(仮題)エルダー・テイルのソロプレイヤー   作:御代川辰

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鍛錬・上

 マリエールが思い出に耽っている頃の船の行方に視点を移すと、穏やかな海を渡る船の甲板では、オールト=アーザンとアルタナの二人が、あんまろんとSutch(サッチ)☆の監督のもと模擬戦を行っている。

 ……のだが、その様子は模擬戦と呼ぶには派手な動きが少なく、誰の目から見ても普通の稽古にしか見えないほどに地味な内容である。

 

「脇は閉める!足は常に広げて!」

 

 振り返り様に足がもつれて転びそうになった瞬間を見計らい、力強く甲板を蹴って接近してくるあんまろん。槍を持つ手を離し、慣性を利用した勢いと重みのある刺突が、頬にかするすれすれの部分で止まる。

 

「ほら!ちゃんと避けなさい!」

 

 一度引かれたかと思えば、その槍は持ち換える動作で縦に回転し、柄頭(つかがしら)が脳天に向けて振り下ろされる。オールトは鍔迫り合いに追い込まれながらも何とか攻撃を防ぎ、あんまろんから距離を取って改めて声かけに答える。

 

「聞こえてる!?」

「はい!」

 

 オールトは柔軟・迅速・軽快の三拍子を求められる武器攻撃職であり、そして遠距離からの攻撃を前提とする支援攻撃ビルド。足元がもたつけば動きは鈍り、先ほどのように隙ができ、格好の的になる。

 

「どんどん行くわよ!気を張って!」

 

 中距離での戦闘に特化した性能を持つ武器攻撃系職業にあって、攻撃力の低さが難点だがその代わりに支援系のスキルを多く修得する吟遊詩人(バード)

 しかし現在相対するあんまろんは吟遊詩人(バード)に二つ用意されているビルドのうち、非常に高い集中力が必要とされるコンサートマスターでありながら前線に立って戦う戦闘スタイルを好んでいる。

 

(もともと、積極的な人だけどっ……昨日一日で変わり過ぎでしょ!)

 

 防戦一方のオールトが驚嘆した通り、あんまろんは先日の戦闘指南でがむしゃらに武器を振り回していたのを矯正されたことでムラがなくなり、攻撃のキレが増して一撃あたりの威力が跳ね上がっている。

 さらに才能があったのかたった三回の実戦で太刀筋も洗練されており、現在〔ノイジービースト〕によって振り回されている槍の先端も寸分狂わずオールトの心臓を狙っている。

 これを回避するのは一筋縄ではいかない。

 

「もっと早く避けて!かすったら即死だと思いなさい!」

「はっ、はい!」

 

 時が経つに連れて密度が高くなる攻撃と、攻撃に併せるように過激になっていくあんまろんの激励。

 人間は短い間にここまで変わるものなのかと、オールトは内心で驚愕していた。

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