魔法少女ほむら☆マギカ TS憑依転生人間性ガン無視ルート 作:伊勢村誠三
夏までの完結を目指して頑張って行きたいと思います。
等間隔に並んだ空き缶に、これまた等間隔に時間を置いて鉛玉が発射される。
六つ全ての空き缶が地面に落ちてカラコロと音が鳴る。
(そう言えば、子供の頃『カンカンのつみき』って言って、お父さんのビールの空き缶で遊んだっけ?)
確か暁美ほむらではない記憶を思い起こしながら、彼女は手にしたスタームルガーから空薬莢を取り出し、予備暖を詰める。
「だめね。4発目は缶に当たってないわ。
多分身体強化が上手くいってないのね。四発目の時だけ反動で腕が上がっていたから…」
後で見ていた巴先輩がカワイイ顔に似合わない辛口評価とアドバイスをくれる。
なんでこうなったかと言うと、あの日、鹿目さんと美樹さんを助けた日までさかのぼる。
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巴先輩と協力して、と言うより、ほぼ巴先輩が一人で魔女を倒した後、オレたち3人は巴先輩の家に招かれ、そこでお手製のケーキとお茶を振る舞われながら説明をされた。
魔女、人間に絶望を振りまき、そこから生まれる負の感情を喰らう怪物。
普段は結界の内側に閉じこもっており、そこに様々な方法で人間を呼び込み、使い魔や固有の能力を駆使して人間を絶望させる怪物。
「他の街に比べて行方不明者や不審死の多い街には大体魔女がいると言っても過言ではないわね」
そんな魔女を狩るのが魔法少女。
鹿目さんが助けた白い謎の獣、キュウベぇと契約し、固有の変身アイテム、ソウルジェムを手にした者たちが何でも一つ願いを叶えてもらえる代わりに、戦い続ける宿命を負うのだ。
「へー、それって美男子逆ハーレムとか満漢全席とか何でもありなんですか!?」
「ま、満漢全席って……」
「真っ先に出てくる願いがそれって幸せね」
「な~に~?そう言う暁美さんはどうなの?一体何を願ったの?」
「それはボクも気になるね。ほむら、僕は君と契約した覚えがない。
一体どうやって願いを叶えて魔法少女になったんだい?」
「……さあ?」
「さあって……」
「覚えてないのよ。私の魔法は時間に干渉して私以外、もっと正確に言えば私と私が触れているものの時間を遅くしたり速くしたりする魔法なんだけど、それで大規模な時間への干渉でもしようとして失敗したのか、過去の記憶が曖昧なのよ」
限りなく嘘は言っていない。
実際頭の片隅の2人から教えてもらってはいるが、オレ自身は覚えていなければ、その場で見ていたわけでもないのだ。
「なるほど。それは確かにボクが君を把握していなくても不思議じゃないね」
「だから調子にもムラがあるのね」
とりあえずキュウベぇの追及を逃れることには成功した。
今はまだ、頭の2人の事とか話すわけにはいかない。
「それで、魔法少女って誰でもなれる物なんですか?」
「いいえ。まず女の子であることと、更に適性がある必要があるわ」
「適正って、、」
「キュウベぇが見えるかどうかで判別できるわ」
「え?じゃあ、、」
「まどか、さやか。君たち二人には魔法少女に慣れる素質がある。
ボクと契約して、魔法少女になってよ!」
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才能があるとは言え、日曜朝にやってる女児向けアニメのような華やかなだけのものではない。
異形相手とは言え命の奪い合いには違いないし、心構えも、譲れない物もないままに契約を急がせるのも酷な話だ。
「この調子だと体験コースは来週ぐらいになるかしら?」
「どんまい暁美さん!前より外さなくなってるしすぐだって」
「だと良いんだけど」
そこで巴先輩が鹿目さんと美樹さんい提案したのが、魔法少女体験コース、一言で言えば巴先輩の戦いっぷりを見て決めてもらおうという事だ。
「それ、私も付いて行っても?」
「いいけど、あなたの今の実力じゃちょっと不安ね。
鹿目さんたちなら全く動かないでいてくれたら守るのも苦じゃないけど」
「半端に動ける方がめんどう?」
「ええ。言葉を選ばなくてごめんなさいね」
「いいですよ。実力位理解してます」
左右の声のアシストの無いオレは対して強くない。
使い魔相手程度ならともかく、魔女相手には大苦戦を強いられることだろう。
「それじゃあまずは魔法少女の戦い方の基礎からってことで、明日から暁美さんを私が訓練するっていうのはどうかしら?」
断る理由はない。
いい加減身体強化をミスして体の感覚が変になるのも解消したかったから丁度いいとさえいえる。
「鹿目さんは大丈夫?あんまり調子よくなさそうだけど」
「あ、あはは。やっぱり銃の音が怖くて……」
当然だろう。
アメリカには拳銃戦を表すスラングに『三発、三秒、三フィート』と言う言葉ある。
銃弾の応酬は三発、時間は三秒、距離は三フィート、と言う訳だ。
その理由の一つに銃声のデカさがある。
フィクションなどでは分かりずらいが、銃声とは本来耳栓をしていても普通に聞こえるぐらいの大きさで、聞こえようものならすくみ上ってしまうような物なのだ。
どこまでも平々凡々な彼女の反応が普通だろう。
(鹿目さんは難しそうかしら?)
