(仮題)エルダー・テイルのソロプレイヤー   作:御代川辰

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海渡り、船渡し

 《フィジャイグ島》最北端の村、《ククチブル》*1から更に北に向かうと、《ヘドの岬》*2という特殊なゾーンがある。

 なぜ特殊なのか、その理由は……

 

「御乗船の皆様へお知らせします。本船は《蛇神島アマミ・ナゼの港》*3を経由して《森林島イヤク・パレスコーヴの港》*4まで運行します」

「料金は金貨200枚の後払いとなります。お席にご案内しますので、一列にお並びの上乗務員の指示に従って乗船してください」

 

 《ナインテイル自治領》にも《フィジャイグ島》にも所属しない、いわゆる第三者である海賊たちが運営する定期運行便が寄港する完全中立地帯であることだ。

 この《ヘドの港》は人口100にも届かない小さな港町だが、五大都市のような規模の大きな街と同様一切の戦闘・略奪行為が禁止されている。

 禁止事項を破ったプレイヤーが即座に衛兵の攻撃を受けるのも共通しており、僻地同士の交易の要としての役割を担っているのである。

 

「お客様!間もなく出港します!船が揺れますのでお近くの席に着いてお待ち下さい!」

 

 護衛役の海賊の一人が、手すりに肘をついて海を眺める【か・み】に声をかけた。しかしか・みはどこ吹く風とばかりに手すりから離れ、心地のいい潮風にあたりながら甲板へと移動していく。男でありながら余りにも妖艶な足運びと、風に揺られる髪の(なまめ)かしさ、何よりも見目良く穏やかなその童顔に、海賊は思わず息を飲む。

 

「いいお日和(ひより)ですね」

 

 声を返されてはっとした男は、見とれていたことをごまかすようにわざとらしく咳払いをした。心なしか頬は紅潮し、羞恥心を煽られているようだ。

 

「お客様、どうか船内のお席に着いて到着をお待ち下さい」

 

 先ほどの失態もあって緊張しているらしく、顔は汗だくで表情は強張(こわば)り、さらにぎこちない物言いも相まって、とても海賊として(さま)になっていない。

 

「今お客様が(おっしゃ)られた通り、確かに本日は快晴です。しかし風は強く波も高く立っておりますので、お客様の身の安全のためにも客室にお戻り下さい」

 

 いくら海賊と言えど、無法者ではあっても無秩序と言うわけではないらしい。“海の男”としてそのように教育されているのだろうか、それとも彼ら自身の海賊としての誇りからか、およそ自分に課せられた任務への責任感が強いことを窺い知ることができる。

 

「そっか。ありがと」

 

 答えると同時に錨が持ち上げられ、大きく広げられた帆に風を受け、ついに船が進み出す。

 目指すは《蛇神島アマミ・ナゼの港》。

*1
現実の沖縄県国頭村

*2
現実の辺戸岬

*3
現実の鹿児島県奄美大島と名瀬港

*4
現実の屋久島宮之浦港

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