先週は申し訳ありませんでした。
正直な話、遊んでいました。艦これのSS読み漁っていました。
六苦ヒーローはま今回でライブ3回目でバンドとしては駆け出しのルーキーだが、SICKHACKというインディーズでは名の知れた有名バンドとの合同路上ライブで集まったコアな音楽ファンたちの心を掴むことが出来たらしく、更に観客の1人が撮影した映像がSNSを通じて大きな話題を呼んでいるらしい。
その結果、荒れ狂う嵐にも関わらず、STARRYには数多くの観客が集まった。
舞台裏から何時もの仮面越しに観客たちの姿を見ながらガタガタと振えていたひとりを何とか励まそうとしていた筈の俺は気がつけば気を失っていた。ただ、凄く幸せなことがあったような気がするのは単なる気のせいでは無いだろう。
「京極氏、ひとりたん、そろそろ時間ですが調子の程はどうですかな?」
「ああ、もう大丈夫だ。不思議と心が幸せでな、今なら何でも出来そうな気がする」
話に入ってこないと思えば、1人で曲のドラムを叩いて曲の流れを確認していたらしい。いや、俺たちもリハーサルはちゃんとやったのだが、それよりもひとりの様子が気になってフォローの方を優先してしまった。お陰で多少は落ち着いたみたいだが、俺は一体何を言ったのだろうか?
「きょ、キョーくん!!わ、私、キョーくんみたいになれるように頑張るね!!」
本当に俺は一体何を言ったのだろうか?
観客達の視線がステージ上の俺たち3人に集中する。
文化祭の時は誰も知らない無名の2人で、仮面騎兵ヴォイスの時は撮影だから関係者しか見ておらず、路上ライブの時はSICKHACKを見に来たファンが殆どだった。だが、今回は六苦ヒーローのライブに来た観客たちに演奏をする。正真正銘、最初から最後まで俺たち3人が主役のライブだ。カメラを向けられなれている俺ですら緊張に身体が少し強ばるのを感じるのだから、舞台慣れしていないギターヒーローやドラムヒーローに掛かっている重圧は相当な物だろう。
だから、今日は2人を引っ張るのが俺の役目だろう。
ベースの調子を確かめて、弦をかき鳴らして音楽を鳴らす。1曲目は文化祭ライブで発表した「海底の
こういう時、1番避けなければならないのは焦りから自分を崩すこと。練習通りで良い、何時も通りでいい、安定して自分が今出来る最善のパフォーマンスをすることが大切だ。どの道、漫画の主人公では無いのだから都合良く覚醒して普段以上のパフォーマンスをすることは出来ない。普段通りでも最高の舞台を作れるようになる為に、俺たちは普段から練習を重ねるのだ。
「・・・・・・(ニコッ)」
2人の様子を確認しようと思い視線を横へやると、ギターヒーローと目が合った気がした。
本番前にガタガタ震えていたのが嘘のように、ギターヒーローは「大丈夫」とでも言うような笑みを浮かべて得意の演奏を響かせる。それは絶叫のように鮮烈で、熱狂のように熱烈な、願いを歌うヒーローの歌。どんなに屈辱にまみれても決して他者を傷つけようとはせず、自分の願いを持ち続けながらも、誰かのために歌える君は美しい。
好き、大好き、愛してる。何度繰り返しても足りることは無い。だから・・・・・・・・・
「【つらぬけ 知ったことか これが最高な 海の鼓動のリズム】」
だから、何時か胸を張って思いを伝えられる日が来るまで、曲としてメロディーに乗せなくても自分の心で「愛してる」と言える日まで、俺は君の歌を歌い続けよう。
2曲目は路上ライブで発表した「不条理の国のアリス」。不条理極まりない世界の中で、
ギターヒーローは大丈夫そうに見えたがドラムヒーローはどうだろうか?ドラムヒーローは俺もギターヒーロー認める努力家だが、ドラムを始めた切欠が嬉しいことに六苦ヒーローの文化祭ライブの為、ドラム歴が俺とギターヒーローのベース歴・ギター歴も浅い。勿論、ドラム歴=演奏の腕という訳ではないし、そもそもドラムヒーローは幼少期から琴を習わされていたらしいので音楽歴自体が俺やギターヒーローよりも長い。路上ライブでもリハーサルでも何とかついてこれていたし、今も後ろから聞こえてくる音に特段可笑しなところは無いが・・・・・・・・・
「・・・・・・・・・(ニイッ!)」
不自然に見えないようにメロディーに合わせて身体を動かしながらドラムヒーローへと視線を向けると、「任せろ」と言わんばかりに口角を上げて不敵な笑みを浮かべて見せて、スティックを振るいドラムの音を響かせる。それは機械仕掛けのように生真面目で、長い長い間ずっと抑えつけてきた本来の自分を解放しているかのように衝動的な、自由を歌うヒーローの歌。周囲に味方の1人も居ない環境の中、どれほど辛く苦しい道でも決して自分を捨てようとせず、運命に抗い自由を歌うお前は誰よりも誇り高い男だ。
お前が任せろというのなら、任せて信じられる。憂い無く前を向ける。だから・・・・・・・・・・
「【ウサギ 帽子屋 知ったことか! これが僕の願った夢 僕の在り方を奏でるんだ!】」
だから、俺がお前の代わりに聖十郎という男の歌を歌おう。六苦ヒーローの
俺は本当に人に恵まれたと思う。六苦ヒーローの2人は勿論のこと、鳴かず飛ばずでも見捨てずにいてくれた事務所の皆さん、俺を拾って育ててくれた監督、何か凄まじい過去に心を囚われながらも友人として接してくれたアクア、好きでも無い酒をガバガバ飲んで現実逃避しているが音楽活動に関しては良い先輩な廣井・・・・・・・・・1つでも欠けていたらと思うとゾッとする。
「みなさん、今日は俺たちのライブに来てくれてありがとうございます」
「不条理の国のアリス」を演奏し終えた後、俺はマイクを持ってMCを始める。
初手で演奏を始めるは初ライブの文化祭の時に音合わせでやって以来、MCをしない訳にはいかないが、観客はライブを観に来たのだから早く曲が聴きたいだろう。という、考えでずっと続けていることだ。といっても、まだライブ3回目だが。
「京極氏、流石に硬いのではないですかな?拙者達はロックバンドですぞ」
「平素より大変お世話になっております、六苦ヒーローです」
「京極氏っ!?」
まばらに笑い声が上がった。聖十郎のフリに乗っかった挨拶芸が上手くいったらしい。
「先程お聞き頂いた「海底の
MCもそこそこに3曲目に入る。「星座になりたい」・・・・・・ギターヒーローの作った曲。
ギターヒーロー・・・・・・・・・ひとりが曲を作ってくれたのも嬉しいが、それだけ六苦ヒーローを想っていてくれてことが何よりも嬉しい。最初にバンドを組むと決めた時から人数は増えたが、約束は何も変わっていない。俺が歌って、ギターヒーローが奏でて、ドラムヒーローが叩いて、何時か3人で本物の武道館へ行く。だから、今回はSTARRYが六苦ヒーローの武道館だ。
ベースヒーロー「お前も武道館にならないか?」
STARRY「え、あの、その・・・・・武道館ってなるものじゃあ・・・・・・」