チュンチュン……
いつもの様に鳥の声が天宮市に響き渡る。
「……疑問。ここは?」
しかし、いつもと違う場所で目が覚めたのは
八舞夕弦だった。
少しして此処が病院だと気付いた。
その時
「あ、夕弦。目が覚めたの?」
そう言いながら部屋に入ってきたのは五河琴里だった。
「自覚。はい。今起きました…しかし何故夕弦はこんな所で眠っていたのでしょう?」
「貴方覚えていないの?」
「困惑。何をですか?」
夕弦の質問に少し驚いた琴里は夕弦に或美島で起きたことを全て話した。
「貴方は或美島で私達と出会い、ある事情で共闘したわ。でも相手の爆弾から貴方は足を負傷して……」
琴里が低く小さな声で話していると途中で夕弦は思い出したのか琴里にまた質問をしてきた。
「疑問。左之介は?私と一緒に爆発に巻き込まれた筈…」
「えっと……それは…」
琴里の反応は誰が見ても良い反応とは思えない反応だった。
琴里が真実を話すのを渋っていると二人の人物が入ってきた。
「失礼するでござるよ」
「おじゃましま~す」
緋村剣心と瀬田宗次郎だ。
「感謝。剣心と宗次郎ではないですか。来てくれてありがとうございます」
夕弦が頭を下げると剣心と宗次郎も頭を下げる。
琴里はその時に剣心に耳打ちをした。
「……左之介の事…夕弦に話す?」
剣心も聞いたときは少し顔を暗くしたが直ぐに答えた。
「話すべきでござるよ…その方が良いと思うでござる」
琴里は剣心からの答えを聞くと夕弦の方に振り返り1つ深呼吸をしてから話し出した。
「いい?落ち着いて聞いてちょうだい。左之介はあの爆発が起きたときに夕弦…貴方への被害を最小限に留めるために自分の身体を盾に貴方を庇った…それで…」
琴里の話している時の口調が辛かったからなのか剣心が琴里の代わりに話を続けた。
「左之介はお主庇った後、突如として姿が消えた」
それはある二つの可能性が現れる言葉だった。
爆風や爆熱による身体の焼失。
もしくは生存しているが自分達の前に現れていない。
この二つだった。
「納得。そうでしたか……」
しかし誰が聞いても可能性としては前者が圧倒的に高いのは確かだった。夕弦は剣心達にありがとうと言うが内心は悲しみしかなかった。
夕弦は爆発の瞬間に左之介と約束したのだ。生きて必ずもう一度デートしようと…
しかし現実はこうなった。どうやっても変えることは出来ない。
夕弦が悲しみに暮れていると琴里はある話をした。それは夕弦にとっても剣心達にとっても希望となる話だった。
「でもその中で不可解な事が有ったの。貴方が倒れている場所と爆心地の場所が明らかに違った…更に貴方の倒れていた場所だけ地面が抉れていなかった…」
「推測。それはつまり左之介も同じ様に無事である可能性があると?」
「えぇ…そういうことになるわ」
琴里が暗かった雰囲気が少しだけ明るくなるのを感じると部屋を去っていった。それに続いて宗次郎も去っていくなかで剣心だけが残っていた。
「夕弦殿、大丈夫でござるよ。左之はそっとやちょっとで死ぬ奴ではござらん」
剣心が夕弦に優しく微笑むと夕弦も少し微笑みながらありがとうと言った。
その後、剣心が退出すると30分後に十香や四糸乃などまだ見舞いに来てくれていなかったメンバーがやって来た。
そんな中で耶倶矢だけ夕弦の無事を知って泣いていたのは内緒。
~…side~
何かに包まれている気がする。温かい何かに…
「…っ、ここは?」
そう言って目を覚ましたのは相楽左之介。
爆発と同時に姿を消した人間である。
「なんだぁ、ここは?」
辺りを見渡しても何もない在るのは永遠に続いてそうな光輝く道。
「ここを歩けってのか?」
左之介はその道を歩き出した。
それからどれだけ歩いただろうか何も見えないしそもそも歩けていたのかも分からない程、自分の周りは変わっていなかった。
「くそ!何も変わんねぇじゃねぇか!」
その場に座り込むとふと疑問に思った。
それは極めて素朴な疑問。
「何で俺はこんな所に居んだ?」
考え込む。しかし直ぐに思い出した。
