(仮題)エルダー・テイルのソロプレイヤー   作:御代川辰

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プロローグ・下

 日付が変わり、雲が晴れて日が昇る頃。日本サーバーの舞台である弧状列島ヤマト南部を占める《ナインテイル自治領》*1から更に南、《フィジャイグ》*2最大の都市《アコ・ナハ》*3に【か・み】の姿はあった。

 特に目的があるわけではない。大きなイベントがあるわけでも、またクエストに挑みに来たわけでもない。

 《禊神島ムナカタ》*4の時間帯限定クエストである〈三女神の禊祓〉を攻略した後、ただの気紛れで《ナカス》*5から南へ下り、さらに《火山島カラスス》*6と《森林島イヤク》*7を経由してここに来て、何の理由もなくぶらついていただけである。

 

「たまには、こんな何でもないことするのもいいね」

 

 将助(まさすけ)は南国情緒豊かなアコ・ナハの街をアバターに散策させながら、少し眠たげにそう呟いた。エルダー・テイルというゲームにあって、プレイヤーの分身である冒険者の存在理由は共通して《セルデシア(Theldesia)》各地を冒険することである。

 だが当然ながらプレイヤーたちがエルダー・テイルの世界を冒険する目的は個人によって違う。

 ダンジョン攻略に邁進する者、アイテムの収集に躍起になる者、モンスターとの戦いに情熱を注ぐ者、ひたすらロールプレイを繰り返す者、あるいは他のプレイヤーと繋がりを持つことを目的とする者。

 そして将助(まさすけ)がこのエルダー・テイルを遊ぶ目的は……

 

「……人生の道中は、どこにでもあるんだよね」

 

 エルダー・テイルそのものを自身の人生とすることだ。他のプレイヤーや大地人とのやり取りこそ皆無に等しいという状態ではあるが、ただ生きるよりも遥かに多くの楽しみや発見がある。

 無論仮想の世界であるゲームでも全ての事象が都合よく運ぶような事は断じてあり得ない。この不確定要素も将助(まさすけ)にとっては障害にはなり得ないのだ。

 と、か・みに街をうろつかせていた将助(まさすけ)だがここで腹の虫が鳴いた。一晩中プレイし続けていたために食事を忘れていたのだ。

 

「少し休憩しよ」

 

 朝食を作るために机を離れる前にか・みをすぐ近くにあった食事処のゾーンへと移動させ、出入り口すぐのカウンター越しに向かい合う【大地人】にカーソルを合わせた。

 

『いらっしゃいませ!お食事でしたらまずお席へどうぞ!』

 

 吹き出しの文章の下に選択画面が現れるが、迷いなく[食事]を選んで指定席へと向かう。そしてお品書き画面が表示されたのを確認すると、そのままパソコンを離れて台所へと向かった。

*1
現実の九州地方

*2
現実の沖縄・琉球諸島

*3
現実の那覇市

*4
現実の福岡県沖ノ島

*5
現実の福岡市

*6
現実の鹿児島県桜島

*7
現実の鹿児島県屋久島

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