新生活慣れなくって時間足りなさすぎるっぴ!
書きたい話多すぎて脳と手と時間が足りないっぴ!
この辺からキョーくんのヤバさが見え隠れしてくるっぴ!
ていうか、気がついたら自分で決めた期限過ぎてたっぴ!
本当に申し訳ない(CV:後藤家父)
撮影ついでに利用できる上にひとりの高校が近いということもあり、六苦ヒーローも「STARRY」を拠点として活動することとなった。そういう訳で、現在、俺とひとりは六苦ヒーローの今後の活動方針について話し合う予定だったのだが………自ら主張することが極端に苦手なひとりの為、代わりに予定を合わせるという名目で結束バンドとの合同会議となってしまった。折角、ひとりと2人きりになれるチャンスだったというのにお邪魔虫め………まさか、このまま済し崩しの形で「六苦ヒーロー」を吸収合併させる気じゃないだろうな?
「えっ!?キョーくん陽東の芸能科なの!?」
「撮影で休んでも公欠どころか課外実習扱いで単位が貰えるからな。都合の良いことこの上ない」
俺が通っている陽東高校は日本唯一の芸能科を有する学校だ。偏差値自体は高い方では無いものの、芸能科というだけあって芸能活動に寛容で理解があるので助かる。また、アイドルだのモデルだのがうじゃうじゃ居る魔境染みた環境なので役者が混じっても目立たないのも都合が良い。
「いや、都合がいいって………もっと他に無いの?有名人いっぱい居るしテレビとかレーベルの人も出入りしてるんでしょ?」
「教材とチャンスが沢山あって都合がいい」
「有名人………音楽関係の人はいる?」
「音楽関係はアイドルとかが多い。他は有名所だと不知火フリルが居るな。ロックバンドは俺の知る限りでは居ない………探そうか?」
「是非」
「リョウは変なお願いしないの!ほら、ちょっと世間話しちゃったけど話し合い始めるよ!ぼっちちゃんが話に入れなくて溶け始めちゃった」
結束バンドのドラムは切り替えるように指示を出した。1番最初に世間話を始めたのは彼女なのだが、此方としても早く本題に入れるのは都合がいいので黙っておく。雄弁は銀、沈黙は金だ。
「結束バンドとしてはやっぱりボーカルが欲しいね、本当は逃げたギターがボーカルもやる予定だったんだけど………」
「六苦ヒーローはドラムが欲しいところだ、2ピースバンドというのも悪くない………いや、寧ろいい!だが、ギター・ベースと揃っているのだからドラムは欲しい。だったよな?ひとり」
「はっ、はい!早くメンバー集めてライブがしたい………です」
ひとりと2人きりというシチュエーションは抗い難い魅力があるので、俺としてはこのまま2ピースバンドでも一向に構わない。のだが、他ならぬひとりが以前よりメンバーを集めてバンドがしたいと望みを口にしていた。ならば、優先されるべきはひとりの願いだ。俺の人生は半分が役者業、半分がひとりで出来ている。
とはいえ、六苦ヒーローのドラムにしろ結束バンドのボーカルにしろ当てがないのではどうしようもない。結局、その日は練習の日取りの打ち合わせだけに終わった。
如何にに陽東高校がさほど偏差値の高い学校でないといえど、如何にタレント業が本業の芸能科といえど、高等生である以上は相応の勉学が強いられる。だが、俺は全くと言って良いほど勉強が出来ない。諺に天は人に二物を与えずという言葉があるが、俺は演技と音楽の二つしか無い。
「う゛ーあ゛ー」
演技と音楽以外はレッスンの恩恵で運動神経が割と良いぐらいで、基本的にポンコツもいいところな俺にとって学校の勉強は悩みの種。サイゼリヤでノートと教科書を広げたはいいものの、毎度の如く鉛筆は1ミリも動いていない。もう、何に躓いているのかさえ分からない。
「高校は中学と違ってエスカレーターじゃない。だからこそ、役者業とバンド活動を守る為にも真面目に備えなければならぬというのに・・・・・・・・・」
危機感とは裏腹に、俺の心はベースを弾いたり、台本を読み込んだりしたいと訴えてくる。
試しに頭がいい人の役作りをしたりしてはみたが、いくら役を作ったところで役者である俺本人の脳に英知が備わる訳では無く、演じる役と現実のギャップに頭を抱えることになった。
