(仮題)エルダー・テイルのソロプレイヤー   作:御代川辰

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釣り落とした魚は大きい

 《ナゼ》から出港し《ナカス》を目指す航海が始まって早くも3日が経過したが、今日到着予定の目的地である《雨林島ウーベルフェルセン》は未だに島の影だけが遠くにぽつりと見えるだけ。

 順風満帆とは言い(がた)いが予定に狂いはなく、特に大きな変化も見られない現状に早くも暇を持て余しはじめた面々は、訓練を一時中断して甲板に集まり、魚釣り大会を(もよお)していた。

 …………のだが、

 

「…………つまんね」

 

 画一的なゲームシステムの弊害は、なんとこのような単純な娯楽にまで及んでいることを思い知るはめになったのである。如何にも不良然とした態度のドワーフの少年、【空鐘(カラベル)】が釣竿を置いてぼやくほど、とにかく獲物が釣竿にかからない。

 甲板に置かれたいくつかの魚籠(びく)には、既に魚型モンスターが二十匹以上入っているが、《釣り》スキルのレベルが低い他の乗船者たちの魚籠(びく)は中型のものが数匹程度、あるいは雑魚一匹すらもいない空のものまである始末。

 

 《漁師》のサブ職業を持つ空鐘(カラベル)がいてこうなのだから、これこそ運が悪いとしか言えない。

 

「つまんねっつーか正直、ゲームシステムの強制力舐めてたわ」

 

 空鐘(カラベル)がまた大物を釣り上げるのを退屈そうに眺めつつ、相棒のエルフの守護戦士(ガーディアン)闇鈴(クラベル)】が生け簀に魚籠(びく)の中の魚を放り込んでいく。

 事の発端はあんまろんが、「メニューを通じたコマンド操作なしで技を使えるのなら、必要なスキルさえ習得していれば現実世界で日常的にしている事の大部分が普通にできるはず」という持論を展開し、実際に自身のサブ職業である料理人(の上位職種、料理師Lv.87)のスキルと今は亡き父直伝の調理技術を駆使した和食膳を作って見せた事にある。

 

 この場にいるプレイヤーたちは大災害直後、木亭宿の食堂や屋台で食事を摂ったのだが、この時に食べた料理がことごとく微妙で、とても美味しいとは言えない味だったために、フレーバーテキストの内容は決して嘘ではないと思い知らされたのだ。

 このような一件もあり、「人間が自分の手で作る事」の重要性に早く気付く事が出来、(しん)の「この事実は早めに広めるべき」という意見に従い、各々フレンドたちに連絡を入れるに至った。

 ここまでは良かったのだが……

 

「なんか……バカにされてる気がする……」

 

 (しん)は小魚しかかからない自分の釣竿と、小魚しかいない自分の魚籠(びく)を交互に見返しながらまたぼやいた。

 大災害から十日足らずで新事実に到達できたのは喜ばしいが、帰還のために必要な情報とは到底関係あるようには思えず、やっと掴んだヒントは儚くもゲームシステムによって阻まれるという不幸。

 こうして退屈に流されている間にも、船は《ウーベルフェルセン》へと近づいていた。

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