オールトがあんまろんを相手取って戦闘訓練に励む一方、アルタナもまた
「そうだ。ゆっくりでいい」
指示されるままに杖を構え、ぎこちなくゆっくりと円を描くように歩き、そして船体の外に向けて狙いを定める。杖の先端に光が集まる演出が収まると同時に、船から30mほど離れた海の上に風が
「今だ!解放!」
もとより
「15……14……13……」
「リキャストタイムは声に出さなくていいぞ」
この難易度の高い訓練を可能とするためには、MP消費が少なく、キャストタイム・リキャストタイムがともに短く、かつ効果が分かりやすく現れる魔法を使う必要があった。
そしてこの条件を満たす魔法はとても少なく、それこそ数える程度しか存在しない。そのため単体攻撃魔法でありながら距離を指定でき、一時的ながら地形を変化させる効果を持ち、さらに消費MP量とリキャストタイムが短いという好条件を持つ〔タイフーンスクリュー〕はまさにうってつけと言うわけだ。
「32m……上々だな。次は半分くらい近づけてみよう」
半分、つまり今度は16m程度の距離で〔タイフーンスクリュー〕を発生させろと言うこと。二人は一度船のまで移動し、もう一度訓練に取りかかる。甲板の方からはあんまろんとオールトの掛け声と、剣と槍がぶつかり合う音が聞こえている。
「それじゃ、四回目だ」
アルタナは
「左へ行くぞ。少し急げ」
早足で船体の左舷に移動しつつ、視線は海面に狙いを定めるように動かさない。まっすぐに海を見つめ、合図を待つ。
「次は右」
左に向かって歩いていたのを方向転換し、今度は右へと移動する。そしてそのまま右舷へと位置を変える頃には、再び
「解放!」
「はい!」
合図と同時に構えた杖をまっすぐ海に向け、〔タイフーンスクリュー〕を放つ。竜巻の真下の海原には、先ほどと同じく