頭に住まう者たちとは違う声がオレの頭に響く。
キュウベぇを中継局にしたテレパシーが巴先輩から送られてきた。
(無理に誘って死なれたら目覚め悪いしいいんじゃないですか?)
最も自分は目の前でぐちゃぐちゃに潰されたりしない限り翌日から普通に肉も食べれるだろうけど、と内心付け足す。
実際そうなのだ。
頭の中の2人は知らないが、自分には鹿目まどかに恩義はない。
「それじゃあ家こっちなんで」
「じゃあね、さやかちゃん」
「また学校で」
「バイバーイ」
美樹さん、巴先輩と分かれ、最後にオレと鹿目さんの2人になる。
距離にして三ブロックしかないのだが、この沈黙だけが苦手だ。
頭の中で騒ぐ声がうるさいからなるべく鹿目さんに喋って欲しいのだが、鹿目さんの方に苦手意識があるのか、向こうから積極的に来ない。
かと言ってオレが触れる様な話もない。
いや、一度料理の話題を振ってみたことがるのだが見事に続かなかったのだ。
(さて、オレも流行のマンがぐらい追った方がいいのかな?)
なんて思いながら最後の角を曲がろうとした時だった。
プロボクサーでもなかなか受けきれないような見事な右フックが角から飛び出た誰かに繰り出される。
「ぐふっ!」
視界に捉える事には成功したのだが、変身してないオレでは肉体が追い付かず、まともに食らってしまった。
「あ、暁美さん!?」
「弱いな。あいつの新しい相棒って言うからどんなもんかと思ったら、ド素人じゃないか」
『佐倉杏子……』
『佐倉さん……』
左右の声に知らされて視線をあげると、真っ赤な長い髪でポニーテールを結った少女がそこに居た。
歳は自分たちと同じぐらい。
服装はパーカーにブーツのラフな私服姿。
キャンディを舐めているのか、口の端から白い棒が覗いている。
「な、なんで急に」
「はいはい。外野はすっこんでな」
そう言って佐倉先輩は加えていた棒付きキャンディーをうろたえる鹿目さんの口に突っ込んで黙らせると、オレを覗き込む。
「お前がマミの相棒続けるんだったら、見滝原があたしの縄張りになる日もそう遠くないかね?」
「さあ、、どうだかね」
オレは左腕をかんばうように抑えながら立ち上がると、魔法少女に変身した。
変身前の腕の位置を調整したおかげですぐに取り出せたマシンピストル、MAC11を構える。
「遅いな!」
しかし向こうもすぐに変身し、銃を構えた腕を掴み上げると、二発続けて膝蹴りを叩きこみ、更に腕を捻り上げて、がら空きにした顔面に右ストレートを叩きこむ。
「暁美さん!」
「マミに伝えな。これ以上足手まとい増やすなんて無駄なことやめて自分の事だけやってなってね」
そう言って背を向けようとした彼女にオレは真っ直ぐ銃口を向けた。
「なに?まだやる気?」
「って言ったらどうする?」
へぇ、と呟いた彼女には確かな苛立ちの色があった。
今回ほむらが使った拳銃はスタームルガー回転拳銃です。
より正確に言えばセキュリティシックスと言う種類の派生のP100と呼ばれるもので、私が同じハーメルンで書いてる『人間殴ルーラーとドチートと凡夫どもが逝くFF人理修復』の主人公の一人の愛銃でもあります。
もしご興味ありましたらそちらもチェックしていただけると伊勢村が喜びます。
MAC11は極めて個人的に思い入れのある銃で、生まれて初めて買ったエアガンがこれだったので出させてみました。
お読みいただきありがとうございました!
Bパートも来週の同じ日に投下予定ですので、楽しみにお待ちください。