「も、もしや、そこに居られるのはもしや京極氏っ!?京極氏ではありませんかなっ!?」
そんな焦燥感ばかりが募る時間を打ち破ったのは、少々奇怪な話し方をする見慣れない人だった。ウェーブのようにも見えるブラウンの癖毛えを一つ結びに纏め、観光地の美しい海を思わせるオーシャンブルーの瞳にキリッとした中性的な顔立ちは宝塚の男役にも似ている。いや、これは化粧でそう見せているのか。服は結束バンドのドラムとベースが着ていたモノと同じ下北沢高校の制服だが、下は男子用の長ズボンを履いている。
胸には女性特有の膨らみがあり、骨格も顔立ちも間違いなく女性のモノだ。だが、中性的な顔立ちに寄せている化粧といい、奇怪な話し方といい、制服でありながらズボンを履いていることといい、更には立ち振る舞いや声の抑揚も男性のそれに矯正されている・・・・・・・・・彼或いは彼女は複雑な事情を抱えているのかもしれない。
謎の学生は熱烈なファンが芸能人に向けるようなキラキラとした憧れの表情を此方へ向けて来るが、生憎、俺には全くと言っていいほど心当たりがない。役者としてはエキストラばかりで目立つ役は仮面騎兵ヴォイスの金守響一郎役があるものの、そもそもまだ放送前の番組だ。バンドとしても多くの人の前でライブをしたのは中学の文化祭で一回だけ、中学は下北沢とは遠い場所にあったのでこんなところにまで名前が轟いているとは思えない。というか、そもそもバンドではベースヒーローとしか名乗っていない。
「ああ、拙者は怪しい者ではありませんぞ!拙者、京極氏と同じ中学だった者でしてな、六苦ヒーローのライブに心を打ちぬかれた………云わば、古参ファンというやつですぞ!」
「だったら何で下北沢に居る?毎日通学で2時間近くかかるような場所だぞ?」
「進学の際に京極氏やひとりたんと同じ高校に行きたいと担任に伝えたのですが、お2人の進学先は教えて貰えず、仕方なしに近くの高校に進学したはいいものの京極氏もひとりたんも居らず、如何したものかと悩んいますと下北沢に挙動不審な桃色ジャージの少女が現れたとの目撃情報がありましたので、追っかける形で転校することにしたのですぞ」
「オマエ ひとりノ ストーカー?」
「ひっ、否定は出来ませぬが、拙者は純粋な六苦ヒーローのファンですぞ!ひとりたんの王子様は京極氏以外ありえませんからな!京ひとは最強最高のカップリングですぞ!」
「………なら、いい。だが、あまり人の足跡を追跡するのは褒められたことでは無いぞ」
「ごっ、御忠告心に刻ませて頂きますぞ………」
必死の弁明を聞いてどうにか自我を取り戻すと、無意識の内に手に握っていたカッターナイフの刃を仕舞って筆箱へと戻す。ひとりの王子様は俺だけ………最強最高のカップリング………ッ!!や、やっていることは完全に質の悪くストーカーのソレだが、中々どうして見る目はある奴だな。うん。
「そういえば、名乗るのが遅れましたな。拙者の名は柊ひじ・・・・・・・・・聖十郎ですぞ、気軽に聖十郎と呼んで欲しいですぞ!」
「分かった、それで聖十郎の要件はなんだ?サインはまだ考えてないが、名前を書くだけでいいなら書いてやるが………」
「そっ、そんな滅相も無いですぞ!!拙者はただ偶然お見かけしたので声をかけたまで・・・・・・・・・」
六苦ヒーローのファンだと言ってくれるのなら多少ファンサしてやるのもいいだろう。そう思っての提案だったが、聖十郎は何処かやり辛そうに言い澱みながらブンブン首を振って固辞した。単純に欲しくない・・・・・・・・・というには少し様子がおかしい。まるで、受け取ることに不都合があるかのような断り方に不思議に思っていると、グゥ~~~~~!!と腹の虫の鳴声が店内に木霊する。
聖十郎は酷く赤面しながら、ボタンを押して店員を呼んだ。
盛大に腹の虫が鳴いたにも関わらず、聖十郎はドリンクバーだけを注文して空腹を誤魔化すように何度もジュースを入れに行っては飲み干してを繰り返していた。未だ金欠気味の俺でさえハンバーグを食べた後だというのに、どれだけ懐に余裕が無いんだ?
