(仮題)エルダー・テイルのソロプレイヤー   作:御代川辰

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『もしもし?……あんまろんちゃん?』

 

 マリエールに念話を繋いだのは、風に押され波に揺られながら海路(うみじ)を行く船に乗るあんまろんだった。(おどろ)きと不安の混じった声色(こわいろ)で応答するマリエールの様子に、あんまろんは思い詰めた気持ちを放り投げるように息を吐く。

 

「よかった……ちゃんと繋がって」

 

 無論念話相手には見えていないが、自分自身の表情は安堵に満ちた笑顔。先日連絡を取った際は、数分にもならない短い時間しか会話ができず、そしてそのまま一昼夜という短いようで長い時間言葉を交わしていない。

 人間とは実に不思議なものだと、つくづく思い知らされる。マリエールとはここ二ヶ月の間、一度たりとも連絡を取り合わなかったにも関わらず、今回の大災害という災難に遭って最初に、しかも迷うことなく念話を繋いだ。

 

(……ある意味、運命かも)

 

 相手が念話に応じたことで安心しふっと笑うあんまろんと、彼女から返答があったことに驚き固まってしまったマリエール。両者は沈黙してしまい、その後数分ばかり無言のまま呆然と立ち尽くす。

 

「マリエール」

 

 向かいに座るヘンリエッタが耐えかねたように、何かを話すよう(うなが)すのを見てはっとした。彼女の目を見てこくこくと(うなず)くと、少し呼吸を整えて言葉を切り出す。

 

「こっちの世界に来てからもう二日目やんな、元気しとる?」

 

 問いかければ、あんまろんの返事はすぐに届いた。

 

『うん。早速だけど、少し報告したいことがあって……』

「ほんま!?」

 

 ゆっくりと椅子から立ち上がり、船内の休憩室から廊下へと移動しながら語る。一方、マリエールは思わず身を乗り出す姿勢になった。知らせたいことがあると言うのは、一体全体何事なのか。

 向かいに座る人物が突然大きく体を動かしたことで、ヘンリエッタは驚いて少し体を震わせる。目を見開けばマリエールは「ごめんな」と耳に添えていない方の手を垂直に立て、言葉に出さずヘンリエッタに謝罪する。

 

『(びっくりした……)そうよ。聞いたら驚くと思うんだけど……』

 

 動きも大きければ声も大きく、あんまろんも耳元でその声を聞き驚いて転倒しそうになった。しかし壁際にあった手すりを掴んだために大事には至らなかったため、感想も小声(こごえ)(ささや)くに(とど)めて改めて(しら)せを続ける。

 

「どーゆうこと?」

 

 マリエールは緊張しているのを隠すように一度部屋を出る。あんまろんも階段を上がり、日の光に照らされて光沢を放つ甲板へと身を移す。

 そして手すりに手をかけると、マリエールら現在のアキバの冒険者たちにとっては寝耳に水である事実を口にする。

 

『今、か・みと一緒に《ナカス》へ向かってるの』

「……………?」

 

 あんまろんが放った言葉で、思わず目が点になり再び固まってしまう。今彼女は何と言ったのかという疑問が、整理が追い付かない脳裏を(よぎ)ってさらに混乱する。

 

『ええと……()()()が私と私のギルドメンバーの用心棒をしてくれてるの。わかる?』

 

 か・みという名が再び聞こえた時、マリエールは人生で最も大きな声で叫んだ。

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