ひーろー・ざ・ろっく   作:星宮 星雅

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 本話は書いたはいいものの自信が無く、何度か書き直そうかと悩んでいる間に話数が来てしまった話です。
 
 所詮はにわか作者のやることなので生暖かい目で見てくれると助かります。

 


 追伸、「ぼっち・ざ・ろっく!の舞台、神浜説という新説をハーメルン学会に発表しました。


しんてんち・ざ・ろっく 聖十郎編

 拙者の生まれた柊家は古くは武士の家系だそうでして、その名残なのか石垣を積んだ上に無駄に大きな日本屋敷をデンッ!!と建てています。イメージ的にはアニメ映画・サマーウォーズの陣内家に近い建物ですな。見かけは立派ですが、そこに住んでいるのは脳味噌に黴が生えた化石のような人間ばかり。

 

 「なので京極氏やひとりたんが緊張するようなことは・・・・・・・・・」

 

 「バンド組んだからって調子に乗ってごめんなさい・・・・・・」

 

 「もぉ~っ!ひとりはしょうがないなぁ~!!ほらっ、背中に隠れていいよ~!!」

 

 「うん、2人とも何時も通りですな!」

 

 持ち前の卑屈さを発揮して地面に転がって丸まるひとりたんを、京極氏が「しょうがない」と言いつつも滅茶苦茶嬉しそうな笑みを浮かべながら肩を貸して起こしています。本来であれば異様な光景ではありますが、中学でお二人の姿を見ていた身からすると何時も通り過ぎて安心感すらある光景ですな。

 

 「拙者の家の問題なのですから無理をしてお2人が無理をしてまで来ることはありませんぞ?ひとりたんが如何しても苦しいようであれば帰って頂いても・・・・・・・・・」

 

 「そっ!そそそそれはダメです!ひ、ひひ柊くんがししし死んじゃいます!」

 

 「という訳だ。ひとりにここまでさせた以上、お前のバンド入りとライブは決定事項だからな」

 

 「御迷惑お掛けしますぞ・・・・・・・・・・」

 

 家出した拙者が柊家に戻ってきたのは、柊家との因縁に蹴りつけるべくライブのチケットを押しつけに来たついでにドラムを取りに来たからなのですが、やはり何度考えても頭の硬い実家の連中がロックバンドのライブに来るとは思えませぬ。思えませぬが、憧れの六苦ヒーローのお2人にここまでして貰った以上は手ブラでは帰れませぬ。気を引き締めませねばなりませんな!!

 

 

 

 白髪が何本か交じり始めた黒い髪を結い上げ、怒りに燃える瞳で拙者たちを射殺さんとばかりに睨み付ける四十代の着物の女・・・・・・・・・拙者の生みの母上は拙者の声を聞くなり薙刀を手に襲い掛かってきました。頭に黴の沸いた人だとは思っておりましたが、ここまで蛮族だとは思いませんでしたぞ・・・・・・・・・。

 

 「自分の息子を友人ごと叩き切ろうとするのが柊家の礼儀なのか?」

 

 「いえいえ、不肖の娘が他所様に御迷惑をかけぬ内に介錯して差し上げようとしただけですわ」

 

 ひとりたんが恐怖のあまり粘液になってしまい、激怒した京極氏は何処からか持ち出したカッターナイフで薙刀と鍔迫り合っています。この作品、本当にまんがタイムきらら原作ですかな?

 

 「騒がしい、一体何事ですか?」

 

 睨み合う2人が作り出した緊張状態を破ったのは、母上を更に数十歳老けさせたような老婆・・・・・・・・お婆様でした。母上のように怒りの分かる激情を露にするのでは無く、人間に向けているとは思えないような冷たい視線に見つめられると柊家で過ごしてきた毎日の恐怖が蘇ってきます。

 

 京極氏やひとりたんに恥じない男になると・・・・・・・・・そう誓った筈ですのにっ!!

 

 「聖、もう帰ってきたのですか?ですが、これで分かったでしょう。貴女が言うような戯言が通るほど世間は甘くはありません。分かったなら、お稽古に戻りますよ。今までの遅れを取り戻さなければ・・・・・・・・・」

 

 「しっかりしろ、聖十郎っ!!お前は()だろうっ!?」

 

 京極氏が拙者の為に「男だ」と呼んでくれています。

 

 「えっ、ええと、あの、その、えっと・・・・・・・・・」

 

 スライム状のまま、ひとりたんが必死に何か言葉をかけようとしてくれています。

 

 「せっ、拙者は・・・・・・・・・拙者は・・・・・・・・・」

 

 だというのに、拙者は何時までも煮え切らない答えしか出せぬまま・・・・・・・・・

 

 やはり、拙者は女として生きるないのでのでしょうか?柊家の令嬢、柊聖として生きるしか無いのでしょうか?そんな不甲斐ない諦念が頭を埋め尽くしかけたその時、京極氏が拙者と御婆様の間に飛び込んできました。薙刀との鍔迫り合いを放棄したのか、カッターナイフを握っていた腕には決して小さくない切り傷が・・・・・・・・・っ!!

 

 「きょっ!京極氏っ!?う、腕から血が・・・・・・・・・っ!!」

 

 「大丈夫、切り傷の1つぐらいロックで済む!」

 

 「それは流石にロックを便利遣いしすぎではありませんかな!?」

 

 「そんなことより!・・・・・・・・・・悪かったな、実態も知らないのに軽々しく実家と話し合えなんて言って、無駄にお前を傷つけちまった。」

 

 ひとりたんが粘液のまま弾け飛んで動かなくなり、拙者も思わず眼を逸らしそうになるほどの血を流しながら、それでも京極氏は拙者のことを考えてくれていました。

 

 ひとりたんに向けている狂愛といい、合ったばかり拙者の為にここまでしてくれることといい、京極氏は本当に愛の人ですな。そして、そんな京極氏とひとりたんの演奏だから、きっと拙者は憧れたのです。

 

 京極氏、ありがとうございます。危うく、また己を見失うところでしたぞ

 

 「御婆様、御母様、拙者は柊家には戻りませぬし、もう聖でもありませぬ」

 

 「拙者の名は聖十郎、バンド・六苦ヒーローのドラム志望ですぞ!」

 

 真っ直ぐ前を見据え・・・・・・・・・るのは怖いので目を逸らしながらですが、それでも京極氏とひとりたんに顔向け出来るように、拙者は拙者自身の願いを柊の家に叩きつけます。

 

 「貴女、何を言って「ここに来たのは、拙者の意思を叩きつけるためにチケットを持って来ただけですぞ。ですが、其方に耳を貸す気が無いならチケットは要りませんな!!帰りますぞ!!」ま、待ちなさい!聖っ!!そんな勝手なこと許されると思ってるの!?」

 

 初めて表情を怒りから困惑に変えた母上の言葉を遮って被せるようにして用件を告げ、拙者は京極氏と一緒に飛び散った粘液状のひとりたんを集めます。母上が何やら叫んでおりますが、最早拙者には関係の無いことですな。道端に生えている草よりもどうでも良いですぞ。

 

 「これで良かったのか?」

 

 「ええ、良かったのですぞ。初めて柊家と堂々と戦い自分を勝ち取ったのですからな。」

 

 予定とは大分違いますが、拙者は戦って戦果を得ることが出来たのです。良しとしましょう。

 

 柊家とは一先ず決着がついたので、拙者は改めて六苦ヒーローのドラムに相応しい演奏を目指して練習を・・・・・・・・・するために京極氏に借金をして新しいドラムを買い、お世話になる京極家に置かせて貰うことになりました。まったく、京極氏には頭が上がりませんな!!




 ジェンダーとはこういうことです。
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