ひーろー・ざ・ろっく   作:星宮 星雅

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 何とか日曜日に間に合わせることが出来て良かったです。

 本作は作者ですら頭を抱えることが多く、みなさんからしても「何これ?」と首を傾げるかもしれませんがどうか生暖かい目で見守っていて下さい。


ひーろー・ざ・ろっく 路上ライブ編

 路上ライブ当日、予め許可を取った場所には既に大勢の観客が集まっていた。

 

 「あわわ・・・・・・・・・あんなに人が居るなんて・・・・・・・・・それに衣装も何故か前と同じだし・・・・・・・・・」

 

 ひとりが泡を吹いて白目を剥き始めたので、視界を遮る仮面を着けさせると段々正気を取り戻してくれた。ああ、白目のひとりも可愛い。好き。

 

 「京極氏!顔がニヤけ過ぎててやばいですぞ!人に見せられる前に顔を戻さねば・・・・・・・・・」

 

 聖十郎の必死の呼びかけにハッ!と、俺は正気を取り戻した。

 危ない危ない、ひとりに引かれてしまったら俺は間違いなく精神崩壊を引き起こしてかえって来れなくなってしまうし、今日は沢山お客さんが居るから、だらしない顔は引き締めておかなければ。六苦ヒーローが頭の可笑しな集団だと思われてしまう。

 

 「Oh!本当に仮面着けてマス!仮面キャラは実在しました!」

 

 路上ライブ前だというのに何時も通りの馬鹿騒ぎをしていると、聞き馴染みの無い声が話しかけてきた。声のした方を見てみると、そこに居たのは見覚えのある西洋人女性。SICKHACKのギター、清水イライザがそこに居た。

 

 「アンタたちが六苦ヒーロー?」

 

 イライザが話しかけたことで、他のメンバーも俺たちの到着に気がついたようだ。

 清水さんに続いて確認の質問を投げかけてきたのは、ドラムの岩下志摩。又の名を廣井係。SICKHACKのリーダーにして1番の問題児、廣井きくりの保護者?のような役割をしている苦労人だ。

 

 「失礼なこと聞くようだけど、本当に大丈夫?ウチの廣井、普段はアレだけどベースボーカルとしては一流だし、SICKHACK自体結構名の通ったバンドだけど・・・・・・・・・」

 

 だからこそ、廣井の普段の駄目人間振りも実力も良く知っている。

 自分たちの実力と立ち位置をよく知っているからこそ、まだまだ立ち上げたばかりの六苦ヒーローが本当に廣井に・・・・・・・・・SICKHACKについていく姿が想像出来ないのだろう。清水さんの心配は尤もだ。

 

 「大丈夫だよ~!六苦ヒーローの演奏けっこう凄いもん」

 

 そんな清水さんに真っ先に反論したのは他でもない廣井だった。

 

 六苦ヒーローは一瞬とはいえ、既にテレビデビューが予定されているバンドだ。

 それに何より、六苦ヒーローには後藤ひとり(ギターヒーロー)という女神にも等しい至高のリードギターと、長年一緒に練習を重ねてきた(ベースヒーロー)、そして俺たち2人の最古参ファンにしてずっと俺たち()()を追いかけてきた柊聖十郎(ドラムヒーロー)が居る。

 確かに立ち上げたばかりのバンドだが役者は充分、簡単に食われやる気はサラサラ無い。

 

 「まぁ、そういう訳です。俺たちは確かに新人ですけど、簡単には食われてあげません」

 

 俺は宣戦布告を叩きつけると、直ぐさまライブの準備に取りかかった。

 

 

 

 路上ライブのセットリストはターン制バトルのように六苦ヒーローとSICKHACKが順番に演奏していき、ラスト1曲だけ両バンドのコラボ演奏をするという形式だ。

 先行はSICKHACK、曲は十八番のサイケデリックロック。ドラッグ等による幻覚を再現したと呼ばれるジャンルの音楽だが、流石は四六時中酒で脳が茹で上がった廣井率いるSICKHACK。

 怪しく、不可思議で、不条理で、意味不明なのに何故か惹かれてしまうサイケの世界を見事に創りあげている。廣井の案内で曲の世界にやってきたみたいに、段々と気分が高揚してきて観客たちのように叫びだしたくなって来たほど。

 

 自分で歌っている時も感情移入しすぎて泣いたり怒ったりしている俺自身の感受性もあるだろうが、ここまでサイケの世界に魅了させるのは他ならぬSICKHACKの力に他ならない。

 己を見失うこと無く曲に思いを馳せているギター、サイケらしく不条理で不規則な音を一つ一つ正確に捕まえているドラム、それらを観客ごと統率して魅せる廣井のカリスマ。分かってはいたが、どいつもこいつも実力派の化物ばかりだ。

 

 まぁ、六苦ヒーローの演奏が劣っているとは欠片も思わないけどな。

 

 

 

 SICKHACKの1曲目が終り、続け様に俺たち六苦ヒーローの1曲目はひとりへの愛を歌ったラブソング「遙か・彼方・シンデレラ」だ。

 孤独とコンプレックスを抱えて鬱屈とした日々を送る「(ひとり)」に、君も素敵なお姫様なんだと叫ぶために作曲した曲だ。ひとりへの想いなら幾らでも綴れる。

 嘆きの絶叫を響かせたように鮮烈なギターは圧倒的な技巧を以て「叫び」を「音楽」へと昇華させ、生真面目で情熱的なドラムは拙いところもあるが何とかギターとベースのリズムに着いて行っている。聖十郎は新人だが、六苦ヒーローの音楽に着いて行くことだけを目標に練習してきただけあって、六苦ヒーローの音楽をよく分かっているのだ。

 勿論、俺の方も絶好調だ。「遙か・彼方・シンデレラ」はひとりへの思いを綴った歌、常時ひとりへの愛に狂っている俺からすれば感情移入の必要すら無い。生の自分の想いを音に載せれば、それだけで曲の世界を創り出せるっ!!

