていた。