「Sutch☆から連絡が?」
ここは《アキバ》最大規模の戦闘系ギルド《D.D.D》が根城とする《アキバギルド会館》のギルドホーム。その中央に設えられた会議室の奥にある、上座の席に一人の男が座っていた。
男の名は【クラスティ】。戦闘スタイルの脳筋ぶりから本人のサブ職業に合わせて“狂戦士”と渾名される生粋の専制攻撃主義者である。
「はい。《蛇神島》で【か・み】と名乗るプレイヤーと合流し、現在《ナカス》へ向かっているとのことです」
クラスティの座る椅子の隣に立ちつつ報告するのは、彼とほぼ変わらない身長を持つ知的な印象の女性、【高山三佐】。クラスティの腹心にして懐刀、すなわち補佐役としてギルド《D.D.D》を牽引するベテランだ。
冷静沈着という言葉がよく似合う彼女の態度は、その表情の変化の乏しさから戦闘時には半ば冷酷にさえ見える。
「か・み……そうか……そうだったな……今思い出したよ」
三佐の口から飛び出した名前に対する答えからして、エルダー・テイルのプレイヤーである以上当然と言うべきか、はたまた例外なくと言うべきか、クラスティもまたか・みの名を認知しているようであった。
神出鬼没であるとは良く聞く話だが、そもそも名前だけが有名で、アバターもリアルの姿も分からないプレイヤーなどいるのだろうかと、エルダー・テイルを始めた頃から疑っていた。
だがSutch☆ほどの実力者が「本人と直接言葉を交わした」と大はしゃぎしながら連絡を入れて来るのは、それこそ確かな実力と実績を持つ有名人たちと関わった時くらいである。
「正直に言って私も、Sutch☆の口からあの有名人の名前を聞くなんて、先ほどまで微塵も考えていませんでしたので」
三佐本人は至って真面目な表情、平静な態度を保っているつもりなのだが、クラスティは彼女の手元や指先の動き始めから興奮と高揚、そして期待感をにじみ出している事をあっさり看破してしまっていた。
「この際、か・みほどのプレイヤーとパイプができたのは大きな縁だ。せっかくだから、ログインメンバー全員分のサイン色紙を頼んでおこうか」
と三佐に向けて自身も半分冗談で半分本気、しかし全く興奮を隠さない声色でぽつりと呟くと、
「再度Sutch☆に連絡致しますので少々お待ち下さい」
三佐は即答した。