 

 「う、うぉぉぉぉぉーーーーっ!!」

 

 演奏が終る。1時の静寂が訪れたかと思えば、観客たちの歓声が路上へ響き渡った。

 仮面越しに互いの方を向いて、俺たちはくしゃりと笑い合った。あっ、ひとり可愛ぃ・・・・・・・・・。

 

 「あの仮面の子たち誰だっ!?SICKHACKに負けてねぇじゃねぇかっ!!」

 

 「凄いな。正直、舐めてたがここまでか」

 

 「歌うっまっ!!先輩と良い勝負じゃん!!」

 

 「音楽始めて未だ3年、しかもベースと演技と並行しながら。悔しいけど、音楽に関しては私たちより完全に格上の実力者ね」

 

 聞こえてくる観客の声も、概ね好評のようで一安心。

 あっ、星野兄妹と有馬さん本当に来てくれたんだ。正直、みんな忙しいから余り期待してなかったんだが・・・・・・・・・下手をしなくても観客席の方が豪華メンバーだな。演者側として益々下手なロック出来なくなったな。

 

 よく見渡してみると、結束バンドの面々もやって来ている。・・・・・・・・・何、手振ってるんだお前等?ひとりが身バレしたらどう責任とる気だ?あ?(嫉妬)

 

 『いぇーい!カス共とそれ以外のみんな盛り上がってるー?』

 

 俺が嫉妬に駆られていると、廣井がマイクを手にMCをやり始めた。

 路上ライブの上に合同ライブなのでSICKHACKのファン以外も大勢居るのだが、廣井は何時ものように観客席のファン(カス共)に呼びかけていた。というか、それ以外呼ばわりは失礼だから止めろ。六苦ヒーローのファンも居るかもしれないんだぞ。

 

 『今日のライブはSICKHACKと六苦ヒーローの合同路上ライブ!みんな楽しんで言ってね!』

 

 ベテランなだけのことはあるのか、廣井も真面目にMCが出来るようだ。普段のSICKHACKのライブでの暴れっぷりを知っているから不安だったが少し安心した。

 

 『両バンドのライブチケットも売るから、絶対買って帰ってよ!じゃないと踏むから!』

 

 前言撤回、チケットは買って欲しいが客を脅すな。

 

 『隣の酔っ払いのことは忘れて下さい。勿論、買って貰えたら嬉しいですが、帰らなくても誰も踏みませんので』

 

 仕方が無いので、MCに参加して廣井のフォローに回ることにした。

 

 『もー、ベースヒーローくん硬いなー?別にお客さん踏んでも大丈夫だよ、私ライブでしょっちゅうやってるし』

 

 『変態バンドと呼び声高いSICKHACKのファンと、路上ライブに集まった一般の方々を一緒にしないで下さい。六苦ヒーローに変なイメージがついたら貴方の所為ですからね?』

 

 『変な仮面付けてる時点で今更じゃない?』

 

 『覆面バンドぐらい何処にでもあります。というか、こんなべらべら喋ってたらお客さんが暇するだけです。早く次の曲行きましょう』

 

 『はーい!それじゃあ、次は六苦ヒーローの新曲2曲目「不条理の国のアリス」から!!』

 

 廣井の振りに合せて俺は背後から聞こえてくるギターとドラムに耳を傾けながらベースをかき鳴らし、心の中で不条理の国を創造し始めた。





 後書きオマケ 新曲「遙か・彼方・シンデレラ」の歌詞

 
 「遙か・彼方・シンデレラ」

 作詞:ベースヒーロー
 作曲:ギターヒーロー
 


 暗がりで一人歌ってる 君の声は跳ね返って
こんな夜はもう嫌って涙を流してさ

水底で二人叫んでる ボクら声を聞くだけで
こんな海はもう嫌って嘆きが溶けていく

遙か・彼方・シンデレラ 君はまだ灰被りだ
きっと・君も・お姫様  ボクはもう知っているさ

モノクロで二人生きてる 愛に飢えて彷徨いゆく
こんな色はもうダメって光を探してさ

ボクだけの恋を捧げる 一人ぼっち愛を歌う
こんなザマはもうダメって全部作り替えてさ

遙か・彼方・シンデレラ 君はもうお姫様だ
俺には分かるから歌うんだ、舞踏会はもうスグだ。

君が叫べる場所に全部作り替えるから
それでいい 灰被りで 君はお姫様になれるさ

遙か・彼方・シンデレラ ここはもう舞踏会だ
君にも見えるから叫べよ ここはもう君の舞台

願い 叫べ 鳴らせ 激情のレクイエム
この歌を捧げよう
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