(仮題)エルダー・テイルのソロプレイヤー   作:御代川辰

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扉一枚

 あんまろんとマリエールが念話を通じて情報交換をしている最中、オールトはそわそわと部屋の中を歩き回っていた。思い出すのは先日の夕方、か・みの指導及び監督のもと執り行われたモンスターとの戦闘訓練での出来事である。

 

(ああ……ヤバい……一日経てば大丈夫かな~とか思ってたけどやっぱり……)

 

 遊撃手(レンジャー)としては縦横無尽に動き回る柔軟な対応能力を、そして前衛攻撃手(フロントアタッカー)として高度な牽制技術を求められるメイン職盗剣士(スワッシュバックラー)。この職業にあって更に難易度の高いビルドとして知られる投擲武器職人(ジャグラー)である彼の相方(ペア)となったのは、あろうことか妖術師(ソーサラー)であるアルタナであった。

 しかもビルドは壁役(タンク)の護衛を付けることが前提となることが多い魔導砲台(ヌーカー)、ヘイトコントロールと攻撃のため、戦場を常に移動し続けなければならない遊撃手と二人だけで戦うには余りにも不利で、まさに相性最悪と言わざるを得ない。

 

(…………こういうの、ホントどう表現したらいいんだろ)

 

 だが実際にペアを組んで戦闘をこなした今となっては、遊撃手と遠隔攻撃手の組み合わせに対する印象も大きく変容している。もちろん一度目はとにかく敵に攻撃の隙を与えまいとアルタナの傍から離れず、ひたすら投げナイフを投げ続けるこたでモンスターを倒した。

 だがこの行動は誰の目から見てもアルタナの攻撃行動を(さまた)げているようにしか見えず、オールト自身も戦闘中は頭に血が登っていただけに、終わってからか・みに咎められて初めて気付く有り様。

 結局休憩を挟みつつ五度に渡ってモンスターと戦う嵌めになったが、この経験で得たことは決して少なくない。

 

(パーティ指揮はできない人だけど、ちゃんと人のことは見てるんだな……)

 

 まず「敵に付かず、かつ離れず」を基本とする武器攻撃職の戦法を一から学び直したことで、味方から距離を置かないことによる最大の弊害であるフレンドリーファイアのリスクが劇的に下がったこと。これは大きな成長と言えるだろう。

 一度目の戦闘の際は上述した通り、アルタナを敵の攻撃から守ることに(こだわ)り過ぎてアルタナの行動を制限してしまい、結果戦闘自体を(とどこお)らせていた。しかしこれも二度目、三度目と繰り返すうちに洗練されて行き、五度目の戦闘を迎えた時には大災害前の水準にまで上達していった。

 

「今なら同格の相手とも互角に戦えそうだ!」

 

 オールトは確かな自信を胸にガッツポーズを決め、腹の底から張り切った声をあげる。心なしか笑顔は明るく、目も爛々と光を帯びており、部屋に響く声からもいかに上機嫌なのかが分かる。

 

「ようし!早速甲板を借りてアルタナさんと……」

 

 気分の高揚を一切隠すことなく力を込めて踏み出し、そして自室の扉へと手を伸ばして廊下に出ようとノブをひねった。しかし廊下と部屋を(へだ)てるその扉を引いた瞬間、「きゃあっ!」という悲鳴とともに人影が自分に向かって倒れ込んで来る。

 

「うわ!」

 

 オールトは倒れて来た人影に押し倒されてしりもちをつき、人影は彼に覆い被さるように転倒する。

 

「いった……大丈夫ですか!?」

 

 この時頭を床に打ち付けたのか、後頭部に走る鈍い痛みに顔を歪めて起き上がる。だが文句を言いたい気持ちを抑え、自分に引っ張られて転んだ人物への心配も忘れない。

 

「いいえだいじょ……」

 

 声をかけた人物が答えながら顔をあげると、ちょうど同じ目線で見つめ合う体勢となった。そして、互いの顔を見合わせて思わず硬直する。

 

「あ」

「……あっ……」

 

 アルタナは、オールトと顔を見合わせ彼の膝の上に座ったまましばらく動けなかった。

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