「・・・・・・・・・や、やっぱり、ドリンクバーしか頼まないのは気になりますかな?」
「周りからすれば奇異の目に映るだろうな。店側も表には出さないが気分は良くないだろう」
「でっ、でしょうなぁ。しかし、拙者の懐は余り余裕が無く・・・・・・・・・」
「ドリンクバーで飢えを誤魔化すのは相当だぞ?」
他人にタカリに行かない分、廣井さんや山田といった屑ベーシストどもよりは余っ程マシだが、ファミレスのドリンクバーで飢えを凌いで生るのも相当酷い。
「いやぁ、その、お恥ずかしい話、拙者実は家出中の身でしてな」
「まぁ、深くは聞くまい。その身体で男で居続けるのも大変だろう」
「バレていましたか・・・・・・・・・お察しの通り、拙者は性同一性障害という奴でしてな。身体は女の子のソレですのに、拙者の心は男なのです。しかし、拙者の実家である柊の家は旧家というやつでして・・・・・・・・・・伝統といえば聞こえは良いのですが、少々古く臭い考え方が残る家なのです。」
「で、女性を押しつけられるのに耐えかねて家でしたと?」
まぁ、ありがちな話だ。だが、当事者である聖十郎からすると堪ったものではないだろう。演技が仕事の役者でさえ、四六時中役を演じている訳ではない。しかし、聖十郎は自らの意思に関係無く異性を演じることを強いられたのだ。1秒足とも休むことが許されない舞台に生まれた時から立ち続けることが、一体どれほどの苦行だろうか?他人である俺には想像することしか出来ない。
「まぁ、そんなところですな。拙者はあの文化祭のライブで2人のヒーローに自分の生き様を貫く強さを教えて頂いたのです。そんなヒーローたちに少しでも近づきたくて、男らしい格好やドラムをするようになってから家の者たちの反発を強く買うようになり・・・・・・・・・先日遂に追い出されたのです」
「俺たちの所為だって言いたいのか?」
「とんでもありませんぞ!!拙者は感謝しているのです。己を偽って女として振る舞う毎日は非常に息苦しく、あの頃の拙者は息をしているだけで生きてはいませんでした。お2人が・・・・・・・・・六苦ヒーローが拙者に命をくれたのです。怨み事など如何して言えましょうか?」
俺たちのライブが切欠で家を追い出されて生活に困窮しているというのは聞き方によっては文句のように聞こえなくも無いが、見た限り聖十郎は本気で感謝しているようだ。だからこそ、余計に見捨てるのは目覚めが悪い。俺にとってもひとりにとっても初めてのファンなのだ、何の憂いも無く次のライブもその次のライブも聴きに来て欲しい。ので、ロックバンドらしく節介を焼いてやることした。
「今、ドラムは持ってるのか?」
「持ち出したいのは山々だったのですがドラムは気軽に持ち運ぶにはサイズが大きく・・・・・・・・・」
「なら、先ずはその調達からか。よし、借りに行くぞ、付いて来い」
「か、借りに行く?一体何処へ?それにドラムを借りて何をさせるお積もりですかな!?」
「決まってるだろう、言いたいことはロックで語るんだよ」
次のライブの予定を立てるため、俺は聖十郎を引っ張って「STARRY」を目指して歩き出す・・・・・・・・・よりも前に会計を済ませにレジへ向かった。
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