「あぁ、そういえば爆発の巻き込まれたんだったな…て、事は此処って死んだ世界か!?」
いきなり慌て出した左之介だったがその前に突如として女の子が現れた。
「相楽左之介…何をやっているの?」
「んぁ?何だ誰だお前?」
「私?そうね…後で教えてあげるわ」
女の子はそう言いクスクスと笑った。
「何だよ後でって…てかお前も死んだのか?それともこの世界のお偉いさんか何かか?」
「そうね…どちらかと言うと後者ね」
「そうか。で、此処はどこだ?」
左之介に質問に女の子は一拍置いてから答えた。
「ここは私の部屋。もう少しちゃんと言うなら仮想空間かしら?」
「あ?な、なんだ?仮想…空間だ?」
別に難しくもない言葉に困惑する左之介も見て又しても女の子はクスクスと笑った。
「えぇ…仮想空間。
私は精霊よ。
つまり自分の霊力を使ってこう言う空間を作ってる」
女の子の言葉に左之介は少し驚いた。
「お前…精霊なのか?」
「そうね…精霊。
でも、人間だった。
でも、それもまた少し違う…産まれることの無かった人間よ…」
その話をしてる時の少女は悲しそうだった。
しかし直ぐに元に戻り本題を話してきた。
「それより今から貴方に二つの選択肢をあげるわ…答えなさい。」
「二つの選択肢だぁ?」
「えぇ…1つはもう一度八舞夕弦の下に帰りそして彼女を幸せにする…」
「な!?おめぇ何で知ってんだよ!」
少し顔を赤面にして吠える。
しかし、女の子はそれを無視して話す。
「もう1つは元の世界に戻る。つまり明治に戻ると言うことね」
それは剣心、左之介、宗次郎にとって一番の目的だった。
でも左之介はその選択肢を切り出した女の子の目を確りと見て答えた。
「そんなもん前者に決まってんだろ。俺だけ先に帰るなんて出来るかよ!それに…夕弦と約束したんだ。デートしてやるってよ…」
それを聞くと女の子はとても可愛らしい笑顔を見せながら言った。
「変わらないんだね。この時も…あの時も…」
でもその声は余りに小さくて左之介には聞こえていなかった。
「あ?何だって??」
「いえ……何でも無いわ。それじゃ送るわね」
すると、左之介の身体が光輝いた。
「おぉ……って、お前の名前聞いてねぇぞ!」
左之介が突っ込むかの様に叫ぶと女の子は先程よりも長く一拍置き言った。
「今度会うときはこの世界じゃなくてそっちの世界で会いましょう…」
「後、私…の名…前は………せ…………か……で……」
「!?おめぇ……アイツの…」
名前を聞くと同時に左之介は光の世界から消えた。
~左之介side~
「…んぁ…?」
彼方の世界から戻ってきた左之介は目を覚ますと病院の前にいた。
「おぉ……戻ってこれたのか…」
戻ってきた喜びよりも彼方の世界で聞いた少女の名前の方が驚いた。
「こんなこと有るんだな……って、帰ってきたんだ。夕弦に会わねぇと…」
左之介は目的を思い出したのは良いが夕弦の場所が分からなかった。
「でも、病院の前に居るなんて不自然だよな…いや元々俺の存在が不自然だけどよ…まぁ、入ってみるか」
病院の中に入ると受付の女性に聞いた。
するとやはりこの病院に入院していた。
やがて受付の女性に言われた病室の前に来ると
八舞夕弦
と書かれた札を見つけた。見つけると同時に妙な緊張がうまれた。
「ここまで来たんだ…やってやるよ!」
勢いよく開けるとそこには窓の向こうを見つめる夕弦が居た。
夕弦が音に気付いて左之介を振り返ると…
「驚愕。左之介なのですか?」
「おう。帰ってきたぜ…」
左之介は親指を立てた。
「歓喜。お帰りなさい左之介…」
「おう…ただいま…」
見ると夕弦の目からは涙が流れていた。
でも、その涙が悲しみの涙では無いことなんて左之介でも分かった。
左之介は夕弦の下に近寄り夕弦をそっと抱きしめた。
その二人の姿を綺麗な夕陽が射していた…
左之介は夕弦を抱きしめている時も考えていた。
(この事をアイツに言うべきなのか…?)
「私の名前は
瀬田 奏」
久しぶりの投稿になりました。
結構この回は物語の大きな出来事を書いていると思います
次からはIFストーリーですね…
また会いましょう