03
チベット語で“風”を意味する言葉をその名に冠しているだけあり、【
その特性や効果こそシンプルなものだが広範囲に渡る全体攻撃が多く、インドサーバー圏内の中堅プレイヤーたちからはレイドバトルの練習相手として親しまれている。
「
そして
例えば先ほど【か・み】に使った痺れ粉を仕込んだ突風で吹き飛ばしスタンで動きを封じる〔
まだ一合目の序盤であるにも
「遭遇率何パーセントって相手と戦うのは本当に楽しい!」
04
対戦相手であるモンスターの姿はいつも画面越しでしか見られず、モンスターと実際に戦うのも生身の自分ではないアバター。しかし先述した通り彼の心中には虚無感などない。否、その心は内側から
あたかも思いがけない掘り出し物を、まさしく人知れず見つけた時のようで。
「戦いはこうでなくちゃ!ちまちま切りつけるだけじゃ……」
「つまらないもんね!」
カチッというクリック音と共にか・みが走り出し、視界から逃れようとするアバターをイエティが追う。ミニマップにも大きな赤丸が青い矢印を追う様子が表示されているのを確認し、そのまま下へ向けて突き進む。
今のこの行為自体はただの鬼ごっこである。要するに時間稼ぎだが、
(このまま第一チェックの甦りの祠まで
か・みはイエティ一匹を後ろに従え、マウスの操作の下にダンジョンの進行順路を奥へ奥へと進んで行く。一方現実の
現在のアバターとイエティの距離差、そしてイエティのHP残量の状態であれば、遠距離武器の
しかしせっかくレアモンスターと遭遇したのに、全力の勝負もせずに倒してしまうのはもったいない。何とか自分の望む戦いができないかとダンジョンを進み続けること40分が経過した頃、今さらになって違和感に気付いた。
(こいつの他にモンスターがいない?)
《閉ざされた女神山》はエルダー・テイルに実装されているダンジョンの中でも屈指の難易度を誇ることから、一合目の《アブダの岩場》、二合目の《
ゆえにか・みが自らイエティを倒さない限り、奥へ奥へと進み続けても一合目の出口に辿り着くまでモンスターは出現しない。つまりただ攻略する分には十分でも、肝心のレイドバトル要素が排除されてしまっているわけだ。
「ディーヴァヴェーダ・ネットワーク*1め……ソロプレイヤーを舐めすぎると痛い目見るよ」
自業自得にも気付かず、八つ当たり気味にイエティへの反撃を開始した