日付が変わり、雲が晴れて日が昇る頃。日本サーバーの舞台である弧状列島ヤマト南部を占める《ナインテイル自治領》*1から更に南、《フィジャイグ》*2最大の都市《アコ・ナハ》*3に【か・み】の姿はあった。
特に目的があるわけではない。大きなイベントがあるわけでも、またクエストに挑みに来たわけでもない。
《禊神島ムナカタ》*4の時間帯限定クエストである〈三女神の禊祓〉を攻略した後、ただの気紛れで《ナカス》*5から南へ下り、さらに《火山島カラスス》*6と《森林島イヤク》*7を経由してここに来て、何の理由もなくぶらついていただけである。
「たまには、こんな何でもないことするのもいいね」
だが当然ながらプレイヤーたちがエルダー・テイルの世界を冒険する目的は個人によって違う。
ダンジョン攻略に邁進する者、アイテムの収集に躍起になる者、モンスターとの戦いに情熱を注ぐ者、ひたすらロールプレイを繰り返す者、あるいは他のプレイヤーと繋がりを持つことを目的とする者。
そして
「……人生の道中は、どこにでもあるんだよね」
エルダー・テイルそのものを自身の人生とすることだ。他のプレイヤーや大地人とのやり取りこそ皆無に等しいという状態ではあるが、ただ生きるよりも遥かに多くの楽しみや発見がある。
無論仮想の世界であるゲームでも全ての事象が都合よく運ぶような事は断じてあり得ない。この不確定要素も
と、か・みに街をうろつかせていた
「少し休憩しよ」
朝食を作るために机を離れる前にか・みをすぐ近くにあった食事処のゾーンへと移動させ、出入り口すぐのカウンター越しに向かい合う【大地人】にカーソルを合わせた。
『いらっしゃいませ!お食事でしたらまずお席へどうぞ!』
吹き出しの文章の下に選択画面が現れるが、迷いなく[食事]を選んで指定席へと向かう。そしてお品書き画面が表示されたのを確認すると、そのままパソコンを離れて台所へと向かった。